山のハードSM屋さん
長距離トラック運転手の暁男は、27歳。髪を金に染めていて、自分ではそこそこイケメンと思っているが、なかなか彼女が出来ない。
ある日、仕事で荷台にぎっしり資材を積んで、かなり山奥の道路を走っていた。だいぶ時間に余裕があったので、以前から気になっていた裏道に入ることにした。
いつもの道と比べて幅は狭いが全然他の車が通っておらず、快適である。舗装された路面以外、一切の人工物が無い山林の合間をひたすら走っていたら、途中道が分岐していて、そちらの入口はやけに物々しいゲートで阻まれている。
好奇心で停車して、トラックを下りてよく見てみた暁男。
見張りの人間こそいないが、何かの検問みたいである。看板があって、それにはこうあった。
『これより先は私立姫裂女学館です。関係者以外の立ち入りを厳しく禁じます。無断で進入された場合、即刻警察に通報させていただきます。』
こんな山岳地に女子校があるんだ、と驚かされる。同時に、大げさに道を封鎖していることに納得がいった。女の子ばかりが暮らす寮なんかもこの先にあるのだろう。
監視カメラも幾つもあるし、早々に離れることにしてトラックに乗った暁男。再び木々ばかりの道を走りながらぼんやり考える。姫裂女学館て、有名だよな。制服がセンスいいとか、アイドル並みに可愛い子ばっかとか、むしろブスがいないとか。生徒を見たかったなあ。
それから何時間か後。資材の搬入を済ませた暁男は、すっかり日の暮れた中、同じ道を引き返していた。街灯の全く無い裏道だが、交通量皆無なので走るのに不安は無い。誰もいない山奥の夜に落ち着かない気持ちにはなるが。
しかし姫裂女学館のゲートをまた見に行きたくて仕方なかった。可愛い姫裂生には会えないだろうけど……などと思いつつ到着してみると、なんと真っ暗闇の中、ゲートが開いている。
どういうことだろう。今度もトラックを停めた暁男。ヘッドライトに照らされた看板は、昼間とは差し替えられており、そこに記された内容は彼を驚かせた。
『ただ今、校内見学実施中です。どなたさまもお気軽にお入り下さい。姫裂女学館をお楽しみ下さいませ。』
本当に入っていいんだろうか。俺みたいなチャラいエロ男が、私立の女子校の敷地内に?今の世の中そういうの厳しいんじゃないのか?
不安な考えも浮かんだが、結局は入ることにした。入れというんだからいいだろう。
寮を見学して無防備なパジャマ姿の十代美少女とおしゃべり出来るかな、といった期待に股間をふくらませてトラックをゲート内へ。もう可愛い子だらけの女子校に入っているはずだが相変わらず道に街灯は無いし誰もいないし、左右は木しかない。しかししばらく行ったら灯りのついた建物があった。
背後に洋風の大きな建築物が佇んでいるが、そちらの窓は全て暗い。目の前のそれほど大きくない一階建ての建物のみ、まぶしい照明が灯っている。そしてその灯りに照らされて、数台の車が駐車されているのも見えた。
建物の前が少し広めの駐車場になっているのだった。人は見えないが、車があるのなら誰かいるわけだ。暁男と同じ見学者だろうか。
秋の日差しの下、姫裂女学館には今日も華やかな少女達の笑いさざめく声が聞こえる。
初等部から高等部までの一貫校で全寮制の姫裂の昼休みは、どこに行っても愛らしい女の子でいっぱいである。山々に囲まれた洋風庭園で遊ぶ、上品で繊細な制服に身を包んだ美少女の群れ。ドレスみたいなデザインのジャージを着用して部活の練習に励む美少女の姿もある。
他の子達の視線を避けてこそこそ隠れている美少女も、あちこちの物陰にいた。
『菫さん、わたくしどうしてもあなたにおつきあいしていただきたいの。あなた以外の女の子は考えられないわ。もう、わたくし達十四歳だし、恋人が出来てもいいでしょう?お願い、わたくしの気持ち受け取って!』
薔薇の生垣に身を隠して、中等部の二人の生徒が向き合っている。
『蜜香、そんないやらしいこと言っちゃ駄目だよ。不純同性交遊は校則で絶対禁止でしょ!』
腰まで届く長い黒髪の、背も少し高いすらりとした綺麗な子が、背が低くショートヘアの活発そうな美少女にすがりついていた。
『どうして意地悪言うの?わたくしは第二次性徴を迎えてから毎日お股がうずうずして我慢出来なくて苦しんでるのに!だってふたなりなんですもの!女の子のお股におペニスをじゅぷじゅぷすることばかり考えてしまうわ。そんなわたくしを見捨てるの?菫さんはそんな冷たい子ではないわよね?』
『待ちなさいよ!蜜香、はしたないことばかり言わないの。不純行為の罪は重いんだから、性的欲求に負けちゃいけないわ。いつもの清楚な蜜香に戻ってよ!』
顔を真っ赤にして恥じらいつつも、背丈の小さい子は必死に相手をなだめようと努力している。黒髪の子は、綺麗な顔ににやーりと笑みを浮かべた。
『そんなこと言って。菫さんも勃起してらっしゃるわぁ………』
黒髪の子は制服姿だが、背の低い子はジャージを着ている。そのズボンが、テントを張っていた。言われて気づき、上着を引っ張って隠そうとする背の低い子。黒髪美少女はくすくす笑った。
『やっぱり菫さんもふたなりね。女の子といやらしいことしたくて仕方ない体なのね。ううん、みんなそうなんだわ。姫裂の入学条件はふたなりであることだものね。みんなみんな、女の子をいやらしい目で見ているんだわ!』
『も、もう!しょうがないわね、認めるわよ!わたくしだって女の子に恥ずかしい願望を持っているわ。その……体をさわったりさわられたりっていう欲求、あるわよ!でもね蜜香、聞いて。それは結婚してからすることだよね。今はしてはダメでしょう?』
『そう、立派なことを言うのね。だけれど菫さん、今朝、不純の罪を犯したわよね?』
菫はギクッとした。
『下級生の子と廊下ですれ違う時、うっかり当たっちゃったふりしてお尻をさわったでしょう?わたくしわかったわ、わざとさわったんだって。さわる前からとってもうっとりしてよだれをすすってらっしゃったものね。簡単にわかっちゃった。きっと監視カメラで見てもわかるわ。学校中にたくさんある監視カメラに絶対映ってて、先生にバレてるわ。放課後呼び出しを受けて罰を受けることは決まっているのよ。とても可哀想。わたくしも一緒に罰されて差し上げたいわ。』
情けない罪を暴かれた菫は、羞恥でうつむいてしまった。しかしその股間のテントは、喜悦しているようにビクビク躍動する。
『どうしよう蜜香ぁ…………お友達に恥ずかしい秘密を知られたって思ったら………体が火照ってうずいて………抱きしめられたくなっちゃったよぉ…………』
『菫さんてば、勝ち気な性格なのにわたくしとおんなじくらいにマゾヒストなのね。恥じらい方がいやらしくてたまらないわぁ…………わたくしの性欲が悪魔のようになってしまいそう…………!』
蜜香は菫の小さな体を抱きしめた。身長のわりに大きく育っている胸をもみしだいて惚けた顔で迫る。
『ねぇぇ、セックスしましょ………』
暁男が灯りのついている建物に入ってみると、下駄箱があって来賓用のスリッパが置かれていた。先客の靴が幾つか並ぶ。いずれも明らかに女性用サイズではない大きく無骨なものばかり。
靴を脱いでいると、軽やかな足音が近づくのが聞こえた。この山奥ではじめて出現する人間の気配に、いささか恐怖心を覚えつつ顔を上げると、そこにいたのは小柄な少女。
高校生か、まだ中学生か、小柄で細い体つきをしており、猫のようにつぶらなツリ目をした、非常に綺麗な少女だった。快活そうな表情は子供っぽいが、褐色のウエーブした髪が肩にまとわりついているさまはとても色気がある。服装も、制服の胸元が大きく開いて谷間が奥深くまで露出していたり、スカートが短い上に片方の脇にスリットが入っていたりと、扇情的。
