zoku勇者 ドラクエⅨ編 2

解雇された天使~束の間の休息

解雇された天使~つかの間の休息

天使界を襲った悲劇から、数日が立ち……。地上でもあの
大地震による壊滅的被害をあちらこちらで受け、数々の影響や
災害を引き起こしていた。地上に君臨するモンスターの数も
此処最近ではあっという間に増え、その勢力を増していた……。
 
「……おい、其処のお前っ!何ぼーっとしてやがる!誰かと思えば、
この間の大地震で突然村に転がり込んだ得体の知れねえバカな
ジャミ公じゃねえか!」
 
「何だよ、お前のその変なツッパリ前髪、……タワシみてえ」
 
「なっ!?……こ、こいつっ!?」
 
地上へと墜落したジャミルは、此処……、自分の元・護衛担当地区の
ウォルロ村へお世話になっていた。ジャミルはウォルロ村の天使像の
前に突っ立って像を眺めていた処であった。自分の名前が刻まれている
天使の像を。
 
「何か、この像……、いいよな、前はそうは思わなかったけどよ……、
鉾高いわ……」
 
天使の力を失ってしまったジャミルは人間達にも自分の姿が見える様に
なってしまっていた。……頭の光輪も、背中の翼ももう無い。しかし、
幽霊などの姿は相変わらず普通に見えたり、会話したり出来る能力は
残ったままだった。
 
「はあ、何でリッカの奴……、こんな得体の知れない奴の
面倒見てんだよ!どっから来たのかも言わねえし、着てる服も
変だし!どう考えても怪しいんだよ!」
 
「俺知らねーもん!」
 
(……ボソ、きっと、リッカは奴が守護天使様と同じ名前だから
気に入ってるだけですよ……)
 
子分はニードの耳元でボソボソ、小声で話をしていた。
 
「フン、その名前も本当かどうか怪しいモンだな……、大方売れない
旅芸人が天使の名前を象って飯でもありつこうとしてんだろ、いいか、
あんまり調子に乗るなよ、よく覚えとけ、村で一番ど偉いのは……、
このニード様なんだからよ!」
 
……ジャミルは旅芸人の称号を得た……。
 
「へえ~、さいですか、ご立派でヤンスね!はー立派立派!」
 
しかし、ジャミルはニードに対し、余計牙を剥くのである。ニードは
ますますかちんと来る。
 
「いいか!この村で妙な真似しやがったら只じゃおかねえかんな!」
 
「……ニードさんはリッカがアンタを構うのが面白くねえのさ……」
 
「ば、ばかやろうっ!余計な事うなっ!あ!」
 
其処へ、オレンジバンダナの少女がずんずん登場。リッカである……。
リッカは腕を組んでニードの前に仁王立ち。……コラ!めっ!をする。
 
「ちょっと2人とも!……ウチのジャミルに何の用なのっ!?」
 
「別になんにも~?こいつに村でのルールを色々と教えてただけさ、
まるで常識ねえからな、じゃあ!」
 
「あっ、ちょっと待ちなさいよっ!ニードっ!……もう~!」
 
ニードは子分を連れ慌てて引上げて行く。その様子を見ていたリッカは
心底呆れるのであった。
 
「ごめんね、ジャミル……、ニードが失礼な事言って……」
 
「ん?別にいいよ、気にしてねえし、得体の知れねーのは本当だし」
 
「……どうしてニードってあんなに威張ってばっかりいるのかなあ……、
昔はもっと素直だったのに……、処で、ジャミル、もう出歩くなんて、
怪我の方はすっかり大丈夫みたいね……」
 
「ああ、お蔭でな、この通りピンピンさ、アンタの手当のお陰だよ!」
 
ジャミルはリッカの方を向いて笑う。リッカはジャミルの言葉を聞き、
笑顔を見せた。
 
「うん、……でも、あの時は本当にびっくりしたわ、滝の側で
大怪我をして倒れていたあなたを見つけた時は……、あの大地震に
巻き込まれたんだろうけど、……もう少し遅かったら……、本当に
危ない処だったのよ……」
 
「ああ、俺、悪運だけは強いからな……、へへ……」
 
「ふふ、じゃあ私、お家に戻るね、折角歩けるようになったんだから、
ジャミルも村の人に挨拶回りに行って来たらどうかな?あ、お夕飯までには
戻るんだよ、でも、あまり無理しちゃ駄目だよ、折角怪我が治ったんだから、
じゃあね!」
 
