こんな物語は多分、運命と書いてさだめと読むような現実離れしたお話なんだろうね

男は疲れていた。
何に、と問われたら、色々なものと答えるだろう。

その中でも特に?
と聞かれたら

男は人生に、疲れていた。


これは、名もなき者と、名のある者の、交錯する想いの話。


注意
この作品はフィクションです。
登場する地名・人物名・団体名などは全て架空のものです。
登場人物は全て18歳以上です。

序章:名もなき者の略歴と、運命の出会い

男は、人生に疲れていた。
死にたいと思うほど・・・そこまで思い詰めるまで至ってはいなかったが
それも時間の問題であろうと、そう言える程に、疲れていた。


男にはそれなりの資産があった。
しかし、生まれながらの人付き合いの不器用さが故に、それを活かせなかった。

決まった仕事に就くことができない程度に人付き合いが苦手で。
強いものに従うことを、それが理不尽だとわかった上でするようなことは到底許せない人だった。

この者は欲がそれなりに深く、欲しいと思ったものは手に入れないと気が済まない…資産を切り崩しての生活では我慢できない
ゆえに、所謂社会不適合者とされる存在として"満足に生きる"ために、手にしている資産を使って投資運用を行うのは必然であった。
※この時代では株式投資などの投資は一般的ではない時代です。金利はゼロ金利だけど投資をするのを奨励されるような社会とまでは皆が切羽詰まってない頃。


そうして、株式投資・外貨投資・金融商品・・・
リスクは承知で、死にものぐるいで行った。
そして、生まれながらの不運体質で、ほぼ全てを失った。


幸いにして、分不相応な…信用取引などを行わなかったので、身の破滅ということはなかった。
しかし、手にしていた資産の殆どを失い、今後どのように生きればいいのか、それもわからないほど、男は疲弊していた。

投資の際に必要不可欠だったPCを使い、精神の安寧を求めて、ネットの海を彷徨う。
そして、ネット上の同人ショップ「UPSite」へ辿り着く。

以前も一度利用したことはあったが、IDを作ることなく購入したので、履歴はお店には残っていないが、確かに利用したことがあった。
そして男は放心状態で何かを探す。自分の空虚な心を埋めてくれる"何か"を。


そして"それ"と出会ったのは運命か、それとも偶然か。


【寝落ちASMR13時間】99.99%ぐ~っすり寝かせちゃう癒しの安眠屋さん。


音声作品のASMRという、当時の男にはまるで無縁だったジャンル。

それでもそれに目に留まったのは
一つはそのサイトのランキングの上位にあったこと
一つは13時間という凄まじい時間の表記
一つはその可愛いイラスト
そしてその物量で質も良さそうなのに想像できないほどにお手頃な安さが決め手であった。


音声作品・・・ASMR・・・?
よくわからないが、心地よく眠れるらしいということは確かなようで
興味を持った男は、first社のA500という、ASMR入門者に御用達のイヤホンを購入して
その作品を聴いてみることにしたのであった・・・

第一幕:カルチャーショックって意外と身近なところにあるものですね

聞いてから数日。
ほうじ茶とカモミールのブレンドティーってどんな味なんだろうか・・・と考える余裕がある程度には
毎晩、安眠屋さんの部屋に誘われ、心地よく安眠できて、辛いことを少しでも忘れられた男がそこにいた。

そして、このようなものを作っているのはどういう人なのだろうか?と、余裕が生まれた男は調べてみる。
Vtuber・・・?事務所所属でなにやらそれなりに有名な人らしい。
しかし、ASMR制作の記載はその方一人しかなく、まさか一人で全部やってるなんて、そう思うとそのVtuberさんのYoutubeチャンネルやTwitterを見てみる。

そこで男はショックを受けた。大真面目に一人でこれを作ったらしい!?

そういうことを見てしまっては、まさに今生放送しているようだしこれは見に行くしかないと、初めての配信視聴。
男は動画を見る習慣もない程にオールドタイプな、自力攻略プレイが基本のゲーマーだったので、全てが未知の領域だったのだが、行動力は不思議な程にあった。
それは、そのASMRがもたらした心の余裕が与えたものなのか、それとも・・・?


