zoku勇者 ドラクエⅨ編 3
ニードの敗北
峠の道
「よし、漸く着いたな、土砂崩れが起きたのはこの先の道だ!」
「モンモン~!」
「……そうか、モンモンだな、モンモン……、って、違う!」
「ん?ジャミ公、さっきから何立ち止まって見てんだよ、
何かあったのか……?」
「うん……、これさ……」
「???」
ジャミルが見つけたのは、黄金に輝く列車……、あの時、
天使界から天使達を導き、神の国へと迎え入れる役割であった、
天の箱舟だったからである。
「何でこんなとこに?まさか此処に墜落したのか……?」
「だから……、何があるんだよ、何もねえだろ!普通に木が
倒れてるだけだろ!そんなに珍しいのか?やっぱ変わってんなあ、
お前……」
「う~ん、お前には見えないのか……」
「変な奴……、オレは先に行ってるからな!土砂崩れはこっちの道だ!」
「モンモン~!」
「……お前、モンモンさっきからうるさいんだよっ!たく!」
「キシャアーーー!!」
「うわ!大口開けて牙見せるなっ!!」
それもその筈。ニードは普通の人間なので、見える訳が
ないのである。しかし、説明しても分からない為、気には
なったものの此処は一旦ほおっておくしかない。ジャミルは
諦めてその場を離れ、ニードの後を追い、土砂崩れの現場の方の
道へと向かった。……しかし、ジャミルの言動をこっそりと、
……ずっと観察していた謎の生物?がいた。
「何あいつ、もしかしてこの天の箱舟が見えてたワケ……?
……まさかのチョ~変人出現……?」
「ジャミル、大丈夫モン?」
「ん?何がだ?」
「さっきからずっと難しい顔してるモン、お腹空いたモン?」
「いや、そうじゃねえ……、お、ニードだ、おーい!」
土砂崩れの現場でニードが立ち往生していた。此方は何か
困った様な顔をしている。
「どうしたんだよ……」
「ジャミル、見ろこれを……、オレ達、土砂崩れの
現場ってのを甘く見過ぎてたんだな……」
……確かに、土砂崩れの現場は余りにも酷く、2人だけの力で
砂をどうにか排除出来るレベルではなかった。
「う~ん、確かに酷えなあ、こりゃ……」
「オレとジャミルじゃ無理だよ、こんな土砂崩れの山……、
くそっ、折角親父の鼻をあかして村のヒーローになって
やろうと思ったのによ!」
「お手伝いモン!モーモンのおならで砂を吹き飛ばすモン!
それモンーっ!!」
「やめんかいっ!!……うわ!!マジで誰の影響受けてんだよ、
こいつめっ!!」
「ついでにニードにもお見舞いモン!」
知らねえよと思うジャミル。モーモンのおならの所為なのか
土砂の山が少し崩れた……。
???:おーい、其処に誰かいるのかーっ!?いるなら
返事をしてくれーーっ!
「おっ?」
土砂の向こう側から、微かに人の声がする……。
「向こう側に誰かいるみたいだな、ジャミルっ!」
「ああ……、らしいな……」
「おーいっ!此処にいるぞぉーーっ!ウォルロ村イチの
イケメン男のニード様はここだぞぉーっ!」
「それは嘘モンーっ!」
「こいつっ、……この糞座布団めっ!」
「モモモオ~ンッ!!」
ど付き合いを始めるニードとモーモン。ジャミルは
最近何だか自分の影が少々薄くなっている……、様な
気がした。
「って、んな場合じゃねえっ!俺達はウォルロ村の
モンだよーっ!」
「モン?モンですか???」
「やっぱり……、そうか!ウォルロ村の者か!我等は
セントシュタイン城の遣いの兵の者だーっ!」
ジャミルが呼び掛けると、土砂の反対側にいるらしき
おっさんは此方側に向かって再び返事を返した。
「なあ、セントシュタイン城って、何処だ……?」
「何だ、知らねえのかよ、お前……、本当に旅芸人か?
