僕の小さな冒険

少年は、一晩の旅に出る。

好奇心旺盛な少年の一晩の冒険

雨の次の日晴れた空雲の間から明るい月が浮かぶ夜僕は森へ向かったこんな夜にはきっと沢山の妖精が気持ちよさそうに飛び交っていると思ったんだ…

月明かりに照らされて光る雫に濡れる草をかき分け奥へと進む草に触れる度に水玉が空へ向かって舞うキラキラ…貴重な夜の光を反射して分解し…キラキラ…キラキラ…宙を舞う

ほぉーほぉー…きゃうあ!うぅー…

遠くで多種多様な声が聞こえる夜にうごめく動物たち…僕は少し怖くなってきた…息を切らして肩で呼吸する葉っぱで切ってしまった指がヒリヒリする…泣きたくなった…それでも止まることは出来なかった…止まってしまったら何かに襲われそうな気がするから見えない声の主と暗闇が僕の不安を膨らませていく後ろを振り返ると怖いものが居そうでひたすら前に進んだ何も考えずに前へ…前へ……

木々の隙間から月が顔を出した暖かい光が降り注ぐまるでニコニコしながら僕を見守ってくれているように思えた僕はお母さんを思い出したいつも優しい笑顔のお母さん…今だけ空の月は僕の二番目のお母さんだそう思うことにした元気と勇気が湧いてきた本当のお母さんに何も言わず夜中にコッソリとベッドを抜け出してきた僕少し…心が痛んだ……

今更、戻ることはできない…

僕は前に進んだ

小川を渡って倒木を乗り越え岩を登って森の奥深くへ…

妖しい光が飛んでいるのを見つけたひとつ ふたつ みっつ よっつ…どんどん数が増えてくる

遂に妖精の住処を見つけた!?

僕は興奮して飛び跳ねた

着地した途端にブウゥンという羽音が無数に響いた同時に小さくて黄緑色の丸い光が無数に宙に浮かんだゆらゆらゆらゆら暗く湿った空気の中を漂う

妖精の住処ではなかった…住んでいたのは夜光虫だった少しガッカリした…それでもその光景は十分に幻想的で綺麗で…僕は写真を撮影した心の中にもしっかりと焼きついた何年経っても色褪せない幾つになっても語り出してしまうそんな光景だった

僕は驚かせてしまった光る虫たちに謝って、また進んだ

小高い丘が現れて僕は登っていった丘の上は開けた草原になっていて一本高い高い杉の木が立っていた空には満天の星街中では見られない絶景がそこにあった…はっきりと見える天の川数えきれない数の星が僕を迎えてくれた星の瞬きは拍手のように見えて僕を歓迎してくれているような気がした遠くに見える明かり僕が住む街の明かり空にも地面にもたくさんの光が散りばめられていてそれはまるで宝石が溢れ出したみたいだった

お伽話にでてくる金銀財宝ってこんな光景なのかな?

僕はしばらく丘の上の眺めに見惚れていた綺麗過ぎる景色を見ながら持ってきたクッキーを食べた甘いけれど、パサつく食感に喉が渇いて水筒の紅茶を水筒のふたに注いで飲んだクッキーの甘さが口の中に広がったと思ったら紅茶の香りが僕を包んだ最高の組み合わせだと僕は思った

そんな事をしていたら空に白が侵入してきた…僕は急いで来た道を引き返した妖精は居なかったけれど素敵な光景に出会えて僕は満足だった…あとはお母さんに見つかる前にベッドへ滑り込んだらミッションコンプリート今日の僕の作戦は完了だ消え入りそうになりながらまだ月が僕を見守ってくれていた…また僕はこんな小さな冒険をしてみようと思った次は何処へいってみようかな???

僕の小さな冒険

僕の小さな冒険

真夜中にベッドを抜け出す少年。 朝までの一瞬の冒険。 少年が見た事も無かった景色。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-01

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