眩暈

死を思うときに発現するこの眩暈(げんうん)

実存の基底が、基盤が砕け散りそうに感じる

この危機察知反応

を自覚するたびに辟易させられる

自分という存在の空虚さを思い知らされる

噓に噓を塗り重ねていないと己を保てないのなら

そんなものは最初からない方がよかったんだ

もう取り返しのつかないところまで来てしまった

噓の習慣だけは噓ではなかった、とは

笑える皮肉だな

視界がぐらぐらと搖れ、ぐるぐると回るこの現象は

この世に生を享けたときの体感に似ているのかもしれない

あの瞬間に、無という安寧から強引に搖すり起こされたんだ

そう自分を慰めてみたところで何も変わらない

何もかも手遅れだ

最初から手遅れだったのかもしれない

最初から生気が乏しかったから

なけなしの生気を以て為してきたことは

虚構と離人感の強化、ただそれだけか

だが俺にはそれが必要だったんだ

それがなければ息もままならかった

俺はきっと最期の言葉ですら噓に塗れているだろう

生まれてきてよかった、と。

眩暈

眩暈

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-11

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