お味噌汁

何かが足りない、そう感じる時に思う。

穏やかな朝

ほかほかと温かな湯気を立てていたであろうそれは、私が帰る頃には冷たくなって待っている。
それは仕方が無いこと。
しょうがないこと。
それでもなんだか無性に寂しくなることがある。

温かいものが欲しい。何か、私を暖めてくれるような、そんな優しいもの。だから私は求めた。全部、お金で買えるこの時代だから。
ふと目を覚ました時に、今度は虚しさを覚えた。
お金で買えるもの、それには限界があるのだとしみじみと感じた。
 遠ざかる足音は、誰のものだろう。
 耳を澄ますけれども、もう分からない。
ただ、その足音が遠ざかっていくときの、この妙な切なさと悲しさは、いったいどこに置いてくればいいだろう。
温かい布団の中で私は守られていたはずなのに、私は急に無防備という矢に射抜かれた。私がいられる場所。それは、いったいどこの国の、どんな世界の、どんなところで得られるのだろうか。

ふと、私は幼い頃に帰るたびに見上げた、我が家を思い出す。
 どんな時でも、私を待っていた。
 そんな安心感があった。
 あれは、家が出す空気なのだろうか。
それとも、家の中でのんびりと笑って私を待っていてくれた優しい母がつくっていたものだったのだろうか。
私にはそんな曖昧で抽象的なことは分からないけれど、今の私に欠けているものが、そこにはあった気がした。

遠くで何か鳥が鳴いている。
ああ、今日は、穏やかないい陽気になりそうだ。

お味噌汁

何かが恋しくなる瞬間がある。無性に、懐かしくなって、悲しくなる。そんな「とき」を思って書きました。

お味噌汁

何かふと、無性に温かさが恋しくなって、悲しくなる瞬間がある。たとえば、温かいお味噌汁、たとえば、昔住んでいたあの場所‥そんな一瞬のお話です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-23

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