zoku勇者 ドラクエⅨ編 23
思い記の記憶の中で1
シュウとも別れ、今度こそ橋を通過しようとした4人だが、ダウドの
ドジとそしてスリを追い、また町に突っ込んでいったアルベルトの
お陰で、時間を食ってしまうのだった。異様なアルベルトの追跡の
執念か、今度はスリ犯を捕獲する事は出来たのだが……。
「わわわ!勘弁してくれよー!な、何だそのスリッパはよ!
た、頼むから叩かないでー!金は返すよ、んで、いい事も教える!
この間、カラコタ橋の近くにピカピカ光る金の果実が落ちて
来たらしいんだよ……」
「「……果実ーーっ!?」」
「シャーーっ!!」
「わ、わわわっ!?」
果実……、の、言葉を聞いた途端、4人は顔を大きくしスリ犯に
詰め寄る。モンは大口を開け、スリ犯を威嚇。スリ犯は慌てて
その場に尻餅をついた。
「ああ、こ、この町の誰かが拾ったって話だけどな……」
「おっさん、その果実、誰が拾ったんだよ、教えろよ!」
「い、いや、それ以上詳しい事は俺には分かんねえよ……」
(ジャミルっ!探せばまだ間に合うかもヨ!果実を拾ったヒトを
探すのヨっ!)
発光体のサンディもジャミルに囁き掛ける。ジャミルは奮起する。
「よしっ!果実探しじゃ!者共!出陣じゃ!」
「行くわよっ!」
「……か、果実、果実っ!!」
「んだんだ~、だよお……」
「シャーーっ!!」
4人は又もカラコタを出るのが遅くなってしまう。しかも……。
「ああ、金……、返そうと思ったのに……、いいのかな、……い、いい
みたいだな、へへへ……」
女神の果実らしき情報を聞いた所為で、興奮した4人はスられた
ダウドの小遣いの事などすっかり忘れていたのだった。そのまま
スリ犯はカラコタを逃げて行ってしまったのである……。
「……何処?此処……」
あっちゃこっちゃ、果実を拾ったと言う人物を探し求め、4人は
いつの間にか奇妙なテントに潜入してしまっていた。……幸い今、
中には誰もいない様だが。
「此処、サーカスのテントじゃ無いかなあ?……!は、早く逃げないとっ!
オイラ達、サーカスに売られちゃうよお!!」
「だからっ!思考が古いっての!それに見ろや、この財宝!
す、すげえぞっ!!」
「ジャミルったらっ!!」
アイシャが注意するが、確かによく見てみると、テント内には誰かが
彼方此方集めたらしき、何と、金、銀、財宝が彼方此方ゴロゴロしている
……。本当に不思議で……。
「うん、だとしたら……、僕達、相当やばい場所に入ってしまったんでは
ないかな、この町は主に小さな犯罪者達が屯する場所だけど……、この
集めてある財宝を見る限り、此処は相当な悪人が支配しているアジトかも
知れない……、ん?」
「あんたら、誰だい?」
と、アルベルトが考え出した時、テントの入り口の方で声が。恐らく
このテントの主が戻って来たのだろう、4人は身構えるが……。
「そんなに警戒するな、お前らも悪い客ではなさそうだな、どうだい?
一つオレの話を聞いていかないかな?」
「は、はあ?」
後ろに立っていたのは海賊帽を被った小太りの男。何人か家来らしき
男を連れている。だが、アルベルトが予測したのとは違い、此方も
悪い男ではなさそうだった。ジャミル達は警戒を解き話を聞いてみる
事にする。
「そう、オレの名はキャプテン・メダル、世界中のちいさなメダルを
探し求める風来のメダル王さ!」
「お、王……、王様なんですかあ~?」
「うむ、いかにも!」
「キャプテン・メダルはメダル王家の高貴な血を引くお方、メダルの王だ、
くれぐれもそそうのない様にな……」
ダウドは何で国王がこんな処にいんの……、と、思うが、それは
アルベルトも同じだった。
「オレはこれまで7つの海を渡り歩き、沢山の財宝を手に入れてきた、
そして気づいたのさ!シンプル・イズ・ベスト!このちいさなメダル
こそが世界で最も美しいお宝だとな!……どうだい、旅人さんよ、もし、
旅先でちいさなメダルを見つけてくれば、オレがこれまで集めたお宝と
交換してやるぜ!」
「ホントか!?」
確かこれまで少し集めたメダルがあった筈、ジャミルは道具担当係の
ダウドに急いでメダルを出させる。その数、現時点で13枚……。
「ふむ、全部で13枚か、今交換してやれるのはこんな処か……」
キャプテン・メダルはメダルと交換でお宝と交換してくれた。今回
貰ったのは、盗賊の鍵、疾風のバンダナ、バニースーツ。だが、
13枚目のお宝を見てアイシャがブンむくれた。
(……何でこんなえっちいのがお宝なのよっ!信じらんないっ!!)
