68点の心

 凡ミスが8個、考えてもわからなかった問いが2個、勘が4個。
そうしてとった社会のテストの得点は、68点だった。
毎回社会のテストは65〜69点を推移している。苦手分野の社会だけは集中的に勉強しているはずなのに、何回やっても得点は上がらない。
またお母さんに怒られる。
『要領良く勉強しないからよ』。もう聞くのも飽きるほど同じ言葉で怒られてきた。
私が馬鹿だから怒られる。
でも、得意科目の国語だけは褒めてくれた。今までの最高得点は100点だ。
『これを維持しなさい。一回だけなんて実力とは言えないわ』。結局100点を取れたのは中学3年の一学期のみで、受験までの短い間、国語の成績は下がり続けた。
お母さんが望んだ進学校には入れず、家庭で私の存在は浮いていた。
部活はお母さんが決めた。学力がないならせめてちゃんとした女性の生涯を送りなさいと、家庭科部に入らされた。
『女性らしく料理をし、旦那を支え、子どもを産み、普通の家庭を築くの』。私は反抗できなかった。お母さんを失望させてしまった罰を受けなきゃいけないと思った。

 私はちゃんとしてないから。
もっと、頑張らなくちゃ。
誰の目にも恥ずかしくない、お母さんを失望させない、堂々とした人間になっていかなきゃ。
迷いなど最初からなかったように、歩いていく。
日が沈む。自分の影が消えて、一人ぼっちになっていた。

68点の心

68点の心

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-15

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