なか卯のうどん

はいからうどんが好きです

 その時、なか卯に行ったのは偶然だったんです。ちょっとご飯食べようって思って。なか卯って最近行ってないしな。って。なか卯ってうどんが美味しいんですよ。はいからうどん。世間的にはどうなんですかね。親子丼食べたいって思っていくもんなのかな。なか卯って。でも、はいからうどんだって別に脇役ってことないよね。あのシンプルさがいい。すごくいい。あと汁の味が好きで。だから、なか卯に行ったんです。
 その時の私は、別所に提出する話を考えていました。ある別所でテーマについて話を考えて提出するって言うのがあるんです。テーマが発表されるそのテーマについて話を考える。書く、提出する。それが終わったらまたテーマが出て、それについて話を考える。そういうのが。それについて話を考えていました。いや、考えていたって言うか、私の背後に、後頭部の上の方の空間。クラウドの所に、とりま三つくらい仮案があったんです。次回のテーマが発表された時からずっとそのテーマと一緒にいたので。そのテーマと生活を共にしてたんで、だから、とりまの三つがあったんです。この三つの中からどれがいいかなあって思ってました。この三つのどれか、どれがいいかな。サイズ感もあるし、テーマを回収しているって言うのもあるし、場所に合ってるかどうかもあるし。どうだろうなあ。どれがいいかなあ。
 そんな状態の時でした。そんな状態の時、たまたまなか卯に行ったんです。
 そんで、なか卯で親子丼とはいからうどんを注文して、食券を買って席について、待ってる間スマホでkindleで本を読んで、そんで親子丼とはいからうどんが来たから、スマホしまって食べ始めたんです。
 ご飯を食べてる時厨房の中とか見てました。厨房の感じを見るのが好きなんですよ。厨房ってどうなってるんだろうなって。ぶら下がってる小さいホワイトボードにマグネットで注文内容の紙、レシートみたいなやつかな。を貼ってるみたいでした。そんでそれを提供し終えたら剥がすんです。そこのなか卯ではそういう風にやってるみたいでした。
 私はそういうのを眺めながら、親子丼を一口食べて、はいからうどんを一口食べて、汁を啜って。そんで親子丼をまた食べて、うどんの汁を啜って。親子丼に紅ショウガ入れて、うどんに七味入れて、また食べて、そんで親子丼食べ終えてはいからうどんの汁も全部飲み終わった時、ご飯を全部食べ終えた時に、ある話が出来たんです。
 その話はそれまで考えていた。私の後頭部の上の方、クラウドで考えていた三つとは違う話でした。全然違う話で。おじいさんをバットで●●●●みたいな話で。
 何でそんな話が生まれたのか全然わからないんです。なか卯で。ご飯食べてて。
 ただなか卯でご飯食べてただけなんですもん。
 それなのに、ご飯食べる前は全然そんなの考えてなかったのに、考えてなかったって言うかもう三つあったんで。仮案が。クラウドに。だから、どうしようかなって思ってたんです。大仰な言い方ですけども、0-1の作業は終わってたんです。あとは内容を膨らませて。どうしようかなってなってる状態だったのに。
 それなのに、
 それなのに、ご飯食べる前は全然考えてなかったのに、ご飯食べ終えたらあったんですよね。
 あった?
 いた。
 いたんです。居た。それが。
 で、それの突然の出現に私は驚いたんですけども、でも、その、なんというか、
 その話のドライブ感って言うか。ドライブ感って別所で、その場所で言われたことあるんですよ。なんかの話の時に。ドライブ感って。
 へえ、そういうのもあるんだって。
 私は思ったんです。
 ドライブ感。
 ご飯食べ終えた時に突然出てきたその話のドライブ感が。
 その話のおじいさんをバットで●●●●っていうのが、
 その、
 なんか、
 すごく、
 魅力的に、
 魅力的に思えて来て。
 普段おじいさんをバットで●●●●なんて事考えた事なかったのに。
 いや、
 どうなんだろうな。
 自分では無いと思うんですけどでも、
 でも内心。
 どっかで。
 私のどっかで。
 後頭部の上のクラウドの中とかで。
 ちょっと触るだけで飛び上がるほど痛い神経細胞みたいな、本心のどっかで。
 おじいさんとか、おばあさんをバットで●●●●みたいな事考えてたのかなあ。
 わからないですけどね。
 わからないけど。
 でも、
 なか卯でごはん食べ終わって家に帰る時も、電車に乗ってドアの近くの所で立ってスマホでkindleで本読んでる時も、kindle読みながらバス待ってる時も、バスに乗って座りながらkindle読んでる時も、家に帰って着替えて手と足洗ってうがいして、お酒飲んで寝て、起きてからも、
 ずっと、
 それからずっと、

 どうしたら。

 頭の中で、おじいさんをバットで●●●●こと考えてました。
 そんで、
 だから、
 その話書いて提出しました。
 ところで、
 昔、姉に言われたことがあるんですよね。サイゼリアとかでだったかな。一緒にご飯食べてる時、私がほうれん草のソテーを美味しい美味しいって食べてる時に、
「人間は不足している栄養を得た時に美味しいと思うようになってるんだ」
 って。
 今考えると本当かどうかわからないですけどね。でも、その時なるほどなって思ったんです。へーって。人間の体ってそうなってるんだ。なるほどなー。って。
 だから、なか卯で得た親子丼とはいからうどんの栄養が、その時私に不足していて、それを得たおかげで私はあの話を思い付いたのかなって。

なか卯のうどん

なか卯のうどん

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-17

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