zokuダチ。セッション36
エピ 137・138・139
新しい変な日々 前編
その日、久々にジャミルの部屋にジタンが訪ねて来た。
しかし、ジタンは尻尾をビンビン立たせ、いつもより
機嫌が悪い様であった。
「おい、ジャミルっ!お前ダチだと思ってたのに、見損なったよ!」
「……はあ?俺、何もやってねーけど……」
「嘘つくなよっ!この間マンションに可愛い女の子達を
呼んだんだって!?このオレに黙って……、酷いじゃねーか!」
ああ、こいつはこの間のスイカのおすそ分けでユウ達を
呼んだ事を言っているのだと、ジャミルは理解したのだが……。
「けど、お前あの時、ダガーの買い物に付き合って、
出掛けてただろ、それに皆、外でスイカを食べたら、
中には入らないですぐに帰ったよ、改めて又挨拶に来たいって
言ってたけどさ……」
「かあ~っ!ずりいなあ、ちきしょう!何処で可愛い女の子達と
お知り合いになるんだよ~っ!お前ばっか、ずりいぞ、ずりいぞ!
何でお前ばっかりっ!」
……一人……、どうしても可愛いとは言えないのも一人
混ざっているのだが、ジャミルは何となく、ある実験を
試してみたい気分になり、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
「……お前、世界中の女の子と仲良くなりたいんだったよな、
女なら何でもいいのか?」
「当たり前だっ!この世のレディはすべて俺の友達だっ!」
ジタンはそう言うと、グッジョブポーズを取り、目を輝かせた。
「そうかそうか、んなら、今度の日曜日にでも呼んどいてやらあ、
楽しみにしとけ……」
「おお、やっぱりジャミルはオレのダチだなあっ、最高だぜっ!」
さっきと違い、コロリと態度を変えるジタン。
「んじゃ、オレはこれでっ、日曜日楽しみだなあ~!じゃあねえ~ん!」
「あいつがブウ子を見て、どんな反応すっか楽しみだぜ、ホントに
気に入ったのなら俺はジタンを尊敬するよ、男の中の男としてさ……」
るんたった状態で部屋を出て行くジタンを見つめながら
ジャミルが吹きだした。
……そして、日曜日……
「ユウ達があそびに来るんだあっ!楽しみだねえっ!」
「でも、何だかまだ信じられない、こっちの世界とあっちの世界が
合体しちゃったとか、又ずっと皆と一緒にいられるのは嬉しいけど……、
不思議な感じですよね……、ふう」
「だな、俺もまだ変な感じだよ、あいつらがマンションに来るとかさ……」
ジャミルはパーティルームでコーヒーを飲みながら、
少女バージョンこむぎといろはを呼んで、ユウ達が
今日マンションを訪れる事を話したのだった。ちなみに
2人はコーヒーではなく、いろははオレンジジュース、
こむぎは温めのホットミルクである。
「そう言えば、今日はアイシャさん、またお出掛けなんですよね、
残念ですね……」
「だな、オババ達の付き合いでな、アイツも残念がってたけど、又その内
皆に会えるのを楽しみにしてるとさ」
「でも、もういつでみんなと会えるんだもん!こむぎもうれしいよっ!」
「だよねえっ!」
いろはとこむぎは笑いながら顔を見合わせ、紙コップの中の
それぞれの飲み物を一緒にストローで啜った。
「お?いたいた、いろはちゃん、こむぎちゃんも、お久だねえ!
