星の向かう先

どうして、どこへ、そんな質問が素直にできたあの頃。

どこかへ

「あれはどこにいくんだろうか。」
少年は星空を指差してそう、私に尋ねた。
「さあ。私にはわからないよ。」
流れていった星の欠片が、一体どこに辿り着くのかなんて、一体だれが知っているだろうか。
「どうして分からないのだい?」
気難しがりやの少年はそう言って口を尖らせるけれど、私にはその問いに答える力もなければごまかせもしない。
「君には分からないのかい?」
そうすると、君は何を当たり前なことを聞くのかと言うように、
「当たり前だろう。わからないから聞いているのだから。」
「それは、私も同じだよ。私にも分からない。」
遠くの空を見上げていると、また一つ星が迷い出る。
それは、一瞬で光の痕跡を残しては、どこか遠くへと消えていってしまう。
「知らないことばっかりだ。」
私は、思わず口元を緩めた。
「知っていることばかりでも、きっとつまらないものだよ。」
「どうして?」
私は星空に手を伸ばす。それは掴めそうで、それでいて、掴めることは一生無い。
「あの星の欠片が、これからどんな旅をするのかを考えてみるのも楽しいよ。きっと、それぐらいがちょうどいいんだと思うんだ。」
少年は首を傾げながら、うーん、と唸った。
「わからない。」
そうムスッという。
「うん、それでいいんだ。」
私がそう言うと、少年は眉間に皺を寄せて黙ってしまったけれど、そのうちにまた、空を見上げ始めた。
「ああ、きっとさ、あの星の欠片はね、未来にいくんだよ。そうして、またどこかで僕らと出会うんだ。」
そう、きっと、知らなくても、分からなくても、それが繋がる未来を信じて。消えてしまうものも、あっけなく答えが出てしまうようなことも、見えることも見えないことも、たくさんのいろいろが折り重なって続いていく未来を、私たちは歩いて行くのだろう。
今日という日が終わっていくこの瞬間も、どうしようもなく悲しくなる。けれど、それはきっと一瞬で過ぎ行く感傷だ。いつだって次の数を数える頃には、私は先を見ているのだから。
たくさんの感傷と後悔を背負って、明日を見る。悲しい色には染まらない明日に、未来を垣間みた。

星の向かう先

知ることは、楽しい。知ることは、悲しい。だから、私たちは、繰り返すのだろうか。毎日、変わり続ける世界に、変わらない夢を持ち続けたい。

星の向かう先

星は、どこにいくのだろう。幼い頃に、思っていたこと。大人になって、忘れていたこと。そして、新たに知ってしまったこと。私たちは、素敵なものが見えているのでしょうか。それとも、素直な幼き日に置いてきてしまったのでしょうか。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-23

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