zokuダチ。セッション30

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冒険編12 温室庭園の秘密とアイシャの決意

風呂から出たジャミルは、ルーゼの手により、再び部屋に戻される。
勿論、シースルーのネグリジェをしっかり着せられ……。
 
「やっぱ、強行突破だなあ、あの薄化粧女、わりィけど、
ブン殴ってやる……」
 
「入るわよ、お湯の加減は如何だったかしら?」
 
再びルーゼが部屋に現れる。今度は食事をワゴンに乗せ、運んで来た。
 
「どうでもいいよ、風呂に入ってる実感も沸かなかった……」
 
「まだ機嫌が悪いのね、いい加減にあなたも観念なさいな、
ねえ、あなた……、これが何だか分かって……?」
 
ルーゼは太い鉄パイプをさっとジャミルの目の前に差し出した。
 
「な、何だよ……、それがどうした……」
 
「ふふ、お姉さんがいい物を見せてあげる……」
 
「!?」
 
そして、ジャミルの目の前で、鉄パイプを軽く折り曲げ、ポイした。
 
「どう?分かって?さっき、廊下にいて、あなたの声が聴こえたから
癪に障ったの、この私をブン殴るですって?ふふ、こんなの小手調べ
なのよ、私が本気を出したら、そうねえ……、こんなのもあるのよ……、
ご覧なさいな……」
 
ルーゼはスーツの懐からマグナムを取り出すと、ジャミルの顔に近づける。
 
「く……、てめえ……、一体何モンなんだよ……」
 
「あなたこそ、何かお隠しになっているのではなくて?まあ、
今はいいわ、後で徹底的に調べ上げてあげるから……、そうねえ、
元殺し屋……、今はこの屋敷の旦那様のボディガード、表向きは
優秀な秘書って処かしらね、まあ、逆らわない方が身の為よ、
さ、分ったらさっさと食事をして頂戴な!私は忙しいんだから!」
 
ルーゼはジャミルを鋭い目で睨みながら部屋を出て行った。
 
「……今度は殺し屋かよ~、うう~、この話いつからこんな
過激になったんだ、エスカレートし過ぎだっつの……、最初の
時が懐かしいなあ……」
 
出された食事は本当に豪華な物であったが、ジャミルは
どうしても手を付ける気にならず。しかし、食わなければ
何をされるか分からないので、困って唸っていると……。
 
「ア……、アイシャおねえ、さま……、えへ、えへへ……」
 
「……ユウ?」
 
鍵が掛かっている筈のドアが再び開き、ユウがひょっこり顔を出し、
後ろからルーゼが再び現れる。
 
「この子があなたを気に入ったらしいわ、お風呂で仲良く
なったんですってね、暫くの間、この部屋にこの子を一緒に
同居させるわ、その方があなたも大人しくなるかも知れないし、
丁度いいわ、仲良くしてあげて頂戴、それじゃ」
 
ルーゼはユウの分の食事も一緒に運んでくると、再び部屋に
鍵を掛けた。
 
「お~い……」
 
「アイシャおねえさま、宜しく、又閉じ込められちゃいましたね、
でも、おねえさまがいるから、ユウは平気です……」
 
「その、お姉さまつーの、やめれ……」
 
「じゃあ、アネゴはどうですか?だって、おねえさま、男前で
かっこいいんですもの~、私、惚れちゃいそうですう~、ん、
でも、もう惚れてますう~……、アネゴっ!」
 
……又、困った事になったとジャミルは思った。
 
「いや、やっぱ好きに呼んでいいよ……」
 
「そうですか?はあ~、お腹空きましたね、食べましょう、
食べないと元気が出ません!」
 
「俺はいいよ、とてもじゃねえけど食べる気に何かなんねえ……」
 
「じゃ、じゃあ、おねえさまが食べないのなら私も食べませんっ!」
 
「気を遣わなくていいって、俺に遠慮せず食えよ……」
 
「いやのす!ユウはおねえさまと一緒じゃなきゃいやなのす!」
 
「……のすって……、分ったよ、食うよ……」
 
「きゃー、やった!おねえさまと一緒!」
 
ジャミルが観念し食事をし始めたの見て、ユウも喜んで
一緒に食べ始めた。
 
「う~ん、美味しいですねえー!おねえさまー!」
 
(なんかこの子も大分ブッ壊れてきてる気がするなあ~……)
 
