『未亡人』
緩やかなお別れ
寂しいという嘘
『未亡人』
どんな人にも必ず訪れる
最期の別離に手向けの花を
残されることは解ってた
だから沢山キスをしたの
人生をかけて愛すると
ちゃんと誓いを守ってくれた
これから先を生きられるよう
独りの道も照らしてくれた
だけど不思議なくらい
貴方はもう居ないと分かってるのに
貴方はアタシの傍に居るのよ
いつも通り左腕を差し出して
そっと手を添える瞬間が好きだった
貴方が僅かに口角を上げるのを
目の端で見上げるのが好きだった
いまもほら、分かりにくい笑み
黒いベールに隠れて
アタシも微かに微笑む
だってこんなのは別れじゃない
姿が目に見えなくなっただけのこと
次の幸せを祈るような貴方に
アタシが永遠を教えてあげる
生涯をかけて愛すると
信じきれなかった貴方に
「次会った時にベールを脱ぐから受け止めて」
『未亡人』