zokuダチ。セッション31

エピ 119・120・121・122

冒険編16 奇跡の花

「……あれは数十年前じゃった、旦那様の奥様がご病気で
亡くなられ……、奥様を心から愛しておられた旦那様は
大そう悲しみふさぎ込んでおった……、儂らもそんな旦那様を
見ておるのが辛かったよ……、そんな時じゃったか、あの訳の
分からん女……、ルーゼという女がこの屋敷に現れて……、
旦那様の秘書になり、旦那様も漸く元気を取り戻された、
じゃが……」
 
其処まで言い、庭師はパイプを吸い、暗い庭園の外を眺めた。
 
「……何があったんだ?」
 
「あんたらも分かっとるじゃろう、ある日突然、旦那様は
御乱心なされ……、彼方此方からありとあらゆる沢山の
若い娘をかき集め、自分の妻にしたのだよ……、しかし……、
暫らく立つと、お妃にした娘は何処かに消されてしまうらしい……、
行方は儂らにも分らんのだ……、そして、又別の娘を何処からか
掻っ攫ってお妃にしておる、今の屋敷の中の状況はこれぐらいしか
分からぬ……、一体何が起きておるのか……」
 
「あのさ、此処の領主がおかしくなったのって、やっぱ、
あの変な秘書の所為じゃね?話聞いてるとそうとしか思えねえよ……」
 
「……そ、そうよっ!絶対そうだわっ!領主様にきっと何か
あったのよっ!へ、変な事して、領主様を洗脳しちゃったんだわっ!
だって、充分怪しいおばさんだったもの!」
 
ジャミルの意見に興奮しながらアイシャも同意する。
 
「けどなあ……、あの領主の趣味は全く分かんねえってルーゼも
自分で言ってたんだよな、そこら辺も調べて見ねえと何とも
言えねえんだけど……」
 
「本当に旦那様が……、操られておると言うのなら、元にお戻りになる
可能性もある訳じゃが、奥様が生きておった頃はのう、本当に誠実で
誰からも好かれる優しい旦那様じゃったよ……、強引な手段で此処に
連れて来られたあんたらには信じられんかも知れんが……」
 
「……とにかくあの女だけ何とかブッ潰せれば、でかい権力も
相手にしなくて済む可能性もあるな、こうなったら何がなんでも
此処を出て、アル達と合流しないと!」
 
「ええ!」
 
「ぴいー!」
 
(……本当に元気の良い子達だ……、もしかすると、本当に、
崩壊寸前のナンダ・カンダ家を救ってくれる救世主なのかも
知れん……、だが……)
 
「しかし……、ルーゼは強いぞ……、並みの相手では太刀打ち
出来ないと言う噂だ、下手をすれば君達も危険な目に遭って
しまうかも知れぬ……、今、このまま遠くに逃げた方が良いかも
知れん……」
 
「大丈夫だって!俺らは変事に巻き込まれんのは慣れっこさ、
本当は警備兵ぐらいなら何て事ねえんだよ、今は遠慮してる
だけで、なあ!」
 
アイシャとチビも頷き、ジャミルに笑顔を見せた。
 
(……本当に……、なんと言う子達だ……、もしかしたら、本当に……)
 
「あ、あっ……、一番大事な事思い出した、俺達がこの世界に来た
本当の目的なんだけど、色々あって、大分ずれちまった……、爺さんっ!!」
 
ジャミルは意を決し、思い出した様に庭師と向き合う。
 
「うん……?」
 
「実はさ、俺達、ちょっとショックを受けて、心と身体が
入れ替わっちまったんだよ、……信じて貰えねえかなあ……、
こんな話……」
 
「ジャミルっ……!」
 
「はあ、何を言っているのか、今一良く飲み込めんのだが……」
 
「わ、私からも、説明しますっ!」
 
「……」
 
ジャミルとアイシャは自分達が別世界から人間という事、元の
身体に戻る為の花を探してこの世界まで来た事、そして、その花が
もしかしたら此処にあるかも知れないとユウに聞いた事……、
全て話した……。
 
「成程、にわかには信じがたいが……、嘘を言っている顔でも
なさそうだな……」
 
庭師は不思議そうな顔をして、更にパイプをプカプカ吸った。
 
「そんな不思議な花……、育ててないかい……?」
 
「お爺さん……」
 
「ぴきゅ……」
 
庭師は無言で庭園の奥まで行き、やがて小さな鉢植えを抱え、
ジャミル達の処まで戻って来た。
 
「ひょっとすると、これの事かも知れん、ココロ花と言う……」
 
「爺さんっ!マ、マジでっ!これがっ!!」
 
ジャミル達は、遂に探していた花を漸く見つけたのであった……。だが。
 
「しかしのう、この花は100年に一度しか花を咲かせない
不思議な花なんじゃよ、それが丁度今年だったらしい……、
とても貴重な花なんじゃ、今の旦那様の前の代から大切に育て、
守られて漸く花を咲かせた、しかも、蜜を吸えば、一瞬で花は
枯れてしまうかもしれん……」
 
「そんな、……駄目よ……、私達がお花さんの命を奪って
しまう事になるかも知れないわ……」
 
「……アイシャっ!それじゃ何の為に一体此処まで来たんだよっ!」
 
「ジャミル……、大丈夫だよ……、他にきっと元に戻れる
方法あるよ、だから別の方法探そう……、それにね、私……、
もしもこのまま元に戻れなくても……」
 
「アイシャ……」
 
其処まで言い、言葉を止めてアイシャはジャミルの瞳を
真っ直ぐに見上げた。
 
「……優しい娘さんだ……、さあ、すぐに蜜をお飲みなされ、
ココロ花もきっとそれを望んでいる……」
 
「えっ?お、お爺さんっ!」
 
「実はの、この花はもうどのみち死にかけておる、病気じゃ……、
長くはないんじゃよ、長い間の時間を掛け……、漸く花に
なったと言うにのう……、じゃが最後にあんた達のお役に
立てればこの花も本望じゃろうて……、さあ、飲みなされ……、
二人でこれを指して蜜を吸うと良い……」
 