個人の趣味であろう。取りあえず交換してくれると言うので、
有り難く頂戴する。
「うへー、は、80枚以上もあんのかあ~、こりゃ大変だなあ……」
「先は長いぞ、だが、楽しみに待ってるぞ!バンバン収集して又オレの所に
メダルを持って来な!」
(メダル収集って事は……何れはまた此処に来なければいけないんじゃ
ないか……)
アルベルトは別の意味でウンザリする。カラコタも少なからずどうやら
縁の有る場所になってしまいそうになっていた。とにかく4人はキャプテン・
メダルに礼を言い、テントを後にする。
「ねえ、折角それ貰ったんだから……、アイシャが着た方がいいよね、
ね?ジャミルもそう思うんじゃないの?……ちら」
「こらヘタレっ!何で俺の方に振るっ!!……ちら」
「何よっ!スケベっ!!……ぜ、絶対着ないわよっ!!」
「じゃあ、モンが着てみたモン♡うっふ~ん」
「きゃ、きゃーははははっ!!またデブ座布団がなんかやってる
ゥゥゥーーっ!!」
「……こらああーーっ!!ま、またお前はわあーーーっ!!」
「あはは、モンちゃんかわいーい!……っとゆーことで、この話は
終わりよっ!ジャミルもダウドもっ!!……もう忘れるのよっ!
……分かったっ!?」
「ふぇふぇ~い……」
結局、モンが無理矢理着た所為で、折角のバニースーツは無残にも破けた。
無理矢理話も終わらせアイシャもほっと一安心であった。
「何か忘れてる様な……、あれ?そもそも何で僕らまだカラコタに
いたんだっけ……?」
4人は再び集落の方へと戻った。結局、こんな事ばかり一日中やって
まだ今日もカラコタを出られそうになかった。
「はあ、今日も又宿屋にお世話になるのかなあ……、まあ、ご主人は
結構人がいいみたいな感じだから良かったけど……、ぶつぶつ……、
ぶーつぶつ!!ぐーちぐち!!」
「また始まったわ、アル、カラコタに来てからずっと愚痴を
言いっぱなしね……」
「……しかも日が立つにつれてどんどん酷くなってない?」
困るアイシャと呆れるダウド。今回はアルベルトの方がやけにうるさい。
根が糞真面目なアルベルトはどうしても此処の空気が合わないらしく、
愚痴も出るわ、眉間に皺も寄りっぱなしだった。……早く此処を
離れるには金の果実を持って行ったと言う人物を捕まえるしか
ないのだが……。
「ふんふふ~ん、見てくれよ、このぴっかぴかの皮の靴!拾った
金ピカ果実と交換したんだ、どうだい?ピカピカに輝いてるだろ?
