走らされる人

子供の頃、親が車を運転している際中私は窓の奥の景色をよく眺めていた。
建物や電柱に街路樹が後方へと流れていく。
ふと、私は想像した。
私が乗っている車に合わせて走る人物をだ。
男性か女性か、年はいくつなのか、全く知らない素性が明かされない人物。
その人は、私の乗っている車と平行に走る。
こちらを見ることも無く、ただただ平行に走る。
障害物となる建物や電柱に街路樹は、ジャンプして屋根伝いに走ったり飛び越えたりしていた。
あの人物の素性は今も明かされない。
私は、暇つぶしにその者を眺めていた。
年を取ると、その者を見ることは無くなった。
どこへ行ったのだろうか。
分からない。
けれども、私には確信がある。
あの者は子どもの相手をしてくれているのだ。
きっと、今もどこかにいる子どもの暇つぶしに付き合い、走らされてるに違いない。

走らされる人

走らされる人

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-28

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