食事はなんと、高級霜降り肉ステーキだっだが、ジャミルは
餌を食わされている様で気分がムカムカし、味も何も全然
感じていなかった。
 
「ねー、美味しいですね、おねえさま!」
 
「全然……」
 
「きゃあー!はっきり言い切るおねえさまってやっぱり素敵!」
 
天真爛漫なユウに呆れつつも、さっきよりも不思議と気分が
落ち着いている事にジャミルは何だか変な気持ちにもなった。
 
「もぎゅ、もぎゅ、ところで、おねさま、知ってますか?」
 
「知らねえ、今度はおねさまか、おねさまって何だ……」
 
「ん~っ!話を言う前に返事をしないで下さいっ!このお屋敷の
温室庭園の事です……」
 
「あ?外にあるやつか?」
 
「ハイ、ここのお屋敷の領主さまが趣味で育てている
珍しいお花や植物が沢山あるんだとか、噂によると危険な
植物なんかも育てていると言う噂もあるんですよ」
 
「あんまり興味ねえなあ、まさか……、蜜飲んだりすると
心と体が入れ替わる花……、なんてのはないよな……」
 
「わかりません、でも此処の領主さまの事ですから、うっかり
ちゃっかり育てているかも知れませんよ、何せ街中でも
変わった趣味で有名な変な領主さま……」
 
「……ユウ?おい、ユウ……?」
 
「ぐうぐう……」
 
ユウはフォークを掴んだまま、食事の途中で眠ってしまっていた。
 
「疲れてんだな、無理もねえか、こんな小さいのによ、いきなり
こんなとこに連れて来られて……、冗談じゃねえよな……」
 
ジャミルはユウの手からフォークを離させ、お姫様抱っこすると
自分のベッドにそっと寝かせ、自身は足を投げ出し床にゴロ寝する。
 
「……謎の庭園か、もしも、もしも……、本当に其処に……、
俺達の探している花があるのなら…」
 
早く皆には会いたいが、段々と、もう少し此処に張り込んで、
庭園の秘密を探ってみるかという気持ちも表れて来たのであった。
 
 
 
そして、再び仲間サイド
 
 
「無茶だよお!アイシャっ!」
 
「危険すぎる、僕も賛成出来ない……」
 
「ダウド、アル、お願い、分かって……、ジャミルと会うには
この方法が一番手っ取り早いのよ……」
 
「わたしも……、アイシャに危ないことはしてほしくないよ、
でも、そう決めたのなら……、わたしもそうすると思う、大好きな
ヒトを助けるんだもん……」
 
「こむぎちゃん、君まで……」
 
「でも……、やっぱり危ないですよ……」
 
いろはも不安が拭えず……。アイシャが考えた作戦とは。ジャミルの姿で
女装してジャミルが捕まった場所まで一人で行き、荒くれのゲスに
自ら捕まる事で、ジャミルの居場所まで連れて行かれる……、という
作戦である。アルベルトとダウドは猛反対するが。こむぎは賛成派らしい。
 
「ダウドから聞いたの、ジャミルはおんなのヒトのかっこうするのが
好きなんでしょ、……変わってるんだねえ、……いろはとわたしじゃ、
顔を覚えられてるから……、ね?おんなのヒトに化けたジャミルって、
とってもわんだふるー!だと、思うよっ!それにね、おけしょうした
ジャミル、わたしも見てみたいのっ!ね、いろはっ!」

「……え、ええ、……私も……、ちょっと見てみたい……、
かな、あはは……」
 
……既にダウドの所為で個人情報が彼方此方にばらされている
ジャミ公であった。
 
「そうなの、ジャミルは女装すれば凄く綺麗だから、絶対に
誰だか分らないし、大丈夫だと思うの……」
 
「……アイシャさん……、……」
 
いろはは心配そうに再びアイシャの方を見るが。……しかし、
彼女も段々とジャミルの女装姿を想像し、興味が出て来た様子……。
 
「そうだっ!チビをボディーガードに連れて行けば安全だよっ!
このチームのおとこのコ達って、ちょっとひんじゃくだもん!
……悟もおべんきょーばっかして、もっときんにくつけないと!
ダメだよっ!」


……その頃の悟君。

「……っくしっ!何だろ、風邪かな……、も、もしかして……、
犬飼さんが……、ぼ、僕の事を?……何だよ、大福、その顔は……」

(やれやれ、オレは元々こう言う顔だって言ってるだろ……)


「……こむぎ……、も、もう~……」
 
「こむぎちゃん、何で僕の方を……、しかも、貧弱って……」
 
「オイラの方も見てるよお……」
 
「また、オラの方も見てるんだけど、オラ、まだか弱い5歳児だゾ……」
 
「……ボ(ポ♡)」
 
「……はあ、ジャミルの姿で女装して……、ね、う~ん、中身は
アイシャだから、考えると何だか不思議な感じだよお~、……バ、
バレないといいけど……」
 
「みんな、心配してくれて有難う、これは本当に私達の問題だし、
試練を乗り越えなくちゃいけない時なの、私、絶対にジャミルに
会って見せるわ!」
 
「アル、大丈夫だよお!チビがアイシャをしっかり守る!絶対ジャミルも
連れて帰る!」
 
「チビ……」
 
今一返事をし兼ねているアルベルトをチビも何とか説得する。
 
「そうだね、僕らのメンバーの中じゃ、チビが一番強いものね、
分った、アイシャをお願いするよ、チビ……」
 
「ぴいっ!任せてっ!!」
  
そして、次の日、アイシャは洋服屋で女装用に着るドレス、
ウイッグを身に着け、チビを隠して持ち歩けるカバンを購入し、
仲間が見守る中、再び、あの路地裏へと一人向かう。
 
(……うう~、本当は凄く出て来て欲しくないんだけど、荒くれさん、
どうか出て来て……)
 
一方、ジャミルの方も、領主との初対面が迫りつつあった……。

冒険編13 初対面と新しい客

ナンダ・カンダ家 屋敷
  
「此処で待っていなさい、すぐに旦那様と面会よ……」
 
ルーゼは、此処の屋敷の主の部屋らしき場所の廊下に、ジャミルを
含む娘達を並ばせ、自分は部屋に入って行った。
 
「け、クソ領主と遂にご対面かよ!どんなツラしてんだか
汚えツラをしっかり拝んでやらあ!」
 
「キャー、おねえさまっ、聞こえちゃいますう~!でも、やっぱり
はっきりと物を申すおねえさまって素敵っ!それにしても、私達以外にも、
他にもお妃さま候補がいらっしゃったんですねえ……」
 
