『郷愁』

取り留めもなく
あの頃の話をしよう


『郷愁』


浴衣の裾を気にしながら
君の隣を歩いた日
金魚がひらひら泳いで
アタシを誘うのです

あれはそう
あの子の帯みたいで
優美で卑猥な
戯れみたいなもの

人波から外れて
二人になりたいけれど
みんなと居たら
それも無理な願いね

抱き締められてみたいなんて
ぼんやり思いながら
鳥居を潜って涙声
ほんとはこんな残酷な人
好きなんかじゃないよ

殺される時はアタシ
最後にこう言うの
「忘れないで」

懐かしく思い出すような
それくらいの存在でいい
愛してなんて要らないわ
そんな強い気持ちは要らない



「君に殺されたかった秋祭り」

『郷愁』

『郷愁』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-16

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