『郷愁』
取り留めもなく
あの頃の話をしよう
『郷愁』
浴衣の裾を気にしながら
君の隣を歩いた日
金魚がひらひら泳いで
アタシを誘うのです
あれはそう
あの子の帯みたいで
優美で卑猥な
戯れみたいなもの
人波から外れて
二人になりたいけれど
みんなと居たら
それも無理な願いね
抱き締められてみたいなんて
ぼんやり思いながら
鳥居を潜って涙声
ほんとはこんな残酷な人
好きなんかじゃないよ
殺される時はアタシ
最後にこう言うの
「忘れないで」
懐かしく思い出すような
それくらいの存在でいい
愛してなんて要らないわ
そんな強い気持ちは要らない
「君に殺されたかった秋祭り」
『郷愁』