ストーリー

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小説です。

殺意

強い殺意をもって挿し殺されました。怨恨ではありません。頼んだか言えば、頼んだかも知れません。だが、死因は胸部圧迫によるもの。確かに凶器は刃渡り10センチの名刀。もう少し声をあげてもよかったのですが、次第に窒息していきました。くるしい思いだけしました。
動かないでいると「風呂」と急かす。洗いたい気持ちは分かりますがゆっくりしたい。その夜は添い寝したような気がします。
相手は自分より若い国籍不明。1人暮らし、同性の友達と仲いい。殺し屋ではなかそう。団地で普通に日常を過ごしてる。職場は飲食ではない。
機敏なのか適当なのか、表面で走ってる。
数日後に連絡を取ってみました。すると思ったより早くフランクな返事が返ってきました。なら、連絡してくれればと思いましたが、彼は男なのでしないんです。彼から連絡…しないんです。
男かどうか問うと意味変わってきます。‘交際’となる。また、男は6歳児だというのも世界共通と確信に変わる。友達になれないのかと諦めてくる。
次の約束をしたかったが通じない。連日の雨。連絡しなかった。夜だという理由が大きい。何の約束。‘交際’という体なら金銭になる。そんなことじゃない。殺されて終わりだと思いたくなかった。
きれいな晴れになった休日の夕方、メッセージを一つ送ったが音沙汰なし。日曜日は会話できない。ここまでくれば、あれは抵抗しなくて良かったとさえ思う。1回でマックスを味わった。さて、夜が明けたら何と送ろうか。もちろん決まってる。あいさつから入って、休日の優先を探ること。今まで誰かに聞かれたことを丸々言えばいい。
もしかして、もしかしなくても。見かけ倒しだろう。あの殺意はもうない。
言葉通じればいいは安易だったかもしれない。
返事は「何?」だからなあ。掘り下げる気にならない。
一日、ヘルプで呼ばれ普段会わない人と仕事した。滞りなく仕事した。進展があったのはその翌日。
職場に行くと此出さんがこちらに来てにこにこしながら話す。どうやら、この数日で事態は展開したらしい。知らない間に。その国籍不明の若い男性が自縛でシフトを外されていた。どんな自縛かは知っていた。にこにこっぷりの意はおそらく、繰り上がり感いっぱいだから。此出さんは5年先輩の中年男性。ホウレンソウはしてくれる仲間。
聞くやいなや、となれば、連絡してやろうと思う。すると「やあ」すぐに返事が来た。事態のこと問いて説教でも、する気はなかったが察してないのは分かった。
でもこれ、此出さん知ってそう。恥や言い訳は無い。積もる話でもない雑談かとも思ったが、かなり重要な報告だったことに気付きたのはもっと後だ。帰りは近くの公園で、此出さんと荷造りして駅へ向かいました。
仕事は順調だ。季節感ありすぎて、温度調節してる。
数ヶ月ぶりに道で山田さんにあった。距離があったので手を振ったが返事なし。見えてるだけ。山田さんは体形が大きく物腰が柔らかい人、同僚の此出さんと年齢が近い。荷物を端に置く。路肩に椅子をつくり並べて、あれこれ出来事を話した。会ってない間の仕事のこと、会社のスタッフのこと。
そのうち此出さんが来て、こちらから挨拶。
数時間後、また現地でと言いあとにする此出さん。10m15mまっすぐ歩いてる。
翌日、三度目を果たす。初めて顔を見る。殺した人の顔を知ります。挨拶してもこちらを見ない。
「お名前は」
「佐藤勝(しょう)です」
そのままボードを渡す。
質問に答えてくれた。
彼の部屋で彼はテディベアになってたので近寄りました。すぐスマホ画面を見せて来ました。瞬時に理解した。その場にしゃがんで目を見ようとしましたが、俯いてる。何それ知ってんの!?と思いながら。
返り討ちにされてしまいます。
駅へ向かう道。写真を撮ろうと言い出してくる。歩きながら写真を撮る。
改札口に着くと手を離し、改札を通ると「ありがとう」と大きく手を振る。電車の中、座ってる。「ありがとう」と送って、待受を此出さんとのツーショットにする。
中略
韓国でもベトナムでも中国でもないので国籍不明。分かるのは年下ということ。モデル体形。
もう一度野球してる姿が見たくなった。
2ヶ月前
あぐらかいて知人と電話してる。
近寄ってボードを渡す。
「うるさい」
「うるさくない」即答して黙らせる。
もらって去る。これが彼との初めてのやり取り。20分後に彼を見ると野球をしてた。コスタリカに飛ばしてやろうと思った。野球で稼げばいいのに。
1ヶ月前
車内で電話してる彼。電話を終えたときに注意した。両肩に手を置いて口元を見ながら「電車の中で電話しちゃ駄目だよ」。手を離す。
彼はスマホ画面を見せ、スマホゲームを始めます。腕に軽くしがみつき、画面を見る。夢中になって見るていると、向かいに座ってた中年女性が騒ぎ出した。「淫らだ不潔、若い子は。国が国が。」と。知らないふりした。安全面で今なにを。
「次の駅で乗り換えようね」そう言って車両を変えた。二人座れた。シートは席になってて横向きになりにくかった。
下から顔を見ると斜めで合わしてきた。
「キスしたいならしてもいいよ」
言ってみた。数秒は何もなかった。キスは唇じゃなかった。
地下鉄を乗り換えた。急行の電車が来るのを5分待った。車内は座れなかった。10駅して1つ空いて座らせてくれた。無言の仁王立ちのまま5駅、隣が空いて座る。降りる駅は肘で起こしてくれた。
コンビニに行きたいと言われ、店内で翌日食べるおにぎりを1つ買った。鞄にしまうとき寄ってきて知られた。店の外で、出てくるのを数分待った。出てくる。歩くとき手を握ったかな。