「ああ、スゲエのがいるな、マジで選んだんか、あれ……、
ふざけてるとしか思えねえけど……」
 
ジャミル、ユウの他に、3人候補がいるらしく、その内の一人は、
ブスでデブだった……。
 
「おっほーっ!腹減ったーっ!飯食わせろーっ!ほっほほっほ!」
 
「ブウ子、少し静かにしろっての、うるせーんだよ、オメーはよ……」
 
「わ、わ、わたしい~……、き、きいんちょううう~
しちゃいますううう~……」
 
……ますううう~……、の娘は典型的なメガネっ娘らしかったが……。
 
「ああっ、此処にもおねえさまがいた、素敵……」
 
ユウはブウ子と呼ばれた娘に悪態をついた娘に近寄って行った。
 
「あん?何だい、アンタ……」
 
「は、初めましてっ!私、ユウと申しますっ、其処のおねえさまの
アイシャさんと一緒にお妃さま候補に選ばれましたっ、宜しく
お願いしますっ!」
 
「アイシャ?ああ……」
 
不良っぽい娘がちらとジャミルの方を見、ジャミルも軽く頭を下げた。
 
「はっ、……随分なお嬢様だねえ、……あたしらとは格が違うか、成程……」
 
「いや、見た目で判断すんなよ……」
 
ジャミルは不良娘の前に立ち、腕を組み、足をおっぴろげた
立ちスタイルをした。
 
「どうりで……、まあ、此処に連れて来られるのは、話によると
変な娘ばっかり言う噂だからな、無理もねえわ……」
 
「……にゃ~んだとおおお……?んじゃあ、おめえだって
その部類に入ってんじゃねえか……」
 
ジャミルは踵を返し、不良娘を睨んだ。
 
「キャー!おねえさま、やめてっ!でもっ、二人のおねえさまが
対決を……、何て素敵なのかしらっ、ああ~……」
 
「おい、ユウ……」
 
「ああ~、おねえさまあ~……」
 
「だ、駄目だこりゃ……」
 
「おっほ!おっほ!おっほ!」
 
「きんちょうしてえええ~、お、おしっこもれちゃいますう~……」
 
……確かに、ジャミルを始めとする変な小娘達の集まりであった。
 
「お待たせ、面会の時間よ、……さ、中に入って頂戴、
旦那様がお待ちよ……」
 
(……キタ、ついにキタ……!)
 
廊下に出て来たルーゼの言葉に一同緊張が走る……。
 
「何か食わせろ!おほっ、ほっ、ほっ!」
 
……約一名、緊張が走っていないのもいた……。
 
「さあ、最初はあなたからどうぞ、アイシャ……」
 
「言われなくても分かってるでございますわあー!……べえー!」
 
ジャミルはルーゼにアカンベーをすると、遂に領主の部屋に入って行く。
 
「……相変わらず、下品で変な子ね……」
 
「お、おねえさまあ~……」
 
ユウも心配そうな面持ちで部屋のドアを見つめた……。
 
 
妃候補エントリーナンバー1 アイシャ(ジャミル)
 
「君がアイシャ君か、成程、可愛い顔をしている……、初めまして、
世はこの、ナンダ・カンダ家の領主である、お見知りおきを、娘よ……、
此処の暮らしは気に入って貰えただろうか……?」
 
領主は、口髭の生えたダンディな背広の紳士で、一見見ると、
とても人柄の良さそうな感じではあったのだが……。
 
「全然!……それより、早く此処から出せよ!ダチも待ってんだからさあ!
迷惑なんだよ!人を急に誘拐なんかしやがって!テメエ、犯罪だぞっ!」
 
ジャミルはきっぱりさっぱり、領主だろうが何だろうがお構いなし、
遠慮せず言い切る。
 
「……成程、ルーゼに聞いた通りの大馬鹿娘だな、……これは良い、
くくく、ますます気に入った、ふふふ、おじさんは、君の様な変で
変わった子が大好きだ……」
 
「な、何……っ、う……」
 
領主はジャミルの顎をくいっと掴むと自分の方に向けさせた。
 
「君とはいずれ又ゆっくりとお話したい物だ、カクテルでも飲みながらね……」
 
「やめろっ……!く、ポマードくせええっ……!」
 
「一つだけ忠告しておこう、此処の街、土地の権力はすべて我が
ナンダ・カンダ家の物だ、例え警察でさえも我らには逆らえないであろう、
従って何をしようが自由なのだ……」
 
