zoku勇者 ドラクエⅨ編 24
思い出の記憶の中で2
4人は外壁通路をぐるりと回り、上に見えていた階段の方へ。其処にも
石碑が建っていた。どうやらこれがラボオの残した最後のメッセージの
様であった。
「「此処は我が墓。私の眠る場所。帰らぬ日々と共に。」」
「うわっわわわ!こ、これってもうラボオさんて完全に……」
「死んじゃったモンーっ!」
「だけど……、これは生前墓の意味でもあるよ、もしかしたら……、
まだ間に合うかも知れない、とにかく急ごう……」
アルベルトの言葉にメンバーは希望を持とうとするが、最悪もう手遅れで、
ラボオが果実を口にした後、息絶えた可能性もある。先へ進んで確かめて
みるしかなかった。
「う、うう、誰か……」
「……ジャミル、大変よ!」
「あ?……人が倒れてら!!」
4人は急いで駆け寄る。階段の隅に青年が倒れていた。階段は其処から
崩れている。青年はこんな処で一体どうしたのか、何があったのか。
「大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
「う、うう……」
アルベルトが呼び掛けると青年は微かに返事を返した。青年は囈言の様に、
自分はヘルマー、牢獄、砂漠、海底……、ありとあらゆる場所を探索して
きた冒険者。だが、此処、ビタリ山で力尽き、倒れてしまったらしい。
青年は頻りに特薬草を求める……。
「うう、不思議だ……、これは幻なのか……?天使様の姿が見える……、
優しい天使様のお姿が……、天使様、もしも其処におられるなら
どうか……、特薬草を私に……」
「え、えへへ、まいったなあ~、其処まで言われちゃ……、数は少ねえけど、
確か何個かあった筈だよな……?」
「いいえ、騙されてはいけません!……天使ではなくてこれは
デビルサタンです!!」
「モンモンですよ!!おならデビルモン!!」
Wデコピン×10
ジャミルはダウドとモンにデコピンすると脹れっ面で勝手に道具袋から
特薬草を取り出し、青年の顔の前で特薬草をぴらぴらさせた。
「こ、この青臭い香り……、これは特薬草だ!ああ、これで目も見える!
おお、身体も動くぞ!」
ヘルマーはうっすらと目を開く。自分の目の前にいたのは。
「よう、平気かい?」
「あ、あんた達は……?これは、特薬草……、何だ、やっぱり夢だったのか、
そうだよな、天使様がこんな処にいるわけねえもんな、とにかくありがとよ、
助かったよ、お礼と言っちゃ何だが、代わりにこの地図をやるよ、うす暗き
獣の地図LV1だ、冒険に大いに役立ててくれ……」
ヘルマーは何だか良く分からん地図をジャミルに渡す。取りあえずくれると
言うので貰っておく事に。
「あの、ヘルマーさん、何でしたら山を降りる時は僕らと一緒に……」
「ありがとな、けど、あんたらと俺の進む道は違う、俺はもう少し
休んだら一人で下山するから心配ねえよ、さあ、あんた達はあんた達の
冒険を続けてくれ……」
「でも、無理したら……」
アルベルトが声を掛けるが、ヘルマーはまた目を閉じた。アイシャも
心配するが、身体を休める為、眠っただけで大丈夫の様である。
「さあ、俺らも急ごう、山頂はすぐ其処だ、冒険者は自分で困難を
乗り越えるって意地があるからな、このおっさんも多分……」
ジャミルの言葉にメンバーは頷き、階段を登り出す。ヘルマーのこれからの
冒険の無事の達成を祈りながら。
「……か、階段……、長いよお~……」
山頂へと続く只管長い階段。もういつもの脱落者が出そうだった。
「この階段……、いい運動になるわっ!体重落とせるじゃないのっ!!」
……また始まったなと、アイシャの暴走を横目で見るジャミル。
「モンモンー!」
「おい、モン、オメーも飛んでねえで降りてきて階段一緒に上がれよ!
最近重いんだよ、オメーはっ!!……このデブっ!!」
「いやモンブーだ!」
プッ、プッ、プッーー!!
モンは怒ってジャミル達の先を飛ぶと、特大のおならを落として先に
山頂へ逃げて行った。
「うわ……、くっさ……」
「モンも……、ま、ますますクセの悪さが飼い主に……」
「……チビちゃんもおならと悪戯はしたけど、頭は良かったからね……」
「腹黒っ、ヘタレもうるせーーっ!!」
……モンはおバカちゃんの為、手に負えない状態。
(はあー、アタシはラクチンラクチン!なにセ移動バカアッシーくんが
いるもんネ!)