ママのかお

抱っこ紐の中でママを見る。ぼくはママをみてる。ママずっとななめ下をみてる。知らないおねえさんと目が合いにこやかに笑ってくれた。目はよくみえる。人のかおだけ分かる。感情はないから、ぼくは何も話さない。ママはだまったまま電車にのる。ずっとななめ下。何も聞こえないような。ぼくの声も聞かないことが一目で分かる。ママのことすきねと先生に言われる。そういうことは聞きたくない。
知らない中年女性が手を振ってるのをみただけ。ママに押されベビーカーが動いてる。
パパの帰りは少しおそい。それまで小さく聞こえるラジオの音。口も聞かないというよりか酷くかんしゃくを起こしてくる。パパが帰って来ても。話を聞いてもらえてないと思ってる。ぼくだって思うけど、あきらめてる。そのうち物を投げてくる。パパはしゃがんで抵抗しない。後から知ったが、男は強いからやったら言われるらしい。ぼくは何もしなかった。
デパートの下り階段でママはぼくの手を離した。すたすた歩くママの背を見ないようにして、足を出す。いつから黙ってるんだっけ。
ママのかおは顎しかみないようにしてる。妹ができた。実感はない。ママがいないときにパパはおにぎりをちぎって分けてくれた。大した会話はしてない。パパと過ごしてたのにママが来て二個目のおにぎりを奪い取って捨てた。ぼくはこっそり拾って食べた。いつもママといるからパパのこと知らない。だけど、その日パパのこと知った気がした。それでもパパは休みの日はどこかに連れてってくれる。家族旅行だ。行き先でママがボイコットみたいなの起こした。ぼくはママを無視した。夕食はジュースを飲んだそれ以来、旅行には行かなくなった。
知らない人に香水のにおいをお見舞いされる。思わず手を当ててしまった。ママのにおいだったから。 すれ違いざまだった。そう、すれ違いざま、ママと。感情が前に出るママとすれ違ってる。妹と同じにおいだった。

[イヤママ・リトル]

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お読みいただきありがとうございました。

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起用もの

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-18

Copyrighted
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  1. 殺意
  2. ママのかお