セントシュタインってのは、ウォルロ村から東にある城だよ!」
「そ、そうか……、成程……」
「ニード、モン、モンですか……?」
「うわ!だから何なんだよっ、でけえ顔近づけんなよっ、
四角い座布団めえっ!」
「シャアーーッ!」
またど付き合いを始めたニードとモーモンはほおっておき、
……ジャミルは引き続き、兵に話を聞いてみる事に。しかし、
ニードとモーモンは何か変なコンビに定着しそうであった。
どうやらこの兵士は国王から命を受け、土砂崩れの砂を
取り除く為、派遣されたらしい。
「おい聞いたか?セントシュタインの王様が動いて
くれたらしいぜ、って事は、わざわざオレ達が此処に
来る必要もなかったって事か、やれやれ……、
もう問題も解決したも同然だな……」
「そうなのかなあ~……」
「ん?何か珍しく難しい顔してんなあ、ジャミル……」
「お腹が空いたんだモン……、それかうんちが出そうで
困ってるモン」
「だから違うって言ってるだろ……、どうせ俺は真面目な
顔は似合わねえよ……」
「にょ、にょお~……」
モーモンの顔を引っ張って横にうにょうにょ伸ばしながら
ジャミルが項垂れる……。顔を引っ張られたモーモンは顔が
横に伸びて変な顔になった。
「ウォルロ村の者よー、一つ取り急ぎ確認したい事があるのだが、
地震の後そちらにルイーダと言う女性が訪れたと言う話は聞いて
いないだろうか?城下町で酒場に勤めているご婦人で、ウォルロ村へ
行くと言って村を出たきり、消息不明なのだ……」
「……ルイーダねえ、知らねえなあ、第一そんな女が
ウチみてえな田舎の村に何の用があるってんだ?」
「そうか、知らないか……、実は彼女はキサゴナ遺跡に
向かったと言う話もあるのだ……、だが、その遺跡へも
いつの間にか通路が塞がってしまって確める方法が
ないのだよ……」
「……キナクサ遺跡……?」
「ジャミ公、お前も耳鼻科行った方がいいぞ……、
キサゴナ遺跡ってのは、この道が開通するまで
使われてた古い遺跡さ、崩れやすくて危ねーし、
モンスターも頻繁に出る様になっちまったしで
今は誰も近づかねーよ、まして女にはそんな遺跡
抜けらんねえだろ、筋肉ムキムキのゴリラ女なら
ともかく……」
「とにかく村人達には間も無くこの道は開通すると
伝えてくれ、それと、出来ればルイーダさんの事も
聞いておいて貰えると有難い……」
「オーケイ、分った!このニード様がばっちり伝えて
おくぜい!さ、戻るか、ジャミ公!」
「ああ……、急がなくちゃな!」
「それにしても、土砂崩れはオレらでどうにかするのは
無理だったけどな、へへ、村の連中喜ぶぞお~!」
「モン~!」
ジャミルとニード、そして新たに加わったお騒がせ
悪戯モンスターモーモン。2人と1匹は一路、吉報を
伝えるべくウォルロ村へと帰省する。
ウォルロ村……
「あ、ニードさん、ジャミル、おかえりなさ……、!?」
「おう、おかえり!ビッグニュースだぞ!」
門の前で守り番をしつつ、2人の帰りを待っていた子分は仰天。
原因は勿論……。
「モン~!」
「……ニードさん、ただいまでしょ!しかも何なんですか!
何でモンスター連れてるんスか!」
「こまけえ事はいいんだよ!それよりさ、聞けよ、オレらの話をさ!」
「途中でダチになったんだよ、ま、こいつはモンスターだけど、素で
人間を襲う様な事はしねえからさ、安心してくれよ」
「はあ……」
「モン、おろしくですモン、モーモン、お話出来るんです、モン」
「おろしく……、宜しくだろ……」
ジャミルにそう言われても、ふよふよ宙に浮かんでいる変な
モーモンを見て、子分はまだ何が何だか分からんですよと
言った感じである。取りあえず、悪い奴ではなさそうだと
言う事は子分は理解した。
「まあいいか、んで、土砂崩れの方はどうだったんですか?