ねえ、ちょっと取材させてよ、ダウ君から聞いたよ、異世界に
行ったんだって!?」
「……ブ!」
フラフラと廊下を徘徊していたらしいラグナがのこのこパーティルームに
入って来る。ジャミルは驚いて飲んでいたコーヒーを吹き出す……。
「……あの野郎……、も、もう、世界も繋がっちまった訳だし、マジで
これ以上隠し通すのは難しいよな、いきなり、新しい土地が現れた事も
皆不思議がってるしよ……」
「お?ついでにジャミ太君も取材しちゃお!教えて、教えて!」
ラグナはさっとボールペンとメモ帳を取り出すと、ジャミルの方に
顔を向けた。ジャミルとアイシャの身体が入れ替わった事は、まだ
話していないらしかった。
「何だよ!ジャミ太って!変な呼び方すんな!」
「じゃあ、ジャミ太郎で……」
「変わんねえじゃねえか!」
「キャベ太郎さんみたい……」
「だあれ、それ?、おわらい芸人さん?」
「こむぎはまだ食べた事ないんだよね、じゃあ、今度一緒に食べようね!」
「この姿ならいろはといっしょにおかし食べられるもんね!」
と、和気藹々としている処に、これ又お久の花海ことは事、
はーちゃんが現れる。
「はー、ジャミル、いたっ!お客さん来てますよー、賑やか女の子が
4にんだよー!」
「ユウちゃん達かな、私、見てきまーす!」
「わたしもお出迎えするー!」
「はー!私も行くー!」
「あ、待てよっ、お前らっ!俺もっ!」
「ぶうー!ジャミっコロは駄目だじょ!ちゃんと話聞かせてー!」
「何がぶうー!だよっ!しかも又変な呼び方になってるし!」
ラグナに取材で捕まったまま、ジャミルは動く事が出来なくなってしまった。
「あは、こんにちはー!此処がおにいさま達がお住まいになられている、
お家の中なのですね、凄ーい!」
「きゃああーっ!内部侵入ドキドキっ!きゃああああーーっ!!」
「ふ~ん、長い廊下にドアが幾つも並んでる、別に屋敷でもなさそうだし、
変わってんなあ!」
「今日は食いモンの匂いがしない、つまんねえ所だな……」
「皆、いらっしゃいませー!!此処が私達のわんだふるなお家でーす!」
「お久ぶりわんだふるーっ!」
玄関先で早速客人をお出迎えするいろはとこむぎの2人組。
「あっ、こむぎさん!いろはさん!やっほーでーっす!ユウでーす!」
「きゃああー!いろはちゃん!こむぎちゃん!とっても凄く
お会いしたかったわーっ!きゃあああーっ!」
「よう、いろはとわんこ娘!相変わらずで安心したよ!」
「マフミさん、ケイちゃんーっ!又会えて嬉しいっ!
ユキちゃんとまゆちゃんと悟君にも紹介するねっ!
それから、悟君のパートナーの大福ちゃんも!とーっても
可愛いうさぎさんなんだよ!是非、皆に会って行ってね!」
「わんわんっ!わーんっ!にぎやかいっぱい!うれしいねっ!」
ガールズ達は再会を喜び合い、ワイワイガヤガヤ、実に賑やか
ムードである。
「ねえ、私にもお友達紹介して?私もみんなとお友達になりたいよ!」
皆が再会を喜び合う横で、はーちゃんがせかせか、いろはの腕を引っ張る。
「そうだね、えーと、この子は、同じマンションの私達のお友達!
花海ことはちゃん、通称はーちゃんだよ!」
いろはは皆にも簡単にはーちゃんを紹介すると、ユウ達も
はーちゃんに挨拶し、流石女の子同士すぐに仲良くなったが……。
「はー!またお友達増えた!嬉しいー!」
「ユウも嬉しいですー!あはは!」
「元気なコだなあ~、本当に楽しそうな所だな、これからみんなとも
沢山遊べるんだなあ、ところでブウ子はどこ行ったんだ?」
ケイが不思議そうにマフミに訪ねると、マフミはきょとんして、
ケイの顔を見た。
「きゃあ~?知らないわ?」
……モフ~……、助けてモフ~……
「はー?あの声、モフルンだ……」
「美味そうな熊だなあ、ちょっとちっこいけど、
おやつ代わりになるな……」
「はなしてモフ~……、モフルンは食べてもおいしくないモフ~!!」
「……はーっ!モフルンっ!!」
新しい変な日々 後編
「こらあーーっ!アンタ何なのっ!モフルンを放しなさい!!」
「モ、モフルンは食べ物じゃないよー!お願いだからやめてーー!!」
何と。何処かにいなくなったと思ったブウ子が、モフルンを
捕まえたのであった。モフルンを助けようと、ブウ子の後ろから、
モフルンを食べようとしているブウ子をリコとみらいが慌てて
止めようとしていたのである。
「ブウ子っ!こら、やめろっ!」
「……ブウさん、そんな事しちゃ駄目ですっ!」
「きゃああああーーっ!ブウちゃん、駄目ーーっ!!」
「はー!やめてよーっ!」
はーちゃん、ユウ達もブウ子を引っ張り、慌てて止めようとし、
辺りはパニックで大騒ぎになっていた…
「ぶひいい~い!!ふんがふんが!」
「ブウ子さんっ!お願いっ、お、落ち着いて……、下さあ~いっ!」
「ブウウーーー!!」
「……ブウ子がブーっておならしたよーっ!くさあーーいっ!!」
いろはとこむぎも参戦、ブウ子を止めようと必死であったが
おならを掛けられ大苦戦……。
「こむぎ、お願いっ!急いでジャミルさんを呼んで来て!