庭師はそう言うと、ストローを二人に渡した。
 
「爺さんっ!ホント、有難うな……、何て礼を言ったらいいか……、
俺、分かんねえ……、……こういうの苦手で、いや、本当、有難う……」
 
「有難う、お爺さん、ココロ花さん、……本当に有難う……、
私は今、男の子の姿だけれど許してね……」
 
アイシャは蜜を吸う前に花にそっと小さくキスをし、心から
お礼をしたのであった。
 
「さあ、坊や、早く娘さんを元に戻しておやり、そしてあんたも
早う男らしくなりなさい……、もうオカマはウンザリじゃろうて……、
はは!」
 
「は、はあ……」
 
「ぴきゅ!良かったね、アイシャ!」
 
「うん、チビちゃんも……、此処までついて来てくれて
本当に有難う!」
 
「よし、アイシャ、一気に行くぞ……、な、何か……、
カップルジュースみてえ……」
 
「ジャミルったらっ!もうっ、真面目にやってよっ!」
 
「わ、分かってるよ、せーのっ!」
 
二人同時に花にストローを指し、蜜を一気飲みする……。
 
「ぴ、ぴいい~、ジャミル、アイシャ……」
 
「大丈夫かのう……」
 
……2人を見守るチビと庭師もハラハラ……。
 
「……っ!」
 
「お、おっ!?」
 
「ぴいっ!ジャミル、アイシャっ!」
 
……蜜を吸った二人は、直後、地面にひっくり返ってしまう……。
 
「大丈夫か、坊や、娘さん!しっかりしなさい……!!」
 
庭師が慌てて二人に駆け寄り、助け起こした。
 
「う……っ、頭……、いってえええーっ!何か蜜吸ったら急に……、
目の前がクラクラして……、お?お?おおおっ!?」
 
「ぴい~、ジャミル、アイシャ……、しっかりしてきゅぴい~……」
 
「……チビちゃん、大丈夫よ、心配してくれてありが……、
……あら?私……、胸が……」
 
「うっしゃあああーっ!お、俺の……、○子珍が……、
ちゃんとあるっ、夢じゃないんだな……、マジで……」
 
「ジャミルったらっ!大きな声出したら又警備兵が来るわっ……!
でも、わ、私……、本当に元に戻れたんだわ…」
 
「……ぴいーっ!アイシャ、アイシャ、良かったきゅぴ……、
ぴー、……もう、○ん○んのあるアイシャは嫌だよおお~、
びいい~!!」
 
チビは大泣きしながら漸くやっと元に戻ったアイシャの
胸に飛び込んだ。
 
「……チ、チビちゃんたら……、もうっ!でも……、有難う、
チビちゃん……」
 
アイシャも涙を流しながら、本当の自分の身体でチビをぎゅっと
ハグするのだった。
 
「うむ、良かった、良かった!」
 
庭師もパイプを吸いながら、元に戻った二人を優しい眼差しで
見つめ心から祝福した。
 
「びい~、ジャミルっ!」
 
「な、何だよ……、チビ……」
 
「それじゃ折角元に戻ったから、チビが最初にお仕置きする
きゅぴっ!お顔を出しなさいっ……!!特大おならの刑っ!!」
 
「こ、こら待てチビっ!んなの後だ、後っ!早くアル達と
合流しなきゃなんねんだからっ!」
 
「ぎゅっぴ……、それじゃ後でアルとこむぎちゃんと一緒に
お仕置きするきゅぴ……、こむぎちゃん、一度学校の先生
やりたいっていろはちゃんに言ってたから、長いお説教
されるんじゃないの?」

「わ、忘れてた……、……俺、無事でいられるかなあ~……?」
 
……100パー回避不可能……
 
「……ココロ花さん……」
 
「ふむ、咲いた花は枯れてしまったが……、又新しい種を植え、
次の世代まで花の命を託そう、……それが今生きて此処のお世話を
させて貰っている儂の使命じゃ……」
 
「はい、……お爺さん、本当に有難うございました……」
 
「娘さん、悲しいお顔はもうよしなされ、ココロ花も
悲しむ……、折角元に戻ったんじゃ、どうかいつも笑顔を
忘れない様にしておくれ……」
 
庭師はそう言うと、笑ってアイシャの頭をそっと撫でた。
 
「はいっ……!」
 
「……おや?又庭が騒がしい様じゃが……」
 
 
……くっそっ!一体何処行きやがったっ!舐め腐ってからにっ!
 
もう一度、屋敷の中も調べた方が良さそうだな……
 
も、もたもたしてると、お、俺達がルーゼ様にっ……!!
 
 
「……あんたら、逃げるのなら今かも知れん、間抜けな警備兵が
屋敷に戻って行った様じゃ……」
 
「わ、分った……、でも……」
 
ジャミルは心配そうに庭師の方を見るが……。
 
「儂の事なら心配いらんて、それよりも、あんた達を信頼して
よいかのう、どうか、旦那様と、このナンダ・カンダ家を
救って欲しい……、頼む……」
 
「……ああ、約束するよ、俺達、必ず此処に戻って来る、任せろ!」
 
「待ってて下さい、お爺さんっ!」
 
「ぴきゅ、おじいさん……」
 
チビもお別れに庭師の顔をペロペロ舐めた。
 
「有難うな……、さあ、お行きなさい、急がないと
夜が明けてしまうぞ……」
 
「よしっ、行くぞっ、アイシャっ、チビっ!」
 
……ジャミル達は自分達を応援してくれ、そして力に
なってくれた、ユウ、庭師に心から礼を言い、無事屋敷を
脱出する事が出来たのだった……。
 
 
「はあ、……チビ、街まで後どれくらいだ?匂いで分るか?」
 
「……うん、もう、そんなに遠くないよお~……」
 
「うふふっ」
 
急にアイシャがジャミルの方を見て笑い出す。
 
「な、何だよ、なんかおかしいか?俺の顔……」
 
「ううん、……やっぱり……、その帽子はジャミルが
一番良く似合ってるわ……」
 
「うん、アイシャ……、お前もな……、その服……、やっぱ
お前じゃないとな……」
 
二人が顔を見合わせ、微笑んだ頃……、漸く日も昇り始め、
新しい朝がやって来た……。
 
 
「やれ、夜も空けたか……、坊や達はどうしたかの、無事街まで
辿り着けると良いが……」
 
「……おいっ!庭師っ!!」
 
……けたたましい罵声がし、警備兵が乱暴に温室のドアを蹴った。
 
「何ですかのう、こんな朝早くから……」
 
数人の警備兵が温室に傾れ込んでくる……。警備兵は庭師を
取り囲み、一斉にサーベルを向けた……。
 
「……ルーゼ様がお呼びだ、すぐに屋敷まで来い……」
 
「ふう、やれやれ、そんな物騒な物を向けんでも儂は行きますよ……」

冒険編17 突撃、再度傾れ込みへ

ジャミル達を匿い、逃がした事がばれてしまった庭師は屋敷内の
ルーゼの執務室へと連れて行かれ、取り調べを受けていた……。
 
「しつこいの、儂は何も知らんと言っておる……」

「そう……、実はね……、警備兵が皆一旦、屋敷の中に戻って
行ったでしょう?あの時よ、何人かに庭園を見張らせていたの、
……だから小娘達が逃げて行く処も当然、目撃しているのよ……」
 