いやあ~、あんな果実と交換でこんな新品の靴を手にいれられるとは
思わなかったよ!!」
前方から歩いてくるご機嫌の変な男。言葉を聞く限り、どうやら
こいつが果実を拾った主に間違いは無かった。とうとう見つけた。
まずは最初にジャミルが男に掴み掛かる。
「おい……、おっさん……、あんたが黄金の果実を拾ったんだと……?」
「ひ、ひいいーー!?な、なんだお前らはっ!!」
「しかも、あなたの台詞を聞いている限り、どうやら果実を誰かに
売り渡して交換でその靴を手に入れた様ですが……、ええ?どうなんです?」
2番手はアルベルト。男の頭にスリッパを押しつける。……段々
アルベルトもチンピラと化してきてしまった様である。……この町に
長く居すぎた為なのか。
「おじさん、果実を誰に売ったのよう!ちゃんとお話して!私達も
果実を探してるのっ!!困るんだからっ!!」
「素直に話してよお、じゃないと、モンが行くよお……?」
「シャーモンっ!!……ぷうう~……」
止めはモンである。大口威嚇の後、後ろを向き、男にケツを近づけ
そのままホラー顔のまま、夕べのご飯のニラ餃子の香しい香りの
おならを発射。
「うわあーーっ!い、言うよ、言いますっ!!か、果実は……、ビタリ山の
麓に住んでるラボオの爺が買っていったよ……」
「ビタリ山?」
「ああ、行きたいならこのままカラコタを出て東沿いに道を行けばいい、
途中に立て札が立ってる筈さ、それにしても、あんな果実を買って
くれるなんざ爺の奴、どういうつもりかね、ま、いいや、ついでに
こんな大金も手に入れたしな!ひひ!」
「反省の色無し……、ラジャ、スリッパの刑、もう一度……」
「アルっ!もういいっての!それよりも早くビタリ山だ、行こうぜ!」
ジャミルはアルベルトを引っ張り、男をほおっておいて急いで移動する。
等々カラコタを橋を抜け、一路東の通路を通り、ビタリ平原の途中で
ぽつんと何だか淋しげな山小屋を見つける。周囲には彼方此方に奇妙な
石像が建っていた。4人は小屋の中へと入ってみる。小屋の中には作業台
らしき物と、日記が置いてある机が。ジャミルは試しに日記を手に取り
読んでみる。
「「……遠い昔、私は泣く恋人に5年で戻ると言い聞かせ、修行の旅に出た。
私は只管に掘った。気づけば約束の5年などとうに過ぎていたが、気にも
とめなかった。けれど、漸く故郷に戻った私が目にしたのはすでに他の男と
結婚した彼女の姿だった。……全ては過ぎ去った話。この老いぼれが若かった
頃の話。だが、それでも……。……私は北のビタリ山へ行く。終わりまで、
あと少し。この山小屋にはもう戻らないだろう。」」
「ビタリ山はもう少しらしいな、行こうや……」
ジャミルは日記を机の上に戻す。果実を持って行ったのが、この日記の
持ち主なのかまだはっきりとは分からないが、とにかく先へ進んで
みるしかなかった。
「お、洞窟か……」
更に先へ進むと洞窟が。この先のビタリ山もどうやら洞窟を抜けて行くらしい。
「……海の次は山登りかあ……、ホント、オイラ達って休まる時ないね……、
肩こるし、助けてエレキバ~ン、だよお……」
「また、意味分かんないよダウド、とにかく急ごう、どんな人が買って
いったのか分からないけれど、果実を返して貰わないと……」
洞窟の外壁を見つめてダウドがウンザリ。ダウドを宥めるアルベルトも
体力はそんなにある訳ではないので、おいおい、大丈夫かよとジャミルは
心配になる。しかし、一番心配なのはやはり……、ジャミルはアイシャの
方も見た。
「レッツ・クライミングね!私、英語覚えたのよ!モンちゃん、
頑張りましょうね!」
「モンモン!」
モンは別に空が飛べるからいいんである。……天然暴走アイシャにジャミルは
又頭痛がしてきた。頼むから彼女が山から落ちない様にと祈るばかりだった。
他にも滑って山からコロリと落ちそうなのはまだいるが……。
「何だよお……」
「偏頭痛持ちになるとか……、君も何か随分気苦労が増えたね……、でも、
これも経験だから……、プッ」
「うるせー!腹黒っ!!」
「んじゃ、アタシはいつも通り休んでマースっ!ガンバッテー!!」
いつも通りも何も、サンディは変わらない。此処で立ち往生していても
仕方が無い、果実の行方を追い、4人は洞窟の中へ。入ってすぐ正面に石碑、
文字が刻まれていた。
「「私の名はラボオ、私の想い、私の人生の全てをこの山に残す」」
「何だ……?」
「こ、この……、果実買っていったラボオって人、……なんか寿命が
もうやばいんじゃないの……?そんな感じしない……?やっぱり