暁男はたちまち勃起していた。しかし美少女に見惚れすぎて股間の変化に自覚が無く、見知らぬ女の子の目の前でズボンがテントを張っているのを隠しもしないでいるのだった。
それが少女の目に入らないはずもないのだが、彼女は何の気にするそぶりも無く、にこやかに気品のある微笑みを浮かべた。
『あら、見たことのないおにーさん。見学にいらっしゃるのは初めてかしら?それともわたくしが会ったことないだけ?』
とても涼やかで愛らしい声に、暁男はますます興奮する。
マジかよ、姫裂女学館超絶レベル高すぎかよ!!……などと叫び声を発しそうになるのをこらえ、なるべくクールに話そうと心がける。
『いや、まあね。たまたま前の道路通りすがりで、時間あるからちょっと見に来てみたんだけど。何、見学会?ってさ、そんなしょっちゅうやってんの?』
『うふふ、毎晩やってますよ。おにーさん。女子校に興味がおありなんですか?』
『え!?あ……いやー……こんな山の中の学校って、珍しいと思ったっていうかー……』
『お嬢様学校の可愛い女の子を見に来たんですね?』
『ん、いやー、まぁ、変な気持ちじゃなくて、有名な学校を見学出来るから、面白そうって思ったっていうか……』
『誤魔化さなくていいんですよ。』
少女の視線が下の方に向けられているのが気になり、自らも下を見て股間が思いきりせり上がっていることにはじめて気付いた暁男。焦る彼の手を、少女が優しく握り、奥へといざなった。
『みんなで楽しく遊びましょう………』
もう夜も遅く、消灯時間が過ぎてから、蜜香と菫は職員室に呼び出しを受けた。そこで不純交遊行為の罰が与えられることを告げられた。
先生は『あなたたち、とんでもない恐ろしい不道徳をおこないましたね。自分を恥じなさい。厳しい罰を受けて過ちを心から悔いなさい。そうでなくては、もう、あなたたちを大切な生徒とは思えなくなります。』と、かなりきつい言葉をぶつけてきたのだが、しかし顔にはニタニタと好色な笑みが浮かんでいた。
それを思い出しながら蜜香はくすくす笑う。
『先生もふたなりだものね。わたくしたち二人が、どんなことをしたのかしらって、想像していたに違いないわね。』
蜜香は菫と連れ立って、中庭を歩いていた。先生から、歓迎舎へ行くように指示されたためである。歓迎舎というのは、正門への道の入口にある小さな建物で、通常使われない変な所である。なんで校則違反の罰を受けるのにそこへ行かねばならないのかさっぱりわからないが、言われたからには行かねばならない。
消灯時刻後は、外灯も消されて真っ暗で、二人は手にした懐中電灯だけを頼りに歩いている。深い山々の中だから変質者などが入り込んで来る心配は無いが、野生動物の侵入はあるので、闇が怖い。
しかし二人はそれほど恐れず、寄り添って楽しげに歩いていた。
『蜜香がそんなこと言う子だなんて思わなかった。やらしい。』
悪口を言っているようだが菫の口ぶりは甘えているようだった。
『菫さんたら、ひどーい。でも、そうね、あなたよりいやらしいかもね。けれどいやらしくされるのが菫さんは好きでしょ?』
蜜香の声も甘い。
『もう。おとなしい子だと思ってたのに……』
『えへへへ……菫さんの方が弱い子だったわね……簡単にイってしまうんだもの、可愛い。』
『し、仕方ないでしょう?は、はじめてなのだから!』
『あら、わたくしだってはじめてよ。』
しばし会話が途切れてから、菫が顔を赤くしてうつむいて言った。
『ほ………他の女の子とはセックスしないでね。蜜香は、わたくしだけのものなんだから……!』
『当たり前でしょう?わたくしには菫さんだけしかいないわ。くすくすくす……!』
耐えきれずに吹き出す蜜香。
『何で笑うの!?』
『だって………菫さんが独占欲むき出しだなんて、可愛くて………くすくすくすくす……』
軽い言い争いをしながらも、二人ともとても幸せそうであった。
角を曲がるともう歓迎舎は目前である。一階建ての歓迎舎の全ての窓に灯りがついているのが変であった。本校舎と比べたら小さいといっても体育館の半分くらいの面積はある。その窓全部が消灯後の時間なのに、明るい。
『なんか行事あるのかしら。そんなわけないわね、夜中に。わたくしたちに罰を与えるだけで歓迎舎全体使うのかしら?』
疑問を口にする菫。
『どんな罰なのか怖くなってきたわ。』
楽しそうな口調にふるえを含ませている蜜香は、菫の手をぎゅっと握った。
『あ、蜜香。むやみに手をつなぐのは校則違反。』
『そ、そうね。』
蜜香は言われて名残惜しそうに手を離した。
『気をつけなければね、どこにでも監視カメラはあるんだもの。真っ暗な中でもきっと見られているでしょうし。』
『そうよ、だからわたくしたちが物陰でしたことがバレたのだもの。生徒はいつでも見張られてる。』
菫がそう言うと、前方から反論が来た。
『不純な生徒がいなかったら見張られることだってないのよ。全部あなたたちみたいな子のせいよ。』
歓迎舎の裏口に一人の高等部生の姿。制服で高等部とわかるのだが、だいぶ体が小さめで、蜜香より身長が無い。
『あ………生徒会の宙果ねえさま!』
びっくりして声を上げた菫。高等部生徒会役員は姫裂女学館初等部、中等部、高等部全生徒の頂点に立つリーダーであり、みんなの憧れのスター。そのうちの一人と夜中にこんな所で出くわすとは思わず、驚かずにはいられない。
しかし菫が、そして蜜香もギョッとさせられたのはそれだけでなく、宙果の制服がアレンジされていることである。スカートが相当短く今にもパンツが見えそうなのに、スリットまで入っている。胸元も大きくはだけ、谷間が露出している。
蜜香はついついフルボッキ。菫も前を抑えていつつも、お行儀よく挨拶する。
『中等部春組の遠凪菫です。』
そして、隣の蜜香にも挨拶するよう、手振りでうながす。その際、宙果の胸元に視線釘付けの蜜香を睨みつけたところ、ギクリとなった蜜香もあわてて挨拶した。
『ど、同級生の菜乃花蜜香ですっ。』
猫のような瞳に優しい笑みを浮かべる宙果。
『菫さんは知ってるわ。中等部の体育会エースだものね。あなたの活躍、何度も見ているわ。間近で見ると、凛々しくて綺麗な子ね。蜜香さんもとっても可愛い。あんまりおどおどしないで、ますます可愛く思えてしまうわ。』
そこで宙果の微笑が、冷たいものに変じる。
『あなたたち、好き合って結ばれたのよね?』
突然、恥ずかしい秘密を公然と話題にされて飛び上がらんばかりになった二人は、赤面してうろたえる。
宙果は嗜虐的に笑った。小さな八重歯が覗く。
『ふーん、二人で天国みたいに気持ちいいことをいっぱいいっぱいしたのねー?性的欲求の奴隷になって、恥じらいを忘れて愛欲を貪る獣と成り果てたのね。へーえ、こんな可愛らしい中等部生がねえ……』
美しい顔が、いっそう悪魔的喜悦に染まった。
『ずるーい。許せないわ、あなたたちばっかりぃ。たっぷり報いを受けさせてあげる。さ、中に入りなさい。』
気圧されて返事も出来ない二人。宙果の後に続いて、歓迎舎に入った。裏口だからか、下駄箱が小さい。そこにあったスリッパに履き替え、短い廊下を行き、一つのドアに突き当たる。廊下に分岐は無く、行ける所はここしかない。
妙に頑丈そうなドアだった。古い西洋建築である本校舎にも分厚いドアがあるが、それとは違う、品位や格式高さなどの欠けた、ただの硬い扉という感じであり、学校らしくない感じがした。
宙果が懐から鍵を出し、ドアを解錠する。そして開くと、中から異様な雰囲気が流れ出してきた。逃げ出したくなるような暗く、危険性を感じさせる空気。
『入って。』
蜜香も菫も入りたくなかった。だが、宙果の異常な凄みある笑顔に逆らえず、入るしかなかった。