「……こいつも……、いい加減にせえよ……」
んな事言って、わーわー騒いでる間にあっという間に山頂へ着いてしまう。
やはり若さの特権だった。だが、其処で見た風景は……。
「うわあ……」
「此処が……山頂なのかしら……?」
「でも、この風景……、僕ら何処かで見た事なかったかな?」
「うん、俺も何となく……、けど……」
アルベルトの言葉にジャミルも首を傾げる。確かに一度、何処かで見た
景色なのだが……、何となく思い出せない様な、不思議な感じに陥って
いた。山頂にひっそりと佇んでいた町。町の中の桜の木。大きなご神体の木。
しかし、その姿は……、町の人々も、全てが石であり、町の時間は止っていた。
「……キャラメルとんがりコーン……、おほほほほぉ~……、モン……」
「ねえ、ジャミル、流石に……一度モンを脳外科医に見せた方がいいんじゃ
ないかな……」
「ははは……」
……真剣な顔をしているアルベルトにそんな金あるかいと笑っておくしか
ないジャミ公。
「モンちゃん、それって……、レオコーン、黒騎士さんの事でしょ?」
「モン!この町、何だかキャラメルとんがりコーンさんを思い出すんだモン!」
「そうね、私もそうなの、不思議ね……」
「モン~……」
呟くアイシャ。まだジャミル達4人は思い出せていないが、この町は
セントシュタインの姫君、フィオーネの元乳母、ソナが住んでいる町、
エラフィタにうり二つだったのだった。……モンはあの時、レオコーンが
町に突っ込んで来た時はその場にいなかった筈であるが、何か懐かしい物を
感じたのか、暫く目を瞑り、うっとりしていた。直後。
……ぷ~う……
「う、うわ……」
「……屁はいいっつんだよっ!屁はっ!!」
「……駄目だよお、此処、殆どの建物が石化してるから……、中には
入れそうにないよ」
「僕の方もそれなりに周辺を見て回ってみたんだけど……」
ダウドもアルベルトも肩を落とす。ダウドの言う通り、建物は全て
石化している為、どの家にも入れそうになかった。
「まいったなあ……、何処かにラボオ爺さんの家がある筈なんだ、
絶対何処かに……」
「モンが頭突きしてみるモン!……モギャーー!!」
「ま、またお前はっ!……こらーーっ!!」
ジャミルが止める前に、モンは試しにそこら辺に建っていた家のドアに
体当たりし、……コブを作って倒れた。
「モン~……」
「大変だっ!モ、モンが……また頭がおかしくなってしまうっ!!」
……腹黒、オメー心配する処が違うだろと思うジャミル。けど、本当に
近頃のモンは一体何なんだろうなと思ってみる。
「……お、お調子モン……、まさか……」
「何してるの、皆!モ、モンちゃんっ!大丈夫っ!?」
「まーた何かやらかしたの?デブ座布団っ!」
アイシャとサンディ、別の方を女の子同士で見て回っていた二人が
戻って来た。……アイシャはコブを作って伸びているモンを急いで
抱き上げると介抱する。
「こうこうこうでさ、こうなんだよ……」
「そうだったの、もう~、モンちゃんたら……、あ、あのね、一軒だけ
入れそうなお家を見つけたのよ!!」
「マジか!?やったなっ!!」
「ええ、こっちの方よ!」
ジャミル達はアイシャの後に付いていく。確かに北東の方に家が有る。
其処だけは中に入れるらしかった。……どうか其処にラボオがいて
くれる事を信じ、4人は急ぎ足になった。
「やっぱりココってなんか見覚えあんのよネ~、町の真ん中にあった
でっかい木とかさ……」
サンディもそう言っているが、彼女も完全には思い出せないらしく。
とにかく、やっと此処まで辿り着いたからにはラボオを探すしか
なかった。処が、漸く入れた一軒家にはラボオの姿は無く……。
「……ぷるぷる、ぷるぷる……」
「スライム……?」
家の中にいたのはスライムだった。スライムは不思議そうな表情で
4人を見つめた。
「君たち、だあれ……?なにしにきたの……?」
「俺達はラボオ爺さんを探してこの山を登ってきたのさ、此処は爺さんの
家で間違いはないかい?」
「う、うわああーーっ!?」
「んだよっ、ダウドっ!うるせーなっ!!」
部屋で何か見つけてしまったらしく、ダウドは腰を抜かしそうになる……。
「……あ、あれーーっ!ひ、人がーーっ!!あの人達も石にーーっ!!」
「これは……」
ダウドの悲鳴にアルベルトも目を見張る。石像になっていたのは