さっきの……、日記の中の人だよねえ?」
「彫刻がいっぱいあったし、彫刻家さんなのかしら?日記にもそんな様な
事が書いてあったわねえ」
「とにかく行こうぜ、何の目的で果実を買っていったか知らんが、また
食われたなんて厄介だからな……」
4人は更に先へと急ぐ。当然モンスターバトル有りの、危険なロック
クライミングの始まりである。
カラコタからの新装備品 ジャミル 破邪の剣 影のターバン 旅人の手袋
ブルージーンズ
アルベルト 破邪の剣 ライトシールド 厚手の鎧 鉄兜 旅人の手袋
ブルージーンズ
ダウド ホーリーランス 旅人の手袋 ブルージーンズ
アイシャ 蛇皮の鞭・※時に毒針と兼用 若草色のドレス 旅人の手袋
デニムスカート
……モン 巨大メロンキャンディーの棒
洞窟を一旦抜けると最初の岩山を登って行く箇所に出る。親切にツタが
吊るしてある岩山や崖をどうにかしてこうにかして上に登って行くんで
ある。宝箱が置いてある崖もある。
「……ラボオって人、確かお爺さんだよね?こんな処登れるなんて
随分と逞しいお爺ちゃんなんだね……」
「そうだぞ、ダウド、マッチョ爺さんに負けるなよ!」
「ファイト一発よ!ダウド!」
「全くもう……、てか、もう筋肉ネタはいいよ……」
このメンバーの思考では変なイメージを持たれてしまうのも仕方が
無かった。嗚呼可哀想なラボオお爺さん。
「モンもムキムキになったら強くなれるモン?モン、マッスルモーモンに
なるモン!」
「うわ……」
(う……、プウーーっ!!)
今度はモンがまた要らんムキムキネタを引っ張り出す。ダウドは何か
想像したらしく、発光体のジャミルの中にいるサンディも吹いた。
「いいから……、早く先に進もうよ……」
まだ山に来たばかり、これからだと言うにもうアルベルトは疲れ始めていた。
……色々で。
「よし、まずは此処の岩から上ってみるか、俺が先に行くから、お前ら
無理しないで着いて来いよ」
「ジャミル、大丈夫……?」
アイシャが心配するが、ジャミルはやはり猿属性である。一旦登りだしたら
下見ず、ヒョイヒョイ岩山を登って行く。
「「キュエーッ!!」」
「あ……」
「メイジキメラの集団だっ!!」
「ジャミル、危ないわ!早く降りてっ!!」
「は、早く、早くううーー!!」
「モンーっ!!」
登りだしたジャミルが鳴き声に上を見ると……、メイジキメラのトリオが
頭上でジャミルを睨んでいた。下にいる仲間達は一旦戻る様にジャミルに
呼び掛けるが……。
「「キュエエーーッ!!」」
「うわわわわっ!!」
「ジャミルーーっ!!」
頭上のメイジキメラ3匹がジャミル目掛け、一斉に炎を吐いてきた。
ジャミルは慌ててツタから手を離すと、下まで自らダイブし、事なきを
得た。
「……だ、大丈夫かい?」
「あ、あぶねー……、まだんなに距離登ってなかったから良かったけどよ、
んなろっ!何て事しやがるっ!!」
「ケケケー!」
上にいたメイジキメラ達も地上に降りてくる。そして先に進ませまいと
4人を取り囲んだ。
「畜生、ふざけやがって!目には目を、火には火にをだ、アル、いけるか!?」
「オッケーだよ、ジャミルっ!」
ジャミルとアルベルトは破邪の剣を同時に構えるとメイジキメラ目掛け
剣から炎を放出。だが、余りダメージは大した事はないが。それでも何とか
メイジキメラ達は面食らっている。
「私もっ!えーいっ!」
アイシャの毒針攻撃!急所を突き、メイジキメラの1匹に止めを刺した。
「おー、やるな、アイシャっ!」
「えへへー、運も必要だけどね!」
「……うん、刺されない様にね、ジャミル……」
「何だっ、ダウドっ!」
「何よっ!」
「何でもないです……、って、わわわわっ!?」
突如、ダウドの前に巨大な顔だけの石像モンスター、ビッグモアイが
振って来た。石像は変な顔である。石像は2匹。それでも結構な
大きさの為、ダウドは石像に取り囲まれてしまう。
「ダウドっ!な、何とか堪えてくれや!!」
「僕らもすぐにそっちに行くからっ!!」
「む、無理……ひゃああーーっ!!」
ジャミル達はまだ、メイジキメラと戦っている為、ダウドの方に援護に
行くのは難しい状況。だが、またモンが。モンはダウドの頭にひょいっと
飛び乗る。
「モンっ!ま、また君はーーっ!!」
「大丈夫モン、ダウド、モンとライドオン協力攻撃するモン!」
「な、なにーーっ!?」
ゲームが違う……。だが、既にモンはやる気満々。
「モンがキャンディーの棒で攻撃するモン、ライドオン攻撃は攻撃力
2倍モン、それ、行くモンーーっ!!ダウド、突っ込むモン!