教室くらいの広さの部屋。蜜香はヒッ……!と息を吸い込んだ。
そこには生徒が何人かいた。高等部生も中等部生も、初等部の子までいた。しかし居たのは彼女たちだけではなかった。男が、居た。
十人以上も、おじさん達がいる。学校の敷地内は男子禁制で、どんな理由があっても男性は入れない決まりになっているはずなのだが。どう見ても男の人である。蜜香の目には、自分たち女の子と比べて背丈の高い彼らが、みんな巨人のように見えた。
宙果がすたすたと男達の前にゆき、明るく告げた。
『女の子が揃いましたー。さ、決めて下さい。どの子で遊びたいですかぁ?』
これは違法風俗だろうか。暁男が姫裂生に連れてこられた部屋には、何人かの制服姿の女の子と、それより人数の多い男達がいた。男は中年が多く、暁男と同じような仕事の人間がほとんどのようである。ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて女の子たちを観察する顔は、暁男の目にも怖かった。さらに、全員股間にテントを張っているのを隠していない。普通の学校見学とは絶対違うと、即座にわかる。
『おにーさん。好みの子はいる?遊びたい子、選んで。』
ここまで連れてきてくれた姫裂生は、そんな不穏なことまで言う。
恐れを覚える暁男。しかし、それ以上に期待で頭がいっぱいになった。目の前にいる姫裂女学館の生徒たちは、みんなめったにないくらい可愛い子ばかりだった。ブスがいないと評判になるのもわかる。普通の学校なら、全校に一人居るか居ないかくらいのハイレベルな容姿の子しか居ない。
すごい爆乳の子もいるし、小学生もいる。こんな子たちと、どんな『遊び』が出来るのか。ワクワクして細かいことは気にしていられなくなる。
『全員と遊びたいんだけどー。み、みんな可愛すぎて選べねーしー。』
余裕を取り繕っておどけた言い方をしたが、破裂しそうな欲望のあまり声がふるえている。すると相手は小悪魔的に笑った。
『おにーさん、そんなにお金あるのー?そんな風に見えないんだけどー。』
『え?あ、お金取るのか……』
『当たり前でしょお?タダで女学生にやらしー遊びできるわけないじゃありませんの。もお、しかたない人。バカ兄貴って呼んじゃうよ?』
むしろそんな呼び方をして欲しいくらいだと思ってしまう暁男。だがそれどころではないのが、『やらしー遊び』という言葉。やはり風俗なのだ。
あるいは、周りに遊ぶ所の無い山奥に閉じ込められた女の子達が欲求不満からやっていることなのか?いずれにせよ、十代美少女と気持ちいいことが出来るのは間違いないようである。荒くなる鼻息を止められない。
猫の目をした美少女は、『あと二人女の子連れてくるから。お財布の中身をよく見といてね。』と言って出ていったが、すぐに戻ってきた。
後ろに二人の新しい女の子を伴っているが、その子達も相当に可愛い。二人とも中学生だろう。少し背の高い、肌の真っ白で長い黒髪の子と、小柄で陽焼けした子だった。
背の高い方は特に暁男には可愛く思えた。背の高さのわりに胸やお尻が育っていないが、どこから見ても美少女だというのに自分に自信が無さそうな雰囲気が漂っているところがすこぶる好ましい。
あの子で遊ぼう、と内心で決める。
猫の眼の少女が、女の子が揃ったと告げて、遊びの始まりを宣言した。男達は歓喜の声を上げるが、まるで怪物の唸り声のようで暁男はちょっと逃げ出したくなった。
どうやら暁男以外ははじめて来たわけではないらしい。慣れた感じの彼らの目は、なんだか人間離れしていて妖怪みたいになっている。十代の少女相手に何度も買春なんてしてるとこうなるのだろうか。自分はこいつらみたいにならないように気をつけよう、なんて考える暁男だが、彼自身ももう欲望でけだものじみた顔になっている。
『さあ、最初の女の子は、この子!』
宙果に背中を押されて男達の前に出されたのは蜜香だった。よくわからない状況の中、緊張感で呼吸が乱れている。
『七千円で遊べますよー。何人でもいいです。遊びたい人、お手々上げてー。』
数人の男が手を上げた。少し迷いつつ、暁男も手を上げていた。
蜜香は宙果を切迫した表情で見た。説明を求められていることは言われずとも宙果にはわかっていた。
『この人たちにおしおきしてもらうのよ。おいで、おしおきの部屋に行きましょ。』
菫を置いて一人、別室に連れて行かれそうになり、蜜香は無闇に恐れを覚えて宙果の手を振り払おうとした。
しかし不思議なくらいに宙果の力は強く、まるで逆らえずに奥の通路に連れ出された。
宙果が振り向いて男達に言う。
『遊びたい人はついてきてー。あ、紹介を忘れてたね。この子は菜乃花蜜香ちゃん、中等部二年生。今日の昼間、同級生の女の子相手に処女卒業しましたー。』
知らない男の人達に、途轍も無い大秘密を暴露され、縮こまる蜜香。もうどうしたらいいのかわからない。
宙果は可愛らしい声に邪悪なものを滲ませた。
『初めてセックスしちゃった罪、裁きたかったら来てー。七千円でおしおき出来るのよ。あ、お金は後でいいからねっ。』
ゾロゾロと宙果に従うガタイのいい中年男達の後ろについてゆく暁男。
どうにも猫みたいな眼の女の子の言っていることが引っかかる。あの、特別可愛いなのはなみつかちゃんと、これから何らかのプレイをさせてもらえるようなのだが、集団でそれをするらしい。何をするのだろう。
見抜きとか?しかしどうもそんな生ぬるい行為では無さそうな空気を感じる。
『おしおき』という言葉、みつかちゃんのビビってる顔。弱みを知られたみつかちゃんは売春を強要されている?素直に参加していいのだろうか?みつかちゃんを助けるべきなんじゃないか?
逡巡する暁男だが、まだそうときまったわけじゃねーしな、どんなプレイなのかもわからないし……と、自分に言い訳して大人しくしていた。膨らみきった欲望の前には、色々なことは些事である。
処女卒業、という言葉の方がよほど気になっていた。あんなまだ幼い顔をした、大人しそうな子が……!
しかも、女の子相手に?!レズかよ!すげえ…………もし会話出来るなら感想聞きてーな、根掘り葉掘り………にしても中坊で同性セックスはやべーな、山奥で女子しかいねーにしてもな、重罪だろ。思きし折檻しなきゃな。
宙果と蜜香、そして獣の息をした男達は通路を一回曲がって突き当たりの部屋に来た。
そこは普通の教室より少し狭い部屋で、何の飾りも無い空き部屋に見えた。窓にカーテンも無い。ただ、部屋の中央におかしなものが天井からぶら下がっている。鎖である。先にまるい輪っかが付いている。それが二本、垂れていた。そして、それらの直下の床にも、輪っかが二つ。こちらも床から生えた短い鎖が付いている。
まだどんなおしおきを受けるか聞かされていない蜜香だが、部屋の中を見た瞬間に逃げなくてはいけないと感じた。だが、背後の通路は大人の男達の巨体で埋まっており、そもそも宙果が帯びている魔性の雰囲気が抵抗を許さない。
『蜜香さん。こっちよ。さ、手錠をはめましょーねー。』
天井から伸びた鎖に付いている輪っかに右手を入れられた。宙果がいじくると輪っかが締まり、手首が抜けなくなる。
なすすべなく左手も鎖に繋がれた。
『足も拘束しよーねー。そう、言う通りに出来ていい子。』
両足首も輪っかに繋がれ、蜜香の自由は無くなった。
宙果が懐から小さな端末を出して手早く操作すると、キリキリ音を立てて手首をつかまえている鎖が天井に引かれ、ある程度蜜香の手が持ち上げられたところで止まった。
蜜香は、手を肩の高さより下に下ろせなくなった。
一体ここからどうなるのか、欲情と好奇心の他に不安も感じていた暁男。まあ、おしおきプレイだし、それでこんな演出もするんかな?
