zoku勇者 ドラクエⅨ編 16

大神官失踪編2

「……爺さん、幾ら大神官だからってさあ、アンタやっていい事と
わりィ事があんだよ、俺らの大事なダチを傷つけてくれた仕返しと
仕置きはしっかりさせて貰うぜ……」

ジャミルはそう目の前の暴走老人に言い放つ。……モンを傷つけた事に
相当切れている。

「……愚かなガキ共め……、この偉大なる魔神ジャダーマ様に
向かって説教を垂れる気か?良かろう、お前達も纏めてこの
聖なる稲妻の裁きを受けるが良い!」

「たく、不良爺め……、角なんか頭から生やしやがって!冗談じゃ
ねーっつの!」

「……うわ、少し冷えたかも……」

毒舌を垂れるジャミルを見ながら、何だかアルベルトが少し
寒そうに震えた……。

「み、みんな……、本当にごめん!全部オイラの所為だよ!モンは
オイラを庇ってああなっちゃったんだ……、それに……、モンを助ける
為に、オイラ必死でMPを使いまくって……、もうMPが残って
ないんだよお……」

「ダウド、分かってる……、後の事は心配すんな、アイシャ……」

「ええ、はいっ!!」

「え……?わ、わああっ!?」

ジャミルは頷くとアイシャに目配せする。アイシャは大量に薬草が
入った袋をダウドの目の前に差し出した。

「こんな事もあるだろうから、念の為に買い込んでおいて良かったわ、
さあ、ダウド、回復は引き続きあなたの担当よ!私達のサポートをお願いね!」

「ダウド、頼むよ、モンとサンディも守ってあげて欲しい……」

「う、うん……、こんな竹槍マンのオイラだけど……、で、でも、
みんな気をつけて!!あいつの稲妻の威力は半端じゃないよお!!」

「分かってるさ!……危険じゃねえボスなんかわざわざ出て来ねえからな、
行くぞ!アル、アイシャっ!!」

「了解っ!!」

ジャミルの言葉にアルベルトとアイシャも頷き、いよいよジャダーマとの
バトルが開始される。……ダウドはジャダーマに突っ込んでいく3人の
無事を必死で祈った……。

「爺ーっ!更生して大人しく神殿へ帰れーーっ!」

「……神に刃向かう愚か者共め!!」

ジャダーマが連続稲妻を放ち、ジャミル達は一辺にダメージを食らい
初っぱなから苦戦を強いられてしまう。特にHPの少ないアイシャは
何発も食らえばそれこそ致命的状況に陥る危険性もある。……それでも
我慢強いアイシャは何とか堪え、ふんばっていたが……。

「アイシャ、おま、大丈夫か!?」

「……まだまだ平気よっ!!」

「ほう?ならばこれは如何かな……?」

「きゃ!?……え、MPが!?」

ジャダーマはアイシャからMPを吸い取り、自らの力へと変えている
様だった。だが、戸惑っている暇もあらず、意地の悪いジャダーマは
隙を逃さず、今度はバギを3人目掛け放ってくる……。

「……あわわわ!み、みんなあーー!!これじゃ薬草だけじゃ
間に合わないよおー!!」

「ちょっとヘタレっ!ヘタレてんじゃねーわヨっ!アタシも
手伝うからっ!こらーーっ!負けたら絶対許さねーかんネ
ーーっ!!しっかりしなさいヨーー!!」

サンディは3人目掛け、薬草をドカドカ投げつけ、援護し、
ダメージを回復させる。乱暴だが、どうやらベホマラー効果に
なっているらしい……。

「……何という……、卑怯者めが……」

「オメーに言われたくねえっての!よし、爺!今度こそ覚悟しろよっ!!」

「……先に邪魔な後ろの雑魚共を始末しておくか……」

ジャダーマの目線がダウド達の方を向いた。しかし、そうはさせまいと
アルベルトが咄嗟にジャダーマに突っ込み、剣で斬り掛りダメージを
与えるが、ジャダーマはすかさずスカラで守備力を高め、ダメージを軽減した。