こ、このままじゃ……」
「わかったよっ!よーしっ!元の姿に戻った方が
もっと早く走れるわんっ……あれ?」
こむぎは子犬に戻り、ジャミルを呼びに行こうとすると、
前方から更にジタンが現れた。ジタンは率先して、
ブウ子の前に立ち、ブウ子と対峙した。
「この野郎っ!何だお前はっ!モフルンを放しやがれっ!……そして、
レディ達、このジタンが来たからにはもう大丈夫だ、安心しな……」
「何だ、このサル野郎、邪魔すんなよ、オメーも食っちまうぞ!?」
「ハッ……、やれるモンならやってみな……」
「……わ、このおにいさま、尻尾が生えてます……」
「きゃあああーー、すごおーーい!」
「何かすっげえ、くせえ奴だなあ、あたしこういうのパス……」
「わん?」
「ははは、可愛いレディ達にそんな褒められると照れちゃうぜ……」
「あの、褒めてないです……、そ、それよりもっ、こむぎっ、早く早く!
ジャミルさんを呼んでこないと!」
「おおーいっ!!何してんだー!?」
「あっ、ジャミルだわんっ!」
「……良かった……、ジャミルさあーんっ!こっちですよー!」
こむぎが動く前に、マンションの担当責任者、ご登場である。
いろはは慌ててジャミルを呼び、必死に手を振った。
「大変なんだよっ!お願いっ、早くブウ子を止めてわんっ!
……ウウウ~!」
ジャミルが見ると、ブウ子と睨み合うジタン、そして、モフルンを
捕まえているブウ子、更にそれを止めようとブウ子を抑えている
魔法ガールズ、そして、ブウ子を落ち着かせようと噴気している
いろは。こむぎも再び、いろはの手助けに入り、ブウ子のおしりに
齧り付く。もうしっちゃかめっちゃかであった。
「おい、いろは、ちょっと頼みがある、お前、ちょっとゆうなの
部屋へ行って、バナナ貰ってきてくれや、なるべく沢山な……」
「わ、分りましたっ!こむぎ、ちょっと離れちゃうけど待っててね!」
「任せるわん!……バフッ!」
いろはは慌てて、ゆうなの部屋までダッシュで走って行った。
「……しかし、頭いてえな~、何でこう……、おい、お前らやめろっ!」
頭を抱えながら、ジャミルもブウ子達に近寄って行った。
「ジャミルさあああーんっ、何とかして下さーいっ!このままじゃ、
モフルンが食べられちゃいますよっ!」
「はあ、リコ、分かってるから……、……おい、ブタ、ブウ子、
モフルンを放せってば、おい……、聞いてんのかこのブタっ!!」
「ふんがあああーーーっ!!」
「……!?子、……子だと……!?ま、まさか……」
ジャミルの言葉を聞いたジタンの顔が一瞬、蒼白になった……。
「たく、うるせー奴らだっ!こうなったらこの場で今すぐ
このクマ食ってやる!」
「モフーーーっ!!」
「……やめろって言ってんだよ、このブタっ!!」
「ふんがあああーーっ!!邪魔する奴らは、ぶっ飛ばす!!