勿体ぶらないで早く教えて下さいよ!」
「待てよ、とりあえず親父に報告してからだ、行くぞ、ジャミ公!」
「へいへい、んじゃ、またな!」
「あっ……」
2人と1匹は村の中へと突っ込んで行った。そんな騒がしい皆様を
見つつ、子分が呆れる。
「話聞けって言ったり、報告は後って言ったり、んっとに、
落ち着かねえなあ、あの人も、ま、ニードさんの言う事だから、
期待しないで待ちますか……」
……村の中を走る2人。ふと、いつの間にかリッカの経営している
宿屋近くまで来ていた。
「珍しいな、今日は灯りが付いてる……、久々のお客さんかな……」
大地震の後、ぱったりと客足が途絶え、リッカは仕事はお休み
していた筈であるが、今日は珍しく宿に灯りが付いているのである。
「本当だ、よしよし、まずはっ!ふふっ!」
ニードは悪戯っぽい含み笑みを浮かべ、リッカの宿屋へと
走って行った。
「おい……、たく、しょうがねえなあ~……」
「しょ~がねーニードモンなあ……」
「おい、あまり余計な言葉真似しなくていいんだよ……」
「モン?」
モーモンに頭を抱えながら、ジャミルもニードの後を追い、
宿屋の中へ……。
「いらっしゃいま……、あっ、ジャミル、それに……、ねえ、
まだニードとつるんでるの?仲が良くなったのはいい事だけど、
ジャミル、疲れない……?」
客が来て漸く店を開けたのかと思いきや、……中はいつも通りの
閑古鳥だったのだが……。
「言ってろ!その内お前もオレに感謝する事になるんだからよ
!へへん!」
「……何がよ、それよりジャミル、さっきからずっと不思議そうな
顔してるね、私がお店開けてるの珍しいって顔してるでしょ……」
「!えっ、い、いや、その……」
「いいのよ、ふふ!例えお客さんが来なくても、これは心構えなの、
何時、お客さんが来てくれてもいい様にね……」
「はあ、お前、マジで偉いなあ~……、頭が上がんねえわ……」
「それよりも……、あれ?その子……」
「モンー!」
リッカはジャミルの側でちょろちょろしているモーモンに気付く。
ジャミルはモーモンと出会った経緯をリッカに説明すると、
すぐにリッカは納得した。
「そうだったの、じゃあ自己紹介、私はリッカ、此処の宿屋を
経営してます、宜しくね、モンちゃん!……お客さんはそんなに
来ないけどね、あはは……」
「モンーっ!のろしくモン!」
「……宜しくだっつーの……」
リッカは微動だにせず、すぐにモーモンと仲良くなる。彼女の
優しい性格にジャミルは心から感謝するのだった。
「でも、中にはびっくりしちゃう人もいると思うから、私が
この子の事、後でちゃんと村の皆にも説明しておくね、心配
しなくていいよ!」
「助かるよ、何から何まで……」
「よしよし、んじゃあ、次はオレの親父んとこだな、じゃあ、
またな、リッカ!」
「おじや!おじやモン!」
「あっ、……おいっ!ったく、じゃあ、又夜にな……」
「うん、行ってらっしゃい……」
リッカに見送られながら、ジャミル達は再び村の中を走り回る。
そして漸くニードの実家、村長の家へと辿り着く。しかし、この後、
とんでもない事になるのをこのアホ2人は知らず。
「……成程な、セントシュタインの兵士達がもう間もなく、
土砂を取り除いてくれる訳か……」
「ああ、この事を知ったら村の連中も安心するぜ!いやあー、
我ながらいい事をしたよなあ、なあ、ジャミル?ははははっ!」
「ん、んー?……ああ……」
「そうか……」
ニードは得意げに村長に峠の道へでの出来事を説明していた。
これで親父も自分をきっと見直してくれるだろう、そう期待に
溢れ、ワクワクしていたのだが……。
「そうか、だが……」
「……?」
村長は2人に近寄って行く。……しかし、その顔に笑みはあらず。
〔げんこつ×2〕
「いっ、でええええーーっ!!」
「……いてええーーっ!!……こっ、このっ!」
飛んできたのはゲンコツであった。……ジャミルまで巻き込まれ、
Wで殴られる羽目に……。