「大神官様、お願いです!もうこんな事はお止め下さい!……皆さんが
どれだけあなたの事を心配なさっているとお思いですか!!」

「……そんな事は与は知らぬ!どけ!生意気な小僧め!!」

「本当に我儘なお爺ちゃんねっ!……モンちゃんをいじめてくれた事、
絶対許さないんだからっ!!」

アイシャのテンションが上がり、MP5ターン無制限の
ミラクルゾーン発動。この間にと、ジャダーマに向け、
怒りのヒャダルコ攻撃を連発。ジャダーマが焦り始めている
……。だが、ジャダーマも立ち上がり再び、連続稲妻攻撃を
発動。ジャミル達もまた攻撃の手を止められてしまうダメージを
食らってしまう……。

「……あ、あらららー!もう薬草もないわっ!これマジどうするのよーっ!!
も、もうアタシしんないんだかんネーーっ!!」

「ジャミル、みんな……」

あれだけあった薬草もあっという間に其処をついてしまう……。
3人は傷だらけ、絶対絶命状態に追い込まれていた……。

「流石にお前達ももう最初の勢いが無くなってきたのではないか……?
どれ、そろそろ止めを刺してやろう……、死んだ後、神の元へと趣き、
罪を償うがよいぞ……」

「畜生……、冗談じゃねえぞ……、俺らはしぶてえんだよ、爺、
お前も舐めてると痛い目に遭うぞ……、俺らを馬鹿にした奴は
大概後でしっぺ返しを食らうんだかんな!」

「絶対に負けるもんか……、こんな処で……、大神官様……、僕らは
あなたを必ず助けます……」

「そうよ……、頑張ってくれたモンちゃんの為にも……、絶対
諦めないんだから……」

「モン……」

ジャミルは意識を失ったままのモンの方を振り返る。普段は
悪戯ばかりして、やんちゃなモンは……、あんな小さな身体でも
身を挺してダウドを庇ってくれた。何がなんでも絶対に負けらん
ねえと……、アイシャが呟いた言葉に再び気力を奮い立たせた。

「そうだよ……、冗談じゃねえよ……、畜生……」

「強がりか、小僧……、まだやる気か?そうか、それ程、神への元へ……、
死を望むのか、良かろう……」

「み、みんなあー!こんな時の為に取っておいたんだよおー!オイラの
ゴスペルソング、……受け取ってーーっ!!」

「……む?」

「ダウド……」

ダウドは先程溜めておいたチャージ技を発動。3人のHPをある程度まで
回復させた。

「何か……、あんまり受け取りたくないんですケド……」

「……う、うるさいなあー!サンディはっ!!」

「よしっ、ダウドっ!良くやったっ!」

「あははー……、はあ、す、少しはお役に立てたかなあ……」

「戻ったら取りあえず、仕置きのゲンコツは半分にしてやるからな!
……良かったな!」

「……えうう~、酷いよお~、ジャミルうううー……」

「ほう、隠し球か……、だが、お前達は儂には勝てん、無駄な事だ……」

何とか立ち直った3人はジャダーマの方を改めて見る……。これが残された
僅かな勝利へのチャンスだった……。

「……何とか此処で一気に決めちまおうや!2人とも!」

「分かってる!」

「そうね、これ以上バトルは長引かせられないわよ!」

3人がそう会話している間にも、ジャダーマは又連続稲妻を
放ってこようとする。だが、ジャミルもテンションが上がり、
必殺チャージゲージがMAXに。

「……なってもなあ、俺のアクロバットスター……、どうしろっつんだ……」

悲しい程本当にあまり使い処のないテンション技である……。

「来るよっ!ジャミル!」

考えている間はなかった。連続稲妻攻撃は再度3人目掛けて襲い掛かる。
稲妻を食らいながらも必死で堪え、耐える3人。そのままジャダーマへと
突っ込んでいき猛反撃を開始する。