ガンフガンフ!!」
等々、ジャミルも騒ぎに本格的に巻き込まれ、もはや乱闘騒ぎ
状態まで達していた。
「お待たせーーっ、バナナですよーーっ!!」
「……バナナ……、だと!?」
籠3つ分の大量のバナナを抱え、いろはが息を切らしながら戻って来た。
しかし、まるで動物園の飼育係状態である……。幾ら彼女の夢が世界中の
動物たちと仲良くなる事ととは言え……。
「……バナナーーっ!ふんがああああーーっ!!」
「きゃーー!!」
ブウ子はバナナに目を付けると、モフルンを放置し、ジャミル達も
跳ね飛ばし、いろはが抱えているバナナ目掛けて突進していく。いろはは
バナナを捨てて思わず横に飛んで避けた。
「……モフルンーっ!ああ、無事で良かったーっ!!」
みらいは解放されたモフルンを必死で抱きしめ、むぎゅむぎゅ、ハグした。
「モフ……、みらい~……」
「……おい、お前ら、取りあえず、自部屋に避難しとけ、詳しい事情は
後で説明すっから、あの困ったブタも本心は悪ィヤツじゃねーんでさ……」
「……わ、分りました、だけど、本当にちゃんと詳しい事情を
説明して下さいねっ、もう何が何だか分かんないですよっ!
ジャミルさんっ!行くわよ、みらい、はーちゃんっ!」
「うん……、何か疲れたよ~……」
「はーっ!」
魔法ガールズ達はモフルンを抱え、大慌てで自部屋に引っ込んで行った。
「はあ~、疲れたあ~……」
「つかれたわん……」
「二人も……、悪かったなあ、急に変な事に巻き込んじまって……」
「いえいえ、大丈夫ですよっ、でも、こむぎ、疲れて
眠っちゃいましたけど……」
「すうすう……」
いろははこむぎを抱き上げると、優しく身体を撫でてあげる。
その姿を見てマジで申し訳なかったなと、ジャミ公は冷や汗を掻いた……。
「……おい、お前らも大丈夫か?悪かったな、遅くなっちまって……」
「あー、ジャミルおにいさまだー!うふふ、又会えて嬉しいなー、
お招き有難うございます!ちゃんと遊びに来ましたよー!」
ユウはジャミルの姿を見ると、嬉しそうに笑顔を見せた。
「なあ、ジャミル……、あの変な尻尾の生えたヤツ、大丈夫か?」
ケイがジタンの方を指差す。ジタンはさっきから顔面蒼白で
動かない状態になっていた……。
「おい、ジタン、何してんだよ、もう終わったからよ、おい……」
「……ブウ子、ブウ子……、あれが女の子だと……」
「はっは~ん、成程なあ~……」
どうやらジタンは、ブウ子が女だと言う事に相当ショックを受け、
立ち直れない様であった。
「み、認めねえぞ、オレは……、あれがレディだなんてっ、
何かの間違いだーーっ!!」
ジタンは等々頭を抱え、絶叫しだした……。
「……流石にブウ子はきついか、なるほど、成程、こりゃ思った以上に
おもしれえや……」
「ユウちゃん達をパーティルームに案内しなきゃ、あの、
ジャミルさん、ブウ子さんの事、お願いします、まゆちゃん
達にも声を掛けてあげなくちゃ、こむぎ、行こうね、では、
一旦失礼します!皆、パーティルームに行こう!案内するよ!」
「はーい、じゃあ、ジャミルおにいさま、ブウさんを宜しく……」
「何か美味しいお菓子あるかなー!は、こ、これじゃ、
あたしまでブウ子と同じになっちまう……」
「きゃーきゃーきゃー!」
女の子達がいなくなった後、玄関のエントラス付近には、
ジャミルと、ジタン、それと只管バナナを食べ捲るブウ子しか
残されていなかった……。
「……ふんががががーーっ!!ああーバナナ、んめえええーーなあっ!!
あ、屁が出るぞーーっ!!バナナの屁だああーーっ!!」
「……嘘だ、……ブツブツ……、オレは信じないぞ……」
「はあ、これから又大変な事になりそうだなあ~、やれやれ、
そういや、俺、なんか忘れてる気がするんだなあ……」
「……ちょっと!俺、いつまでこうしてればいいの!?誰か開けてよ!