……シャアーーっ!!」
「……うわあーーっ!!」
ダウド、モンを頭に乗せたまま、半ばヤケクソでビッグモアイに
突っ込む……。と、同時にモンは変顔でキャンディーの棒で
ビッグモアイを叩き捲る。ビッグモアイ、地響きを立て、そのまま
ひっくり返り、消滅。……珍コンビのライドオン攻撃、半端ではない
威力であった。
「うっそ……」
「シャアアアーーッ!!」
……心配してちらちらと横目で様子を覗っていたジャミル達は
……何が起きたのか分からず目が点になる……。そしてジャミルは
益々モンが分からなくなるのであった。
「ジャミル、取りあえず僕らの方もバトルを終わらせなくちゃ!」
「あ、ああ、そうだな!」
ジャミルは我に返り、破邪の剣を構え直した。アイシャも毒針から
魔法攻撃へと体制を切り替え、詠唱を始めた。丁度彼女のテンション
ゲージも上がって来た処である。
「いくわよっ!ミラクルゾーン解放!ヒャダルコ連打よっ!!」
アイシャのヒャダルコ連発攻撃!残りのメイジキメラは40ダメージ
程を食らう。其処にジャミルとアルベルトの連携剣攻撃!メイジキメラを
無事倒す。
「はあ、終わったけど、この先何匹も同じのが出てくるからなあ、
ふう……」
「アイシャも山頂に着くまでなるべくMPは温存出来るといいね……」
「うん、節約しなくちゃね……、何とか……」
其処に変なコンビもふらふらと戻って来る。……ふらふらしているのは
ダウドだけで、ダウドの頭の上に乗っているモンは元気元気である。
「モンモン!」
「なあ、モン……、お前ってマジ何モン?本当はモーモンじゃ
ねえんじゃ……、い、いや、とにかくダウドに渇入れてくれて
ありがとな、助かったよ……」
「ふーんだ……」
「モン?モンはモンだモン、モーンっ!」
モンは嬉しそうにぴょこぴょこ飛び上がる。最近はアホ度も
増しているが、これはこれで、まあいいんだろうな……、と、
ジャミルはそう思っておく事にした。
……3Fの外壁クライミングコースでまた厄介な箇所が。毎度お馴染みの
綱渡り風の道。岸と岸に繋がれたツタの上を通過して渡っていくんである。
転落したらまず大怪我をする事、間違いなしのモロクソの高さだった……。
「はあ、もう……勘弁して下さいよお……」
「何を言ってるか!バカタレが!俺が手本でまた先に行くわ!」
率先してツタの上に乗り歩いて行くジャミル。……が、ツタの真ん中に
モンが空を飛んで先回りし、ちょこんと乗ったのである。
「おい、おま、何しとる……、邪魔だよ、早う向こう岸行ってろや……」
「モン、最近おっぺけ節覚えたんだモン!おっぺけおっぺけぺっぽっぽー!!
プッ」
「……こらああーーっ!!お、落ちるだろうがーーっ!!」
……モンはツタの真ん中で扇子をふりふり、おっぺけ節を踊り出し
おならをする。……モンの重みでジャミルが乗っているツタが激しく
揺れ出す。良く食べる為、近頃は体重も倍に増えた。対岸で事態を
見ている仲間達はオロオロ……。サンディだけは腹を抱えて笑い
転げているが。最近の彼女はどんどん暴走するバカモンのアホっぷりを
密かに観察しているらしい。
「やっぱりあの時……、雷に打たれたから……って、そんな場合じゃないっ!