「……この暴走不良糞爺っ!いい加減にしろ!この野郎!!」

「心を一つにして一気に攻めよう!……行くよーーっ!!」

「私のミラクルゾーンもこれで最後のターンだわ!えーいっ!
特大級よーーっ!!」

「食らいやがれええーーっ!!」

「会心必中――っ!!」

3人の攻撃は一つとなり、ジャダーマに襲い掛かる。アイシャの放つ
ヒャダルコがジャミルとアルベルトのW連携攻撃に力を与え、刃は
氷の剣となる。氷の剣はジャダーマの身体を貫くのだった……。

「おおおお!わ、我の力が……力があああーーっ!!消えてしまうーーっ!!」

ジャダーマを取り込んでいた黒い渦が抜けてゆく。ジャダーマは元の大神官の
姿に戻り、バタリとその場に倒れた……。

「はあ~……、……終わったの……かしら……」

「爺さん……、大丈夫かよ……、死んでねえだろうな、おいおいおい……」

「心配ないよ、気絶しているだけみたいだ、完全に元の大神官様に
戻ってるよ……」

アルベルトが大神官の安否を確認。すると……、倒れていた大神官が
起き上がり、意識を取り戻すのだった。

「うう……、わ、儂は此処で何を……、全く覚えておらん……」

「爺さん……、痴呆のフリは駄目だぜ?アンタ、とんでもねえ事
しでかす一歩手前だったんだからさ……」

「そなたは誰だ……?何故……此処にいる……?」

すっとぼける素振りを見せる大神官。目の前にいるジャミル達を見て
きょとんとしている。どうやら此処に来る間の記憶も……、ジャダーマに
なっていた時の事も全く記憶にないらしい。ジャミル達は自分達が何故
此処に来たのか、神殿で皆が心配している事、全て伝えた。

「……光る果実を?そうじゃ!儂は確かに光る果実を食べた、じゃが、
その後の事は全く覚えておらん……、微かに覚えておるのは自分が
自分ではなくなってしまう恐怖だけじゃ……」

「……」

ジャミルは後ろにいるダウドの方を振り返る……。ダウドは目を覚まさない
モンをずっと抱き抱え、黙ったまま、項垂れたままの状態だった。

「なんと……、儂は魔物の姿になり、世界を支配しようとしていた
じゃと……?そうか、そなた達が儂を救ってくれたのか……、
かたじけない……」

「あの……、何回も言う様ですが、神殿の皆さん、大神官様の事を
とてもご心配なされております……、転職希望のお客様も沢山訪れて
おられた様ですが……」

「ああ、そうじゃ……、ダーマに戻らねば!転職を求める人々の声が
聞こえるのじゃ!……キイイイーーーンッ!!」

「あっ、大神官様……?ちょ、ちょっとーーっ!!お待ち下さいーーっ!!」

アルベルトが止めようとするが、大神官は物凄い勢いで祈りの間を
飛び出したかと思えばあっという間に姿が見えなくなった……。

「……セントシュタインの姫さんと言い、逞しすぎだろ!!色々突っ込み
処が多すぎんだよ!」

「と、とにかく……、私達も一旦神殿に戻りましょうよ……」

「ちょっと待って!?……何か光ってるヨ!これ、果実……?」

サンディが目を見張る。大神官が消えた後……、ジャミルの前に
光る果実が出現した。果実はそのままジャミルの手のひらの上に
ポトンと落ちた。

「……黄金の果実だ……、これで一個目か……」

「大神官のおっさんに食べられちゃった筈なんですケド!?……ま、
まあいいか、アンタの探してる果実が見つかったんだから……、
此処は喜ぶトコロよネ!それにしても、生身の人間が直に食ったり
したら碌な事にならねーわネ!やだやだ!」