「……何と卑怯な……、下賤な奴め……」
 
「ゲス、小娘共を追いなさい、街の方に逃げた筈だから、
まだあまり遠くには行かない筈よ、徹底的に探すのよ……!」
 
「オウ、任せとき!げへへっ!お前ら、行くぞ!」
 
ゲスは数名の兵を引き連れ、街へと繰り出して行った。
 
「のう、あの子達が一体何をしたと言うんじゃ、儂にはアンタの
考えておる事が分らぬよ……」
 
「うるさいわね!乞食の貴方には関係のない事よ!これはすべて
旦那様の命令!私はそれに従って動いているのみ!……それから
あなたは今日で庭師は解雇よ、もう用済み、あのゴミ庭園もすべて
焼き払う事になったわ……」
 
「……何と!?儂が解雇になるのは構わんが……、庭園を
焼き払うじゃと?旦那様が大切にしておられるあの庭園を……、
一体誰がそんな事を……」
 
「決まっているでしょう!旦那様の命令よ!さあ、あんた達!
この口うるさい爺さんをさっさと地下牢へ連れてお行き!
……うふふ、あなたは近い内にギロチン処刑よ……」
 
「……旦那様……」
 
庭師はショックのあまり、それ以上口を聞けず……、
両手には鎖を掛けられ、兵士に連行され、執務室から出された。
 
「……」
 
丁度、地下牢へと連行される処で、状況を見ていた領主と
庭師がすれ違った……。
 
「……残念だよ、じい、君とは昔からの長い縁だったが、何故、
私に逆らう様な真似を……、とてもショックだよ……、嘆かわしい……」
 
「……旦那様、きっとあなた様ももうすぐ救われますじゃろうて、
どうかお心を強くお持ち下さい……、どうか……、信じております……」
 
「……さっさと歩けっ!この老いぼれ爺めがっ!!」
 
庭師は兵士に鞭で叩かれ、脅されながら弱弱しい足取りで
よろよろしながらも地下牢への階段を降りて行った……。
領主も無言で自身の部屋へと戻って行く。
 
「何だ、あの爺さん、何か悪い事でもしたんかなあ?」
 
もう2組……、その時の状況を廊下で目撃していた者がいた。
不良娘のケイと暇人ブウ子である。
 
「おっほ!おっほっ!ほっほっ!」
 
「……あんた、相変わらずバカだねえ~……」
 
「きゃああああーーっ!お、お化粧してたら、ち、遅刻して
しまいましたかしら!ルーゼ様に怒られてしまうわあーっ!
きゃああーーっ!!」
 
マフミも、慌てて走って来た……。
 
「いや、全然セーフだよ、それにしても、今日又、
呼ばれてるのはこれだけ?馬鹿に少ないね……、あの
アイシャとか言う奴とユウはどうしたんだろ?今日は姿が
見えないけど……」
 
「はあ、ま、又旦那様に御呼ばれするなんてえーーっ!
きゃあああーーっ!!わ、私っ!どうしたらいいのかしらっ、
きゃああああーーっ!!」
 
「……いちいち絶叫するのやめれ、やかましいわ……」
 
ケイが溜息をつくと、ブウ子が踊り出した……。
 
「きっと、旦那様が美味い物食べさせてくれるんだっ!
おっ、ほっ、ほっ、ほっ!」
 
「はあ、こいつも呑気なブタだよ、たく……」
 
「あなた達、旦那様にご挨拶の時間よ、……此方へ
いらっしゃい……」
 
ルーゼが執務室から出、女の子達に声を掛けた……。
 
 
そして、場面は久しぶりに仲間サイドへと……。
 
 
「ダウド、起きなよ、朝だよ、また動かなくちゃ……」
 
「う……、アル……、も、もうちょっと……」
 
「オラのモーニング生屁だゾ!」
 
「ボー、サー、ビス……」
 
「……ちょ、わっ、わあああーーっ!起きるよ、起きるからあ!
うう~、とほほ~……」
 
何処かの民家へと続く石の階段で寝ていたダウド。しんのすけと
ボーちゃんに臭い半尻を向けられる。……これでは起きるより
仕方がなかった。
 
「こむぎははやおきだわん!♪ダウドもいっしょにおさんぽしよっ!」

「う、うわ……、嬉しいけど、何だかなあ~……」

子犬モードのこむぎはダウドの頬をペロペロ舐めてあげる。
 
「こむぎ、ダウドさんだって疲れてるんだよ……」

「あれれ……、わんっ!なつかしいあしおとがするよ……!」

「どうしたの、こむぎ?……あ、あれ?」
 
 
「……おーいっ!」
 
「みんなーっ!」
 
 
「あれ?あれって……、ま、まさか……」
 
「ダウド、どうしたの……?」
 
声のする方向を見ていたダウドが震えだし……、アルベルトも
不思議がるが。
 
「みんなーっ!あははっ!」
 
「きゅぴーっ!」
 
「アイシャだ、……チビちゃんもいる……、戻って来た……、
ジャミル達が戻ってきたよおおーーっ!!」
 
「……えええええっ!?」
 
ダウドの声にアルベルトやいろは達も確認し、目を見はった。
確かに……、此方に向かって走ってくるのは間違いなく
ジャミル達であった。
 
「はあ~、……や、やーっと、此処まで何とか来れた、
……へへ、元気だったかい?」
 
「そのお気楽な態度、軽い口調……、まさか……、君……、
本当の身体のジャミルかい……?」
 
……アルベルトが半目で尋ねると、ジャミルが返事を返した。
 
「いやあ~、色々あったけど、お蔭さまで無事、俺ら元に
戻れたよ、ちゃんと花の蜜も吸わせて貰ったんだ、皆にも
迷惑掛けちまったけど……、ほ~んと、ありがとな!」
 
「ジャミルさん、アイシャさん、お2人とも……、も、元に
戻れたんですね!」
 
「ええ、いろはちゃん、……御免なさい、心配掛けてしまって……」
 
「ジャミル、アイシャ!おかえりなさーいっ!」
 
「こむぎちゃん、ありが……きゃっ!!
 