恋人達なのか、二人の男女。二人で仲良くお皿を並べ食事の準備を
しているのだろうか。しかし、その表情は何処か虚ろで酷く寂しげに
見えた。
「何だか……、とても悲しくなってくるのはどうしてなのかしら……」
アイシャは気絶しているモンを胸に抱き、コブを優しくなでながら
静かに呟いた。
「ラボオじいさんはね、ずっと一人でここで彫刻を彫ってたんだ、何年も
何十年もかけてね、でも、町がやっと完成したらじいさんは死んじゃったんだ……」
「!や、やっぱ……手遅れだったのかよ……」
「遅かったんだねえ……」
スライムの言葉にジャミルもダウドも絶望的に……。時遅く、もうラボオは
この世にいないらしかった。
「二人とも、最後までこの子の話を聞こう……」
アルベルトは続けて話を聞きたいとスライムにお願いする。するとスライムは
再び話をしてくれた。
「ラボオじいさん、最後にカラコタで買ったきれいな果実を食べたんだ、
一生に一度の贅沢だって、その時に言っていたよ、この町は自分の全て、
だから、どうやったらいつまでもこの町を残せるかって……、でも……」
と、スライムが俯いた瞬間、家が途端に揺れ出す。……謎の地震が
起こったのである。
「……ひゃああーーっ!!地震嫌だよおーーっ!!」
「落ち着けってんだよっ!バカダウドっ!!」
ジャミルは外に飛び出そうとするダウドを慌てて引き止めた。
「あ、あいつだよっ!また来たんだ!……あれから外でひんぱんに
怖い音がする様になったんだよ!!」
……ブーッ……
「わ、わりィなあ……」
「怖いよ、怖いよ、怖い音がするよー……、何だか嫌なにおいもするよー……」
ジャミルは一瞬慌てる。ドサクサに紛れて屁が出た。やはり、紛れもない
モンの飼い主であった。スライムは怯え、部屋の隅で丸くなる。一緒に
丸くなろうとしたダウドをジャミルは更に強く引っ張って止めるのであった。
「スライムさん、あ、あいつって、……誰なの!?」
「お外に出てみれば分かるよ、ぷるぷるぷるぷる……、き、君たちはここに
来ちゃいけなかったんだ……」
アイシャは怯えているスライムに声を掛けるが、スライムは縮こまってしまい、
それ以上何も言わなくなってしまった。
「皆……!」
「ああ!」
「行こう!」
「嫌だす!」
アイシャの言葉に頷く2人。だが、ダウドだけは往生際が悪かった。
「サンディ、モンちゃんとスライムさんをお願いね!此処で待ってて!」
「おまかせオッケー!それにしてもデブ座布団!……何でこんなに
重いのヨー!ねー、ジャミ公!コイツ、そろそろバレエ教室にでも
通わせたらどー!?美容の為にさあー!……アタシこういう美しく
ない醜いの見てると苛々すんのヨね!!」
「……な、何言って……、……」
ジャミルはサンディの愚痴と、短い足で白鳥の湖を踊りひっくり返る
モンを想像し、盛大に吹く。しかし、今はそんな場合ではない。
アイシャはモンをサンディに預け、スライムの事もお願いすると
ジャミル達と一緒に家の外へと飛び出す。外で4人を待ち構えて
いたのは巨大な石像のモンスターだった……。
「……な、何だオメーはっ!このデカブツめっ!!」
「ラボオ……、ではないのか……、ならば……、私は番人……、
この地を荒らすお前達を許しはせぬ……」
「……来るぞ!お前らいつも通り気を付けろよっ!」
「了解っ!!」
「あーうう!」
ジャミルの言葉にアルベルト達も返事を。石の番人とのバトルが始まる……。
「ダウド!まずはスカラで僕達の守備力を!」
「わ、分かってるよお、でも、あんまり効果無いし……、オイラ何で
僧侶なのにスクルト覚えられないんだろう……、1人1人じゃ手間
掛かる……うわあーーっ!?」
ブツっている暇あらず。石の番人はテンションを上げ、力を込めると
地割れを起こす。これには堪らず、地割れ攻撃で4人全員最初から
真面に大ダメージを食らい地面に転がる。一番最初に立ち上がったのは
女の子のアイシャ。普段から頑張り屋の彼女は野郎共よりも遥かに
ガッツと根性の隠れスキルがある……。
「いてて、……畜生!この野郎めっ!!」
「この地を荒らす者……、許すまじ……、大人しく此処から今すぐ
出て行くと言うなら今回だけは許してやるが……」
「んな訳にいかねーんだよっ!立てーっ!アルーっ!ダウドーっ!!