リッカはジャミルに手を振りジャミルもリッカを見送る。
……大地震の影響により、村を訪れる旅人なども減り、
リッカの宿は客足が遠のき、ますます経営が厳しい状況に陥っていた。
 
「折角助けて貰ったんだから……、何とかしてやりてえなあ……、
いっその事、こうなったら開き直って、マジでお笑い旅芸人として
生きて金を稼ぐか……」
 
ブツブツ言いながら歩いていると、いつの間にか村に有る
滝の近くまで来ていた。天使界から落下した後、どうやら
自分はそのままこの滝に落ちたらしい。そして、気が付いた
時にはリッカに助けられて……。
 
「……」
 
ジャミルはよそ者の自分を必死で助けてくれたリッカに今度は自分が
恩返しをする番だと思い、……本気でお笑い旅芸人としての仕事を
探そうと思った。まずは村の外へと行ってみるかと思い、村の正門の
近くまでやって来たのだが……。
 
「駄目駄目!あんたも知ってるだろう!この間の地震でモンスターの数が
圧倒的に増えてるんだ、現に此処最近では何人も旅人達がやられてる、
危なくて出歩けたモンじゃないよ!さ、帰んな帰んな!」
 
まずはバイトでもいいから仕事を探そうと外に出ようとしたが、
村の守り番に追い返される。日も暮れて来たので、仕方なしに
今日はリッカの実家に戻る事にした。……去り際に守り番の、
……全く守護天使のジャミル様は何してるんだ……、との、小声の
小言がジャミルの耳に聞こえた。
 
「あら、……リッカさんの処の……、確か、ジャミルさんでしたか?
お怪我の方はもう宜しいのですか?」
 
「あ、ども、へへ……、お陰さんで、すっかりこの通り……」
 
リッカの家に戻る最中に、散歩途中の教会のシスターと出くわす。
以前、この村で星のオーラを集めていた際に教会で見掛け、大切な
指輪を無くし、落ち込んでいたお婆さんを慰めていたシスターさんである。
 
「滝に落ちて助かるなんて、あなたはとても運がいいのね、そうね、
守護天使様と同じ名前ですもの、あなたにはきっと守護天使様が
いつも見守っていて下さるのね……」
 
「ハア、そうなのかな……」
 
ジャミルは項垂れながら、更に村の中を歩く。……と、突如、
一軒の家から外まで聞こえてくる程の凄まじい怒鳴り声が
聞こえてくる。リッカの家に戻ろうとしていたジャミルは一旦
足を止め、野次馬根性丸出しで、その家に近寄って行った。
そーっと玄関の前に立ち耳を澄ます……。怒られているのは、
ニード……。此処は村で一番大きな家の部類に当たるであろう、
村長の屋敷である。
 
「全くお前は!いい年こいて遊びほうけてばかりおって!
少しは宿屋のリッカを見習って村の為に真面目に働いたら
どうだ!?」
 
「……リッカは関係ねえだろ!オレはオレのやりたい事を
探してるんだ!やりたい事さえ見つけられれば、オレだって
真面目に働くさ、……多分……」
 
「ニードっ!……待ちなさいっ!」
 
ニードは村長から顔を背け、再び外へと逃げようと勢いよく
玄関のドアを開けた……。開かれた扉は近くにいたジャミルの顔に
思い切りぶつかる。
 
「いってええーーっ!!」
 
「……何だ?何かにぶつか……、ジャミルっ、お前こんなとこで
何してやがるっ!」
 
「いや、すげーケンカだなと思って、ちょっと……」
 
「くそ、いいか……、オレが親父に怒られてた事、リッカには
絶対言うなよ、……みっともねえからよ!……頼むぜ、絶対
言わないでくれよ!」
 
ニードはそう言いながらダッシュでその場を逃げ出す。奴には奴の
得体の知れない変なプライドと意地が有るんだなあ……と、思いつつ、
呆れて感心しつつ、逃走するニードを眺めていた。……と、再び玄関の
ドアが開き、ちょび髭のおっさん、……私が村長です、さんが顔を
ぬっと出した。
 