「そうかい……、サツもあんたと仲良しでグルって訳か、
……汚ねえな、ふざけた家門の名前の癖に……」
 
「無駄な抵抗は止める事だ、さあ、次の娘との面会が控えている、
ルーゼ!」
 
「はい、旦那様……」
 
ルーゼが再び部屋に入って来る。
 
「残念ながら、今日の彼女との面会は終わりだ、実に残念だが、
又部屋に閉じ込めておくように……」
 
「分りました、さあ、部屋に戻るのよ……」
 
ジャミルはルーゼに連れられ、部屋を後にした。
 
 
候補エントリーナンバー2 夢見るロリ娘 ユウ
 
「……こ、こんにちは……、あっ、あのう……、この旅は……、
じゃなくて、えーと、この度は、えーと、えーと……」
 
「君は貧しいながらもお家の手伝いをしているのであろう、しかし、
安心しなさい、君が此処に嫁いでくれる事をちゃんと約束出来れば、
ご家族の生活も保障するから……」
 
「ほ、本当ですかっ!?お、お家に……、お金を入れて
貰えるんですかっ!?」
 
「うむ、……心配しなくてもよい……」
 
「うわあーっ、りょ、領主さまっ、あ、ありがとうございます……」
 
「ふふ、精々、お礼はハネムーンに備えて心掛けておくように……、
では、下がってよいぞ……」
 
「え?ええ……?」
 
「さあ、来るのよ、ご挨拶はもう終り……」
 
「はあ……?」
 
ユウも不思議そうな顔をし、部屋を後にする。
 
(羽ムーン、……羽ムーンてなんでしょ、月に羽が生える事かしら……、
今度おねえさまに聞いてみーましょ!)
 
 
候補エントリーナンバー3 暇人ブウ子
 
「何か食わせろ!じゃないと、お前も食っちゃうぞ!」
 
「それは困るなあ……、しかし、君が私の処にお嫁に来ると
約束してくれれば、何でも食べさせてあげるし、御飯の
心配は要らないぞ……」
 
「よし、ブウ子、お前の嫁になってやる!ほっ、ほっ、ほっ、ほっ!」
 
(……完全に問題外ではあるが、この際、仕方ないであろう……、
事が済めば……)
 
 
候補エントリーナンバー4 不良娘ケイ
 
「じじい、何考えてんだよ、あたしみたいな親もいない、
親戚も誰も頼るモンもない、いたいけな子を捕まえてさ……、
何企んでんだよ……」
 
「だからこそ、私は、君の様な子を救いたいと考えたのだよ、
安心したまえ、君が私のお妃になってくれると約束してくれれば、
幸せもちゃんと保障する……」
 
「あたしは誰も信用なんかしない、いつだって一人で
生きてきたんだから……」
 
「意地を張るのも最高に可愛らしいね、相当辛い思いをして
きたのだな、早く此処の生活に馴染んで一刻も早く君の心の
氷が解ける事を切に願う……」
 
「な、なにをっ……!?」
 
領主はケイの手を取ると、掌にそっとキスをした。
 
「ふ、ふざけんな……、変態爺……!」
 
(……微かに顔を赤くしているな、どうやら満更でもない様だ……)
 
 
ラスト……、エントリナンバー5 きゃーきゃー眼鏡っ娘 
マフミちゃん……
 
「わ、わたしいいい~……、きゃああああーーっ!!何だか
きんちょうしてえええーっ!!きゃーっ!きゃーっ!!きゃーっ!
きゃーっ!きゃきゃーのきゃー!」
 
「可愛い子だね、気に入ったよ、宜しく……」
 
「あ、りがとううう……うう、ございますですふう~っ!!
きゃあああ~っ!!」
 
(……とにかく変で少しでもおかしい娘なら良いのだ……、ふふふ……)
 
一体どういう経緯で彼女を連れて来たのか全くの謎だった……。
 
 
「ハア、漸く終わったわ、たく、冗談じゃないわよ、いっつも、
これになると私が苦労してなくてはいけないのだから……」
 
「お、おいっ!ルーゼっ!」
 
「……ゲス、何よ、そんなに慌てて……、旦那様のお部屋の前よ、
静かにしなさい……」
 
「み、見ろ、これ……、今日、もう一人カモを捕まえてきたっ……!!」
 
「……?」
 
ルーゼがゲスの側を見ると、ロングヘアーの美しい娘がいた……。
 
「どうだい?上玉だろ、へへ……」
 
「……っ!」
 
「ゲス、分かってるの?真面な子は駄目なのよ、少しでも変じゃないと……、
旦那様がお気に召さないでしょ……」
 
「大丈夫だ、……充分変だ、オラッ!!」
 
ゲスが娘のおしりに思いっ切り触った……。
 
「……きゃあーっ!や、やめてって言ってるのようっ!えっち!」
 
「娘っこにしちゃ、随分とハスキーボイスだ、それにケツも
男みたいにまっ平らでかてえ、な?充分変だろう……?おい、
何ブルブル震えてんだあ~?へっへ……」
 
「そうね、……変で当り前よ、……だって……」
 
「お、おい……?」
 
「……」
 
ルーゼは脅えている娘の前にツカツカと近寄って行き、
鋭い目で娘を睨むと……、
 
「……や、やめて……、ああっ!?」
 
「な、何っ!?お、男だと……?しかも良く見たら……、
何処かで見た顔だ……、あっ!てめえはっ……!!」
 
「そうよ、おかしいのに当り前でしょ、彼は男よ……、全く……」
 
……ルーゼはアイシャから引っ手繰ったウイッグを無造作に
ほおり投げ、床に叩き付けるのであった。
 
(……どうしよう~、もうばれちゃったよ……、ジャミル……、皆……)
 
アイシャはチビの入っているカバンをぎゅっと抱きしめながら
恐怖に震える……。

冒険編14 再会

「で、ルーゼ、こいつはどうすんだ?このままフン縛って
海にでも流して来るかね?」
 
(……ぎゅ、ぎゅびいい~……)
 
(チビちゃん駄目っ!今は堪えてっ……!)
 