お~いったら!!」
その頃、パーティルームでは、ラグナが部屋に閉じこめられていた。
ジャミルがラグナをケムに巻き、うるさいので鍵を掛けて、そのまま
逃走したままだったのであった。
「……開けてよっ、おーいったらっ!!」
女の子とは、何ぞや??
「……ジャミル、いるかしら?」
「はいよ、俺は逃げも隠れもしませんよーっと、隣の国の誰かさんと違ってね」
「……うぶへっくし!!」
隣の部屋から大きなくしゃみが聴こえた。
「少し、お邪魔するわね……」
今度、部屋に入って来たのは、ダガーである。彼女は何だか浮かない
表情をしている。
「えーっと、その……、ジタンの事なんだけれど……」
「分ってるよ、少し凄いモン見てカルチャーショックつうか……」
「まあ、ジャミル、あなたジタンがおかしくなった原因を
知ってるのね、教えて下さらないかしら!?……彼、この頃、
おかしいのよ、町で一緒に歩いていても可愛い女の子が通っても、
全然見向きもしないの、絶対おかしいわよ……!……あんなの
ジタンじゃないわ……」
「そうなのか?でも、浮気しなくなったんだから、それならそれで
いいんじゃね?」
「そ、それはそうだけど……、私は嫌なのよ……、元気の無い
ジタンなんか……、いつもの彼じゃなくては見ていられないわ、
そりゃ、あっちこっち目移りして欲しいわけではないけれど、
女の子に反応しないジタンなんて……」
ダガーまで落ち込み掛け、ジャミルは少し、困った事になったと
思った。反応を楽しもうとして、面白半分に突然ブウ子を呼んだ
ジャミルにも責任があるのだから……。
「分ったよ、俺がジタンと話してみるから、だから……、奴が
おかしくなった原因についてはあんまり触れないでやってくれ……」
「本当?お願いね、ジャミル……」
「ああ……」
ダガーは自室へ戻って行き、ジャミルもゴロリと床に寝そべった。
「しかし、他人を構うのもマジで程々にしておかないとなあ~……、
俺も今回は悪ふざけが過ぎたかな~、あれ程落ち込むとか、
冗談だよな……」
「何の悪ふざけなの?ねえ、ジャミルっ!」
「ア、アイシャ……」
はい、来ました、アイシャちゃん登場です。
「今度は何やったのっ!?ねえねえねえっ!こら、ジャミルっ!!」
アイシャはジャミルに掴み掛ると、そのままジャミルを
押し倒しそうになった。
「いてててて!コラやめろっ!分った、分ったよ、話すから!
頭叩くなっ!!」
「はあ~、やっぱり私がついてないと、碌な事しないんだからっ!
もう~っ!」
「……自分だって……、良く言うわ……」
「何よ?」
「何でもねえよ……」
ジャミルは日曜日の一件で、ジタンを構って反応を見たいが為に、
大きな騒動になってしまった事をすべてアイシャに白状した。
「そうだったの、可哀想……、私がその日、出掛けてたからね……、
それにしてももうっ!本当に碌な事思いつかないんだからっ、
ジャミルのバカっ!!」
「んだよ!大体だな、元はと言えば、あの野郎が俺んとこへ来て、
俺にだけ女の子達紹介しないとか文句言い始めたんがわりィんだよっ!!」
「それだって、ブウ子ちゃんの事はちゃんと最初から話すべきでしょっ!
