匿う

段落の構成を修正しました(2024年9月18日現在)。


そうだね、という返事にもぼくの想いは滲み出る。仕切られた感覚と、自由にならないあちこちがきみの言葉を根っこを乱暴に掴み、その中身をぎゅっと絞り出して、要らない加工を施そうとするから。
わかってる、って息を詰まらせて自答するけど、足元で燻るものがそれで安らぐ訳でもないし、そこから立ち上る煙を逃してはくれない。うん、うん。大丈夫。真っ白になって、我慢できずにむせ返るまで。靴底で踏み付ける勇気なんて、ぼくには一生持てないだろうから。



ない、かな。見えないよ。断たれた訳でもないのに、夢も現実も等しいまま痛い思いを感じさせて、朝の光にきらきらと舞っていくし、ため息のように溢れるものも、何一つ深刻にならない。残酷な仕打ち。その隣に立ってきみは、ぼくを綺麗に映し出す。それもまた、と続ける事は難しい。
でもね。ありがとう、と聞こえるまで、ぼくがその場を離れられなかったのは、きみにあげたい物と謝りたい事があったから。なのに。未練と後悔。それをセットにしたキャッチボールでぼくは全てを誤魔化した。何について、を明かさない謝罪なんて意味がない、そうわかっていても。きみと、その笑顔には。裏切られたくなかった。



ごめんね。
そう言える事がぼくの旅立ちになって。ぼくがあげたものを大切そうに抱える歩調と、あの嬉しそうな鼻歌が、あの子を前にして真横から吹く春の嵐を招き入れたんだ。
それを見届けられない、そんないつも通りの悲しみにぼくはもう、耐えられない。その変化を携えて、ぼくを匿った、一つの手とただの力。その原因を振り返らずに知ろう、知ろうとして



いない、いない。
それでぱっと明るく、眩しい感じ。そんな風に心から笑ってみたかったんだよぼくは。きっと。これもまた狡い言い方だけど。
だから本当に、ありがとう。ごめんね。




ごめんね。

匿う

匿う

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-17

Copyrighted
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