「君は……、確か……」
 
「ども!」
 
「君は確か、滝に落ちて大怪我をしてリッカに介護して
貰っていた……、余所から来た旅芸人さんだったかな?
……怪我が治ったのなら、いつまでもプラプラしてないで
働く事だ、やれやれ……、今時の若い者は……、どいつも
こいつも……」
 
村長は呆れた目でジャミルを見ながら静かにドアを閉めた。
……だからさっき、外へ仕事を探しに行こうとしたら
追い返されたんだよっっ!と、心で抗議し、ブリブリ
怒りながらやっとリッカの家へと戻る……。
 
「ただいま……」
 
「あ、お帰りなさい、ジャミル!待ってたよ」
 
「おお、お帰り……」
 
中に入ると、リッカとリッカの祖父が出迎えてくれる。
家の中からは温かいシチューの湯気がやんわり籠り、
いい匂いが漂ってくる。
 
「もう少しでシチューが煮えるから、そしたら夕ご飯の支度手伝ってね!」
 
リッカはシチューの様子を見に台所へ。その間に少し休ませて
貰おうとジャミルは居間に有るテーブル席の椅子に腰かけた。
 
「しかし、滝に落ちたお前さんをリッカが連れて来た時は
心底びっくりしたわい、わずか数日の間に大怪我もすっかり
治ってしまうとはのう、いやはや、若いとはいいのう……」
 
「……」
 
リッカの祖父はしみじみと呟きながらお茶を啜る。やがてリッカが
台所から戻って来る。
 
「お待たせ、うん、丁度シチューもいい感じだったよ、ジャミルが
帰ってくるタイミングがぴったりだったんだね、さあ、ジャミルも
手伝って、お皿を並べて!」
 
「へーい!」
 
先程座ったばかりだが、席を立ち、ジャミルも急いで手伝いに台所へ。
シチューを皿に盛りつけ、テーブルへと運んで並べた。
 
「ごめんね、お肉は無理だし、もう少しお野菜が有れば……、
でも、地震の災害の影響で村の畑のお野菜もみんな不作で増々
手に入り難くて……、いつも通りのお芋だけのシチューだけれど……、
さあ、召し上がれ!」
 
「おう、んじゃ、いただきまーすっ!」
 
ジャミルはシチューを口に入れる。……見た目は一見淋しげな
シチューではあるが、料理上手のリッカの手に掛かれば、中身は
ジャガイモだけでも滅茶苦茶美味であった。
 
「んー、うめえっ!最高っ!」
 
「ふふ、有難う、ジャミルは本当に美味しそうに食べてくれるから
嬉しいよ!」
 
「俺、正直だからよう!んーと、お代わりしていい?」
 
「勿論だよ!沢山食べてね!」
 
「うむうむ、あの幼かったリッカが……、こんなにも美味いシチューを
作れる様になって……、立派になったのう、……わしはお前の祖父として
本当に鼻が高……」
 
「お爺ちゃん、食べながら寝ちゃ駄目よ、ほらほらほら!溢してるよっ!」
 
「zzzzz……」
 
美味しい夕食も済み、やがて就寝時間となり、今日も一日が
終わる。出来るなら……、もう少し、このまま何事も起こらず、
ゆっくりしていたいと、ジャミルは床に就きながら、そう思うので
あった。そして、いつの間にか眠ってしまい、やがて朝がやって来る……。

「……ジャミル、ジャミル、ちょっと起きて……、朝だよ……、
あなたにお客さんなんだけど……、その……」

「……う、うう~……、……客?」

翌朝。ジャミルが使わせて貰っている部屋にリッカが起しに
やってくる。眠い目を擦り擦り窓の外を見る。何だ、もう夜が
明けちまったのかと思いながら欠伸をし、リッカの方を見た。
……彼女は少し困っている様子。

「何かありました……?」

「うん、その……、ニードが訪ねて来てるの……、ジャミルに……」

「俺にかい?」

「うん……、追い返す訳にもいかないし……、取りあえず
会ってあげて欲しいの……」

「了解」

リッカは部屋を出て、待たせているらしきニードの所へ戻って
行った様に見えたが。。仕方なしにジャミルも服を着替え、
支度を始める。……村中で彼がお笑い旅芸人だと言われ始めた
原因の一つの奇妙な天使の服に着替える。着替え終わった頃、
廊下で待ってたのかリッカがまた直に部屋に顔を出した。