そう考えて見ているが、どうもそんな平和なことではないような予感がしてきて、手に汗が滲む。
宙果は蜜香に、男達にも聞こえる声で、そっとささやいた。
『それでは、ぬぎぬぎしましようねぇ。蜜香さんの為に七千円も払ってくださるおじさんやおにーさん。みなさんに、十四歳の綺麗な裸をお見せして差し上げましょ。うふふふふ!』
この時まで、おしおきが性的なものだとは蜜香は一切教えられていなかった。だが、なんとなく予感はしていた。そんなことありえないと思っていたのだが、悪い予感が的中したことに戦慄して失神しそうになる。
気付くと宙果の白く細い指が自分の制服のボタンを外している。
『や、や、やめて………いやれす………』
震える声で涙ながらに訴える蜜香に、宙果はたっぷりの悪意を含んだ上っつらだけの優しい笑みでたずねた。
『何が嫌なの?蜜香さんはとってもはしたない子でしょう?いやらしいことが大好きなんですもの、知らない男の人に裸を見せられるなんて、気持ちよくてたまらないのではなくて?』
『そんな………わた、くし、男の、方に、裸、見られるの、いや………』
『嫌でいいの。だってー、おしおきなんだもの。いっぱい泣いて、いっぱい傷ついて。ね、それがあさましく恋人と体を重ねた報いですよ。そんなこと、生徒会役員は絶対できないのにさっ………!』
許しを乞うても宙果は手を休めず、ボタンを下まで外した。上着の前が開くと、ワイシャツのボタンもはずしてゆく。
レモンイエローの、子供っぽいが上品なデザインのブラジャーが露出した。男達の熱い鼻息が揃って吹き出される。
蜜香は抵抗の言葉を失くした。ただ、横を向いてすすり泣いている。
やっぱり嫌なのに強要されているんだ。暁男は確信したが、かといってみつかちゃんを救い出そうとはもはや考えなかった。他の男と同様、興奮して楽しんでいる。
とはいえ、自分以外の男の、欲情を通り越してもう野獣と化しているかのような雰囲気にはいささか引いていた。ここまでにはなりたくない、と改めて思う。ローティーンの子にここまで遠慮なく興奮するかよ……と、呆れつつ、蜜香の雪のような肌を視線で舐め回す暁男だった。
宙果の手がスカートのホックにかかる。もう、やめてくれるようお願いもせず、スカートを下ろされた蜜香。抵抗も懇願も無駄だと最初からわかっていたのだ。このお姉様は絶対優しい人じゃない、会った時からわかってた。ここまで残酷だなんて思わなかったけど………。
レモンイエローの小さなパンツ。それが、内部から突き上げられているのが男達の目に晒された。
『あらあら、こんなにおっきくふくらまして!蜜香さんたら、マゾヒストなのね。お顔に似合う癖ですこと、可愛い。』
華やいだ綺麗な声で笑う宙果。その声に底知れない冷酷さを蜜香は感じて怖くてたまらないが、それによってますますペニスはギンギン充血していた。
それを、男の人達に見られている。女なのにこんなものがあって、しかも勃起しちゃってるのが見られてる。
羞恥心でこの世界から消え去りたくなる。男の人達がこれを見てどう思うのか。絶対聞きたくない。
が、見ている男達は、スカートが脱がされてその中が露わになったことに興奮はしていても、驚いたりはしていなかった。蜜香にペニスがあることに意外性を感じていない。
ただ一人、暁男を除いては。
あれは何だ?チンチンに見えるんだけど。いや、でもここ女子校だしな。女装して入学した男とか?いや、あんなに綺麗で男とか、アニメキャラじゃねんだから。でも十四ならギリギリそういう子もいるかも……でもなー、小学生から何年もここにいてバレないわけないよな。多様性なんたらで男も入学出来る………日本の学校でそれ、あるかなあ?
宙果は蜜香に形式的に許可を求めたりもせず、ブラジャーを剥ぎ取り、パンツを脱がせた。手錠の為に上着とワイシャツは取れず、前が開いているだけ、そこに白い体が露出している。
まだほんの少ししかふくらんでいない胸。そして、小さいが高々と上を向いた赤いペニス。
暁男はまじまじと、子供っぽい勃起ペニスを見ていた。
間違いなくチンチンじゃん。でも…………
目を転じて乳首を見る。未発達の小さな乳輪はとてもエロいピンク色をしていて、乳首が斜め上向きに尖っていた。
あれは絶対男の乳首じゃない。
考えている暁男を見て、宙果は近くに行って告げた。
『両性具有ですよ。ふたなり。知らない?おにーさん。』
いきなり話しかけられて少し焦ったが、落ち着いているふりをして返事する暁男。
『いや、知ってるけど。現実に見るのはじめてでビビった。』
『お嫌いですか、ふたなり。』
『えっ……いや……エロくて、いいな………』
聞かれてみて暁男は、自分がふたなり女子に抵抗感が無いことに気付いた。むしろ、普通の女の子より興奮出来る。チンチンの生えた少女の姿に、凶々しい魅力を覚えていた。
『よかった。』
暁男の言葉に、無邪気な笑顔を浮かべる宙果。その笑みが、毒々しくなった。
『だってわたくしもふたなりですから。姫裂の生徒は、あ、先生もだけれど、みんなみんなふたなりなんですよ。』
暁男には信じ難い言葉だったが、『ウソだろ?』とは言えなかった。異様なこの部屋の空気の中では、単なるネタで言ってるんだとは思えなかった。
宙果は会話を打ち切って蜜香の隣に戻る。そして、男達に美しい声を張り上げた。
『おしおきを始めましょ!今日のおしおきはー……みんなで蜜香ちゃんのお腹を思いっきり殴りましょう!』
男達が残酷な歓喜を上げる。蜜香には宙果の言ったことがよくわからなかった。
この部屋でもう一人、暁男にも何が始まるのかわからないでいた。お腹を殴る、という言葉は聞き取れたが、まさか本当にそんなことをするとは思えない。
相手はまだ子供。同年代の子と比べても細くて弱々しい女の子である。それを大の男が殴る。しかも、この場にいる男は世間の平均より鍛えてそうな奴ばかり。軽く殴っただけでも生死に関わりかねない。
スパンキング的なプレイならまだわかるが………しかしそれならお尻を叩くと言うだろう。思いっきり軽くお腹をポムポムするとか?
そういうことであってほしいと、暁男は切実に願っていた。みつかちゃんとエロいことはしたい、でも暴力とかはしたくない。
『順番に並んでねー。この端末でみなさんのパンチの得点を出しまーす。全員一回ずつ殴って、優勝した人は、蜜香ちゃんとキスしていいですからねー。』
宙果は手に持った端末を蜜香の方に向けている。何らかの測定機能があるらしい。
一人の男が蜜香の前に立った。いかにも肉体労働者という風情で、三十代くらいか。身長は185ぐらいありそうで、筋骨逞しく、腕にドクロのタトゥー。
彼からするとかなり小さい蜜香に合わせて、大きく腰を屈めるタトゥーの男。右手を握りしめ、後ろに振りかぶる。
見ていた暁男は、まさかそんなことやらないだろ、という希望にすがっていた。やらないでくれと願っていた。
蜜香は、ガタガタ震えながら、殴るなんてないよね、嘘よね、と心でつぶやいていた。
瞬時に強靭な拳が蜜香の細いお腹に深々と埋まった。細い体がくの字になって、鎖に引っ張られはね戻ってガタガタ揺れてからだらりと垂れ下がる。
蜜香は、呼吸が出来なくなって次の瞬間に猛烈な痛みに襲われ、ごぽごぽと吐血した。股からも血が溢れ出している。経験したことの無い激しい苦痛に、涙が止まらない。
勃起したペニスからは、何故かぴゅるるっと精液が飛んだ。
助けを求める声を上げたいが、たくさんの血が込み上げ続けて喉を塞いでいる。必死に周りの人達を見るが、男の人達も宙果も冷たく愉快そうにこちらを見ているだけで、手を差し伸べてくれそうもない。
宙果は端末画面を見て、明るく言った。
『ただ今の得点はー、65点でーす。』
少女の血の匂いの充満した空気の中で、楽しげな宙果の声が暁男には恐ろしくてたまらなかった。中学生の女の子が、全力で腹を殴られて大量に血を吐いた。こんな残酷な暴力がふるわれた現場で平然とはしゃげる女の子がいる。
ヤバすぎる。危険どころの騒ぎじゃない。本気の凶悪犯罪現場だ。
暁男以外の男達は、少女が血を吐く姿に大喜びのようだった。何でこいつら興奮出来るんだ?あんな血がだくだく流れてるのをエロい目で見れるとか、まともな感性が無い。
逃げないとヤバい。全力で逃げないと。
でも、みつかちゃんを置いてっていいのか?このままじゃあの子殺されないか?まだ中学生で、あんなに可愛いのに………ズタボロの死骸になっちまう。
でも、助けることなんか出来るか?このいかつい奴らから守って、街まで連れていく………不可能だろ。でもオレ一人で逃げ出すのはさすがに人として………でも、助ける方法あるか?