カバンの中で唸り声をあげるチビをアイシャが必死に宥めた……。
 
「いえ、彼もこのまま旦那様に提供するわ……」
 
「……ええっ!?」
 
(ぴっ!?)
 
アイシャもカバンの中のチビも驚きの声を上げる。
 
「おい、ルーゼ、そら本気で言ってんのかよ、冗談だよな?」
 
「いいえ、ゲス、私は本気よ、だって彼は本物の変態だわ、
いいじゃないの、きっと女の子に憧れる夢見るオカマちゃんなのよ、
面白いもの……、旦那様、きっと気に入って下さるわ、顔は結構
イケメンだし、もっと高級なお化粧でもさせたら一層綺麗になるわよ」
 
「何よ、変態って……、酷いわ…」
 
「さあ、そうと決まればあなたもお部屋にご案内するわ、いらっしゃい……」
 
「分ったわよっ!……行ってあげるわよっ!!」
 
言われるがまま、アイシャはルーゼに付いて行った……。
 
「さあ、此処があなたのお部屋よ、衣服はクローゼットの中に
入っているわ、どれでも好きなのを着なさい」
 
「はあ、……何よこれ、女の子の洋服ばっかり……」
 
「あなたはオカマなんでしょ?だったら女の子の洋服を着るのが
当たり前でしょ、カツラはこっちよ、じゃあ、私は仕事に戻るから……」
 
ルーゼが部屋を去ったのち、チビがカバンから顔を出した。
 
「アイシャ、大丈夫……?」
 
「うん、どうにか、お屋敷には入れたけれど、これから
どうなるのかしら……、それにしてもこのお洋服、元の姿だったら嬉しいのにね……」
 
「アイシャ、元気出して、チビが付いてる!」
 
アイシャを元気づける様、チビがアイシャの頬をなめた。
 
「ありがとう、チビちゃん……」
 
「ぴい!?くんくん、くんくん……」
 
……と、急にチビが彼方此方匂いを嗅ぎ始めた。
 
「どうかしたの……?」
 
「近くから何となく、ジャミルの匂いする……」
 
「ええっ!……ジャミルがこの近くの部屋にいるの!?」
 
「ぴい、チビ、行ってみる!」
 
「で、でも此処、鍵が掛かってるわ……」
 
「大丈夫!」
 
チビはそう言うと爪を使い、器用にロックされている鍵を外した。
 
「ぴっきゅ、開いた!チビ、ピッキュング!」
 
「チビちゃん、凄いわっ!で、でも……、あの怖い人に
見つかったら……」
 
「……平気、今はあの嫌なおばさんの臭いしないから、
でも、もしも部屋にいきなり来たら大変、だからチビが
お部屋出た後、又、鍵を掛けておくね」
 
「うん……、でも、チビちゃん、どうか気を付けて……」
 
「きゅっぴ!」
 
チビは廊下に出ると、又、爪を使い、元通りに部屋に鍵を掛けた。
 
「ぴ、ぴ、ぴ……、ジャミル、どこ?会いたい、ぴい~……」
 
ジャミルが閉じ込められている部屋を探し、チビは廊下を
ふよふよ飛び回る。……どういう訳か……、今はメイド集団も
不思議と姿が見えず。
 
 
そして、ジャミルの部屋……
 
「はい、おねえさま、横になって下さいな、耳掃除してあげまっす!」
 
「いいよ、んな事より、ユウ、お前平気なんか?」
 
「何がです……?」
 
「何がですじゃねえよ、このまま此処にいたら、いずれは
お前、手籠めにされんだぞ、分かってんのか!?」
 
まだ幼いユウに対して使う言葉ではなかったが、
ジャミルはムキになり、ユウの肩を掴んで揺さぶる。
 
「はい、おねえさまの言ってる事何となく分かります、
でもお家の借金を返せない以上、どうする事も出来ないんです、
私が領主さまのところへお嫁に行くしか……」
 
ユウは下を向いて顔を曇らせる。相手が絶大な権力を持ち、
警察でさえも歯が立たない以上、ジャミルにもどうする事も出来ず……。
 
(どうにか、どうにかなんねえのかよ……、しかしとんでもねえ所だな、
未知の場所っつー話だったけど、悪ィ奴は何処にでもいるわ、
何も変わんねえや……、はあ~……)
 