「あの、あんまりニードが変な事言う様なら、場合によっては
チョップ3回まで許すわ、嫌な要件なら遠慮しなくていいのよ!」

「ああ……」

ジャミルは部屋を出て玄関へ向かう。……確かに玄関には
変なタワシツッパリ頭……、ニードが待っていた。しかし、
彼の態度は明らかに昨日までジャミルに悪態をついていた
時とは違う表情で、やって来たジャミルを見るなりニヤニヤ
し始めた。

「……あう」

「ようジャミル!何だよ、そんな意外そうな顔すんなよ!ちょっと
お前に話があってよ!」

「まさか……、ヤ、ヤラナイカ……!?じゃ、ねえだろうな!」

ジャミルは警戒し、ニードから2、3歩、後ずさりする……。

「何だよ、何言ってんだ?お前、本当に面白え奴だなあ、
此処じゃなんだからちょっと外に出ようぜ、ついてきてくれ!」

仕方なしにジャミルはニードの後を追って外へ。……連れて
行かれた場所は、リッカの家の裏であった。

「此処なら……、リッカにも聞こえねえだろ、んじゃ、改めて話すよ、
話しっつーのは他でもない、お前も知ってるだろ?峠の道の事だよ」

「ああ、確か……、地震で起きた土砂崩れの影響で、道が
塞がっちまってるとか……」

ニードにそう言われ、ジャミルはやっと思い出した。なのに、
自分は昨日、何も考えず村から出て仕事を探しに行こうと
していた事を……。

「そう!あの道は、このウォルロ村と他の土地を繋ぐ大切な
懸け橋なんだ、お陰でリッカ……、だけじゃなく、この村の皆が
迷惑してんだよ」

「……」

他の土地からこの村への客足が減ったのは、確かに峠の道が
塞がっている所為でもある。モンスターの脅威が増したのも
原因の一つではあるのだが。

「そうか……、あそこが何とか通れる様になれば、またこの村にも
客が増えるのかなあ……」

「そう!其処でこのど偉いニード様は考えた!オレがその
現場まで行って何とかしてやろうと思ってな!そうすりゃ親父は
オレの事見直すだろうし、リッカも、……村の皆も
大喜びで大助かりってワケさ!」

「……そうか、お前も只のタワシツッパリ頭じゃなかったんだな、
偉いな、頑張れよ、じゃあ……」

「!ちょ、ちょいお待ち!まだ行くなよ、話は終わってねえんだから!」

「……ぐえ!」

ニードはその場から去ろうとしたジャミルの首を掴み後ろから
思い切り引っ張った。

「何だよ!」

「……ただ、この完璧な計画にも少し問題があってな、
大地震の後、魔物が頻繁に出る様になっちまっただろ、
……危なくてしょうがないんだよ、と、まあ、そう言う訳で、
お前にも一緒に峠の道まで一緒に行って貰いたいんだよ、
……旅芸人てのは、その、結構武芸とかも得意なんだろ?」

……どっからそんな情報持って来た……、と、思うジャミ公。
まあ、天使の力を大半失っているとはいえ、彼は普通の人間よりは
よっぽど戦えるが。

「要するに私はヘタレですって素直に言えこの野郎!
そうすりゃ付いてってやるよ!」

「……何だとうう~!?誰がヘタレだっ!このお笑い糞芸人めっ!」

まあ、リッカの為になるのならいいかと思いつつ。ジャミルは
仕方なしに再びニードに向けて口を開いた。

「分ったよ、俺も怪我完治後の肩慣らしになるし、身体が
なまっちまってるからな、いいぜ」

「ホントかっ!?よっしゃよっしゃ、流石だぜっ、そうこなくっちゃな!
よし、オレは今からお前の後ついてくからな!あ、この事は村の誰にも
言うなよ、オレ達2人だけの企業秘密だからな!頼んだぜ、
相棒!カメヤマ君!」

「……誰がカメヤマか!しかもその名前相当古いっての、……たく!」

ニードはニヤニヤ笑いながら図々しくジャミルの肩に手を回してくる。
……本当に昨日と偉い態度の変りようである。しかし、峠の道に行くのは
内緒でも、出掛ける前に一度リッカの家に戻って報告する必要がある。
……こんなに仲良しになってしまったらしき……。

