Glasgow市章のある店で

 そこで上映されていたのは179分にもおよぶ1962年のアメリカ映画(モノクロ)だった。冒頭の海岸に転がった軍用ヘルメット。彼等はノルマンディー海岸より一斉に上陸し、内陸へと侵攻をしていく。教会の屋根に引っ掛かったパラシュート部隊の兵士、スコットランド部隊のバグパイプによる勇敢で無敵の行進。作品は驚くべきエネルギーとパワーに満ちていた。映画館を後にして次の上映時間、三重苦の少年がピンボールの魔術師になるという映画まで路地を徘徊し、よくわからないままにハギスを食べさせる店に入った。店内の壁にはGlasgowの市章があった。わたしはハギスを食べながら大好きな「Tommy・1975年、配給」に想いを馳せる。目の前にある鮮やかなbird、tree、bell、fish...バグパイプによる勇敢で無敵の〜、イメージの断片と連鎖による、表象、「自己・記憶」。ただひたすらその行為に溺れて全ての映像を脳に刷り込みたいという欲求に支配された。その行為が原因なのか、ひどく混沌とした夢を見続けていた。それは夢が意図的に記憶の破片を拾い集めながら繋ぎ合わせているような気がした。きっと、自ら作り上げた奇妙な儀式なのだろう。

Glasgow市章のある店で

The Longest Day 史上最大の作戦、1962年/20世紀フォックス製作・配給。
Tommy 『トミー』/ 1975年・コロンビア ピクチャーズ製作・配給。

Glasgow市章のある店で

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 青年向け
更新日
登録日
2024-11-12

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