「良かったあーっ!本当に元にもどれて良かったねーっ!
アイシャっ!!わたしもうれしーよっ!!」

こむぎは少女モードになるとアイシャに飛びついて彼女の身体を
思い切り抱擁するのだった。
 
「うん、……本当に……、みんな……、ありがと……、
っく、ふぇえ……」

「アイシャさん、良かったです、本当に……」

「よかったねえ~!よかった……、わああ~んっ!」
 
無事に元に戻れたアイシャは、いろはやこむぎと泣きながら
頑なに抱き合う。女の子達、こっちは良かったのだが、
……ジャミ公の方は……。
 
「……良かった、本当に……、さて……」
 
「……アル?ちょ、ちょいお待ち!何だその真っ黒い面はよ!」
 
「うふふ、うん……、実は僕もね、この日をどんなに
待ち漕がれていた事か……、……も、もう、我慢出来なくて……、
うふふ、うふふふ……」
 
アルベルトも待ってましたとばかりに、スリッパをさっと取り出した……。
 
「わーっ!アル、落ち着きなよお!気持ちは分るけど、今は
ジャミル達の話も聞かなくちゃ!」
 
「……み、皆っ……!私達の所為で…、本当に迷惑掛けて……、
本当にごめんなさい、でも私達、皆のお蔭でちゃんと身体が
元に戻れたのよ、本当に有難う……」
 
「……アイシャも本当に……、元に戻ったんだね……」
 
ジャミルに向けスリッパを振り上げたアルベルトの手が
アイシャの姿を見て、空中で止まった……。
 
「うん、もう大丈夫よ……」
 
「と、取りあえず助かった……、かな……」
 
「おお~、アイシャおねいさん、おかえりだゾ~……」
 
「ボーボー」
 
「たいやっ!……やいっ、やいっ!(ケッ、……全然心配なんか
してないってのよっ!)」

「アンっ!アンっ!」
 
「有難う、しんちゃん、ボーちゃん、ひまちゃん、シロちゃんも……、
又会えて良かった……」
 
「……チビもよく頑張って二人を守ってくれたね、有難う……」
 
「きゅぴ、……チビ、疲れたきゅぴ……、お腹もぺこぺこ
だよお~……、ぴ……」
 
「よしっ、帰ったら美味しいご飯をいっぱい食べようね、
もう少しだからね……」
 
アルベルトがチビを撫でると、チビもアルベルトに
スリスリ頬を寄せた。
 
「じゃ、じゃあ……、もう二人が元に戻ったんだから、
この異世界には用はないよね?じゃあ早く戻ろうよお!」
 
「でも~、ダウド、戻れるほうほう知ってる?」
 
「……え、そ、それは……」
 
こむぎに突っ込まれ、しどろもどろになるダウド……。
 
「ちょっと待ってくれよ、まだ終わってないんだ……」
 
「……どういう事だい?ジャミル……」
 
アルベルトがジャミルの方を見た……。
 
「実はな……」
 
ジャミルは自分が屋敷に連れて行かれた後の経緯を仲間にも
急いで話した。
 
「……急がないと、屋敷に残されたお妃候補の女の子達、
それと、俺達を匿ってくれた爺さんが危ないかもしれねえんだ、
皆、頼むっ!迷惑掛けちまうのは分かってるけど……、
もう少しだけ、力を貸して欲しいんだ、頼むよ……」
 
「……はあ、もう迷惑は充分掛けてるから、第一、スラれた
お金の方はどうしたの?君、勢いよく飛び出して行ったらしい
割には……」
 
「う、うっ!……済まねえっ!面目ねえ……」
 
「いいよ、……分ったよ、今はそれよりも、その屋敷に
潜入する方が先だね、了解!」
 
「……ア、アルっ!」
 
「何だか大変な事になってるんだね、よーし、わたし達も最後まで
おたすけするよっ!ね、いろはっ!」
 
「うんっ、困ってる人は助けてあげなくちゃ!」
 
いろはととこむぎは頷き合う。そして笑顔でアイシャの顔を見る。
 
「ありがとう、いろはちゃん、こむぎちゃん……」
 
「はあ~、結局どうしてもこうなるんだよねえ~、どうあっても
ちゃんと終わらせないと帰れないみたいだねえ~……、分ったよお~……」
 
ダウドも頷き、嫌々だが覚悟を決めた様であった。
 
「オラ達も戦うゾ!」
 
「ややややいっ!」
 
「ボオオー!」
 
「……し、しんちゃん、ひまちゃん、ボーちゃん、
あなた達は駄目よっ!」
 
「アイシャ、このままこのコ達をおいてきぼりはできないよ、
大ジョーブ、ここまでいっしょに来てくれたんだもん、
ガッツあるよ!だから、こむぎたち、どんなときでもいっしょ、
ねっ、がんばろっ!」
 
