『エキストラ。』
あなたにとってそれは明日への理由。
僕にとってはいつかの思い出。
あなたにとってこれは現実を彩るスパイス。
僕にとってこれは、優しい朝だ。
あなたが僕の背を偶像と名づけた。
僕は咲って。
終わらせた信念を、道と呼ぶ。
多くの信念が成就せず歴史の底に這いつくばる。
そんな運命が僕をこう噂する。
見えないものばかりを信じ続けていたエキストラ。
言葉にならない僕は黙って世界へ頭を下げた。
そして、これからを生きる、あなただけに。
僕は自分で決めた名前を名乗る。
「誰にも教えないで」
「それは。お互いさま」
信じられないものを僕はいまだ見つめ続けている。
陽射し照らすあなたの小さな背中の、向こう側の景色を。
世界は螺旋を描くように進む。
あなたの歩幅がいかに小さくても。
変わらないものが在る。
生まれ出る真新しい醜悪と。
それを慰めるように降り落ちる雨音の透明さ。
歩き出すあなたの靴が濡れはじめても、僕はもう。笑わない。
なにひとつ簡単ではない世界で笑うかわりに、手を繋ごう。
約束を想うように。この手を。
『エキストラ。』