眩暈
死を思うときに発現するこの眩暈
実存の基底が、基盤が砕け散りそうに感じる
この危機察知反応
を自覚するたびに辟易させられる
自分という存在の空虚さを思い知らされる
噓に噓を塗り重ねていないと己を保てないのなら
そんなものは最初からない方がよかったんだ
もう取り返しのつかないところまで来てしまった
噓の習慣だけは噓ではなかった、とは
笑える皮肉だな
視界がぐらぐらと搖れ、ぐるぐると回るこの現象は
この世に生を享けたときの体感に似ているのかもしれない
あの瞬間に、無という安寧から強引に搖すり起こされたんだ
そう自分を慰めてみたところで何も変わらない
何もかも手遅れだ
最初から手遅れだったのかもしれない
最初から生気が乏しかったから
なけなしの生気を以て為してきたことは
虚構と離人感の強化、ただそれだけか
だが俺にはそれが必要だったんだ
それがなければ息もままならかった
俺はきっと最期の言葉ですら噓に塗れているだろう
生まれてきてよかった、と。
眩暈