神獣を飼う
「逃げても無駄だ。今からクイズを出す。正解できなければ、お前を食い殺すぞ」
とスフィンクスは言った。
「せ、正解したら何をくれるんだい?」
「正解したら、お前は殺さない。お前は命が助かるのだ」
「そんなのフェアじゃないぜ。俺が正解したら、あんたも何かするんだ」
「なんだって? まあよい。これまで誰も正解したことはない。もしも正解すれば、私はお前の家来になろう……。『朝は4本足。昼は2本足。夜は3本足なのは何か?』」
「うーん……、俺の家には『チャブ台』があってね。チャブ台って知ってるかい?」
「片付ける時に邪魔にならないよう、4本の足が折りたたみ式になった小さなテーブルのことだな」
「両親はどちらも朝早く出勤するから、朝食は俺一人でゆっくり食べる。狭い部屋だけど、チャブ台の足を4本とも伸ばしてゆったり使えるんだ」
「それがどうした?」
「土曜日、俺は昼前に帰宅するが、仕事の関係で、両親も土曜日には家で昼食を食べるんだ」
「それで?」
「だから部屋の中はものすごく狭くて、チャブ台の足は2本しか伸ばせない。残りの2本は折りたたんだまま、押入れの中に押し込むようにして、なんとか場所を確保するんだ」
「なんだと?」
「夜になると、父はまた仕事に出かける。だから夕食時は、チャブ台の足を3本伸ばすことができる……。クイズの答えは『俺の家の土曜日のチャブ台』だよ」
その後、
「お母ちゃん、スフィンクス拾ろたで」
と帰宅すると、
「また変なものを持って帰って。食費がかかるものはダメよ」
と母はオカンムリになりかけたが、神獣は食事をしないと分かって一件落着した。
仕事から帰ってきた父もスフィンクスを見て、
「わあ、これは美人さんだ」
と鼻の下を長くしたが、母からジロリとにらまれて、あわててよそ見をした。
小さなアパートの一室だけれど、今では玄関前に賽銭箱を置くだけでそこそこの収入になるので、それだけはありがたい。
神獣を飼う