『坂の上の家』

子供の頃願ったあの場所は
確かに果てしなく遠かった
今では恐ろしいほど容易く
辿り着けてしまうけど


『坂の上の家』


魔女が住んでいるとか
幽霊屋敷だとか色んな噂が
そこには渦巻いていて
だけどアタシはそこに行きたかった

魔女に食べられても
幽霊に取り憑かれても
そんなことはどうでもよかったし
逃げられるなら恐ろしいことなんて

それでも行けなかった場所
なのに今更呼び鈴を鳴らす
入っておいでと言われれば
恐れ知らずの脚は進むしかない

貴方の黒い影を求めて
奥へ進めば魔女でも幽霊でもない
その姿に子供のように抱き着く
受け止めた低い笑いを堪能するの

制服に袖を通す頃出会い
制服を永遠に脱ぐ頃に抱かれた
貴方は酷く冷静な大人で
急かすアタシを宥めるばかり

それでも想いは通じたのだから
アタシは決して逃がしたりしない
後悔したような顔をしても無駄よ
ここはもう二人のお城



「今ここに魔女の噂は真実になる」

『坂の上の家』

『坂の上の家』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-27

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