反応を見たいとか趣味が悪すぎるわっ、誰だって最初はあの子に
絶対びっくりするわよっ!!」
「ジャミル……、ちょっといいか?」
2人が又揉め出した処に、ゆら~りと、ほぼ幽霊状態のジタンが現れる……。
「ど、どうしたの、大丈夫……?ごめんね、ジャミルが又変な事を……」
「……けっ!」
アイシャが慌ててジタンに心配して駆け寄る。
「いや?……何かジャミルやったか?……それよりも、オレ、
どうかしてたよ……」
「はあ?」
ジタンはジャミルとアイシャの前にちょこんと正座した。
「世の中は広いんだ、オレが間違ってたよ、世界には色んなレディが
いるんだな、まあ、モフルンを食べようとしてたのは、流石にびっくり
したけどな、今度、ブウ子にあったらきちんと謝りたいんだよ……、
オレももっと勉強しないとだなあ……」
「何の勉強だ……」
「偉いわ、ジタン、そうよっ!ブウ子ちゃんは凄く変わり過ぎてるけど、
決して悪い子じゃないわ、慣れたらきっと、ジタンも仲良くなれるわよっ!」
「そ、そうかな……」
「うん、絶対よっ!」
両手を握り拳にして、アイシャがジタンを励まし、エールを送った。
「まーた、すぐ余計なお節介……、て、いてててて!」
ジャミルの髪の毛を掴み、アイシャが力を込めて、ぐいっと引っ張った。
「はあ~、ありがとな、アイシャ……、ん~っ、やっぱアイシャは
可愛いなあ!今度こそ、オレとデートしてね!行きたいとこ、
連れてくぜ!」
ジタンはもうすっかり立ち直った様で、白い歯をキラリ光らせ、
投げキスポーズの真似をし、アイシャに流し目を送った。
「やだもうっ、……ジタンたら!」
「ほーら、すぐまた調子に乗る!こういう奴は暫くへこませて
おいた方が身の為なんだよっ!……アイシャ、オメーも顔
赤くしてんじゃねえよっ!」
「……な、何よっ!何で怒るのよ、ジャミルのバカっ!!」
「じゃかあしい!反省しろっ!」
「……んじゃ、オレはこれで、ダガーっ!遊びいこーーっ!!」
2人がケンカしだしたのを余所に、来た時とうって変り、
ジタンはご機嫌モードでジャミルの部屋から逃走した。
それから数日後……、又日曜日が巡り、今度はブウ子が一人で
再びマンションを訪問した。
「おーい、いるかー!?誰か出て来いよー!」
……おそるおそる……、モフルンを抱いたみらいが様子を見に、
部屋から出て来た。
「おう、丁度いいや!ちっこいクマとちょんちょりんか、
この間は悪かったな、脅かしちまってな、ぶひびひひ!」
「はあ……、あの、ちょんちょりん……、て、何です……?」
「……モフ……」
ブウ子はみらいのヘアスタイルの事を指したらしいが、みらいには
今一良く分からなかった様であった……。
「安心しな、もうクマを食うなんて言ったりしねえからさ、
ケイ達にも散々説教されたさ、何でも食いたがるなってな、
ぶひひひひひっ!ま、多分無理だけどな!」
「はあ、そ、そうですかあ、あは、あはは……」
「それでな、今日はお詫びの品を持って来た」
「え、えええっ、ほ、本当ですか……?」
「モフっ!?」
今日までブウ子には散々、夜も寝られない程脅えていた
みらい達であったが、ブウ子の態度に一変し、びっくりして
驚きの声を上げた。
「ああ、うまいぞー、ウチの畑で栽培してる果物だ、皆にも
是非食べて貰おうとしてだな……」
「へえー、ブウ子さんのお家って、果物を作ってるんですかあー!