「どうしたのよ……、ニードとジャミルが一緒に行動してるなんて……、
何だかまた何かの前触れみたいで怖いわ……」

「そう言う事言うなよお!いやあ~、こいつ、話して見たら意外と
いい奴でさあ~、そんなわけで、オレ、もっとこいつの事知りたくて、
更に分り合う為に一緒にいるのさ!」

「……いてててっ!」

ニードはジャミルと肩を組んで肩に手を回したまま、実にわざとらしい
笑顔を作るとジャミルの肩をバシバシ強く叩いた。

「ふう~ん、何企んでるのか知らないけど、仲良くなったのならいいか、
でもジャミルは怪我の病み上がりなんだからあまり無茶させちゃ駄目だよ!
ジャミルも無理しないんだよ!」

「へへ、分ってら~い、さ、行こうぜ、相棒!改めて村回りだ、
色々案内してやるよ!」

肩を組んだまま、ニードはジャミルをそのまま再び外へと連れ出す。
……そんな2人を、不安そうな……、でも、仲良くなれて良かった様な……、
不思議そうな顔でリッカが見つめていた……。

「さて、んじゃあ、バトルの準備だ、まずは村の道具屋で
武器を買うぞ!」

「武器なんか売ってんのかよ……」

取りあえず一応護衛用の武器は売っていたが、現時点では銅の剣しか
買えず、ニードの分も含め、2本購入。ま、何もないよりはマシかと
自分を励ましてみる……。

「よし!準備も万端、後はっと……」

「……万端ねえ~……」

後は村の門の処にいる守り番をどうにかすれば村から
出られる筈である……。

「……駄目駄目!駄目だっ!村の外には危険な魔物がうようよ
してるんだよ!絶対に通さないからな!さあ早く戻れ!」

正門の処にいたのは、昨日ジャミルを追い返したおっさんの
守り番とは違う、ニードの子分であった。どうやら多少のバイト料で
門番をしているらしい。

「……なーにスカした事言ってんだよ!オレ達は此処を出るんだよ、
さ、どきやがれ!」

「あ、ああっ!?ニードさんっ!?」

子分はいきなり現れたニードにオロオロ……。困って慌てだす……。

「何で……、ジャミ公とニードさんが一緒に行動してるんですか……?」

「うるさい奴だな!偶々峠の道に行く用事が被っただけだよ!なっ!?」

「……一応、そう言う事にしといてや……、いってっ!」

ニードは再びジャミルの肩に腕を回し、子分に向かってピースピース。
……しかし、足もしっかりと踏みつけながら……。

(この……、糞タワシ頭め……)

「はあ、……でも、今外に出るのは本当に危ないですよ……」

「んなこたあ百も承知だよ!いいから早く其処どかないと、
しっぺの刑だぞ!」

「……分りましたよう~、はあ、アンタも大変だな……、ジャミル、
ニードさんの事、くれぐれも頼んだぞ……、アホで困るだろうけど……」

「了解さあ……」

「おいっ!其処っ、何こそこそ話してんだっ!?」

アホなのはジャミルも同じではあるが。少なくともニードよりも
遥かに腕は確かな為、バトル面ではまず心配は無い。
……何はともあれ、漸く村の外へと飛び出した珍コンビであった。

村の外へと繰り出した2人。モンスターが増えていると
言う事で、やはり簡単には峠の道までは簡単に進ませては
くれない。まずはシリーズ毎度お馴染のスライムから
邪魔をされる。幸い、ニードはそれ程足手纏いにならず
何とか戦えるのが唯一の救い。まあ、まだこの周辺は
敵が弱い方だからかも知れないが。
 