……ガチャリ……
 
「!」
 
急に部屋のドアが突然開き、ジャミルは又ルーゼが来たのかと思い、
身構えるが……。
 
「きゅぴっ!」
 
「……チビ……、チビなのか……?」
 
「ぴいっ、ジャミルっ!やっと見つけたよおお~!!」
 
「チビっ!あははっ、来てくれたんだな、サンキューな!!」
 
「ジャミル、ジャミルううう~!」
 
ジャミルはチビを抱いて再会を喜び合い、床にねっ転がる。
 
「あのう……、これは一体……?それにおねえさま……、
ジャミル……、って……」
 
状況が分からず、ユウが唖然とする……。
 
「あ、悪い!この際だから、ユウにも後でちゃんと説明して
おかなくちゃな、チビは俺達の仲間のドラゴンだ、安心して
くれていいよ」
 
「はあ……、アイシャおねえさまは、実は本当はアイシャ
おねえさまではないと言う事ですか?何だか複雑なのですね……、
私、頭がぐっるぐっるです……」
 
「初めまして、こんにちは、チビです!」
 
チビが丁寧にユウにちょこんと頭を下げてご挨拶した。
 
「わあ、この子、お話出来るんですね、凄い……」
 
「そうだ、又お部屋に鍵を掛けておかないと、よいしょと、
きゅっぴ、これで大丈夫!」
 
「す、すごいです、本当に、チビさん、鍵も開けたり閉めたり
出来ちゃうなんて……」
 
「まあな、こいつ頭は凄くいいからな、玉にする屁は臭いけど……」
 
「……ぎゅっぴ!そうだ、アイシャもいるんだよお!今、別の
お部屋に閉じ込められてる!」
 
「何だって!?アイシャもか!?き、来てるのかっ!?」
 
「うん、それじゃチビ、一旦戻って、アイシャに連絡してくるね、
夜中になったら、こっそりアイシャをこのお部屋に連れてくるよ、
待ってて……」
 
「た、頼む、チビっ……」
 
「うん、怖いおばさんの臭いしない、大丈夫……」
 
チビはルーゼが来ないか確認すると、部屋の鍵を開けて再び
アイシャの部屋へと戻って行った。
 
「……アイシャ……、やっと、会えるのか……?」
 
 
そして、夜中、ジャミルはチビがアイシャを連れてくるのを
只管待つ……。
 
「……ぐうぐう、眠いのです……」
 
「お~い、ユウ……、頼むから今夜は寝ないでくれよ、ちゃんと
全部説明するからよう……」
 
「……ぐうぐう、分かってます……」
 
ガチャリと部屋の鍵が開く音がし……。
 
「来たっ!ア、アイシャかっ!?」
 
「……そうよ、私よ……、アイシャよ、ウィッグ着けてるけど……」
 
「ぴー!来たよお!」
 
「チビっ!」
 
紛れも無く、チビがアイシャを連れて来たのである。
 
「ちょっと着替えるね、よいしょ……」
 
アイシャはジャミルの姿の所為か、特に気にもせずスカートを
脱いでウィッグも外し、ジャミルがいつもマンションで着ている
パーカーを羽織り、ジーパンも履くと、野球帽子も後ろ被りで
ひょいっと頭に被った。
 
「着替えも持ってきたの、ジャミルの姿なら、これじゃないと
落ち着かなくて、あの嫌なおばさんに見つかったら怒られちゃう
処だけれど……」
 
「そ、そうか……、悪いな……」
 
「っ……、ジャミルのバカっ!!もうっ!心配ばっかり掛けてっ!
本当にっ……!!バカ、バカ、バカ、バカっ!!……私、此処に
来るまで本当に怖かったんだから……」
 
「わ、分ったよ……、あんまり大声で泣くなよ、あの変な薄化粧オバアに
聞こえちまうよ……」
 
「わかってるわよう……、ぐす……」
 
又自分で自分が泣いていると言う変な場面を見、ジャミルは
情けなくなる……。
 
「きゅぴ!アイシャは女装して、あの変なおじさんに自分から
捕まって此処まで来たんだよお!」
 
「……そ、そうだったのか、俺の為に……、又怖い思いさせちまったな、
ごめんな……」
 
アイシャは涙を拭くと、改めてジャミルの顔を見上げた。
 
「ううん、慣れてるもの……、それより、アルもダウドも、
いろはちゃんとこむぎちゃん、しんちゃんもボーちゃんも、
シロちゃんも、小さいひまちゃんだって、……皆本当に心配してるわ、
ジャミルが無事に元に戻ったら、アルがスリッパ連打叩きの
極刑だって、便乗してこむぎちゃんが、わたしもお手伝いしたいっ!
……って、言ってる……」
 
「ぎゅっぴ!チビもお仕置き参加するきゅぴ!」
 
「おいおい、……恐ろしい事言わないでくれや……」
 
「……ぐうぐう……」
 
「あら?この子は……」
 
「うん、同室のユウだよ、風呂で知り合ったんだ、……実家の
借金のカタで連れて来られたみたいなんだ……」
 
「ええっ?ど、どう見たって、まだ小さいじゃない……」
 
「12歳さ……」
 
「酷いわ……、こんなのって……」
 
「……此処のクソ領主は、テメエが満足出来る相手なら
何だって構わねえのさ……、くそったれめ……」
 
「……」
 
やるせない表情でアイシャがユウを見つめた……。
 
「おい、ユウ、起きろ……、ちゃんと全部説明するから……、
おい……」
 
「ふぇ?……アイシャおねえさま……?……と、この方は
誰ですか……?まっ、まさか……、おねえさまのっ、彼氏っ!?
とおーーっ!いけません!アイシャおねえさまにはっ、このユウがっ!」
 
「おいおい……」
 
寝ぼけ眼だったユウがぱっちり目を覚まし、アイシャの前に立ち身構えた。
 
「……そ、そんなんじゃないの、私とジャミルは……、
お、お友達なのっ!」
 
「はっ!そ、そでしたか、ご無礼をばっ!え?わ、私……、って……、
え?え?え?」
 
顔を赤くし、必死で否定するアイシャに(そんなにムキになんなくっても
なあ~)……と、ジャミルは心でこっそり思う……。 そして、アイシャと
ユウは互いに自己紹介をし、同時に自分達の抱えている秘密も話すのだった。