モンっ!こんな時に悪戯は止めるんだっ!!」
「モンちゃん、いい子にしてたらキャンディーあげるわよっ!新製品の
キムチ味よーっ!!」
「モォーン!」
モンはアイシャの言葉にさっとツタから離れると、左の対岸に渡り大人しく
皆が渡って来るのを待つ。
「良かった……、けど、キムチ味って……」
「臭そうな飴だねえ~……」
「何でもいいのよ、モンちゃん、最近変わった味に目覚めたのよ、
さ、私達も向こう岸に早く渡らないとね……」
ぼそっと呟くアイシャ。……彼女も大分疲れが出て来ている様だった。
「はあ、どうか渡ってる最中に又モンスターが出ません様に……」
ダウドは只管祈っていたが、幸い何事も無く、今回は全員無事対岸まで
渡り終える。
「みんなー、お帰りなさいモン!……モン?」
「モン、頭出せ、さっきの悪戯の罰、今日はゲンコツだ……」
「モン?」
「……いいから出せーーっ!!」
〔げんこつ×5〕
モンは怒り心頭のジャミルに今日はげんこつ5個分を食らったのだった。
「いぎゃーモン!アイシャあー!ジャミルが殴ったモンーっ!びえーっ!!」
「はいはい、でも、モンちゃんが悪いんだから……、めっ!」
「モンプ~……」
怒りながらもモンを優しく抱擁するアイシャ。ふと、気づいた事があった。
最初に会った時よりも、モンが大きくなってきているという事。近頃体重が
増えたのは食べ過ぎの所為もあるのだろうが、モンの少しづつの成長を
感じていた。……だが、肝心の頭の成長の方は……。
「たくっ!一体誰に似たんだっ!!」
……だから、あんただろ、あんた……、と、言う様にジャミル以外の3人が
ジャミルに向けて指を突き付けた。
「ふんふ~ん、大変だったけど、途中でちいさなメダルも見つかったし、
ラッキーだよお!」
「それ、直に宅配便でキャプテン・メダルの処まで送れないかな……」
「え、え?」
「いや、何でも無い、気にしないで……」
遠い目になるアルベルト。どうしてもカラコタが苦手らしい。そして山登りで
奮闘した4人は漸く山頂付近まで差し掛かっていた。処が6Fの洞窟エリアで
又文字が刻まれている石碑を見つける。
「「私の名はラボオ。千の石を砕き、万ののみを打った……。
だが、私は年老いた。残された命も長くは無い。
この山の頂上に残す物は私の最後の作品になるだろう。」」
「……おいおい、マジでこの爺さん……、やべえんじゃ……、あいてーーっ!!」
「きゃー!?」
突如ジャミルの目が古典的表現になり、目玉が飛び出た。後ろから誰かが
ジャミルの後頭部に拳を入れたんである。後ろを振り返ると、いたのは石の
モンスター、ストーンマン。
「……この野郎っ!よくも不意打ちで殴りやがったなっ!?」
「石やらがメインの場所だから……、モンスターもそれ関係のが
多いんだろうね、やれやれ」
アルベルトが破邪の剣を構え戦闘態勢を取り、アイシャも呪文の
詠唱準備を始める。
「……あのですね、ジャミルは頭が弱いんだから急に殴ったら
駄目ですよお!準備運動無しで冷たい水にいきなり飛び込んで
心臓に負担掛けるのと同じだから!!」
「モン!頭からえっちな本が出て来ちゃうモン!お片付け困るモン!」
(そうヨ、これ以上アッホーになったらアタシらもうメンドー
みきんないだかンネっ!)
ストーンマン:ウガ!ウッガ!ガガ!(それは失礼しました!では、
今度はちゃんと正々堂々と殴ります!あ、これはお友達のメタルライダー
君です!)
ストーンマンは余計な友達を連れて来る。メタルスライムに乗った騎士、
メタルライダー。メタルスライムに乗っているので、経験値も、うはうは
……かと思いきや、大した事は無い。
「……オメーらもうっせー!やかましいわーーっ!いい加減にしろーーっ!!
ガングローっ!オメーも後でデコピンだあーーっ!!」
ジャミルは逃げるダウドとモンを追い掛ける。……いつも通りアルベルトと
アイシャは大きな溜息。……こうして、最後付近でバカバトルになりながらも
漸く……、7Fの山頂へと辿り着く。長い橋が掛かっている場所。果たして
その向こう側にラボオが住んでいるのか。……まだ話をしてくれるぐらい
ラボオの状態は果たして元気なのか……。もしかしたら……。4人は複雑な
思いで暫く橋の下で立ち尽くし、頭上に掛かっている橋を見上げていた。
zoku勇者 ドラクエⅨ編 23