「ふう……、やっぱやれば出来るんだな、オレだってよ、
ふふ、ふっ……、ざまあみろ糞親父……、……あいてっ!!」
 
岩陰に隠れていたリリパットがいたらしく弓を放つ。弓は
ニードの髪の毛の先端のタワシ部分を突き抜けデコに
ぷすっと命中する。
 
「何やってんだよ、バカだなあ!ほれっ、デコ出せ!」
 
「……す、すまねえ……」
 
ジャミルはニードのデコから刺さった弓を引き抜こうと
してやるが……。
 
「あいてっ!?……の、野郎っ!!」
 
「♪ニャ!」
 
後ろからズッキーニャの奇襲である。ズッキーニャの槍は
ジャミルのお尻を突き刺す。ズッキーニャはジャミルの
お尻に槍を突き刺したまま逃走。怒り狂ったジャミルは
ニードのデコに刺さった弓を抜いてやるのを忘れ、我も
忘れてズッキーニャを追掛けて行った。
 
「いでー!いでええようーー!!誰かこのデコの弓
何とかしてくれー!」
 
「♪ニャ~!」
 
「てめっ、待てーっ!この野郎ーーっ!!」
 
「……いでえ、いでえよううう!!」
 
ニードはデコに、そしてジャミルはお尻に槍が……。本格的に
始まったバトルは初回からてんやわんやである。それでもどうにか、
一旦終わった。
 
「はあ、ズッキーニャの方は何とかブン殴ってやったけど……」
 
「リリパットはまだまだオレ達LV低いか……、やれやれ……、
な、何見てんだよ……」
 
ジャミルはニードの顔を覗き込む。早くも疲れてしまっているのか
気になったのである。
 
「今日はよそうぜ、日も暮れて来たしあんまり遅くなるとリッカも
心配するし、お前の親父もギャーギャーうるせーだろ、ま、明日また
朝早くから動きゃいいんだから、焦る事ねえだろ……、ほれっ!」
 
「あ、ああ、わりィ……」
 
ジャミルはホイミをニードのデコに掛けてやる。少しデコの腫れが
収まった様子。
 
「分った……、今日は村に戻るか……、てか、お前、本当に
いい奴だな……、いや、少しだけだぞ!そう思ってやるのは!
アリの鼻糞程度だ!……わ、分ったか!?」
 
「……分るかっ!第一アリに鼻糞なんかあるかっ!糞タワシ!」
 
「わかんねーぞ!もしかしたらあるかもしんねーじゃねえか!
糞ジャミ公!」
 
2人は罵り合いながら村への帰り道を急ぐ。何だかんだ言って、
似たモン同志のコンビは徐々に友情を深めつつ……、あった。
そして、再び村の門前。子分は早くも戻って来た2人を見て、
呆れるやら何やらだったが、ニードはジャミルにキズの手当てを
して貰った事を伝えると、子分は心底喜び、ジャミルに何度も頭を下げた。
だが、又明日も懲りずに出掛ける事も伝えておくと、再び呆れた。
 
「じゃあな、ジャミル、又明日、門の所でな、待ってるからよ」
 
「ああ、寝小便すんなよ!」
 
「……するかっ!」
 
ジャミルもリッカの家へと戻るが、リッカは全身汚れて真っ黒の
ジャミルを見て大騒ぎであった。
 
「すぐにお風呂沸かすから入って!早く早く!もう~っ、
ニードと一体何して来たの!?」
 
「ん~、内緒!……芋掘り!」
 
「……はあ~?」
 
リッカは呆れるが、ジャミルの何だか嬉しそうな顔を見て、
本当に2人が仲良くなったのを確信し此方も何だか安心
するのであった。そして、翌日再び早朝。ジャミルは約束通り、
村の正門前へ。だが、肝心のニードが何時まで立っても
現れないのである……。
 