「く、糞親父イイイイーーっ!偉業を成し遂げたオレらに
何すんだーーっ!」
「……何が偉業か!2人だけで峠に行くなど危ないに
決まっておろうが!この悪ガキ共めが!!」
「で、でも……、オレらが峠に行かなきゃ分かんなかった事だぞ!」
「別に知らなかろうが、道が繋がればおのずと分った事だ、
……命を危険に晒してまで手に入れる程の情報では無い……、
だからお前達はバカだと言っておるのだ!」
「……バ、バカ……?ち、畜生……」
「俺もかよ……、はあ~……」
項垂れるバカ2人。特にニードはこれで英雄になれると思い、
有頂天でいた。だが、村長を甘く見過ぎていたのである。
「……ギョモンーっ!おじや怖いモンーっ!シャーー……」
「……こ、こらっ!」
ジャミルは興奮して大口を開けようとしたモーモンを慌てて制した……。
「君も……、そんなふざけたぬいぐるみで遊んでないで、
いい加減に仕事を探す努力をしたらどうだ?……いつまでも
うちのボンクラと遊んでないで……」
「……」
「ジャミルう~、……モン……」
「いいのさ……、別に、気にしてねえから……」
「でも、お顔に何かスジが浮かんでるモン……」
「……」
顔の青筋。……明らかにジャミ公がブチ切れている証である。
「畜生……、も、もう一つ話があんだよ、セントシュタインの
兵士から伝言を預かったんだよ、ルイーダってねーちゃんが
この村へ向かったそうなんだけど、行方不明らしいんだ、
探してくれって頼まれてんだ……」
「……その話……、本当なの……?」
「リッカ……?」
「リッカっ!」
……聞き覚えのある声に後ろを振り向くと……、
いつ来たのか、リッカが立っていた……。
「偶々、用があって此処を通り掛ったら、大声が外まで聞こえて……、
気になったから、つい……、それよりも……、ルイーダさんが
行方不明って、本当なの……?」
……村長はウォルロ村の 『バッカモーン!!』 ……かも、
知れない。
「ああ、確かにセントシュタインの兵士がそう言ってたのさ、な、
ジャミル」
「うん……、らしいぜ……」
ジャミルがちらっとリッカの顔を覗うと彼女は何だか不安そうな
表情をしている。
「そう言えば、リッカ君はセントシュタインの出身だったね、
知り合いの方かね?」
「そうだったのか……」
「うん、ジャミルも、黙っていてごめんね……、父さんの
セントシュタイン時代の知り合いに、確かそんな名前の人が
いた筈なんです、もしかしたら、父さんが死んだ事を知らないで、
会いに来たのかも……」
「成程……、しかし、探してやるにも手掛かりが無くては……」
「親父、そういや、ルイーダって姉ちゃんはキサゴナ遺跡経由で
こっちに向かってたんじゃないかって兵のおっさんが言ってたぜ……」
「……それが本当なら我々の手ではあまりにも危険過ぎる……、
リッカ、心配だろうがあまり思いつめんようにな、今日の処は
ジャミルを連れて帰りなさい」
「はい……、分りました……」
「……オホン、儂はこれからこのバカ息子をたっぷりと説教し、
罰を与えなくては……」
「うええええっ!?……親父ィ~、……そりゃねえぜえ、
とほほのほ~……」
ジャミルはどうにか解放されそうであるが、ニードはまだまだの
様である……。
「はあ、じゃあ俺らもう帰るけど、これ、まだらクモ糸、妹さんに
渡してやれよ、約束だから」
「おう、サンキュ~……、もうどうでもいいや、好きにしてくれ……」
ニードは力なくジャミルからブツを受け取る。もう今日の元気は無く、
彼は魂が抜け掛かっていた。そんなニードを心配しつつも、ジャミル達は
村長の家を後にする……。モーモンを連れ、ジャミルはリッカの家へと。
……村長から食らったゲンコツのコブの手当てを受けていた……。
「……いってえっ!」
「我慢するのよ、男の子でしょ?はい、終わりっ!それにしても、
外に出たって聞いた時はびっくりしちゃったよ、でも、ジャミルって
強いんだね……、私が思っていたよりも、ずっと……、モンスターは