迷い悩んでどうもせずに暁男が突っ立っている前で、二人目の男が蜜香の腹に渾身の拳を喰らわせた。
既に深刻なダメージを受けている未成年の女の子相手だというのに、一切の遠慮無い打撃。
ぷぱっ、と蜜香は血しぶきを吐いた。気を失ってはいないが意識がほとんど消えかけているような表情をしている。
『いいパンチですね、74点でした。お次のおじさま、どうぞー。』
次々と男達が蜜香に鋭く重い拳を叩きつけてゆく。暁男は、歯をガチガチ言わせながら、見たくないのに目をそらせず見ていた。
蜜香のお腹の中がどうなっているのか、考えたくない。内臓がどれだけ壊されたことか。
華奢な手がまだピクピク動いているから、死んではいない。しかし時間の問題ではないだろうか。あんなになってる子供を、まだ殴ることが出来る人間がいるのが信じられない。
『おにーさん。最後はおにーさんの番よ。早くしてくれないと終わらないの。さあ、ボーンってめいっぱいぶんなぐっちゃって。』
暁男の手を引いて蜜香の前に立たせようとする宙果。
『や、駄目だ、オレは、やらない、無理だよ、無理、こんなの無理だろっ!』
半ば悲鳴のような声を上げて宙果の手を振りほどいた暁男。
『なんだ、やらないんですか。おにーさんは不参加ですね。いいよ、そこで見ててね。見てるだけならお金払わなくていいから。あ、これ使って。』
壁際にあった大きな箱から、筒状の物を取り出した宙果。それを手渡された暁男は、わけがわからず宙果の顔を見た。
『オナホールですよー。』
それは、先端が開いていないタイプのオナホールだった。
『お精液をあちこち飛ばされると掃除が大変なの。その中で出すのよ、おにーさん。』
目の前の美少女が何を考えているのか、暁男には心底理解不能だった。こんな恐怖の傷害現場で何でオナニーするんだ?
場に呑まれ、宙果に気圧されて、もはや逃げることも忘れてしまった暁男。血まみれの蜜香をただただ見ていることしか出来ない。
『優勝はぁー、おじさん、あなたでーす!』
宙果に手を取られて満足そうにしている男は、口髭を生やしかなり日に焼けた四十代くらいで、スポーツをやっていそうな感じだった。そして、顔つきが際立って残忍に見えた。
『身長差があるからー、おじさん、床に膝ついてくださる?』
姿勢を低くした男に、もう何も考えることも出来なさそうな蜜香の頭を宙果は掴み、唇を合わせさせた。
血が流れ出し続けている中学生の女の子の口を、男はこの上無く美味しそうに吸った。ベロベロ舐め、また吸う。
暁男の恐怖心が倍加する。暴力ふるうだけじゃなくて血を飲むとか……もう化け物だろ………!
しかも見ている男達は、例のオナホールでオナニーしているのだ。全員やっている。暁男の目に、宙果もスカートをたくし上げてオナホールを使っているのが見えた。血だらけで死にそうな蜜香を見つめて、うっとりと心地良さそうによだれをすすりながら、股間を慰めていた。
たっぷり十分間以上、キスは続いただろうか。宙果が終了を宣言すると、男は蜜香から素直に離れた。
『蜜香ちゃんのおしおきはこれでおしまーい!次の子に行きましょー。』
宙果は言いながら蜜香の手足を鎖から解放。
床に倒れ伏す血だらけの白い体は、動かない。もう死んでるんじゃないか。生きているのか確かめたくて暁男は凝視していた。
だが、生死を判別する前に、少女の体はシートで隠された。宙果が被せたのだ。
『おにーさん心配してるのー?だいじょーぶだから。行こ。』
何が大丈夫なんだ!色んなことを問い詰めたい暁男。
だが、そんなことは出来ない。怖すぎて不可能である。
宙果の後に従い、他の男達と共に最初の部屋に戻った。
蜜香だけが連れて行かれて、心穏やかでいられずにいた菫。だいたい何でおしおきの場に知らない男の人達がいるのか。
様々な悪い可能性が思い浮かぶ。とはいえ、生来ポジティブな菫、いい可能性も考えていた。
おしおきは、武道とか、伝統的な修練みたいなもので、苦しいが心身が鍛えられるようなもの。ただ、しっかり正しくおこなわないと怪我の危険があるため、専門家を呼ぶ必要があり、だから男の人が来ている。
おかしな点を含んでいる想像だが、彼女としてはこれが一番常識的な可能性だった。菫は姫裂女学館と、生徒会役員の良心を信じて疑っていないので、単なるおしおき以上の何か酷い目に遭わされるとは考えない。
部屋に居る男達を見なければ。
猛牛のような鼻息の、あまり品行方正でない顔つきの男達。菫や他の生徒達を見る視線が、体の線をなぞっているのがはっきりわかる。舌舐めずり。
そして何より下腹部のテント。明らかに途方も無く巨大な物がズボンを突き上げている。
これが心身修養の専門家だろうか。
だがしかし、そうではないのならこの人たちはなんなのだろう。悪い人たちではないはずなのだ。悪い人たちが姫裂女学館の中にいるはずはない。勝手に侵入したわけでもなく、生徒会公認でここにいるんだから尚更ありえない。
宙果や蜜香に男達の半分以上がついて行って、ここには四人だけ残っている。この人達に事情を聞いてみようか、と思ったが、やめた。
菫は物怖じしない性格で、姫裂女学館にいると完全に関わることの無い男性という存在に対しても、話しかけることは怖かったりしないのだが、それでもこの場にいる男達に声をかけるのは気が引けた。
待っていれば宙果ねえさまが蜜香を連れて戻ってくるんだから、その時説明していただけばいいわ、と自分に言い聞かせた。
横を見れば、初等部の三年生くらいの子もいて、泣きそうになっている。くすんだオレンジ色がかった髪を三つ編みにしていて、長い睫毛の大人びた眼をした綺麗な子だった。
抱きしめてあげたい。菫は強く思った。だがすぐに、それは不純行為でまた校則違反になっちゃうな、と思い直す。
それにしても、と考える菫。この子もおしおき受けるのか。いやらしい不純行為したのよね?………どんなことしたのかしら。
菫は勃起してしまった。バレないよう、他の生徒達に背を向ける。
どこかから、宙果の声が聞こえてきた。離れた部屋で何か喋っている。発言内容はわからなかった。
続いて、何か大きな物音。ガシャンガシャンと何かが鳴った。男達の獣のような歓声も何度も聞こえてくる。
蜜香の声は聞こえない。だが、あの声のする場にいるのだろう。おそらく彼女へのおしおきがおこなわれているのだろうが、何が起こっているのか。
様子を見にいきたくてしかたない菫。他の生徒達もそわそわして、別室で何がなされているのか気になって不安が濃くなっている。
だが、この場を離れて蜜香の下にゆくのはためらわれた。それは、宙果を怒らせる行為であるように菫や、他の生徒たちには思われた。そしてそのことがどうしてなのか怖くてたまらず、おとなしくここで待つという選択をさせるのだった。
非常に長い時間が過ぎたように感じられたが、壁にかかった時計では二十分と少しくらいしか経っていない。宙果が戻ってきた。男達もその後をゾロゾロ入ってくる。しかし、蜜香の姿は無い。
不思議なくらい気おくれしながらも、菫は蜜香のことを聞こうとした。が、その前に宙果が男達を向いて口を開くと、何も聞けなくなった。菫らしくもなく臆病に遠慮してしまった。
『さ、二人目の女の子を紹介しますよ。橘果たんぽぽちゃん、初等部五年生です。』
宙果がオレンジ色の髪の子を男達の前に押しやる。かなり幼く見えるが五年生だったようである。
とても良い子なのであろう、大人の男達の巨体に怯えつつも当然のように挨拶する。
『橘果たんぽぽです、十一歳です!皆様のお目にかかれて光栄です。』
ぺこり、と頭を下げる姿がとても愛らしく、男達の劣情を刺激していることを彼女は気付いていない。暁男も興奮しきりであった。彼としては一番好みなのは蜜香だったが、単純に容姿だけで選ぶならばこの子が一番美少女だと思っていた。
最も、素直に『遊ぶ』気にはなれない。つい先程あれほど残虐な光景を目にしたのだ。濃厚な血のにおいが鼻の奥から抜けない気がする。女子中学生の甘い血の匂い。かぐわしく、美味しそうな匂いだったが、それが尚更に心を苛む。
十一歳の子まで、あんな血みどろにするのだろうか。絶対に参加したくない。
『たんぽぽちゃんはー、下級生の子がおしっこおもらしして泣いてたのをいいことに、おパンツを洗ってあげると優しく言って脱がせてー、なんということでしょう、こっそりおしゃぶりしたんですよー。年下の女の子のおしっこをちゅうちゅうしゃぶって、おしゃぶりしながらオナニーして三回もお射精しちゃったの。それでおしおきを受けることになっちゃいましたー!』
恥ずかしい秘密を暴露され、涙ぐんでうつむくたんぽぽを、下卑た声で笑う男達。他の少女たちも興奮してしまったようで、股間を抑えている。
暁男も欲情が高まる。こんな清楚な天使のような子が、そんな変態だと?!すぐにもしごきたくてたまんねえ!