「全然……、喜べないよお、……オイラ……、オイラ……、
どうしたらいいのさ……」

聞こえて来た声に後ろを振り返ると、落ち込んだままのダウドが半ベソで
声を漏らした……。

「ダウド、此処にいても仕方ねえよ、アイシャの言う通り、此処は俺らも
神殿に戻ろう、……全てはそれからだ……」

「……」

ダウドはそれから又、無言になり一言もジャミル達と会話を交わさなくなる。
ジャミルのルーラで一行は神殿に戻るが、やはり大神官は4人よりも早く、
神殿にちゃっかりと戻って来ていたのだった……。他の神官達は、無事に
神殿に戻って来た大神官の姿に4人に何度も何度も頭を下げ、礼を言い捲った。
しかし、今は礼など言われても全然何一つ嬉しくない状況であった。

「……モン、ごめんよ、ごめんよ……、オイラの所為で……」

宿屋のベッドでずっと静かに眠ったままのモンを見守るダウド……。
こんな状態では流石のジャミルもダウドにゲンコツを噛ます心境では
無かった……。

「もしかして……、手遅れだったのかなあ、……オイラのザオラル……、
だとしたら……、オイラ本当に役立たずのヘタレ僧侶だよお……」

「はあ、もうこんなの見てらんないんですケド!……辛気クサっ!!」

サンディは悪態をつきながら発光体になり、姿を消す。しかし、
彼女も本当は塔でモンを見守っていた時から、未だ安否が心配で
心配で仕方が無かった……。

「ダウド、お腹すいてるでしょ?ご飯はちゃんと食べなくちゃ駄目よ、
ね?元気だそ?食堂で神官さんやメイドさん達が私達に美味しいご飯を
用意してくれたみたいなの、ね、食べに行こう、みんなで!」

「アイシャ……、悪いけど……、とてもそんな気にはなれないよ、
オイラ……」

「くんくん、……ご飯モン……?」

「モン……?」

「モン……、ま、まさか……」

俯いていたダウド、……ジャミルもアイシャもアルベルトも……、
一斉に反応する。モンが漸く目を覚ましたのである……。モンは
ベッドからぴょこんと起き上がると、大欠伸。……自分を見つめる
皆の姿にちょこんと首を傾げ、不思議そうな顔をした。

「……あああーーっ!モンっ、モンっ、……良かったあああーーっ!!
ごめん、ごめんよおおーーっ!本当に良かったよおおおーーっ!!」

「モン~?ダウド、なんで泣いてるモン?」

「ふふ、モンちゃん、……お帰りなさいっ!!」

続いてアイシャも目を潤ませ、モンのフヨ腹にダイブ。わんわん大泣きする
アイシャと鼻水を垂らして号泣しているダウドにモンは困って、笑っている
ジャミルとアルベルトの方を見る……。

「……モ、モン~?」

しかし、大概は良い場面ばかりで終わらないのがこの話でありまして……。

「さあ、モンもちゃんと戻って来たし、やる事はちゃんとやっとかねえとな、
飯の前に、それが俺らの決まり事さ、よし、家出人達、こっち来な……、
心配掛けた罰だ……」

「……え?ええええ……?」

「頭出せ、ダウド、……モンもな……、お前はデコだ……」

「モ、モン……?」

〔ゲンコツ×5、+デコピンの刑、SP、……発動!〕

やる事はしっかりと……。ダウドはジャミルにゲンコツ攻撃、
モンはデコピンの仕置きを揃って食らったのだった……。
ジャミルがやらかした場合は、アルベルトにスリッパ連打の刑。
これでバランス?……を、保っている。

「……えううーっ!いだいよおーー!ジャミルのアホーーっ!!」

「モン、でこっぱちになっちゃったモンーーっ!!」

(全くも~、これだからっ!あー、心配して損し……、って、アタシは
全然心配なんかしてネーわヨっ!!フンっ!!)

