『不思議。』
私はずうっと不思議だった。
彼らがなにをしているのか。
私たちへなにを与えているのか。
それはギフト。
今も届く。
わからないものは、わからないまま。
それにも関わらずわかろうとする。向き合おうとする。
そんなちからが胸を掴み彼らを突き動かす。
わかりあえたら美しい物語だった。
けれどもそんな到達点は彼らの静かなまなざしが消去する。
わかりあえないもの同士。
ただこの場で否定されずお互い存在しつづける意味がきっと在る。
理屈や論理や正論がまったく通用しない数多の事実に、人がかろうじて祈るようにできること。
私は長い道を生きるために歩く。
彼らと出会って離れてもなお。
その道はひとりだけれど不思議と私を孤独にはしない。
彼らが糸を紡ぐように繋いできた、灯し火がすぐ隣にあるような気がするから。
それはうつむく私の足もとをささやかに照らす。
そのとき私は彼らの情熱にやっと気がつく。
私の中のゆるしがたい弱さを思い出し、いま一歩、前に進む勇気を自身に見つけだす。
彼らは私たちを見届ける。
さようならのかわりに。
やがて私は自分の足で立ち上がる。
受けとったギフトを、この地上へかえすために。
時代をまたぎ世界をこえ、彼らや私たちがまた出会える。
希望をこめてさびしさをぬりかえる不思議を届けたい。
わかりあえない真摯さを、いつかの、そしてこれからの彼らに私は捧ぐ。
贈り物に、はにかむみたいに。
この答えを贈る。
『不思議。』