この子の裸見れるチャンスなんだよな………しかも相場は何千円くらい。さっきは金取られてないし………こんなトンデモ可愛いロリの裸なんか、もう二度と見るチャンス無いよな………。
小学生美少女のおしっこしゃぶりエピソードの興奮で、早くも中学生美少女血だるまのトラウマが薄れてきた暁男。
『たんぽぽちゃんと遊びたい人、お手々上げてー。この子は罪があんまり重くないからー、あんまり厳しいおしおき出来ません。だからー、料金は二千円でいいよー。』
ほとんどの男が手を上げた。二千円は安い。暁男も手を上げたくなったが、しかし迷ってしまう。
あんまり厳しくない、というが、おしおきはするのだ。みつかちゃんへのおしおきは、ほとんど殺人だった。この女の子の『厳しくない』は多分世間と基準が全然違う。さっきほどじゃないんだろうが、血は流れるだろう。
宙果がすたすたと暁男の前に来て、上目遣いでにっこりとした。
『おにーさん、今回のおしおきは怖くないですよ。たんぽぽちゃんの罪は大したことないんだもの、ケガをさせるほどのことなんてしないわ。おにーさんも絶対楽しめるって約束するよ。だからぁ、一緒に行こっ。』
その媚びた笑みに股間が逆らえなかったのが決め手となった。暁男はたんぽぽのおしおきに参加した。
やはり別室に移動しておこなわれることとなった。さすがに、蜜香の時とは別の部屋である。広さとしては同じくらいで、やっぱり余計な物が無い。
天井から、今回はロープが垂れている。たんぽぽは全裸にされ、両手首がまとめて縛られた。足は固定されない。
小さな美少女の、綺麗な裸を目の当たりにして我慢しきれない暁男に、宙果が例のオナホールを手渡した。暁男は何の疑問も覚えず小学生女子でオナニーしだした。
たんぽぽは、宙果に必死に服を着せてくれるよう訴えている。
『こんなおしおき、おかしいと思います!恥ずかしくて死にそうです………もう、二度とはしたないことなんてしませんから………許して下さい………』
さめざめと泣く小学生美少女に、興奮が何倍にもふくらんで暁男はたまらずオナホール内に射精。
他の男達もオナホールを使っている。あまりにも酷い辱めに、地獄にいる思いのたんぽぽ。
だが、これはまだおしおきではないのだ。
『でははじめましょー。皆さん、ここに置いてあるボールを持って、たんぽぽちゃんにぶつけてくださーい!』
部屋には籠が置かれていて、お子様用のドッヂボールが幾つも入っていた。
暁男は、なるほどこれならケガはしないな、と思った。半ば感心させられたくらいであった。全裸で無防備な小学生に、大人の力でボールをぶつけることの残酷性に、もはや気づかないでいる。
男達は手に手に小さめのボールを取り、たんぽぽに向けて投げた。がっしりした太い腕から飛ばされたボールが、小さな形良いお尻に叩きつけられる。
『痛ぁい!』
赤くなるお尻。それを見て一気に興奮が高まる暁男。血はでないのだ。それに、下級生を騙しておしっこしゃぶるなんて悪いことする変態女子だ。こらしめなくちゃいけないんだ。
暁男も投げた。まだふくらんでない胸に当たった。穢れないピンクの乳首に直撃。もんどりうって悲鳴を上げ、だらだら涙をこぼすたんぽぽ。痛みのあまり軽く射精までしている。なんともいえぬ満足感が暁男の中に沸き上がる。
全方位からボールが飛んできて、次々痣が出来てゆくたんぽぽ。逃げようとしているが、両手をロープで吊られているため、ただその場でみっともなくもがくだけである。
暁男は床に転がるボールを拾い、また投げる。たんぽぽの後頭部にヒットした。どれくらいのダメージになったかな、と考える。痛めつけたい、という願望が出てきていた。
また投げる。今度は背中に当たった。衝撃でたんぽぽが上を向いて泣き声を上げたのが嬉しい。次はあの小さなチンコに当ててやりたい。無駄に動くし他の奴がボール当てるたびにのけぞるから狙いづらいんだけど、ぐったりしてきてるしもう少ししたら当てやすくなりそうだ。オレの球で生意気な短小勃起チンコへし折りてえ。
たんぽぽの体はどこもかしこも腫れている。
まさにボコボコって感じだな……でもここまで来るとやり甲斐が無くなってくるな。
そんなことを暁男が思ったその時に、見計らっていたかのように宙果が声をかけてきた。
『他の子でも遊びませんか、おにーさん。別の部屋でもいっぱい楽しいおしおきしてるんですよ。』
気づくと、あちこちの方向の離れた所から、女の子の悲鳴が聞こえてくる。暁男の口内に涎がこみ上げてきた。
幾つもの部屋で女の子が暴行されているようである。中にはドアの隙間から廊下に血が流れ出している部屋もあった。
もう、暁男は状況を恐れたり、気に病んだりしなくなっている。女の子の泣き声にワクワクさせられてしまっている。
宙果はしばらく廊下を進んで、一つの部屋の扉を開いた。
『この子なんかどう?おにーさん。遠凪菫ちゃん。さっきお腹を殴られてた蜜香ちゃんの、処女卒業セックスのお相手ですよ。』
部屋の真ん中、大きな机の上で両手両足を金具で拘束されていたのは、中学生とおぼしき美少女。全裸である。
みつかちゃんより体ちっちゃいけど、胸のふくらみあるな………性格明るそうな顔だしモテそうだな…………。
ジロジロ観察する暁男。オナホールを無意識的に使ってしまう。
菫のなまめかしい肢体から生えるペニスは、極限の緊張で少しだけ精液を失禁していた。蜜香のものよりも長さがあるが、しかしとても細く、フルボッキしているのに力強さを感じさせず、とても清楚で可憐。滴る白濁液さえ清らかである。
何の穢れも無い彼女の罪を、宙果はあげつらう。
『もともとほんのちょっとしたおさわりとか、のぞきとか、あんまりおしおきされないくらいの校則違反を小狡くやってた子なんです。一番許せない不純同性交遊の膣出しセックスも、お誘いしたのは蜜香ちゃんの方だけれど、この子が上手く誘惑してその気にさせたに決まってるの。自分ばっかり幸せになって、地獄の底に落としたいわよねっ。そーゆーわけでぇ、蜜香ちゃんよりちょっと重い罰を与えるの。』
見た目でも、みつかちゃんの彼女という点でも、暁男としてはかなり心惹かれていたが、宙果の話を聞いていて菫の魅力が耐え難いほどになった。
『料金は8500円ですよ、おにーさん。』
即座に買うことを伝える。
他に部屋に居る男は三人だけ。どうやら女の子全員がお楽しみの対象にされているようだから、男もバラけていて一箇所の人数が少なくなっている。その分じっくり楽しめそうだ。この子に何を出来るのか、楽しみでたまらない暁男。
『ここに重ーい金槌がありまーす。これでー、菫ちゃんの骨をぐしゃり、ぐしゃりって壊しちゃう遊びですよー。』
用意された金槌はそれほど大きくないが、持ってみるとずっしりと重い。女の子では片手で持てないだろう重さ。なるほど、こんなもので叩いたら骨も割れそうであった。
他の男が、まず菫の左腕の関節に叩き下ろす。ガキンと金属音がして、皮膚が避けて出血し、跳ね上がった二の腕がおかしな方向に曲がった。関節がグニャグニャになっていた。
甘く美しい悲鳴。二人目の男は、右の膝を狙った。泣き叫び激しくもがく菫だが、左腕の関節から先と右脚の膝から下は稼働していない。菫のことが人形のように見えて興奮