「ほほーいだゾ!だってオラ、嵐を呼ぶ幼稚園児ですもの~!」
 
「たいやいっ!」

「アンっ!アンっ!(ボクもっ!)」
 
「ボ……(ちょっ、と、うん、こ、でる……、こまっ、た……)」
 
「よーしっ、こむぎっ、行くよっ!」」
 
「みんなでガルガルなわるいヒトたち、おしおきっ!そしたら元の
世界にいっしょにもどろーねっ!」」
 
こむぎはそう言いながら気合いを入れ、、再びひまわりを背中に
おぶうのだった。
 
「……本当に、皆……、有難う……」
 
「きゅぴ、アイシャ、チビも頑張るよお!」
 
「うんっ、そうね、チビちゃんっ!」
 
「……よおーしっ、最後の締めだっ!……全軍突撃いいいーーっ!」
 
「おおおおおーーっ!!」
 
ジャミルの掛け声で、まるで戦国武将の如く、皆揃って屋敷までの道を
走って行った……。

冒険編18 悪女、遂に本性を現す

ジャミル達を追う、ゲスと下級兵軍団……
 
 
「いいか、てめえら!草の根分けても探し出せっ!徹底的に探して
奴ら全員フン捕まえろっ!いいな!?」
 
「はーい!今、草の根分けて探してますーっ!あ、蟻がいました」
 
「……そう言う分り切ったお約束の冗談事をするなっつっ
てんだっ!馬鹿が!」
 
「あいたあっ!」
 
ゲスが兵士の1人のケツを思い切り蹴り飛ばした……。
 
「ふざけやがってからに、雑魚が……、こっちゃ忙しいんだ……」
 
「隊長、……あ、あれはなんでしょう……?」
 
「ああん?今度は何だ?」
 
「前方から、な、何か煙を上げて走ってくる、お、恐ろしい物が……、
う、うわあああーーっ!」
 
危機感を感じ、兵士が泡食って逃げ出そうとするのをゲスが
しっかりと捕まえた。
 
「てめえもっ、ふざけてんじゃねえっ、それでもナンダ・カンダ家に
仕える兵士かっ!!」
 
「だって~、な、何か怖いですよー!」
 
「情けねえ奴だ!クソめっ!」
 
ゲスはそう言い、前方から土煙を上げて走ってくる変な
集団を見据え、道の真ん中に立ちはだかった。
 
「おいっ、其処の変な集団っ!止まれええっ!」
 
しかし、集団は走る事を止めず、そのまま走って突っ込んで
来る勢いである。
 
「……止まれっつってんのがわかんねーのかあっ!クソ共おおっ!」
 
 
……ドカゴスドスゴスッ!!
 
 
「……うわああああ~……」
 
「た、隊長おおおお~……」
 
変な集団はそのまま暴走したままゲスに体当たりし、
……ゲスを土手から下の川に叩き落とし、そのまま
走って通過して行った。
 
「どうしましょうー!隊長がっ、川に転落をっ!あ、あわわ……」
 
「……このままほおっておくか、その方が平和の為かも知れん……」
 
「ああ、隊長おおお~、……そ、そうしちゃいますか…?」
 
「うむ……、事故だったのだ、見なかった事にしよう……」
 
ゲスに付いてきた下級兵士たちは頷き合う。本当はこの連中も
あまりゲスを決して快くは思っていない様子であり、ゲスは
そのまま川下を流されていった。
 
「あ、後、その、屋敷までどれくらいなの……?」
 
走りながら息を切らし、ダウドがジャミルに訪ねる。
 
「そんなに遠かねえよ、もう少しだっ!」
 
「ひ、ひいいい~……」
 
「あ、屋敷の門だよおっ!」
 
チビの声に前を見ると、もう確かに屋敷の門は目の前であった。
 
「よしっ、もう少しだっ、このまま勢いを落すなっ!」
 
「おおおおおーっ!」
 
暴走集団は更に勢いを増し、屋敷まで加速しながら突っ走って行く。
 
 
(……そろそろかしら、合図を出さねば……)
 
屋敷の中のルーゼも何かを感じ取ったのか、向ってくる
ジャミル達に対し、本格的に動きだしそうであった……。
 
「着いたっ!後は、このまま屋敷の中まで一気にっ!?」
 
ジャミルがそう言った時、屋敷の入り口で今度はエリート兵らしき
集団がジャミル達を出迎えた。
 
「此処は通さぬ……」
 
「どけっ!邪魔だっての!」
 
エリート兵士集団はバスタードソードを構え、ジャミル達に
じわじわとにじり寄ってくる。
 
「いろはちゃん、こむぎちゃん、此処は私達に任せて!
しんちゃん達を!」
 
「……は、はいっ!こむぎっ!」

「うんっ!」

アイシャはこむいろコンビと子供達を後ろに下がらせ、エリート兵達を
きっと睨んだ。

「私も数日の間、ストレスが溜まってるんだからっ!食らいなさーいっ!」
 
「わああああーーーっ!?」
 
プッツン暴走アイシャの跳び蹴り……、油断していた兵士達を
次々にドミノ倒しでおっ倒す。

「よしっ、やれば出来るっ!」

「アイシャさん、凄いっ!」

「かっこいいよーっ!」
 
「くそっ!な、何を手こずっている!かかれ、かかれえーーっ!」
 
「舐めて貰っちゃ困るんだっての!」
 
「びいいいーーっ!!」
 
エリート集団兵たちは尚も襲い掛かってくるが、ジャミルも余裕で
兵達を次々と蹴り倒して行った。チビは炎のブレスを吐き捲り、
兵達が持っているバスタードソードを燃やしていく。
 
「……秘儀、スリッパ連打っ!はああーーっ!」
 
 
パンッ!パンッ!パンッ!……パンッ!!
 
