夫婦喧嘩

夫婦喧嘩

指小説です。

 猫はなぜお手をしないの、犬はするじゃないのと家内が言った。
 猫はつまらんことはしないのだよ
 と言ってやった。
 家内はいう。
 「猫はバカなのよ、犬はおりこうさん」
 だがまてよとおもい、
 「人間をみてみろよ、人の言うことバカり聞いている会社人間、おまえはどう思う」
 そうきいてやった。
 「そりゃバカね」
 「それで人の言うことをよく聞いて、お手をする犬が何でおりこうさんなんだ」
 「人は人の言うことを聞くのはバカよ」
 「人は人の言うことを聞かない方がりこうか、隣の坊主は親のこと何にも聞かない」
 「子供の時はちがうのよ」
 「社長の俺のことを聞かない、部下はりこうか」
 「そりゃバカな社長のことを聞かない部下はりこううよ」
 ちょっとむくれた。
 「それじゃ、人は犬より頭がいいから、いうことを聞く犬は利口で、猫はバカなのか」
 「そうよ」
 「あのバカな総理大臣の犬が総理大臣がお手といって、いうことをきくのなら、その犬はバカか、もしその総理大臣の猫が総理大臣にお手と言われてもお手をしないのは利口か」
 「そうよ、きまっているじゃない、あの総理大臣の選んだ大臣たちがみんな総理大臣のいうことをきかないじゃない、あの大臣たちはりこうなのよ」
 「だけど、あの大臣たちはみな収入隠しででつかまっちまったじゃないか」
 「そりゃあ、検察庁の人より、大臣たちがバカだったからにすぎないのよ」
 へらずぐちなこった。
 そこにうちの猫が外から帰ってきた。
 にゃあにゃあないて餌をほしがったので、餌を器にいれてやった。
 それを見ていた家内が、
 「猫の言うことを聞いてるあなたは、猫よりバカみたい、ほらお手をしてごらん」
 といってソファーに腰掛けている私に、手を差しだしおった。
 しゃくに障るが、ぐっとがまんをして、家内の手の上に足を乗っけてやろうと右足を持ち上げた。
 とたんに後ろにひっくり返えっちまった。
 椅子の足に頭をぶつけた。
 「いてえ」
 「やっぱりあなたバカよ」
 家内は笑っていっちまった。
 たしかに、こんな女を女房にした俺はバカだった。
 猫がひっくり返った僕のおなかの上にのって、大丈夫という顔でみつめてくれた。
 「猫の方がずーとやさしいじゃないか」
 とどなったら、家内が外出の用意をしてもどってきて、
 「もっと餌をくれっていってるだけよ、ほらあげなさい」
 そういって、笑いながら、買い物にいってしまった。
 猫が腹の上で顔を洗いはじめた。
 夫婦の喧嘩は犬も食わないじゃない、猫も食わないといっている。
 だけど結局、猫に餌をやってしまった。
 あたまをさわると、こぶができていた。
 買い物から帰ってきた家内が、「子供ができないからこぶつくったのね、いくつも作りなさい、ほら、お手、」と手を差し出した。
 また足をあげようと思ったが、やめて、猫のあたまをなでてやった。
 バカでも何でもかわいい方がいい。
 猫がにゃ、っと笑った。

 次の夜つづきをやった。
 出入り自由の猫穴から、猫が帰ってきた。
 「猫は自分でおしっこウンチを処理してくる、自分のことは自分で片付ける、えらい、犬のやつ散歩ついでにしやがって、うんちを拾ってこなければならん」
 「猫はきれいなパンジーの脇を掘り返すのよ、美をしらないあほよ」
 「犬はちんちんしたり、おまわりしたり、みっともない、いうなりだ」
 「猫は何にもできないじゃない」
 猫がからだをなめはじめた。
「猫のみづくろい、穴までなめている、犬にゃできねえ」
 「犬は水がだいすき、川では泳いでからだを清め、自分のからだを鍛えている、猫なんてなによ、水が怖くて、水をかければとんで逃げるじゃない」
 「犬はやたらとほえる、かみつくし」
 「悪いやつをおいはらってくれるのよ、猫なんか主人より先に逃げちまうじゃない」
 猫がテーブルにあがってきた。
「ほら、汚い足で、猫は作法を知らないあほよ」
 家内が猫の尾っぽをひっぱたいた。
 猫は振り向いてあわててテーブルから降りた。
 そのまま猫穴からでていった。

 外に出た猫は隣の犬と話していた。
 「またやってら」
 「うちの夫婦だってよくやるよ」
 「話題はおれたちのことばっかりだ」
 「そうだな、もっと世界のことでも考えろ」
 「だがな、世界の問題だって、後手後手だ、俺たちだったら、とっくに温暖化なんて止めていたのにな」
 「そうだよ、猫さん得意なのは天気予報かと思ってたら、世界の深読みができるね」
 「犬さんほど慎重じゃないけどな、好きな事しかしないからな」
 「それが大切なんだよ、自分のからだにすじ道がとおり、それを基準に世の中を見る」
 「流石、犬さんだな、人間をしってる」
 「俺たちがいなけりゃ、人間はストレスで破裂してしまっていたよな」
 「そうだな、人間は自分より劣っていると思うものをかわいがるものだ」
 「たしかにな、自分たちのこどもも、赤ん坊のときにかわいがって、ちょっと大きくなると、大事にしすぎて、世の中に適応できない人間をつくっちまう」
 「そう、ちょっと大きくなったらほっとかなきゃ、考える力ができねえ」
 「人間のつぎにゃ、どいつをかつぎだそうかね」
 「そうだな、ネズミもいいけど、食うことができなくなっちまう」
 「猿はもう無理だし、俺たちでどうだろうな」
 「そうするか、猫仲間にも聞いてみるよ」
 「俺も犬仲間に打診して見よう」
 「さて、そろそろ終わっているだろう、帰って、また餌でもねだってやるか
それじゃあした」

夫婦喧嘩

夫婦喧嘩

夫と妻が猫と犬のことで言い争っていた。それを聞いて、外に出た猫は犬と話していた。人間ていうのはね

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-11-22

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