大丈夫だったみたいだけど、……代わりに村長さんの所で……、
く、くすっ!」
「……笑うなよ!」
リッカが吹いたのを見て、ジャミルがブン剥れる。
「ご、ごめん……、はあ……」
「ん?」
「何でもない、それより夕ご飯にしようか、モンちゃんの分も
あるからね、もう少し休んだらまた食事運ぶのお手伝いに来てね!」
「ああ……」
モーモンはいつの間にか、リッカがそう呼ぶ為、モンと名前が
定着しそうになっていた。リッカは救急箱を下げてジャミルの
部屋から出て行く。何となく、彼女の様子がおかしいのがジャミルは
気になっていた。ルイーダの話を聞いた時から、明らかに変だった。
心配なのだろうが……。
「モン、人間のご飯食べるのはじめて、楽しみモン~!」
「おい、お前は気楽でいいなあ、……この四角座布団顔!」
「モンっ……!」
そして、居間にて夕ご飯。今日のメニューは特製パンケーキと
ミルクスープ。
「頂きます、モンっーー!!シャアーーーーっ!!」
「うわあ……」
モンは大口を開け、パンケーキをぱくりと一飲み。その凄さに
ジャミルもリッカも釣られて一緒に大口を開けた……。
「おおお、美味いのう、美味いのう、わしゃ、これでいつ、
天国へ召されても大丈夫じゃあ~……」
「お爺ちゃん、変な事言わないのっ、ほらほら、またぽろぽろ
溢してるよ!」
「ありがたや、ありがたや……、処で、今日の夕飯はまだかのう?」
「……今食べてるでしょ、お爺ちゃん!」
「おおお~……、お?ありがたやありがたや、これも
守護天使様のお陰じゃ~……」
「……」
ジャミルは爺さんが段々ボケてきてるのでないかと
少し心配になった。
「あのね、ジャミル……」
ふと、リッカが食事の手を止め、ジャミルの方を覗う。
何か話したい事が有る様である。
「村長の家にいた時からなんか変だったなあ、いいぜ、
俺でいいなら何でも言ってみ?」
「うん、もし良かったらでいいんだけど、……キサゴナ
遺跡へ、頼めないかなあ……、私やっぱり行方不明に
なっているルイーダさんの事が心配で……、だ、駄目……、
ジャミルを危険な目に遭わせてしまうもの、ごめんね、
変な話して、今の話は忘れてね……」
「いや、俺なら……、あ……」
しかし、リッカは立ち上がり先に自分の分の食事の
後片付けを始める。彼女は碌に食事を食べておらず、
パンケーキが皿にまだ残っていた。
「はい、モンちゃん、私の分だけど、良かったらどうぞ、
あ、ジャミルは気にしないでゆっくり食べてていいからね!」
「頂きまーすモン!シャアーーっ!!」
「……」
リッカは後片付けに台所へ。……そして、一人で静かに
祈りを捧げるのであった。
「今、私達に出来るのはルイーダさんの無事を祈る事だけ、
……守護天使ジャミル様、……どうかルイーダさんを
お救い下さい……」
「……キサゴナ遺跡かあ、何とか動いてみるか……」
「おいしー!パンケーキってすっごく美味しいんだモン!」
「……」
次の日。ジャミルは早朝早く再び村長の家へ。
キサゴナ遺跡へ向かうのに、何とかニードにも力を
貸して貰えないか、頼もうと思っていた。
「何だね?私は今立て込んでおるのだよ、暫くは
バカ息子も謹慎だ……」
「悪ィな、ジャミル、オレ、昨日から頭ん中が
パニックでふにゃふにゃだよ、……当分家からも
出らんなくなっちまった、あーあ……」
ニードは昨日からまだ村長の説教が終わって
いないらしく、疲れ果てていた。村長も未だ
不機嫌極まりないらしく、ジャミルの顔を
見ただけで眉間に皺を寄せた。……これでは
とてもニードに応援を頼むのは無理っぽい。
仕方なしに今回は一人でいくしかなかった。
「……駄目だったモン?」
「ああ、仕方ねえよ……、ま、何とかなるさ!」
「おじやってやっぱり怖いモン……」
「……」
「そうだったのか、じゃあ、今回はジャミル一人で
行くのか、気を付けてな……」
ジャミルは再び村の正門の所へ。門の所には相変わらず
ニードの子分がいたが、これから一人でキサゴナ遺跡へと
