短歌
事の後 背中をつたい 流れゆく 冷たき汗に 余韻消えゆく
人間の 首から上と 下とでは 日々争いて 戦絶えまじ
遊歩道 ひたすら続く 並木道 そのさびしさは 生き様に似て
悲しみに ひたすらくれた 夜も過ぎ 差し込む日差しに 眠気漂う
憎しみに 駆り立てられて 走りぬく 若き魂 青く輝く
傷つけて 傷つけられて 過ぎていく 人との間で ただもがく日々
無人駅 広がる海と 戯れて 風に消えゆく 泡沫の午後
肩を組む 明日をも知れぬ 男たち 死を前にして 笑みは澱まず
夜明け前 舞台の裏の 雀たち 奏でる曲は 日差しと共に
罪と罰 善と悪とを 駆け巡る 処された男を ただ拝むのみ
仕事中 ひそかにつぶやく 死にたいと 隣の人に 聞こえてるかな
人は皆 神は死んだと 言うけれど 罪は消えたは 未だ聞かれず
五蘊など ただ幻に 過ぎぬのだ スマホを使って ネットに書きこむ
数式は 宇宙の時空を 駆け巡る ならば心は ならば言葉は
思春期に 老いさらばえた その心 残る余生は 若返るため
バカ梵天 ファリサイ派である 我行かん 世俗に穢れし 愚昧なるもの
浜沿いを 歩いてみれば 重なるよ 海辺の波と 心の波が
朝起きて 夜に寝るまで 機械漬け 科学に囲まれ 科学に侵され
電車内 皆がスマホと にらみ合い ふと見た窓の 外に菜の花
月光と 波の響きが 交差する 募る思いは 闇の彼方に
散歩道 虫の音色に 彼岸花 淡く冷たい 風に吹かれて
フロイトの 掌の上 踊らされ あれも無意識 これも無意識
夏の森 力の限り 泣き叫ぶ 宴儚く 汗は乾かず
磔に された心が うずき出す 祈りは届かず 露と消えゆく
幾重にも 積み上げられた 骸たち 清く流れる カチューシャの歌
道端に 生え散らかした 草花と 我の命は 近くて遠く
崖の上 まわる記憶も 尽き果てて 波のまねきに 聞き惚れるのみ
同じ椅子 同じ机に 同じ皿 畜群たちの 茶店のにぎわい
思春期に 心も身体も 凍り付き 溶かす術なく 輪のみ増えゆく
草花に あふれた世界と 人の世の 狭間でさまよう 黒き隊列
短歌