冒険編15 脱出
「そ、そうだったのですかあ~……、では、こちらのおにいさまが
アイシャおねえさまで、おねえさまの方がジャミルおにいさま……、
なのですね、はあ……」
 
「ややこしいけどな、分かってくれたか?」
 
「はい……、何だかまだ頭パニックですけど……」
 
「んじゃま、分かって貰った処で此処からすぐに逃げよう!」
 
「ええ!」
 
「きゅっぴ!」
 
「……ちょ、ちょっと待って下さい……、ど、どうやって……?」
 
「この窓ガラスは強化ガラスだ、けど、チビの炎のブレスなら
一撃で粉砕出来る!」
 
「はああ~……、本当に凄い……、でも、私、行けません……」
 
「ユウちゃん、どうしたのっ、逃げるなら今が一番いい時間帯なのよ!」
 
「他にもまだ、此処に取り残されているおねえさま方がいます……、
私だけ逃げるなんて嫌です、それに……、私が逃げたのが分ったら
父さん達にも迷惑が掛かります……、お家には帰れません……、
どうか、おねえさま達だけでも逃げて下さい……」
 
「ユウ……、お前……」
 
ユウはジャミルとアイシャを見つめると、堪えていた涙を一滴溢した……。
 
「作戦を練るんだよっ、作戦をっ……!!」
 
「作戦……?」
 
「街に俺達のダチがいる、今はそいつらと合流しなきゃ!クソ領主を
何とかブッ倒す作戦を考えるんだ!後で必ず、他の女の子達も
助けに来る!だから今は耐えろ、ユウ!……家に戻れなきゃ、
俺らと一緒にいればいい!」
 
「アイシャおねえさま……ではなくて……、ジャミルおにいさま……」
 
「ユウちゃん、一緒に逃げましょう!」
 
「ぴいっ!」
 
「ジャミルおにいさま、アイシャおねえさま……、ユウは、ユウは……、
本当は……、お嫁になんかいきたくない……、こわいです……、
う、ううう……」
 
今までは堪えていたのか、遂にユウが本音を見せ始める。
その姿を見、小さな彼女がどれだけ此処から逃げたかったのかが、
痛い程、ジャミルには伝わって来たのであった。
 
「分ったよ、ユウ、だから、此処から今すぐ一緒に逃げよう!」
 
「いいえ……、行けません……」
 
……しかし、ジャミルが差し出したその手をユウは拒む。
 
「ユウっ!何でだよっ!!」
 
「私、きっと又、おねえさまとおにいさまが此処に助けに
来てくれるのを待ちます、えへ、それに、捕らわれのお姫様
みたいで何だか嬉しいのです、皆にも伝えて、安心させて
あげたいんです、絶対大丈夫なんだって事を、それに、私も
一緒に付いていけば、足を引っ張ってお二人に迷惑が掛かります、
さあ、行って下さい……!」
 