向おうとしているジャミルを心から心配してくれていた。
「これ、使ってくれよ……」
「薬草……、いいのか?」
「ああ、アンタはニードさんを守ってくれたからな、へへ、
こんな事しか出来ねえけど、頑張れよ!」
「ありがとな!助かるよ!」
「……馬鹿でほっとくと何しですか分かんなくて、本当、
疲れる人だけど、オレ、あの人の事、大好きなんだよ……」
「俺も、最初の時は嫌なタワシ頭野郎だって思ってたけどさ、
結構いい奴だよな……、バカだけどよ……」
……自分の事を棚に上げ、ジャミルはそう言って笑いながら
子分から薬草を受け取る。子分も嬉しそうであった。
「さ、行くか!キナクサ遺跡へ!」
「おいおい、キサゴナだよ、……本当に大丈夫か?」
「ジャミル、モンも付いてくモン、一人じゃないモン!」
「おう、そうだった、お前もいたんだな、よしっ、
行くぞーっ!」
「モンーっ!」
……頼もしい?相棒と共に、ジャミルは子分に見送られながら、
キサゴナ遺跡へ向かう。
「……ところでジャミル、キサゴナ遺跡って何処だか
場所分るモン?」
「え……、っと、それはっ!」
勢いよく村を出てきたは良いが、肝心の遺跡の場所が
分からないんである。モンに突っ込まれジャミルは焦る。
「……此処から多分東の方だと思うモン」
「そ、そうか!おま、詳しいな!よし、イクゾおーっ!」
「ジャミル、そっち東じゃないモン!どっち行くモン!
……そっちは西モンーーっ!」
モンに突っ込まれ捲りながらも、ドジジャミルはどうにか
目的の場所、キサゴナ遺跡へ。遺跡はウォルロ村から東南の
方角にあった。道中どうにかズッキーニャ辺りは遭遇すると
勝手に逃走してくれる様になり、この辺の敵では安心して
戦えるぐらいの適応のLVになっていた。
「はあ~、此処か……、よ、よしっ!」
「ダンジョンチャレンジ頑張るモン!」
モンはいるが、今回はニードもいない、この世界では初めての
ジャミル一人での冒険となる。新しい場所なので、当然新規
モンスターも出て来るのが当たり前。気を引き締めて目の前の
遺跡の扉を開いた。
「……六角形の形のダンジョンなのか?変わってらい……、お?」
入り口から真っ直ぐ進むと、更に目の前には石碑。しかし、
その先の道は壁があって進めず。
「……これ以上の魔物による犠牲を出さない様、この先の道を
封じるって書いてあるな……、困ったな……」
「ジャミル、うしろうしろ、誰かいるモン!」
「ん……?」
立ち往生し困っていると、モンが騒いでいる。振り向くと
半透明の人間が後ろに立っていた。初老の商人風の男であった。
明らかにもうこの世の人物ではないと言う事が分る。
「お前にも見えるのか?あのおっさん……」
「見えるモン!あっ!」
初老の男はふらふらと別方向の道の方に移動しふっと消える。
……まるでこっちだと案内しているかの様だった。
「此処でボケッとしてても仕方ねえ、おっさんが消えた
あっちの方行ってみっか」
「モン」
ジャミルは男が消えた左の方の道へ。……突き当りの
行き止まりの部屋の奥に戦士の像が設置してある。
「……その像の……背中に……」
「え?あ、ああっ!?」
再び先程の幽霊の男が現れ、言葉を一言残し、また
ふっと消える。
「ん~、成程、ここんとこ背中の部分にボタンが……」
ジャミルはボタンをぽちっと押してみる。……すると辺りに
凄まじい音が響き渡る。何処かで何か扉が開く様な音が
響き渡った。
「さっきの処モン!」
「よしっ!」
急いで先程の石碑があった場所へと戻ると、道を塞いでいた
石碑が動き……奥の部屋へと進める様になっていた。
「これで先に進めるな……、けど、ルイーダって奴は一体
どうやってこの先に進んだんだ?」
先へと進むと二つの階段が。取りあえず右の方の階段を
下りてみる。この階からモンスターの姿もちらほらと
見え始める。新規でまず最初にお目見えしたのは笑い袋。
「ケケケケケ!バカケケケー!」
「……笑ってんじゃねえよ、よし、ここでの最初の腕試しっ!