その日の夜。1人、中々寝付けないでいたダウドは、状態も落ち着き、
ぷうぷう眠るモンの姿を見つつ、窓からぼーっと星を眺めていた。
無事に此処に戻ってこれ、モンも無事で、気分もやっと安定していた。

「おい、ダウド……」

「あ、ジャミル、……ごめんよ、何か寝付けなくてさあ、えへへ……」

「……」

ジャミルはダウドの座っているベッドの方へ移動。そしてそのまま隣に
腰をおろす。

「はあ、やっぱオイラってバカだよねえ~、カッコ付けて割に合わない事
しちゃってさあ!」

「……バカなのはもう分かってっからさ、あまり気にすんなよ……、
諦めてるから」

「うん、……って、そんなストレートに言うなよお!」

「こ、こら!でけえ声出すなっ!……アル達が起きちまうだろ!」

「あ、め、めんご……」

ダウドは慌てて声のボリュームを下げ、眠っているアルベルト達の
方を振り返る。

「ま、バカなのは俺もだからさ、……お互い様だよ、けど、これで
なくちゃ、俺らコンビじゃねえっての、あん時は俺もついムキになって、
きつい事、……言っちまったかもだけど……、その、お前をいつも心配
してるって事、その、分かってくれや……」

……言ってて恥ずかしくなったのか、ジャミルは顔を赤くする。照れを
誤魔化すようにして、急に立ち上がると、アイシャの横で眠っている
モンの顔をわざわざふにふに突っつきに行った。

「ねえ、ジャミル、オイラこれからも、ヘタレでいいんだよね、ね……」

「ああ、……けどな、あまり度が過ぎんのは又俺も切れるからなっ!
分かったかっ!!」

「へえ~い!」

そう返事を返すダウドの顔は笑っていた。無理せず自分らしくこれからも
ヘタレで行こう。……何回もヘタレを卒業しようと思った時期もあった。
やはり今回も止めたのだった。別の世界の話でも自分のヘタレが原因で
大変な事になった話もあった。もしかしたらこれからも又、ヘタレ奪回
しようとするかも知れない、でも、また、すぐに止め……。

「……うるせーんだよっ!ウダウダ1人ナレやってないで早く寝ろっ!
このヘタレっ!!」

「あ、ま、またヘタレって言ったなあーーっ!バカジャミルーーっ!!」

「るせー!少しは反省しろ!このヘタレっ!!」

「……君達……、いい加減に寝たらどう……?今一体何時だと
思ってるのかな……?」

気がつくと……、ゆら~りと……、スリッパを手に持った黒い顔の
アルベルトが……、2人の正面に立っていたのだった。その後、揃って
アルベルトに頭をスパコン叩かれた後、渋々と両者共ベッドに
戻ったのである。

「……畜生!腹黒めっ!後で覚えてろっ、……に、しても……」

ブツブツ言いながらベッドで横たわるジャミル。……実はジャミルも、此処、
ダーマに来てちょっと考えていた事があった。

……翌日。

「転職するのかい……?盗賊に?」

「ああ……」

驚きの声を上げるアルベルトにジャミルが淡々と返事を返した……。

「これまで旅芸人として、バトルで習得したスキルは別の職業でも
引き継げる分はそのまま残るからよ、どうしてもな、これからの事を
考えるとな……、俺本来の素早さとか、得意分野を生かしてみたいのさ
……、盗賊は結構攻撃力高いらしいし……」

「うん、それもあるね、僕もいずれは戦士としてもう少し修行を積んだら、
上級職にチャレンジしてみたいなと思っているんだ、まあ、まずは君の
転職を応援するよ……」

「いいんじゃないかしら?ジャミルが考えるのなら……、ね!」

「アル、アイシャ……、あ、ありがとな!」

「ふふ、頑張って、ジャミル!何だか本来のマルディアス時代を思い出すね!」

アイシャに応援され、ジャミルが真っ赤になる。しかし、問題は
こっちである。ジャミルは又ダウドがいじけに走らないか心配に
なる……。元々僧侶になるのに気が進まず、それでもヘタレ
ながらも頑張ってくれていたダウド……。ダウドも本来の盗賊を
やりたがっていた。……自分だけが先に又、賊に逆戻りしてしまえば、
ダウドに逆恨みされても仕方が無いと思っていたが……。