がふくらむ暁男。
黙って見てられるかと、彼も金槌を構える。そして狙ったのは肋骨。金槌が中学生少女の胸の下に深くめり込んだ。左の乳の形が歪む。
吐血しながらもがいて助けを求める菫だが、笑いの対象にしかなっていない。
そしてまた一打。左の腿が壊された。まだ十代前半の美少女の、体のかたちが失われてゆく。
『やべえよ、エロ過ぎんよ!』と、暁男は喜悦を声に出していた。
菫が動かなくなるまで、時間はかからなかった。快い香りの血は、暁男の手にもたっぷり付いている。彼はそれを舐めてみた。ふたなり美少女の血は、脳が溶け出しそうなほど極上であった。
いつの間にかどこかに行っていた宙果が、あからさまな軽蔑の笑みで見てくる。
『どうしますおにーさん。次の子行くー?』
暁男は案内されて他の部屋を見て回った。どこも凄惨である。少女がおよそ人間扱いされておらず、壊す為のおもちゃとなっている場を次々見せられた。
『この子は高等部二年生。おフェラした罪。もう三回目なの、反省させないといけないからきついおしおきしてるのよ。』
バストとヒップはだらしないくらい育っているが、ウエストがとてもくびれた素晴らしい体形で、顔も非常に美形な少女が、バーナーの火で焼かれていた。
隣の部屋に行くと、ほっそりとして貧乳の、お姫さまみたいに可愛い女の子が、首にロープをゆわえつけられ、そのロープを掴んだ男によって床を引き回されていた。彼女はなんとか弱々しい両手で首を締め付けるロープを緩めようとしているが、男の力には到底かなわず、首を絞め上げるロープのせいで呼吸ができていない。
そんな苦しんでいる少女が、冷酷に引きずり回されている。
さらに隣の部屋では、男の糞を食べさせられている美少女が。
『どの子と遊ぶー?どの部屋も楽しそうよねー。』
そういう宙果の言葉は、明らかに彼女自身の感情を反映していた。何しろ彼女もオナホールを上下させる手が止まらないでいる。
そんな彼女をニタリと見下ろして、暁男は歯を剥き出しにした獰猛で悪質な笑顔を見せる。
『今、遊びたい子は君だなァ。ねえねえ、幾らで遊べんの?もう君の体メチャクチャにしてやりたくてガマンできねんだけどー。』
小さな宙果に覆いかぶさるように迫り、オナホールを外して赤黒い亀頭を間近に見せつける。黄ばんだ濃厚で臭気を放つ精液が糸を引いて垂れている。
ビクッビクッと躍動する巨根はふたなり美少女のものとは比べ物にならない威容で、見るからに頑強。しかしそれを一瞥した宙果、何の感情も顔に表さず、冷淡な微笑で暁男を見上げた。
無言でいきなり膝下を蹴る。鋭い蹴りの痛撃に、暁男は姿勢を崩して屈み込んだ。低い位置に来た喉を、宙果の手刀が突く。
『ア………ア……………』
苦痛と、呼吸困難に陥ったことで、うめき声が漏れる。
『おにーさん、見てー。』
宙果に頭を抑えられ下を向かされた暁男が見たのは、いつの間にか宙果の手に握られているナイフ、その切っ先が自分の亀頭に触れている光景だった。
ナイフがゆっくりペニスの周囲を旋回し、竿や玉袋にピタピタ当てられる。
『二度とお射精出来ない体にしちゃうのなんて、簡単なのよー?そうしたらもう、わたくしにいやらしい悪戯する気にもなれないね。ねぇ、ごめんなさいは?』
震え上がる暁男。宙果の身体能力と、何の呵責も無く攻撃出来る冷酷性のみならず、瞳に潜む非人間的な虚無感が恐ろしく、この少女には一切逆らえないことが心に刻まれた。
『す、すみません!もう絶対生意気なことは言いませんっ!』
子分みたいな口調で謝罪した暁男。途端に宙果の顔は優しく、媚びた笑みと変わった。眼差しからも人ではないような雰囲気が消えている。
『もう!わたくしの体はまだ何も知らない処女なんですからね!エッチなこと言っちゃだめなんですから。』
ナイフをケースに収めて懐にしまい、宙果は暁男の手をそっと引いた。もう片方の手で、丁寧にオナホールを巨根に嵌めてあげている。
『びっくりさせちゃったこと許して。いっちばーん残酷な遊び出来る子の料金、半額にしてあげる。ね、それで許してくれる?おにーさん。』
『あ、うん………』
甘えた口調の宙果がとても可愛くて、股間の熱が復活する暁男。しかし背中はびっしょりの汗で冷たくなっている。宙果の怖さは、本気でここで死ぬのだと思わされるほどだった。実際、女の子たちにあれほどの殺人行為をして、そのことに全く罪の意識も無さそうな彼女である。そして、格闘技でもやっているのだろうか、超越的な戦闘技術。その気になればこちらを即座に殺せる。能力的にも、精神的抵抗という面でも、何の問題無く。
暁男は、他の男達が、女の子たちに宙果の指示した暴行だけをやって、強姦などはせず、ルールを守って暴力を楽しんでいることが不思議だったが、その理由がはっきりわかった。皆、宙果に逆らえないのだ。
どんな猛獣などより恐ろしい宙果。だが逃げ出したくはならず、手を握られていることは嬉しい。それだけ彼女の可愛さはたまらない魅力なのであった。怯えながらも、いつか犯してやると心に決めた暁男。
連れてゆかれた部屋では、高等部の爆乳美少女が、男二人にカッターナイフで全身を切り刻まれていた。露出しているピンクの内臓が、暁男の口から涎を溢れさせた。
体が冷たい床に突っ伏している。視界が暗い。何かに全身が覆われていることに、蜜香は気付いた。
下の方に光が差し込んでいる。明るい部屋の中で、何かをすっぽり被せられているようだ。暗いのが怖くてはねのけると、彼女を覆っていたシートは簡単にめくれた。
誰もいない部屋。電灯を受けて光る鎖が、目の前に垂れ下がっていた。それを見て蜜香は、恐ろしい出来事を全て思い出した。
殺されると思ったし、もう死ぬとも思った。しかし今は何の痛みも無い。
何人もの男の人達にお腹を殴られて血を吐いたのは、本当は無かったことなのだろうか。寝ていて見た悪夢だったのか。
しかし、今、この部屋に居て、裸である。ただの夢だったとは考えられない。
それなのに、蜜香の白い体には、一滴の血も付いていなかった。脱がされているスカートやパンツ、前が開いている上着、ワイシャツ、どれも真っ赤に染まったはずなのに、汚れが無い。
周囲の床にこぼれたはずの血も無い。
蜜香は服を着なおして、やっぱり夢みたいなものだったのかな、と考えた。
だが、その時までぼんやりしていて気づかなかった悲鳴や泣き叫ぶ声を認識してしまった。別の部屋から、絶望に満ちた少女の声がたくさん聞こえる。そのことで、自分が暴行を受けたことが現実だと確信してしまう。
カラカラと扉が開かれた。
『あ、治ったのね、蜜香さん。』
宙果が入ってきた。男達に蜜香を半死半生になるまで殴らせた張本人は、悪びれもせず愛想良く笑っていた。
『あんまり怖がっては嫌よ。お腹、痛くてたまらなかったかしら。おつかれさま。』
震える蜜香に近づき、自分より高い位置にある頭を優しく撫でる宙果。
へなへなと床に座り込んでしまった蜜香。震えて上手く動かない口で、何とか質問をした。
『お、お、おね、えさま、が、な、治して、くださった、ですか?』
