PARCOのイタ飯

歯医者は最近できたみたい

 浦和のPARCOには、日曜日もやってる歯医者さんがあります。それはもう私にとって歯医者さんなんてものじゃないです。歯医者様です。神様です。天照大神と言ってもいいです。現生世界を光で照らした天照大神と言っても過言ではありません。あるいは天照大神が御籠になった岩屋からお出しになるきっかけを作った天鈿女命と言ってもいいでしょう。
 日曜日もやってる歯医者が浦和のPARCOにあるんだ。そう知った時、それはもう衝撃でした。なんたって日曜日もやってる歯医者というのはとても、とても希少価値の高いものだったからです。今、この現在、現生世界において日曜日もやってる歯医者というのは、とんでもない存在です。それはもう、セイントみたいなもんです。名前の前に、聖ってつくみたいなもんです。聖歯医者です。
 ただ、
 しかし、でも、
 同時に私には思い悩む事態でもありました。浦和PARCOは、浦和駅の東口の方面にあるからです。私はもう長い事、浦和、埼玉県の浦和の地域に住んでいますが、それまで浦和駅の東口にはほとんど行ったことがありませんでした。理由は浦和駅西口の住人だったからです。浦和駅西口方面の住人だったからです。浦和駅の西口方面の住人が東口、PARCOのある側に行くというのは、とても、その、抵抗があったんです。浦和駅西口には、コルソと伊勢丹があります。ちょっと歩いたらヨカドもあります。
 私は浦和に引っ越してきた当時から思っていたのです。
「これから浦和駅西口に御世話になるわけだし、浦和駅西口の顔を立てなくてはいけないな。よし、東口の方に行くのは極力避けよう」
 って。
 埼玉県さいたま市に引っ越してきて、もう十年くらい経つと思いますが、東口の方面には数える程度しか行ってません。PARCOに映画を観に行ったのが二回。ダイハードのラストデイと、スパイダーマンのノーウェイホーム。あとは未遂が一回。行ったら結構待たなくては行けなくて、連れが余所に見に行こうって言って、別の場所に移動、新宿のピカデリーに行って、結局最後は日本橋の所で観た。すごい移動した時。その時だけ。あとはまあ、東口出てすぐの所にあるミスドに行ったのが一回と、あと、ちょっと歩いたところに串カツ田中があって、そこに行ったのが一回。
 五回。
 十年で五回。
 だから、日曜に歯医者がやってる場所って調べて浦和のPARCOが出てきて、でも最初は違う場所も無いか探しました。今更浦和のPARCOにどの面下げて行けるんだと思ったからです。
 しかし、他にも日曜日にやってるのはもう遠方しか無くて、知らない駅で降りて、知らない街を歩いて、知らない場所まで行かなくては行けないのとかしかなくて。
 だから、ほんともう、最初はもう、一日に五回行う礼拝、サラートのレベルで西口方面には謝りました。頭下げました。
「すいません。本当にすいません。でも日曜日にやってる歯医者が他に無いんです」
 って。
 そうしてほとんど面識のない浦和のPARCOに通う、歯医者に通うようになったんですけども、通うようになって初めて知ったんですけども、浦和のPARCOって映画館もそうだけど、その上の階に、図書館もあるんです。情弱って言うか、まあ、東口、PARCOの情報とか得ないようにしてたんで知らなかったんですね。全く。一つも。
「図書館があるでねが」
 って思いました。読書はもうほぼほぼkindleでやるようになってますけど、でも、ああ、こういうのもあるんだ。これもkindleで売ってないかなって浦和のPARCOの歯医者に通うようになってからそういう事もやるようになりました。
 あとはまあ、これは悪口じゃないけど、PARCO、浦和のPARCOって、っていうかどこのPARCOだって、どこの大きな商業施設だって同じだとは思うんですけども、エレベーターが来ないんです。
 浦和のPARCOもエレベーターが来ないんです。滅多に来ないんです。日曜日にやってる歯医者の希少性、ガチャのSSRくらい来ないんです。
 だから、エスカレーターで移動するのがメインになるんですね。
 で、埼玉県は、条例でエレベーターは歩行しちゃいけないので、急いでいても、仮に予約時間が多少、五分十分すぎていたとしたって、止まって、止まらないといけないんです。
 で、何故だか知らないけど、五階、エスカレーターで上がる五階、レストラン街って言うのかな、そういう感じになってるんですけども、そこでエスカレーターの動線が変わる。えーっと、五階まで行くとエスカレーターの配置が変わるので。
 だから五階に行ったら歩いて移動して、違うところにあるエスカレーターに乗らないといけないんです。そんで、そういう訳で、その時は、レストラン街を眺めるわけです。幾らか。
 色々とあるんです。高そうですよね。何処も。そらそう。浦和PARCOだから。PARCOなめんなって事だと思います。
 そんな中に一店、気になるお店があって。
 《北国とミルク》
 って言うイタリアン、北海道イタリアンってサブタイの、《北国とミルク 北海道イタリアン&カフェ》っていうのがあって、そこが気になってて。
 店自体というか、その場所って言うか。あれ? ここは通路で、向こう側に抜けられるんじゃないんですか? みたいなところにあって。私が見る感じ。その店が。その店の場所が。
 だから、ずっと気になってて。
「通り抜けられないのかなここって」
 って。ずっと気になってて。
 浦和PARCOの歯医者に通うようになってから、ずっと気になってて。
 すごく気になってて。
 だから歯医者の予約を開店と同時に入れた時とか、浦和PARCO全館10時開店なんで。で、レストラン街は11時開店で。だから歯医者の予約を10時に予約入れて、で、行って歯の治療をしてもらって、麻酔とか打たれたりするから、
「一時間くらいは食事は控えてください」
 って言われるから。
 だから、歯医者が終わって一時間くらい、図書館で本を眺めて、
「こういうのもあるんだ。kindleにあるかな」
 って言うのをして、
 そんで、11時過ぎにエスカレーターをまた下りて行って、レストラン街に行って、で、
 《北国とミルク》
 見に行くんだけど。
 でも、
 一回も行ったことない。
 11時ってなるともうPARCOに人がね。大宮のルミネくらい人いるから。
 これで、北国とミルクに入って、飯食って、12時とかになったら、
 それはもう、
 本当にもう、
 大変だろうなって。
 大宮のルミネとかも、12時になるとそれはもう、レストラン街のある階とかもう、
「うわあああああ」
 って思う位人で溢れかえるから。
 だから、
 すぐ帰ります。
 北国とミルクはずっと気になってますけど、
 でも、
 それよりも我が身の方が心配だから。11時、12時になった時のPARCOの人の溢れかえりの方が心配だから。人と人の間にも人がいて、その間にも更に人がいて、今産んでるんですか。分裂して一人が二人になって、その二人から更に人が分裂しているんですかって言うくらい人がいて。いるから。
 だから、帰ります。
 歯医者での治療も一旦終わって、次は定期健診で、十月を予定してます。
 その時、なんとかできたらします。
 なんとかできたら。
 行けたら行きます。行こうと思います。行けたら。
 勇気を出して。行けたら行きます。

PARCOのイタ飯

PARCOのイタ飯

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-18

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