「オイラ何も言わないよ、ジャミルが決めた事なら……、ま、この世界では
オイラ、回復役に適しちゃったんだから、でも、もしも機会があって、余裕が
出来たらオイラも転職させてくれればそれでいいよ、だからそれまでオイラ
このままで頑張るから……」

「ダウド、お前……」

ダウドはジャミルの方を向いて微笑みながら頷く。どうやらいじけの心配なく、
ジャミルの転職を快く承知してくれた様だった。

「ッシャアーっ!こりゃ頑張るしかねえだろ!いっちょやるかっ!!」

(はあ、アイツ転職すんのネ、転職したらLVも1に戻っちゃうらしいし、
な~んか、またこの先長くなりそうなんですケド……、前途タナ~ン!
……アンタやるからにはちゃんとしっかりやりなさいってのヨ!
……テンチョー、ココでも見つからなかったし、……ブツブツ……)

そう呟いているサンディの言葉は、騒いで奮起しているジャミルには
聞こえなかったらしい。

「モンも転職するモン!モン、太鼓叩き職人さんになるモン!」

「……ま、また……、てか、モン、最初から職業ついてないでしょ……、
そんな職業ないしっ!……人の頭の上に乗るなああーーっ!!」

元気になった途端、再び始まるモンの悪戯。いつもの通り、ダウドの頭を
太鼓代わりにし、ポコポコ叩いて遊び始める。ダウドもモンもすっかり
いつも通りに戻っていた。けど、これでいいんだよな……、と、ジャミルは
安心感を覚えるのだった。

4人は転職の間へ。……其処にはすっかりいつも通り、ケロッと……、
仕事を熟し、神殿に訪れた人々を新たな人生へと導いている大神官の
姿があった。

「爺さん……」

「おお、そなた達か!ダーマの塔では世話になった!一体あの果実は
何だったのじゃろうな、儂は確かに人々をより良い道へと導く為の力を
求めていた、あの果実はその力を与えてくれた物かも知れないが……、
儂はその力に溺れ、世界を破滅させる処であった……、そなた達が
止めてくれなければ儂は世界を滅ぼしていたかも知れん……、心から
礼を言う、黄金の果実は人間が口にしてはいけない禁断の果実だったのだな……」

「でも、果実がお爺ちゃんのお尻からうんちと一緒にぷりぷり
出て来なくて良かったモン……」

「……こ、こらっ!モンちゃんっ!……あっ、待ちなさいっ!!」

「♪モォ~ン!」

モンはその場から逃走。アイシャは慌ててモンを追い掛け
走って行った……。……モンの暴言は大神官には聞こえて
いなかったらしいが。

「全く!……モンは最近毒舌までどんどん凄くなって来てる
気がするよ!ちらっ!」

「……んだよ、腹黒!俺の方見んなってんだよ!!」

「そなた達には本当に礼のしようも無い……、せめて儂のこの転職の
力をこれからの旅に役立てていって欲しい、儂はダーマ大神官、転職に
よって人々をより良い道へと導く事こそが儂の使命……」

「うん、その事で来たんだ……、俺、転職したいんだ、盗賊に……」

ジャミルはちらちらと大神官の方を見る。……テレテレ顔を
赤くしながら……。

「そうか!早速、この儂の力がお役に立てるか!そうかそうか、
では、ジャミル、儂の側に来なさい……」

「へ、へっへへっ!行ってきやーす!」

「ジャミル、嬉しそうだねえ~……」

「うん、これから益々頑張って貰わないとね……」

ジャミルは、らったった状態で転職の儀式を受けに大神官の近くへ。
暫くの間、大神官に祈って貰う。そして、自らも神へと祈りを捧げる。
……少々鳥肌が立っていたが。いよいよ、旅芸人から盗賊へと
変わる時である。