 
「……ぎゃーあああーーー!!」
 
 
響き渡る兵の悲鳴。アルベルトの連打スリッパ攻撃、
見事に兵達に炸裂する。
 
「アルベルトもすっごおおーーいっ!!わたしにも教えてーっ!
スリッパたたきーっ!いろはといっしょになんでやねんっ!
するのっ!」
 
「そ、そうかな……?何だか照れるなあ……」
 
「……いろはちゃん、彼女、感心するのはいい事だけど、くれぐれも
こむぎちゃんに習得……、真似させない様にした方がいいよお……?」

「ええ、ええ……?そうですか……?はあ……、ま、まだ
お弟子さん入りには早いって、こむぎ……」

「ええーーっ!!」

「何かな、ダウド、何か言ったかな……?」

「……きゃー!何でもないですううーーっ!!」

ダウドに迫るアルベルト……。こむぎは口を尖らせ変顔になる。
どうやら本気でアルベルトに弟子入りする気だった模様。
 
「オラもやるゾ!このままひっこんでいられないっ!屁攻撃だゾっ!!」
 
しんのすけはエリート兵達に向かって全員に砲屁をお見舞いする。
あまりの臭さにエリート兵達は一気に全員ぶっ倒れた……。
 
「こ、効果覿面……、だな、でも、くっせえなあ~……」
 
「任務完了だゾ!」
 
「……よ、よし、このまんま……、屋敷ん中、突撃いっ!」
 
一同、鼻を摘まみながら屋敷に突入。同じく、屋敷の中もエリート兵
だらけであった……。
 
「……く、糞めがあっ!」
 
中のエリート兵達は先程の外でのジャミル達の善戦を伺っており、
かなり慌てている様であった。
 
「やるなら掛って来いってんだよ!」
 
「ほーい!オラも準備万端!」
 
「ボ……、(まけ、ない……)」
 
しんのすけと、対抗意識を燃やすボーちゃんが揃ってケツを出し、
ジャミルの横に並んだ。
 
「……ちょ、ちょっと待ってくれっ!」
 
急に、兵の一人が命乞いを始め、ジャミル達の前に出る。
 
「何だ?どうしたんだ……?」
 
「……本当は俺達だって、こんな事したくないんだ、全ては
あの女……、ルーゼの所為なんだ、アイツが来てからこの屋敷は
もう崩壊寸前だ、奴は何かお、恐ろしい事を企んでいる……、
頼む、どうかあの女を止めてくれっ!!」
 
「お願いするっ……!!」
 
「……おっさん達……」
 
他のエリート兵達も次々と土下座し、ジャミル達の前に
頭を下げた……。
 
「何?裏切るのね、本当に情けない……、まあ、最初から
あんた達なんか相手にしてないけどね……」
 
……コツコツと、ハイヒールの音が屋敷内に響き渡る……。
 
「ルーゼっ!!」
 
「……ひいっ!?こ、この人なのっ!?」
 
「そうだ、ダウド、今更脅えんなよっ!……いつもの事だけどな……」
 
「あうううう~……」
 
「おけしょーのニオイのうすいイジワルなガルガルおばさんだあっ!」
 
「……こむぎっ!ダメだよっ!」
 
「言ってくれるじゃない、糞小娘……、あら、アンタ、どうやら
本当は人間ではないのかしら、畜生の臭いだわ、まあいいわ、
この私に暴言を垂れた事、後悔させてやる……」
 
ルーゼも蛇の様な目つきになると、こむぎを睨み返した。
 
「たやいやいやいっ!!(このブスブスブスっ!!)」
 
……流石に赤ん坊の暴言まではルーゼにも理解は出来なかった。
 
「み、皆さんっ!此処は危険です、他の方にも声を掛けて、
どうか早く逃げて下さいっ!」
 
アイシャがエリート兵達に向かって必死に呼び掛ける。
 
「す、すまない……、旦那様の事を……、どうか宜しく頼む……」
 
「……おっさん?」
 
「旦那様は本当はあんな方ではない筈なんだ、……俺達は信じている……、
頼む、……どうか、旦那様を救ってくれっ!」
 
「分ったよっ、おっさん!」
 
ジャミルの言葉にエリート兵達は頷き、全員屋敷から脱出した。
 
「これで、この屋敷の兵達はアテに出来なくなったな、
後はお前だけだぞ?」
 
「……くくく、あははははっ!それで勝ったと思ってるのかしらあ?
本当にガキの浅知恵ね、おバカさん達だこと!」
 
「どういう事だよっ!?」
 
「ジャミルっ、あれっ!」
 
「!?」
 
アルベルトの言葉に正面を見ると……、顔にまるで生気の無い
ケイ、マフミ、ブウ子の3人娘がルーゼの背後に突如
出現したのである。
 
「お、お前らっ!!」
 
「……私達……、ルーゼ様、主の為……、尽くします、
この命枯れるまで……」
 
「きゃーきゃーきゃーきゃー、きゃー……」
 
「腹減った、なんか食わせろ……、ほっ、ほっ、ほっ……」
 
「……洗脳されているみたいだ、ちょっと厄介だよ、これは、
なんて卑怯な……」
 
アルベルトが唇を噛む。しかし、洗脳されていても、自我を
忘れていない娘が約2名……。
 
「そうやって……、領主の奴も洗脳したってのかよ……」
 
「さあ?それはどうかしら?だって、あのお方は特別ですもの、
こんな雑魚とは格が違うのよ、うふふ……、そう言えばあなた
やけに急に男らしくなったわね、もうオカマは廃業したのかしら……?」
 