しっかりしろーーっ!!」
「うう、わ、分かってるさ……」
「……オイラもう毎度燃え尽きました……、真っ白です……、駄目ですか?」
「もう許さないわっ!えーと、このモンスターは石さんだから、
この場合……、えと、えと……、きゃあ!?」
「アイシャっ!!」
叫ぶジャミル。考えている暇もあらず。石の番人はモタモタしている
アイシャにも平気で容赦ない連打爪攻撃を。アイシャはまた地面に倒れる。
石の番人は女の子であるアイシャにも更に躊躇せず倒れて動けない彼女を
巨大な足でぐりぐり踏みつける。最悪、痛恨の一撃になってしまい、HPの
少ないアイシャは瀕死級の大ダメージを負う……。
「わわわ!な、何か外ヤバい事になってんじゃん!あ、あいつら
マジで大丈夫なの……?も、もしも、全員棺桶行きトカだったら
アタシはどうすんの!しっかりしなさいって!!コラ!デブ座布団っ!
アンタもたまには役にたてってのっ!」
「怖いよー、怖いよー……、ぷるぷる、ぷるぷる……」
家の中でバトルが終わるのを只管待つサンディ。……スライムは
相変わらず怯えたまま。……モンもでっかいコブを作って気絶したまんま。
「よ、よくも!……ダウド、アイシャにベホイミを!早くっ!!」
今度はアルベルトが叫ぶ。ヘタレだの普段何だかんだ言われているが、
やはり一番忙しいのは回復と補助担当の義務を背負ってしまった
ダウドなんである……。
「わあ!今度は回復魔法かあ~、オイラ忙しいなあ!間に合うかなあー!?
アイシャ、しっかりね!すぐ治すからね!」
「ダウド……、迷惑掛けてごめんなさい……」
「いいんだよお!!」
「させぬわ!」
だが、回復を邪魔しようと石の番人が。しかしジャミル達も負けてはいない。
急いで逆に石の番人の妨害へと入った。……ジャミルは石の番人の
踏みつけ攻撃を破邪の剣で受け止め、ダウドとアイシャを守ろうとするが、
直ぐに素手で力強く剣を振り払われてしまい、ジャミルは頭部を足で
踏まれてしまう状態に……。
「ううう……、くっ……、うう……」
「小僧、いつまでそうしている気だ?耐えられると思うのか……?
このままだとお前を踏みつぶして地面に沈めてしまうが?……どうだ?
痛かろう……?」
「う、うるせーっ!う……、あ、足がクセえなあ……、何だよこの臭い……」
「ふざけおって……、愚か者めが……、スクルト……」
ジャミルの顔に汗が滲む。石の番人はスクルトで更に守備力を高め守りを
堅くする。頭を踏みつけられているジャミルはどんどん追い詰められる。
後ろにはダウドとアイシャがいる。もしもこのまま自分が倒れれば……、
後の2人がどんな事になるのか充分分かっていた……。
「食らえーーっ!!やああーーっ!!」
「む?そうか、まだいたか……、雑魚めっ!!」
体制を整え直したアルベルトも援護に入り、破邪の剣で石の番人へと
斬り掛かる。しかし、石の番人はまた地割れを起こす。ダウドと瀕死の
アイシャにも更なるダメージがいってしまい、4人は窮地に追い込まれた……。
「だ、駄目か……畜生……」
「だから言っておろう、さっさと出て行けばいい物を……、大人しく
従わなかった罰だ、本当に愚か者だ……」
「やっぱり嫌だ、諦めねえ……、やれるさ、俺らはしぶてえんだ、
まだやれるーーっ!!俺らにケンカ売った事を後悔しろーーっ!!