さて、初めての配信視聴、よくわからない物には触れず配信画面を眺める。
シーペックスレジェンドというものをやっているらしい。FPSか。
FPSの分野は、男にとって苦い過去を持つものであり、少し見たら去ろうと思っていた。


・・・男は元々ゲーマーであり、FPSの分野に関わったお陰もあって、ある一人の青年の人生を立て直した・・・
不登校で高校も卒業できない状態だった人を高校卒業させ、いまや立派な社会人になってSE(システムエンジニア)として働いているらしいと。
(なお、その方との連絡は既に男が絶っていた。精神的におかしくなることは予見していたのであった)


さて、話を戻そう。
配信しているVtuberさんはとても可愛らしく、声も特徴的なとても可愛い声で、話も上手く観ていて心地よい。
というかFPSしながらよくコメント拾って会話できるな、と、感心するほどであった。
また腕前も相当なもので、的確な動きや操作ができるのは無論のこと、スコープなどないロングボウでスナイプするという
とてつもない視力の良さと抜群のゲームセンスがその方にはあった。

気づいたら、配信が終わるまで魅入ってしまっていた・・・こんな人がこのASMRを?
と、PCのファイルを見て、思わず考えてしまう。

そして、目に入る第二弾の文字。つまり第一弾もあるということ?と、再びUPSiteに向かい、第一弾を購入して聞く男であった…


動画も配信もVtuberも何もかもが未知の分野故に、男はこっそり見ているぐらいしか最初はできなかった。
しかし、何をきっかけにしたのか・・・初めてチャットコメントを打ってからは、たまにチャットを打つ程度に馴染んでいた。

初スパチャもその方に捧げた。スパチャというものの非合理性から未だに敬遠はしているが、それでもお祝いや想いを伝えたい時には、と。
初めてメンバーシップにも加入した。メンバーシップ限定配信でASMR用イヤホンを使って心地いい気持ちになったり、新鮮な体験が続いていた・・・

(第一弾の音声で寝ぼけて幸せなツイートをしたら、それにご本人からのいいねがついて、一瞬で目が覚めたこともあったそうな)

第二幕:一度追い詰められた事のある人の力って意外と強いのですね

そして月日は流れ、ある大事件が起こる。
所属事務所の運営の不手際で、そのVtuberさんのソロライブがまともな形では開催できないと発表される。
それも、ソロライブの二週間前に突然、である。

それを知ったそのVtuberさんは、耐えきれなく寝込んでしまう状態。
それでも所属事務所の運営は「そのVtuberに追って事情は説明させる」と一点張り。


巫山戯るな!!!!!
事務所というのは所属して活動している人を守るものだろう!!!!!
それが事務所が活動者を盾にするとは何事か!!!!!


男の憤りはとてつもないものがあった。
そして同じように、憤りが抑えきれない、怒号が飛び交うその事務所の発表ツイートへのリプライの山。
もちろん、男も黙ってはいられなかった。


『こんな状況で辛いであろう***ちゃんに後ほど事情説明させるんじゃなくて、運営が前に出て説明するのが筋ってものじゃないのでしょうか?
運営は演者を守るためにあるんじゃないの?運営が盾に使うとかふざけないでよ。せめて今は、***ちゃんにこれ以上負荷はかけないでください。』


声を荒げても何も変わらないだろうと思い、それでも抑えられない憤りをできうる限り抑えた上での抗議のリプライ。
しかし、男の予想を遥かに上回るレベルで、これに賛同?する声が凄まじい事になって
いいねをされた通知がとんでもないことになり、スマホが通知音を鳴らし続ける。
これには男も思わず驚いて、慌ててTwitterの通知を軒並みOFFにしたという・・・

そして男は同時に、音響関係やスタジオ関係、システム屋のツテを当たって、ライブの諸々に関して少しでも助けになればということも
それとなくしていたという・・・最終的にどこまで力になったのかはわからないけれども。


そしてなんだかんだでソロライブは成功を収め、そしてそのVtuberさんはその事務所から独立(卒業という形にならなかったのは本当に良かった)
その後も変わらず活動するそのVtuberさんと、それを応援する男の姿があった・・・

第三幕:***

???
「此処から先は、まだ情報開放レベルが足りないね。
またおいで、その時は、続きが書かれているかもしれないから―――」

こんな物語は多分、運命と書いてさだめと読むような現実離れしたお話なんだろうね

ちなみに、今はなんとかやりくりして生活してます。
グッズ購入とかできる程度にはどうにかなってるので・・・
ご心配には及びませぬ。心配してくださった方へ感謝の念を。

こんな物語は多分、運命と書いてさだめと読むような現実離れしたお話なんだろうね

注意 この作品はフィクションです。 登場する地名・人物名・団体名などは全て架空のものです。 登場人物は全て18歳以上です。 ぜっっっっっっっっっっっっっったいに、関係する方々へご迷惑をおかけしませんよう、よろしくお願いいたします。

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 序章:名もなき者の略歴と、運命の出会い
  2. 第一幕:カルチャーショックって意外と身近なところにあるものですね
  3. 第二幕:一度追い詰められた事のある人の力って意外と強いのですね
  4. 第三幕:***