「来ねえなあ~、何やってんだ、アイツ……」
 
「もしかしたら、親父さんにバレてとっ捕まったのかもなあ……」
 
「……」
 
ニードの子分の言葉が気になり、ジャミルは村長の家へ。と、
家の前で何やら可愛い女の子とニードが会話しているのが見えた。
 
「お兄ちゃん、お願いよ……、お願い聞いてくれなきゃ、
お父さんに言うよ……」
 
「ちょっ、お前……、無理いうなよ……、第一……」
 
「妹……?妹なんていたのか……、お前」
 
「あ、ジャミル……、わり、遅れちまって、ちょっと困った事に
なっちまってよ……」
 
「あなたがジャミルさんですか?お噂は兄から聞いております、
初めまして、こうして直に会うのは初めてですよね、私、
ニードの妹です」
 
……兄貴とは似ても似つかない程、丁寧な対応の妹である。
妹はジャミルに向かってちょんと頭を下げた。
 
「……峠の道の件、こいつにばれちまってよ……、で、
条件付きで揺さぶられてさあ、言う事聞かないと親父に
ばらすって脅されてんだ……」
 
「……バカだなあ、ドジ!」
 
「うるせーよっ!……ううう~」
 
ニードは相当困っている。どうやら普段から妹にも
相当頭が上がらず立場の弱い兄貴らしい。
 
「で、その条件てのは何なんだ……」
 
「それ程難しい事は頼んだつもりはないんですけど……、
峠の道に向かうのならと思いまして、私もお使いを
頼もうと思ってるんです、此処から北東に向かった所に、
大きな蜘蛛の巣があるんですが、其処に有るまだらくも糸で
洋服を作ってみたいんです……、ちょっと採って来るだけ
ですもの、簡単でしょ?」
 
「……おい、簡単じゃねえぞ!あそこのクモは一体どれだけ
でけえと思ってやがるっ!」
 
「仕方ねえ、行くよ、いいぞ、採って来てやる、その代り
あんた、約束は守れよ、コイツの事、絶対に親父さんには
言わないでいてやってくれよ?」
 
「ジャミルっ!?」
 
「ええ、ええ!ちゃんと取って来てさえ頂ければ!私、ちゃんと
ジャミルさんとお兄ちゃんが帰って来るまで待ちます!」
 
「よし、大丈夫だ、交渉成立したぞ……」
 
「うえ~……、何でこうなるんだぁぁぁ……」
 
ニードは情けない声を出す。何とか妹は上手く巻いたものの、
余分なお使いが入り、又峠への道が遅くなってしまいそうである。
項垂れるニードを引っ張りながら、ジャミルは再び村の門を潜り、
外へと飛び出すのだった。
 
「行ってらっしゃい!……人には優しくよ、お兄ちゃん!」

2人は再び村の外へ。しかし、峠の道へと向かう前に、ちょっと
やる事が増えてしまった。まずは北東に有る巨大蜘蛛の巣に行き、
まだらくも糸を失敬してくるのである。
 
「あそこか?」
 
「ああ間違いねえよ、けど、悪い事は言わねえ、よそうぜ、
見ろ、あの巣の大きさを……、ハンパじゃねえだろ、うっかり
すると人間だって食っちまう程クモだって大きいんだぜ?
妹には何とか言って誤魔化……、あああ!」
 
確かに目の前には巨大な蜘蛛の巣。ニードが言う通り、
下手をすれば人間だって掛る程の大きさである。しかし
ジャミルは構わず蜘蛛の巣の上に乗る。……ジャミルが
乗ると、糸はギシギシ音を立て揺れる。まるで吊り橋の様に。
 
「バカっ!……も、戻ってこーい!ジャミ公ーーっ!!」
 
「お前は其処に居ていいよ、糸は俺が採って来るから、
……主がいねえのが幸いだな、よしっ!」
 
ジャミルはニードが叫んでいるのにも構わず、糸の上を器用に歩き、
更に中央部分へとたどり着いた。
 
「……ん?」
 
「モン~……」
 
中央付近で更に奇妙な生き物……、モンスターと遭遇。糸で
ぐるぐるに拘束され、唸っているモンスターである。外観は
まるで子牛の様なモンスター、モーモン。この付近にも出没する
モンスターで、ジャミル達も何回か遭遇していた。一見可愛らしいが、
人間など攻撃してくる時は恐ろしいモーションをするモンスターである。
実は人間を襲おうとしているのではなく、遊んで欲しいらしい説も
あるが本当かどうか謎。この拘束されているモーモンは更に一回り
体格が小さく、まだ子供であった。
 