よくも俺にクセえ足の臭い嗅がせやがったな!!」
「……な、何っ!?」
倒れていたジャミル、気力を振り絞りジャンプして飛び起きると石の番人の
面に跳び蹴りキックを思い切り噛ました。慌てた石の番人は戸惑って今度は
自身が倒れそうになる。其処に隙を逃さずアルベルトの再びの剣攻撃が入り、
アルベルトの剣裁きは見事に石の番人の片腕を切り落とす。その間にと、
ジャミルも急いで振り払われ、地面に落ちてしまった破邪の剣を拾い直した。
「よ、よしっ!やったぞっ!」
「アル、ナイスだっ!」
「バカな、こ、こんな事が……、おのれーーっ!我は石の番人、使命は全力で
この石の町を守る事、……お前達を全力で排除する!!」
「よおーしっ!こっちも終わったよおー!」
「ダウド、ありがとうーーっ!いくわよーっ!ヒャダルコーーっ!!」
「アイシャ!!」
ジャミルとアルベルトが声を揃える。ダウドのベホイミでアイシャは
すっかり元気に。倒れていて今まで温存しておいた分のMPで
石の番人へとヒャダルコをお見舞い、放出しまくる。
「えいっ!えいっ!えーいっ!!」
「わ、我の身体が……、鋼鉄の我の石の身体が凍り付くだと……?
そんなバカなっ!?」
もう石の番人の終わりは見えていた。アイシャのヒャダルコにより、
番人の身体は頭部まで等々凍ってゆく。止めはジャミルの剣攻撃が
石の番人の急所を刺す。身体中全てが凍り付いた石の番人の身体は
石と氷と共にガラガラと崩れ落ちていった……。
「お、終わったの……?はあ、今回も何トカ無事だったみたいね……、
もうー!毎度毎度ハラハラさせるんだから、嫌になっちゃうわヨ!!」
「ぷるぷる……、こ、怖いの……、い、いなくなっちゃったの……?」
「……モン?」
……室内で待っていた待機組。気絶していたモンもやっと復活。
漸く目を覚ました。
「……あ、あの石頭クソ野郎、マジでもういなくなったのか?」
「崩れた欠片が集まって……、復活する……、とか、展開ないよねえ~?」
「もう~、ダウドったら、嫌な事言わないでったら……」
「大丈夫……だと思うよ……」
「ジャミルーっ!おーいっ!」
「モンーっ!」
4人が慎重に辺りを確認していると、家の中からサンディとモンが。
しかし、モンの頭のコブはまだ消えておらず、アイスクリーム状態だった。
「……おま、普通の漫画なら次のページに進めば消えてんだよ、しつこいぞ……」
「モン?」
……にょきにょきにょき……
「……うわあーーっ!?」
モンのコブが更に頭から、わらわら生え、にょきにょきと……。
「やめろーーっ!話を進めるっ!ほらほらほらほらっ!!」
アルベルトが一喝すると、モンのコブは全て大人しく引っ込み、
頭が元通りになった。
「ふう……、全くもう……、ふざけてばっかりいるんだから……」
溜息をつくアルベルトを見て、モンも分からんが、やっぱりこいつも
分からんと思うジャミルであった。
「それにしても、今の何なんだろうねえ?ずっと家の中から様子
見てたケドさ、凄かったね……」
サンディがそう呟いた瞬間、ジャミルは何かの気配を感じ、後ろを振り返る。
すると、其処に……。
「……」
「サンディ、見てみろ!」
「え、ええっ!?」
家の横に不思議な老人が姿を現す。……老人は側にあった地下へ続くらしき
階段の前ですっと姿を消した。
「ジャミル、あのおじいちゃん、もしかしてっ!」
「ああ、間違いねえ、ラボオ爺さんだ……」
「モン!」
ラボオの姿が見えているのは、ジャミルとサンディ、モンだけなので、
他のメンバーはまた何が起きているのか分からず首を傾げた。
「ねえ、ジャミル……、何かあったの?」
「ラボオ爺さんの幽霊が出たんだ、今、地下へと降りてった、俺らに後を
付いて来いって言ってんのさ」
「……ええっ!?」
驚くアイシャの横でダウドが逃走しようとしていたが、アルベルトが
しっかり捕獲する。
「僕らにはラボオさんの姿は見えないけど、君に任せる、とにかく僕らも
後を付いて行ってみるよ……」
「よし、行こうぜ!」
「……あ~う~……」
アルベルト、アイシャ、……ダウドの3人もジャミルの後を付いて行き、
地下へと降りる。薄暗い地下部屋……。先に降りていったジャミルは、