「おお!この世の全ての命を司りし神よ……!ジャミルに新たな人生を
歩ませたまえ!!」

ジャミルの頭上に光が降り注ぎ、装備品で頭に着けていた羽根飾り
バンドが外れる。

「これでお主は新たな道へと進む事が出来るぞ……、装備品は新しい物に
変えたまえよ、さあ、行くが良い……」

「俺……、マジでまた賊になったんだな……、な、なんか……、素早さが
アップした様な気がするっ!ひゃっほー!」

「あまり調子に乗らないんだよ、LVはまた1からなんだからね……」

調子に乗るジャミ公にアルベルトが注意を促そうとするが、本人は
浮かれている為、アルベルトの声も耳に入らず……。

「よしっ、確か地下によろず屋の行商人が来てたよな!お前らも
装備品整えとかなくちゃな、ささ、行こうぜ!!」

……本当はダーマの塔に行く前に、装備品を変えておく予定だったのが……、
ダウドが暴走して行方不明になった為、ジャミル達は新しい装備品を買うのも
忘れ、急いで塔へと向かった状態だった。

「はあはあ、……ジャミル……、転職の儀式は終わったの……?」

其処に漸くモンを捕まえ、息を切らしたアイシャが戻って来る……。
神殿の客にも力を貸して貰い、モンがバナナを頂いている隙に
漸く捕獲したらしい。

「もぐもぐ、バナナ、おいしーモン!」

「うわ、食べ物で捕獲されるとか……、ますます誰かさんそっくりに……」

「……ダウドもうっせーっての!ご、ご苦労だったな、アイシャ……、
これから装備品整えたら、俺、少し近辺でLV上げしてんだけど、
お前らもいいかい?」

「うん、転職したばっかりだからね、もう少しダーマでお世話になろう……」

「私もいいわよ!」

「オイラもいいでーす!」

「ちんちんバナナモン!」

「……モンちゃんっ!!」

(はあ~、今度は修行っスかあ~、どうでもいいけど、こっちは人捜しだって
あるんだから、レベルなんかちゃっちゃと上げちゃいなさいヨネ……!)

4人は地下の行商人からある程度の装備品を買って外出バトルの準備を
整えようとしたが、売っているラインナップは、ほぼベクセリアと同じで、
特にランク上の装備品を取り扱っている訳でもなかった。……ジャミルも
武器を特に変える必要もあらずで、とほほのほ~で、4人は神殿の外に出た……。

「よし、修行だっ!モンスターちゃん、出て来いっ!」

「……あんまり出て来て欲しくないけど……、わ、出たっ!」

ダウドが身を縮こませるが、出たのはスライム一匹……。

「よしっ、これならっ、丁度腕試しにならあ!楽勝っ!」

「……ジャミルっ!油断しちゃ駄目だよっ!こらっ!ジャーミールううう!!」

アルベルトがジャミルに注意するが、聞いていない。ジャミルはそのまま
スライムに突っ込もうとするが、スライムは仲間を呼び、その数は5匹に
なり……、ジャミルはスライムに取り囲まれてしまう……。そして、
スライムは合体し、キングスライムとなる。

「だ、だから僕がっ!……あああーーっ!!?」

「きゃあーーっ!!」

「……ぐえーーっ!!」

ジャミル、キングスライムに潰され、ぺちゃんこ。ちーん、昇天……しかける。

「ダウドっ、すぐにジャミルにザオラルを!……此処は僕とアイシャで
何とかする!」

「……う、うん!」

「モンもいるモン!」

「ダウド、ジャミルをお願い!行こう、アル、モンちゃん!」

「何か見てて情けないなあ~、もう~、ほらジャミル、しっかりっ!!」

こうして、ジャミルはダウドに助けて貰ったが、転職したての為、仲間との
LVの差、約15……。皆にLVが追いつくまで、ジャミルは暫くの間、
モンスターにやられ捲りで……、ヘタレ状態となってしまったのだった。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 16

zoku勇者 ドラクエⅨ編 16

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-11-11

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work