冬の短歌

名も知らぬ土地の施設に父を置き
子どもにかまう私が笑う

あなたからもらった指輪も外したら
明日のご飯に消えてしまうのね

泳ぎ越す尖塔振り向き口づける
少年少女を染める赤い風

鮮やかなくちばし潜る水中も
飛び立つ空もエトピリカのもの

一顧だにされず手足をちぎられて
それでも生きる甘藻 我らも

元日の路地に行き交う黒帽子
母に会ひたる心地もぞする

はい、僕は薄情ものです。
震災のニュースを聞いて飲めるくらいには。

この暗い部屋には俺しかいないから
ビル・エヴァンスよ まだ行かないで

太陽を喰ったこの歯にキスをしろ
夜明けが嘘に染めてしまうまで

息子より小さな頃にクレヨンで描いたぼくの絵
天才だった

色あせた写真にうつる赤ん坊
ぼくとは違う笑い方する

初閻魔舌を抜くなら抜いてみろ
舌なら何枚だって持ってる

君とまた映画を観てる夢をみて
枕にあたま押し付けている

子らは雪合戦をして我転ぶ
苦し紛れの雪だるまかな

冬の短歌

冬の短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-11-10

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