奥の部屋で待っていたラボオと遂に直に対面を果たすのだった。
「……あんたがラボオ爺さんだな?」
「ああ、いかにも……」
「ジャミル、僕らには見えないけど……」
「其処にラボオお爺さんがいるのね?」
「ああ……」
「……ひええーーっ!!も、もういやらあーー!!」
怯えるダウドを除き、アルベルトとアイシャはジャミルとラボオの
やり取りが無事済むまで、静かに待つ事にしたのだった。ラボオは
そっとジャミルに語り掛け始める。
「……済まなかったね、旅の人よ、……君には私の姿が見えるのだね……?」
「見えてるよ、だからこうしてあんたと話が出来るのさ……」
「……どうやらあの番人は、私がこの地の永遠の平穏を果実に願ったばかりに
生まれた様だ、だがそれは私の本意ではなかったのだ……、これで私の小さき
友人も安心出来るであろう……」
「爺さん……、あ……」
ラボオの身体が光り出す。彼も旅立ちへの時が近づいて来ていた……。
「私は帰れぬ故郷の地を……手に入らなかった大切な物を此処に
造り上げた、そう、この地は幻影、死にゆく老いぼれの見た最後の
夢……、だがそれでも……、クロエ……」
「……クロエ?まさか……」
ラボオが呟いた名前、ジャミルは即座にその人物を思い出す。そして、
この町が……、あの村の姿形と全く同じだった事に。やっと気づいた。
「……私は愛する君の元へ……、故郷エラフィタに……これで漸く
帰ったのだ……」
ラボオの姿が消え昇天する……。そして、ジャミルの元に女神の果実が
降って来たのだった……。
「……爺さん……、あばよ……」
そして4人は地下から戻る。今日はもう一晩だけ、ラボオ爺さんの残した
夢の跡地で過ごす事に……。
「そっか……、此処ってどうも見た事あると思ったんだよね……、
黒騎士騒ぎの時に歌を聞きに来たエラフィタ村だったんだ……」
サンディはもう一度周囲の確認にへと飛んで行った。やはりエラフィタ村の
幻影に間違いは無かった。
「やっぱりキャラメルとんがりコーンさんだったんだモン……」
「モ、モンちゃんたら……、それにしても……、悲しいわ、自分の夢と
引き換えに失った大きな代償と恋の結末……、此処に来た時から何だか
悲しくて胸が痛かったのも、きっと……」
「アイシャ……、泣いてるモン……、モォ~ン……」
「……うん、大丈夫……」
アイシャはモンを抱き締めたまま一言……、それきり黙ってしまうのだった……。
「この地は……、ラボオさんの掴めなかったかつての幸せの在処……、
でもそれはやはり……、幻の形でしかなかったんだね……」
「現実逃避して夢に逃げたけど……、やっぱり失った過去はどうやっても
取り戻せなかったって事なのかなあ……」
「……」
最後に呟いた珍しく真面目なダウドの言葉に全員が押し黙る……。
其処に辺りをもう一度見に回っていたサンディが戻って来た。
「……ラボオっておじいちゃん、何十年も掛けて故郷を造り上げたんだね、
でも……、この事を知ったらおじいちゃんの元カノはどう思うのかな……、
ね、ジャミル……、人間のする事って良く分かんないよね……」
「ああ……、……」
プッ
「……んっとーにアンタのする事も良く分かんないね……」
「……わりィなあ、真面目なの苦手なんでよ……」
「……ジャミルのバカ……」
そして、翌朝……。遠いエラフィタの地で……。
「おや、クロエ婆さん、お早う、お散歩かい?今朝は又随分と早いじゃないか」
「おはよう、ふふ、昨夜ね、とても懐かしい人の夢を見たのよ、何だか
目が覚めてしまったわ」
「そうか、でも、あまり無理しないでくれよ、歳なんだからさ!」
「おやおや、あたしゃまだまだ元気元気ですよ、ハッスルハッスルですよ!
ほほ!」
村人は行ってしまう。……そして、クロエは独り……、昨夜見た夢に思いを
はせるのだった。
(……会いに来てくれたのね……、本当にお互いすっかり年をとりました
物ですね、あなたはお爺ちゃん、私はお婆ちゃん……、ふふ、……あれから
もう何年時が立つのかしら……)
クロエはそう呟くと、静かに朝焼けの空を見上げ、自然と流れて来た涙を
静かに拭った……。
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