モン、下がってな!」
「モン!」
……笑うから笑い袋なのだが。ジャミルはモンを後ろに
下がらせ、銅の剣を構える。が、笑い袋が、魔法使い系の
一つ目モンスター、ピエロの様なタラコ唇の見習い悪魔を
召喚、ジャミルに向かってメラを放出してきた。ジャミルは
構えていた剣で慌ててメラをガードする。
「危なねえなあ、このやろ!ちっ、……魔法使う方が厄介だな……、
しかも、このピエロ……、見てると何か思い出すし!腹立つ!」
どっかの糞ピエロ:やあ、呼んだかなあ~?リクエストあれば
何処でも出るよーっ!
「ジャミル、モンもお手伝いモン!……おならプーモン!
昨日食べたパンケーキのにおい!」
モンが加勢してくれ、笑い袋に向かって一発噛ます。
言葉だけだといい香りの様だが、嗅がされたニオイに
笑い袋はひっくり返る。しかし、とんでもない技を
学習してしまった天才モーモンちゃんであった。
「……俺知らねえし!とにかくっ、ええーいっ!取りあえず
アンタはお黙りっ!」
銅の剣を振り回し、見習い悪魔に会心の一撃!どうにか
モンスター共を大人しくさせた……。
「ふ~、疲れんなあ、どうせボスがいるんだろうし、
辿り着くまで何とかMPも温存しときたい処だよなあ~……」
「ジャミル、また出たモン!」
次から次へと……。今度はメタッピーとドラキー軍団である。
「ま、この程度なら、魔法使われるよりずっと楽さ、LVも
上がってるしな、よし、どんどん突破だあーっ!」
「モモモモンーーっ!」
ジャミ公とモンはどんどこモンスター達を蹴散らしながら遂に
ダンジョンの最深部へと突入する。最深部内では、瓦礫に
足を挟まれ怪我をしており動けないらしい青い髪の女性の姿が……。
「おーい!アンタがルイーダさんかあーっ!?」
「……だ、誰!?」
女性は駈け込んで来たジャミルの姿に顔を上げる。少々びっくり
している様子でもあった。
「確かに私はルイーダだけど……、珍しいわね、こんな所で
人に会うなんて……」
「やっぱりアンタがそうか!セントシュタインの兵に
頼まれたんだ、ウォルロに向かったまま行方不明の
ルイーダって女性を探してくれってな!」
「助けてくれるのは嬉しいけど、あなたみたいな子供が……、
本当にびっくりだわ……、そ、そんな事どうでもいいわ!
ねえ、悪いけどこの瓦礫をどけて欲しいの、ケガは大した
事はないんだけど、瓦礫に足を挟んでしまって……、
動けないのよ……」
「俺、本当は子供じゃねえんだけど、この話じゃ
初期は天使って設定だし、年齢不詳だ……、よしっ、
今助けるからな、モン、手伝ってくれ!」
「モンっ!」
「でも、気を付けて!あいつが戻ってくるかも知れないわ!」
「え?あいつって……、うわ!?何だっ!?」
「モンーーっ!?」
ルイーダを助けようとルイーダの側へ駆け寄ろうとした
ジャミルの前に突然の地響き。地面が揺れる……。そして、
地響きと共に、羊をムキムキに改造した様な容姿の巨大な
モンスター、ブルドーガが現れ往く手を妨害する。ジャミル、
この話では初めてのボス戦となる……。
zoku勇者 ドラクエⅨ編 3