「う、うるせーなっ!こっちにだって事情ってモンがあんだよっ!」
 
「……そ、そうよっ!」
 
アイシャも反論し、ルーゼに猛抗議した。
 
「あら?あなたは逆に女の子らしくなったわね、どういう事かしら?」
 
「いいのっ!あなたになんか分かって欲しくないのっ!」
 
「そう……、ならこっちも追求しないわ、さあ、あなた達、お仕事よ……」
 
「きゃ、きゃっ!?」
 
「ぴいっ!アイシャっ!!」
 
「ああっ!?」
 
ルーゼが指を鳴らすと、ケイとマフミが急に瞬間移動し、
左右に別れ、それぞれ片方づつアイシャの腕を捕まえ拘束した……。
 
「さあ、連れて行きなさい、例の場所へ、もうこの際、真面目な子でも
何でも構わないわ……」
 
「やめろっ!お前らっ!!」
 
「……ぎゅぴいいいーっ!!」
 
「あら?やけに飛び回るクソ虫がいると思ったら、本物の
ドラゴンじゃないの、成程ね、これがゲスの言っていた……」
 
「アイシャを放せっ……、じゃないと……、チビ、本気で怒るよ……、
許さない……」
 
……チビは怒り状態爆発で……、今にも本当にルーゼに向って
ブレスを吐きそうであった。
 
「近寄るんじゃないよっ!……でないと、この小娘の細い腕……、
おかしなマネしたら、今すぐへし折るわよ、あんた達、
見せてやりなっ!!」
 
「はい、……ルーゼ様……」
 
「きゃーっ……、やります……」
 
「……い、痛い……、お願い、やめて……」
 
ケイとマフミが左右からそれぞれ掴んだアイシャの腕を折ろうと
2人同時に思い切り力を込めたのである。
 
「……アイシャさんっ!!どうしてこんな事するのっ!お願い!
止めてーーっ!!酷い、酷いよっ!!」
 
「イジワルはダメって言ってるでしょっ!ガルガルも
ダメェェーーっ!!」
 
普段優しいいろは……。そしてこむぎはルーゼの卑怯な手口に
怒り爆発。それを見たルーゼは2人を小バカにした様に笑い、
凄い形相になった……。
 
「薄汚い蝿共!近寄るんじゃないって言ってんだよっ!お前ら、
早く小娘を連れて行きな!!」
 
「……ジャミル、みんな……、チビ……ちゃん……」
 
アイシャが力なく声を出した瞬間、アイシャを拘束していた
ケイもマフミも、そしてアイシャも……その場から姿を消して
しまった……。

「……アイシャーーっ!くそっ!奴等は一体何処まで
卑劣なんだっ!許さない……!」

「もう嫌だあーーっ!やっと……、入れ替わり騒動は
一件落着かと思ったのに……、どうしてなんだよお……、
アイシャあああ~……」

「……ジャミル……、今度はアイシャがユーカイされちゃったよーっ!」

「アイシャさん……、やっと元に戻れたのに……、こんなのって……、
ないよ……、酷すぎるよ……」
 
「アイシャ!くそっ、待ってろ……、必ず助けに行くからなっ!」
 
アルベルト達も肩を落とす……。ジャミルは悔しそうに歯噛みし、
目の前のルーゼを睨む。漸く2人が元に戻ったその先に待ち構えて
いた試練であった……。

冒険編19 行く手を阻むブタ

「……ジャミル、アイシャは一体何処に連れて行かれたんだろう……」
 
「……恐らく、あの領主の処だ、急がねえとっ!」
 
「そうはいかないわよ、ブウ子、次はあなたのお仕事よ、
相手しておあげなさい、終わったらたっぷりとご飯を
食べさせてあげる……」
 
「うがあああーーっ!どすこーーいっ!」
 
「う、うわああっ!?」
 
ブウ子は力を込め、それこそ床に穴を開けそうな勢いで
シコを踏み、ジャミル達を睨んだ。
 
「飯の為ならブウ子頑張る!ふんっ!」
 
「ふふ、あなた達は精々其処でこのブタと相撲でも取って
遊んでなさい、じゃあ……」
 
ルーゼはほくそ笑いしながら、ツカツカとハイヒールの
音を靡かせ、その場を去って行こうとする。
 
「野郎っ!待ちやがれっ、おいっ!!」
 
しかし、行く手をブウ子が挟んで邪魔をし、ルーゼは完全に
その場から姿を消してしまう。
 
「オラオラ!かかって来いッ!お前達倒せばご飯貰えるっ!
ふんっ、ふんっ!」
 
「邪魔するならわたしだってとことんやるよっ!で、でも、
女のコ……、なんだよね?それでもまけられないっ!
こうなったらおすもうとるっ!いろはと前にテレビで
みたもん!ショーブだあっ!はっけよーい!」
 
「こむぎ、無茶しちゃダメっ!って、きゃーーっ!!」」
 
「ふんがああーーっ!!」

暴走しシコを踏みそうになるこむぎを慌てて止めるいろは。
ブウ子、容赦せず、二人の間に割って入ると、張り手を
繰り出そうとするが、間一髪、慌てて飛んで避けた……。
 
「……こむぎ……、何だか急にねむくなっちゃった……」

「……こむぎっ!」

いろはは慌てて子犬に戻ったこむぎを抱き上げる。疲れて
眠くなってしまい、元に戻ってしまったのだった。
 
「何だ、何かケモノの様な匂いがするな、くんくん……」
 
「……だ、ダメっ!ダウドさんっ、こむぎを暫くの間、
お願いしますっ!……ブウ子さん、お願いです、こんな事は
もう止めましょう!」
 
「ええええーーっ!?うわーーっ!!」

「うるせーこの野郎!どけって言ってるだろうが!」

「……ブウ子さん!」

いろはは慌ててこむぎをダウドに預けるが、ブウ子は今度は
こむぎを抱いているダウド目掛け突進する。いろはは何とか
ブウ子と話あって説得したかった。しかし、無理だった……。
 
「おい、其処の情けないツラのお前っ!そのケモノをよこせーーっ!
おっほっ!!」
 
「……ダウドさんっ、は、早く逃げ……きゃあーーっ!!」
 
「肉をよこせええーーっ!!」
 
「ジャミルっ、いろはちゃんとこむぎちゃんが危ないっ!」
 
「……よせーーっ!何でもかんでも食うんじゃねえーーっ!
このブターーっ!!」
 
「ぶひいいーーっ!!」
  
ジャミ公の飛び蹴り、ブウ子に炸裂。ブウ子は壁際まで
おっ飛ばされる。その隙を逃さず、倒れたブウ子に
アルベルトがスリッパ連打攻撃で追い打ちを掛けた。
 
「悪いけどっ!暫く眠っててくれっ!連打連打連打っ!
……強連打っ!」
 
「あ、相変わらず……、アルってば、凄いよお~……」
 
「おお~、よし、オラ達もやるぞっ!」
 
「ボオオー!」
 
「やいー!」

「アンっ!」
 
「やるって、何をやるの?……まさか……」
 
ダウドは又ケツを出し始めたしんのすけ達に嫌な予感を覚える。
……案の定、矛先はダウドの方へも……。
 
「ボーっとしてんじゃないゾ!ダウドのお兄さん!お兄さんも
一緒にやるんだゾ!」
 
「ええええーーっ!?」
 
「チビもお手伝いするきゅぴ!ほら、ダウ!早くお尻を出すぴいー!
皆で一斉にオナラ噴射攻撃きゅぴ!早くしないとあの怖いおデブ
お姉さんが又起き上がってくるきゅぴ!」
 
「……いーやーだああーーっ!!」
 
「「せーのおーーっ!!」」
 
ダウドが躊躇している間に、ブウ子に向け、お子ちゃま集団+
シロ、チビがブウ子に向け、一斉にオナラ射撃開始。効果は
抜群の様であったが、ダメージは当然、ジャミル達の方にも
来る訳である……。
 