「お前も捕まったのか、やれやれ……、待ってろ、うん、丁度いいや」
 
「モン~……」
 
「あああ、お、俺……、もう知らね……、ううう、守護天使様……、
どうかあの馬鹿ジャミルを、どうかどうかお守りくださいっ!」
 
ニードはハラハラしつつ、ジャミルが無事に戻って来るのを
待っている……。やがてジャミルは平気な顔をして戻って来た。
何だか変なお土産を抱えて。
 
「おおお、ジャミルっ、無事だったかあっ!……!?」
 
「おー、ただいま、ちゃんと糸も取って来たぜ、この通り……」
 
「……ぎゃああああーーっ!?」
 
「?」
 
ニードはジャミルが持って来たお土産……、を見て、
すっ飛びあがる。
 
「何だそりゃあーーっ!おま、おま、おまままま!
モンスターじゃねえかっ!は、は、は、早く捨てろ
おおおおーーーっ!!」
 
「モーモンて奴か?まだ子供だよ、うっかり巣に
掛かっちまったんだよ、それにこいつに糸が
巻き付いてたからついでに楽に採取できたのさ!」
 
「子供だって何だってモンスターはモンスターだぞっ!
早く何処かへ捨てろおおーーーっ!!」
 
「……だ、そうだ、ほれもういいぜ、早く帰んな、
もうドジ踏んでクモに捕まるなよ!」
 
「モンーーっ!……キシャアアアアーーーっ!!」
 
「ぎゃああああーーーーっ!!」
 
モーモンは子供とは言え、大口を開けると非常に凄い表情になり、
グロテスクな鋭い牙を見せた。これでも、お礼を言っているのである。
モーモンは尻尾ふりふり、そのまま何処かへ飛んで行った。
 
「はあ、良かったな、これで糸も取れたし……、おい?
ニード……?」
 
「……」
 
「……気絶してやがる、仕方ねえなあ~……」
 
ジャミルは近場に有った岩に腰掛け、ニードが意識を
取り戻すまでの間、少し休ませて貰おうと思った。道中で
LVも大分上がっており、これでどうにか今度は峠の道まで
行けそうである。……と、思っていた。
 
「おい、ジャミル……」
 
「何だよ!」
 
「モオ~ン」
 
「……おかしいだろ、おまええっ!何でそのモンスター、
ずっと後くっついてきてんだよっ!!」
 
「……」
 
「モオ~ン……」
 
ジャミルは後ろを振り返る。確かに飛んで行った筈のモーモンが
ちゃっかりと後をくっ付いて来ていた。
 
「駄目だろ、ほれ、帰れってば……」
 
「モ~ン、ごめんね……」
 
「……うわ!」
 
「ぎにゃあああーーーっ!コイツ今度は喋ったぁぁぁぁーーっ!!」
 
モーモン、今度は普通に喋り出した。ジャミルは落ち着いているが、
ニードは更にパニックに。
 
「黙っていてごめんねモン、実はお喋りできるモン、お空から、
キラキラ光る不思議なかけら落ちてきた、それがお口の中に
入っちゃったモン、そしたら急にお喋り出来る様になっちゃった、
でも、人間達皆怖がる、モーモンは人間の皆といっぱい遊びたいモン、
……でも、独りぼっち……」
 
「空から落ちてきた不思議な欠片ねえ、成程……」
 
「おーい、落ち着いてんじゃねえよっ!ジャミ公ーーっ!」
 
「シャアアアーーー!!」
 
「……ぎゃああーーーー!!」
 
「おい、あまり構うなよ、こいつ気が小さいんだからさあ~」
 
「何だと!?オレはヘタレじゃねえぞーっ!」
 
「しかし、欠片欠片……、空から落ちて来た光る欠片か……、
何か引っ掛かって気になるなあ~……」
 
それもその筈。モーモンが食べてしまったのは、地上に
落下した女神の果実のほんの小さい一欠けらの僅かな破片。
それでも口に入れたモーモンに異変を引き起こしたのである。
ジャミルは後後、地上の何処かへ散らばった、この女神の
果実を探す事が大きな使命となる。
 
「ま、いいか、来たいなら来いよ、但し、人間に牙向けちゃ
駄目だぞ!約束出来るか?」
 
「するモンー!」
 
「だ、そうだ、これからこいつも付いてくらしい、宜しくな……」
 
「宜しくな……じゃねえだろーっ!あわーーっ!」
 
プー……
 
誰かさんの影響で、モーモンはオナラ技を習得。
……してしまった……、のである。
 
「……ひぎゃーっ!……く、くっせえええーーーっ!!」
 
「へえ、お前、中々見どころあんなあ!」
 
「……何処がだよっっ!」
 
「♪モ~ン!」
 
こうして、可愛いお供も出来まして、今度こそジャミルとニードは峠の道へ。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 2

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SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-06

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