凄いなあー!」
「まあな、へっへへへ!よいしょっ!」
「モフー!」
……ブウ子にも段々慣れて来たのか、怖がっていたみらい達も
進んでブウ子とコミュを取り始めた。ブウ子は背負っていた
風呂敷から、ドサドサと果物を大量にばら撒いた。
「いやああああーーっ!何これえーーっ!?」
「モフうーーっ!?」
「……ぎゃああーーー!?」
ブウ子がばら撒いた強烈な果物の臭いに耐えられず、みらい達が
思わず口を押えた……。
「ドドリアンだよ、まあ、お前らは慣れねえウチは大変かもだけどな、
中身はメチャクチャ美味いぞおー、んじゃあな!」
ブウ子はドドリアンを放置し、自分はさっさと去って行った。
「……全然甘くないにおいモフー!」
「あらあー?みんな、お揃い?何してるのっ!」
「み、美奈子ちゃん、来ちゃ駄目……」
「?……く、くっさああーーいっ!!」
だから、来なくていいのに、わざわざ美奈子も騒動に
巻き込まれるのであった。
「おおー?うわ!くさいー!美奈子おばさんが特大の
生屁をこいたゾ!!」
「ややややい!」
「コラあ!あたしじゃないってのっ!てか、あたしはおばさんじゃ
ねえぞオラああ!!」
丁度、ひまわりを連れ、シロの散歩に行こうとしたしんのすけも
通り掛かってしまい、美奈子を構い、挑発した……。
「……何だ、何だっ!ガス漏れかっ!?」
「ちょ、な、何なのさっ、ごのにぼいはっ!!」
部屋にいた筈のホークとバーバラも慌てて部屋から飛び出して来た。
どうやら悪臭は部屋に居ても防ぎきれず、パニックになって、
ジャミルもアイシャも他の連中も皆部屋から飛び出して来て、
一時騒然となる……。
「……くさいよ~、ジャミルのおならよりも臭いなんて、
私、耐えられない……」
「当たりめえだっ!アホッ!ぐ、……何とかなんねえのかよお~……」
ジャミルとアイシャも、もうダウン寸前で、アイシャに至っては
気絶しそうであった……。
「こんにちはー!遊びに来たよー!ぎゅ、ぎゅっぴいいっ!?」
「……チビちゃんっ!……今、中に入って来ちゃ駄目っ!!」
「……チビっ!近寄るなっ!!」
「ぴーーーーいーーーーっ!!」
「お、おおお……?」
チビ、速攻で原因となっているドドリアンにブレスを吐く。
結果、器用にチビは、臭いの原因となっている皮だけ燃やし、
中身は残すという、またまた神業を見せた……。
「きゅっぴ!」
「はい、皆さん、ドドリアン、切り終わりましたよー」
「いっぱいあるよー、沢山食べてねー!」
クローディアとアイシャが切ったドドリアンを運んで来る。
パーティルームにて皆は集まり、ドドリアンに舌鼓を打った。
「……へえー、これがねえー、あの悪臭の果物だなんて、
信じらんないね、でも、美味いねえ~!」
バーバラは幸せそうにドドリアンを口に運んだ。
「本当にチビちゃん凄いね!あはは!それにしても、
私、見ててびっくりしちゃったよ!はい、あーんだよ!」
「私のもあげるわね!」
「はー!私のもー!食べてー!」
「モフ!くさい果物さんが、あま~いにおいになったモフ!
チビちゃん、すごいモフ!」
「うふふ、あたしのもあげる!」
「こむぎのも食べてー!」
「はい、あーんっ!」
「わ、私も……、きゃっ♡」
「……仕方無いわね、ほら、私のもあげるわ……」
「いいなあ……、僕も犬飼さんに、悟くん、ほら、あーん♡
……とか、お、思ってないったらっ!大福っ!何だよ、その顔っ!」
「……」
「ぴいー!おいしーねえ!きゅっぴきゅっぴ!皆、有難う!」
チビ、今日はまるで英雄であっちこっちの女の子から引っ張りだこで
大変であった。魔法ガールズ、美奈子、そしてわんぷりガールズの間で、
はい、あ~んをして貰っているチビを羨ましそうに見つめているジタンである……。
「ハア、やっぱり女の子は可愛いのがいい……、
む、むぐううっ!?」
「ジタン、あなたは本当に少し反省するべきだわ、はい、
あーんしてっ!」
ダガー、ジタンの口に、どんどんドドリアンを押し込む。
……笑顔で。
「ふぁ、ふぁふぁー……、ひっほくすふ、やふぇて、
おふぇふぇい……」
※訳 (ダ、ダガー、窒息する、やめて、おねがい……)
「悪臭を乗り越えたモンだけが味わえる幸せか、成程な、
ん~、それにしても、美味すぎんだろ、コレ……、あああ~……」
ドドリアンを口いっぱい頬張って、ジャミルも感涙の涙を流す。
何処でも暴れ、はた迷惑なブウ子だが、今日は皆に一時の(臭いと)
幸せを運んだのである。
zokuダチ。セッション36