『アハハハッ!』
宙果は本当に楽しそうに口を抑え、上品に笑った。
『そうね、そう、治してさしあげたわ。でもね、ただこれをかけてあげただけ。』
宙果が床のシートを細い人差し指で示す。
『で、でも、こんな、ちゃんと、治ってます。これを、被せただけで、治るなんて、信じられない、です。』
『そういう物なの。そしてね、姫裂生の体がそういう風に出来ているのよ。どんなに大怪我しても、これに包んで時間が経てば治っちゃう。流した血も、蒸発するわ。これは魔法の絨毯。そして、わたくしたちの体は、魔法の体。ふたなりっていうだけじゃなくって、もっとずっと特別なのよ。』
蜜香には、おかしなことを口走る高等部生が、頭が変になってしまったように見えていた。宙果の話は異常でしかない。
しかし状況の説明にはなっている。とはいえとても信じることが出来ない。
『蜜香さんたら、飲み込み悪い子なのね。嘘を言ってると思ってるでしょう。けれどすぐわかるわ、全部ほんとだったわって。さあ立って。お手々貸して、鎖に繋いであげる。』
宙果に言われるまま立ち上がった蜜香だが、素直に繋がれるわけにはいかない。
『な、な、何で、ですか?おしおき、終わったのに。』
『二回目よ。おしおきは朝まであるの。あんな短時間であなたの消せない罪を許してあげるわけないでしょ。』
宙果の華奢な手は物凄い力があって、蜜香の両手首には再び輪っかがはめられた。
宙果は廊下をのぞいて可愛らしく声を上げる。
『菜乃花蜜香ちゃんのお腹ボコボコ殴る遊び、またはじめますよー!貧乳中学生大好きな人ー、弱い女の子のお腹殴るの大好きな人ー、来てー!』
すたすた廊下を歩き、彼女はそこにいた若い男の袖を掴んだ。
『おにーさん、蜜香ちゃんで遊べるよっ。蜜香ちゃん一番好きでしょ、わかるんですから。一目惚れしちゃった子、今度は買いましょうよ。七千円で力いっぱい殴れるわ。』
暁男は迷わず返事していた。
『それマジでいいな。オレ、全力でみつかちゃん殴り殺すわ。』
山間の景色が、藍色に染まっている。日の出が近づく姫裂女学館の正門を、車が次々出てゆく。
歓迎舎には、もう男の姿は無い。ぐったりした少女たちしかいない。
『みんな寮にお帰りなさい。今日の授業は欠席が許されているから、ゆっくり休んでいいわ。もう痛い目に遭わされたくなかったら、二度と不純なふるまいなんてしないこと。覚えておくのよ、次はもっと酷いおしおきがあるんですからね。』
明るみはじめている外へ出られることが何よりの救いに思えて、ふらふら出てゆく少女たち。
『お、おしおきありがとうございました。もう同じ過ちはいたしませんっ。』
指導への感謝は忘れない。宙果のことは猟奇殺人犯の如くに怖い。礼を失するような真似は到底出来ない。
宙果もくたびれて壁にもたれかかっていた。寝不足もあるが、むしろ主にオナニー疲れである。
いたいけな不純交遊禁止違反生徒たちの、苦しめられ傷つけられる姿を楽しみながら何回射精したことか。女の子が身体を毀損させられる光景に、彼女のペニスはすこぶる弱い。幾ら出してもすぐ精液が溜まってしまう。
『ま、毎晩、生徒を、痛めつけてるんですか……!』
問いをぶつけてきた生徒を見て、宙果は少し驚いた。もうこの場には宙果自身の他に二人しかいない。
菫と蜜香。中等部の分際でセックスした二人である。自信家で性的モラルが不足気味な菫と、性欲は人一倍だがおとなしく小心で、本来なら逸脱行為など出来なかったであろう蜜香という組み合わせ。
なのに、反抗的な物言いをしたのは蜜香の方だったことに、驚かされた。
愛し合う二人は、お互いをかばうように抱き合っている。
菫の方は何も言わない。心が死んでしまっているようで、ほとんど無感情な顔をしている。だが、蜜香を細い腕で守ろうとしているようである。
そんな菫を健気に抱え、涙目で自分を見つめる蜜香。宙果にとっては、取るに足りない挑戦だったが、この気弱な中等部生のことを心から見直した。
恋心に近いものを感じてしまうくらいに。
宙果は、スカート越しに自らの熱くなったペニスを撫でさすりながら、優しく答えた。
『明日は、別の子がおしおきするわ。生徒会役員が一人ずつ、持ち回りでおしおき係を務めるの。七人で分担ですからね、週に一回寝られない日があって困るわぁ。けれど、不純行為をする生徒は毎日必ずいるのですもの、仕方ないことよね。でも女の子が泣きながら血まみれにされるのって素敵。今夜もとても気持ちいい夜でしたわ。』
生徒への暴力を喜んでいたことを臆面もなく明かした宙果に、怯えが高まりつつも一層にらみつける蜜香。その瞳に、宙果はゾクゾクさせられ、灼けるような肉棒を激しくしごきたくてたまらなくなる。だがそれは自重し、余裕の態度を保っていた。
『生徒会のおねえさまは鬼ですっ。こんな許されないこと……生徒を男の人に売ってお金を稼ぐなんてっ。いつかあなたも酷い目に遭いますよ!』
『あらあら、上級生に随分な口を聞くこと。』
うっとりした顔になって肉棒を握りしめてしまう宙果。彼女にもふたなり女子らしいマゾヒズム体質があって、好みの女の子にいじめられると射精したくなる。
しかし性格的に、露骨に相手に屈したりはしない。
『蜜香さんは誤解しているわ、ひどいわよ。まるでわたくしたちがお金儲けの為におしおきをしているみたい。お金なんてどうでもいいの、男達を騙す為に闇売春の形をとっているだけ。』
蜜香はいささか混乱した。お金の為に後ろ暗いことをしてしまった生徒を男の人に売っているというのでなければ、何が目的なのかわからなかった。
『じゃ、じゃあ何の為にこんなことしてるんですかっ!』
『うふふふ、それを聞いてしまうの?……そうね、あなたはとっても可愛いからぁ、特別に教えちゃう。』
慈愛に満ち満ちているが、限りなく不吉な笑みを浮かべた宙果。もう、スカートの布ごと勃起ペニスを掴む手を上下させている。
今にもイキそうな熱い吐息を漏らしながら話を続けている。
『あの男達は、また来ることになるわ。可愛い女の子に残酷な暴行することに夢中になってしまって、もうやめられない。でもいつか来なくなる。何かとんでもない恐ろしい事件を起こすから。おわかりかしら、あなたたちへのおしおきはその為にあるの。気の狂った魔物と化した男を世の中放つ為。』
蜜香はただ黙って聞いていた。相手の言う事をどう判断したらいいかわからない。
『姫裂には、世界中に姉妹校があるでしょう?世界の国々にふたなり美少女ばかりの女子校が。そのどこでもおんなじことをしているの。毎晩、男達を快楽殺人者に変えているわ。どうしてそんなことをしているか、よねえ。人類を破滅させるためですよ。わたくしたちみんな、その為に作られた人工生物なの。』
わけのわからない話についていけない蜜香。しかし、宙果の語ることを虚偽と決めつけられる証拠は無い。
追い詰められた心から来る負担が吐き気となって、手で口を抑えて嗚咽している彼女の頬を、宙果の白い指が撫でた。
『今の話は誰にも内緒。もし言いふらしたりしたらね、地下に閉じ込められて新しい生徒を産むだけの家畜にされてしまうわ。気をつけなさいね。』
山のハードSM屋さん