「……おええ~、お前らマジで何食って……、お、おえええ~……」
 
「取りあえず……、この変な奴は完全に気絶したみたいだけど……、
うぐ……、大体君だって普段は人の事言えないだろ……」
 
「うるせーよ、腹黒……」
 
「……あれれ?何だかすごいニオイだねえ~、ふぁあ~……」
 
「こむぎ、大丈夫!?」

「うん、目はばっちりさめちゃった!」
 
悪臭のお陰?で、目を覚したこむぎは再び少女モードになる。しかし、
安心したのもつかの間、ブウ子は直ぐにモソモソと身体を動かし
始めたのである。
 
「ぴ?ジャミルっ、大変っ!ブウ子が起き上がりそうだよお!」
 
「何っ!?やべえっ!」
 
「……う、わ、私は今まで何してたんだ、確かルーゼに呼ばれて、
領主の部屋に……、その後の記憶がないぞ???ブウ~?」
 
ブウ子がむっくり起き上がり、キョロキョロと辺りを見回す。
 
「くんくん、くんくん……、でもさっきより何だか嫌な
ニオイしなくなった……」
 
チビが恐る恐るブウ子に近づきニオイを嗅いで確認する。
ふと、チビとブウ子の目線が合った。
 
「ぴ……?」
 
「お?何だこれは、うまそうな鳥だな、焼き鳥にして食うか?」
 
「ぴ……?ぎゅぴいいいーーっ!!」
 
嫌なニオイは感じなくなったが、チビは慌てて危機を感じ、
ジャミルの処に飛んで逃げた。
 
「ご、ご苦労さん、チビ……」
 
「ぎゅぴ……、……びい、びい、びいい~……」
 
ジャミルに張り付き、必死に息を切らし、チビが脅える。
 
「これって、い、一応、洗脳が解けたのかな、ねえ……」
 
「あんまり変わってない様な気もするけど……」
 
アルベルトとダウドも冷や汗を掻きつつ、口を開いた。
 
「美味いもん食わせてくれるつーから来たのに、結局何も
くれないじゃないか!頭きた!もう帰ってやるっ!ブウブウ!」
 
「はあ、やっといなくなるか、助かった~……」
 
「何か言ったか!?」
 
「いや、……何でもございませんので、どうぞ、早く
お家にお帰り下さい……」
 
「ああ、何か変な爺さんが地下牢に連れて行かれたみたいだっだぞ、
ギロチンにするってあの変な女が言ってた、じゃあな」
 
「っ、な、……何だとっ!?……爺さんっ!!」
 
散々暴れて一行を妨害したブウ子であったが、最後に重要な
情報を伝え、ブウ子はその場を後にする。……結局、領主が
何の為にブウ子を拉致したのか今はそれは分らず終いでは
あったが、どうでもいい故、別に誰も気にもとめていなかった。
 
「その、連れて行かれたって言うお爺さんが、もしかして……」
 
「ダウド、そうだ……、庭師の爺さんだ、俺達の為にっ!
くそっ、ルーゼの奴っ!……絶対に許さねえっ!!」
 
「こうしてはいられないね、急いで助けにいかないと!」
 
「で、でも、アル……、アイシャも捕まっちゃってるし、
どうしたら……」
 
「……ハア、ハア……、て、てめえら……、やっと
追いついたぞ、糞が……、絶対許さねえのはこっちだ……、
全員纏めてブッ殺してやる……」
 
「いろは、あのヒトっ!……あのおじさんもイジワルなガルガル
おじさんだよっ!」

「此処まで私達の後を追って来たんだね……」
 
……全身びしょ濡れのゲスが、等々屋敷まで戻って来たのであった。
 
「くそっ、またこんな時にっ!邪魔すんなよっ!!」
 
「……僕らが戦わなくちゃ!……子供達と女の子達を
守るんだっ!」
 
「ひいい~!ンモー、勘弁してよおー!」
 
「チビもやるよおー!」
 
いろは達女の子とお子ちゃま達を守る様にジャミル達男衆と
チビがゲスの前に出る。何としても邪魔をするゲスを倒して
此処は突破しなければならない処であるが……。
 
 
……そうはいかないのよ、あんた達、此処で全員バラバラになりな……
 
 
「え、えっ!?ジャミルさんっ!?チビちゃんっ!?」
 
「アルベルトっ、ダウドっ!……み、みんなが……、
消えちゃったよっ!」
 
いろは達を守れる唯一の男衆は突然その場から姿を消してしまう。
ルーゼが小細工をし、女の子勢と引き離し、屋敷内の別場所へと
送ったのである。その場には、いろはとこむぎ、お子ちゃま達と
シロだけが取り残され、絶対絶命に……。
 
「……お、おお……、いろはちゃん、こむぎちゃん、
ど、どうしよう……」
 
「び、びええ……」
 
「ボオ……」

「クゥゥ~ン……」
 
「しんちゃん、ひま、ボーちゃん、シロっ!大丈夫だよっ!
わたし達がついてるもん!」
 
「おやおや、頼もしいナイト様方はどっか行っちゃったのね、
そーかいそーかい、かわいそーにね、げっへへへっへ、残ったのは
嬢ちゃん達だけってか……、威勢がいいねえ、でも、いつまで
意地張ってられるのかなー!?」
 
ゲスは薄ら笑いを浮かべ刃物を取り出す。いろはは怯える
しんのすけ達を側に寄せ、ぎゅっと抱き締めると守る様に
抱擁する。だが、いろはの胸も恐怖で震え始める……。
しかし、食い縛るとこむぎの方を振り返る。
 
「こむぎ、覚悟は出来てる?今、この子達を守れるのは
私達だけだよ!」
 
「うんっ、いろは!しんちゃん達を守ろ!例えプリキュアに
なれなくても……!」
 
「そうだね、こむぎ……」

黒子はこむぎに人間への変身用にワンダフルパクトだけは
返してあるが、どう言う訳か、プリキュアには変身出来ず。
ヒーロー編でヒーローのアルカールが彼女達に力を貸し、
プリキュアに変身する事が出来た。……あの黒子は正体も、
やる事なす事、全てが謎である……。 いろはとこむぎは
そっと手を取り合う。だが、……ゲスは手に持った刃物を光らせ、
どんどんと迫って来るのだった……。彼女達はこれまで
優しき心でガルガルに変えられ苦しんでいる沢山の動物達を
癒やしてきた。その彼女達が、今、心無い人間に追い詰められ
最大の危機を迎えていた。

zokuダチ。セッション31

zokuダチ。セッション31

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-20

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work