「く……、頑固モンめ……、後悔したって知らねえかんな……」
 
「大丈夫です!ささ、早く、早くっ!」
 
「……約束する……、絶対助けに来る……」
 
「はいっ!もうおにいさまですねっ!信じてますよ!」
 
「……ユウちゃん……」
 
「チビっ!……頼むっ……」
 
チビが炎のブレスを吐き、強化ガラスをあっという間に燃やす。
ジャミルは後ろを振り返らず、窓ガラスのあった場所から
アイシャを連れて飛び降りた……。
 
 
「……おねえさま、おにいさま……、どうかご無事で……」
 
 
……しかし、警察でさえも太刀打ち出来ない大きな権力に
一体どう立ち向かえばいいのか……、アイシャの手を引っ張り
必死で走りながらもジャミルは考える……。
 
「アイシャ、……平気か?」
 
「うん、大丈夫よ……」
 
しかし、漸く屋敷の門が見え始めた処で、サイレンがいきなり鳴り始めた……。
 
「やべっ!もう見つかっちまったのかっ!?」
 
「……ジャミル、どうしよう……」
 
「ぴいい~……」
 
アイシャとチビが不安な顔をジャミルに向ける……。
このまま捕まってしまっては、2人に気を遣ってくれた
ユウの気持ちも全てが無駄になってしまう……。
 
「このままじゃ追手に追いつかれるな、一旦何処かに……」
 
「……あんたさんら、何しとるんだね、こんな夜中に……」
 
「まずいっ!!」
 
突然暗闇からぬっと、懐中電灯を持った人影が現れた……。
 
ジャミルはアイシャを庇って後ろに下がらせ、チビも威嚇の準備をする。
 
「ほほ~、これはこれは、面白い……、最近では女の子が王子様の如く、
男の子を庇うのか、これはこれは……」
 
「お、大きなお世話だっ……!」
 
「ひょっとすると、あんた、又旦那様に選ばれた新しいお妃様かな?
もしかしたら逃げて来たのか?……これは又根性のある娘だ……」
 
「ぴい?この大きなおじさん、……嫌な臭いしない……」
 
チビが首を傾げて不思議な顔をした。
 
「大方ドジを踏んで脱出するのにバレてしまったと言う処か、どら、
付いて来なさい……」
 
「……えええっ!?」
 
「落ち着くまで儂が匿ってやろう、このまま逃げてもすぐに見つかるぞ……」
 
「……取りあえず、ついて行ってみるか、チビが嫌な臭いがしないって
言ってんだし大丈夫だろう……」
 
不安に駆られながら、ジャミル達は男の後に付いて行く。
男は初老のでっぷり太った大男で、オーバーオールにパイプを銜え、
大きなお腹をゆさゆさと揺らしていた。
 
「さあ、此処だ、入りなさい……」
 
「此処って……、温室庭園か……?」
 
案内された場所は、ジャミルが窓から見掛け、ユウから話を
聞いたあの庭園であった。ジャミルとアイシャとチビは
庭園の中に入らせて貰うが……。
 
「だけど、此処の何処に隠れる場所があるんだ?追手が来たら
すぐに見つかっちまうよ……」
 
「あそこじゃよ……」
 
「あそこって、まさか……」
 
「シャアアーーっ!!」
 
……大男が異様な巨大植物を指差した……。
 
「これは、儂が手塩に掛けて面倒見、育てている人食い植物の
マリアーヌだ、自分の意志も持っておるし、ちゃんと人の言葉も
理解出来るんじゃよ、凄いじゃろう」
 
「な、名前……、んな事より、これをどうしろと……」
 
「暫くの間、マリアーヌの中に匿って貰えばよい、なーに、長時間
中にいたりしなければ、完全に飲み込まれる事もあるまいて……、
マリアーヌ、ほれ、ご挨拶しなさい」
 
「キシャアーーッ!!」
 
マリアーヌが大口を開けヨダレを垂らし、何十本も生えた
鋭い牙を見せた……。
 
「おっさん……!んな簡単に言うけどだなっ……!?」
 
 
……小娘共はこっちに逃げた筈だっ!必ず捕えろっ!!
 
 
庭を走る数名の音と罵声が聴こえた。屋敷の警備兵が
等々動き出したらしい……。
 
 
「どうするんだ?躊躇している暇はあるまいて……」
 
「くっ、仕方ねえっ……!ええーいっ!……アイシャ、チビ、行くぞっ!!」
 
「……分ったわっ!」
 
「ぴい~っ!!」
 
ジャミル達はイチかバチか、意を決して巨大なマリアーヌの
口の中に飛び込んだ。と、同時に雅にナイスタイミングで
警備兵が庭園に傾れ込んで来る。
 
「おい、庭師っ!この辺で小娘を見掛けなかったか?領主様の
お妃候補の娘だ、どうやったのか知らんが、監禁部屋から
脱走したらしいのだ!」
 
「知らんなあ、それよりあまり騒がんでおいておくれ、
夜は植物も花も休む時間なのだよ……」
 
「そんな事は関係ないっ、我々は24時間、領主様の為、働いている!
汚らわしい雑草なんかと一緒にするなっ!!この、無礼者めがあっ!!」
 
警備兵は懐からサーベルを抜くと、鋭い刃を小太りの男の前に
付き付ける。しかし、男は全く動じず。
 
「何を脅されても儂は知らんのだよ、調べるならどうぞ、
徹底的に調べておくれ……」
 
「……キシャアアアアーーッ!!」
 
「な、何だこのバケモノはっ!?くっ、……此処にはいない様だな、
外を探せえーーっ!徹底的に探せーーっ!!」
 
マリアーヌの勢いに押された警備兵は、そのまま逃げて行った。
 
「やれやれ、……嘆かわしい……、雑草か、悲しいの……」
 
「……カァアアーーっ、ペッ!!」
 
「わああああーーっ!?」
 
マリアーヌがジャミルとアイシャ、チビを吐き出した。
 
「う、うう~……、助かった……、マジで飲まれるかと……」
 
「……胃液と唾液でベトベトよ……、もういや、水浴びしたい……」
 
「ぎゅぴいいい~……」
 
「……あんたらはあまり美味しくなかったようじゃの、良かったの……」
 
「……何だよっ!やっぱり食う気満々だったんじゃねえか!!」
 
「キシャシャシャシャ!」
 
……マリアーヌはジャミル達を小馬鹿にし、笑っている様にも見えた……。
 
「それにしても、元気のよいお嬢さんじゃの、たまげたわい、
まあ良い、お茶でも飲んでゆっくりしていきなさい……」
 
「んな暇ねえよ、一刻も早く此処から逃げてえんだよ!」
 
「しかし、まだまだ外は警備兵だらけだぞ、すぐに捕まるぞ……」
 
「わ、分ったよ、暫らく世話になるよ……」
 
「そうこなくてはの、どれ、其処のテーブルで休みなさい」
 
大男はジャミル達を椅子に座らせ、テーブルの上にロウソクを
置くと、お茶の準備を始めた。
 
「カモミールミントティーだ、飲みなさい、気分が落ち着くぞ……」
 
「……」
 
「ジャミル、折角だから頂きましょ?」
 
「ぴいーっ、ちょっと歯磨きする時の味する、でもおいしー!」
 
「ほお、何だかこっちの坊やの方が異様に女の子らしい気がするの……」
 
「お、おっさん……」
 
漸くお茶に手を付けようとしたジャミルの手が一瞬止まった。
 
「儂は此処の庭園の庭師をしている者だ、この屋敷の旦那様が
20代の頃から、旦那様が大切にしておられる庭園のお世話を
ずっとさせて貰っているよ、いつからかのう、旦那様が
変わられてしまったのは……」
 
その言葉を聞き、ジャミルとアイシャは顔を見合わせ
複雑そうな表情をする……。

zokuダチ。セッション30

zokuダチ。セッション30

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  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-16

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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