『手紙。』

憎悪に(まみ)れている君に小説は書けない。
怒りに塗れている君なら、小説はちゃんと書けるはずだ。


憎しみの毒におかされている人間に小説は絶対に書けない。
毒が毒を呼ぶ。
反吐(へど)が出るよ。
そんなんじゃこんな世界と同じだ。


毒から学ぼうとする君には小説は書ける。
ちゃんと書けるはずだ。
もしも世界を憎み苦しみ続けているひとがいたなら僕は言いたい。
書いてみないかって。
書いてから思う存分(ぞんぶん)憎んだら良いって。
それからでもまったく遅くない。
世界はどうせ必ず終わるんだ。


憎み続けてできることなんて誰でもできる。
君である必要性はひとつもない。


そして小説は、誰でも書けないはずなんだ。
巧拙(こうせつ)の問題じゃない。
人気の問題じゃない。
ちゃんと書けたかどうかってことだ。


ためしに書いて。ぼくに見せてくれ。
笑うなよ。
一緒に踊ろう。
地球の片隅(かたすみ)で。

『手紙。』

『手紙。』

宛先は。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-11-21

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