オリーブの丘

四年くらいずっと気になっていました。

 目的地に向かう坂の途中にオリーブの丘というファミリーレストランががありました。私は四年くらい前からそこが、オリーブの丘が気になっていました。気になっていたのですが、入った事がありませんでした。
 入った事がない理由は何だろう。なんか、なんとなく気になってはいたものの、入ってなかったんです。どうしてなのかは、自分でもよくわかりません。
 私はサイレント・ヒルってゲームが好きなんですけども、だからかもしれません。
 オリーブの丘とサイレントヒルって似てるので。似てるでしょう。丘。ヒル。HILLが。
 オリーブの丘の入り口のドアの所には、olive HILLと書いてあります。サイレントヒルの影響でなんとかヒルって見ると、どうしてもサイレントヒルを想像してしまいます。丘って聞くと、サイレントヒルに関しての事が頭の中に巡ります。
 丘でも、岡でもです。
 岡本さんとか岡部さんという名前を見るだけでも、聞くだけでも、それは私にとってサイレントヒルに向かうきっかけになります。
 河、川の流れが最終的に海に到達するみたいにです。
 岡、丘、ヒル、HILL、昼、蛭。
 素材を釜に放り込んで、錬金術をするみたいに。
 私は脳内でサイレントヒルに行ってしまいます。
 何だったらHELLとかでも行きます。
「HELLってHILLに似てるなあ」
「HILL」
 サイレントヒル。
 すると1とか2とか3とか4とかゼロとかの記憶が脳内で顔を出して、私はサイレントヒルに行きます。
 バイオって聞くと、バイオハザードの記憶が巡るみたいなもんです。
 バイオ産業って聞くと、バイオハザードの事を考えるみたいな事です。
 レジデンスって聞いても、バイオハザードの事を考えまてしまいます。
 そういう事になってるんだと思います。
 私は。
 恐らく。
 死ぬまで。
 そう言う風に出来ている。なってしまっているんだと思います。
 だから、それはまあ、オリーブの丘って見たら、サイレントヒルを思い出してしまって。それで気になってしまって。でも、入れなくて。四年くらい。オリーブの丘ってどういう感じなんだろうなあ。って思いながらも入れなくて。
 ずっと入れなかったのは、中がサイレントヒルみたいになっている想像をしてしまうから。という事ではなく、普通というか、おそらく明るい照明の下で、素敵なご飯が食べれるだろうなあ。という想像が故です。
 オリーブの丘はきっとサイレントヒルみたいじゃないんだろうなあ。
 って思うからです。
 だから、ずっと気になっていたのですが、入れませんでした。入れなかったんですが、でも、ネットで調べたりはしてました。
 ああ、
「サイゼリアみたいな感じだ」
 きっと。
 サイゼリアの亜種だ。
 亜種。
 モンハン等をプレイしてたら、きっといい例えが出る、出たんじゃないかと思うのですが、モンハンはやってないので知りません。フルフルの亜種とかシンオウガの亜種とか言われても私にはわかりませんし、ピンときません。
 でも、亜種。
 亜種行ってみたいなあ。
 亜種。
 亜種っていいよな。
 亜種って。
 だから、一回だけでも。
 行ってみたいなあ。
 でも、もう一つ、背中を押してくれるキッカケみたいなものがあればなあ。
 そしたらきっと、オリーブの丘に行くと思うんだけどなあ。
 きっと。
 キッカケ。
 何か、もう一つ。
 小さくてもいいから。
 何か。
 そんな時、偶然、別所でポルトガルについて考える必要が発生しました。オリーブの丘はイタリア食堂です。
 でも、オリーブって、ポルトガルでも作ってそうだよな。そう思いました。
 ヨーロッパだし。
 そう思ってオリーブの丘に行きました。
 オリーブの丘って言ってもオリーブの匂いがするわけじゃないだろうな。
 でも、とにかくオリーブの丘。四年くらいずっと気になっていたオリーブの丘。そこに私は行きました。
 そう考えると最後の一押しはポルトガルだったという事になります。
 ポルトガルに背中を押されてイタリア食堂オリーブの丘に行ったという事になります。
 でも、まあ、甚大な、重大な決意、不退転の決意なんかを持っていくよりはずっと良かったと思います。
 初めて行ったオリーブの丘は明るく、サイレントヒルみたいな感じは無く。中に入るとタッチパネルがあって、そこで来店人数を入力して、席についての希望、カウンターかボックス席かみたいな事、を入力して。席についてタッチパネルで注文して。
 注文したものが来るまでの間、メニューを眺めたり、サイレントヒルの事を考えたり、ポルトガルの事を考えたりしていました。
 注文したものは猫型配膳ロボットが運んできました。
 それは私の人生で三回目の猫型配膳ロボットでした。坂の途中にあるここに、オリーブの丘に猫型配膳ロボットを運んだ人達がいるんだなあ。
 その時の光景を想像したりしました。
 坂の途中で、一階は駐車場になってて、入り口のある二階に上がるためには階段を上らなくて行けない。ここに、坂の途中にあるオリーブの丘に、これを、猫型配膳ロボットを運んだ人達が居るんだなあ。
 猫型配膳ロボットと猫型配膳ロボットで渋滞していました。
「申し訳ありません。道を譲っていただけますか」
 どちらの猫型配膳ロボットもそう言っていました。
 会計時は、タッチパネルで会計ボタンを押して、セルフレジで料金を払ったので、店員さんの類とは特に交流しませんでした。
 先進的だったと思います。
 気が楽という言葉でも構いません。
 私はオリーブの丘を出て、目的地に向かいました。
 オリーブの丘の事を考えながら、サイレントヒルの事を考え、猫型配膳ロボットの渋滞の事を考えながら、ポルトガルの事を考えて、私は坂の残りを上って目的地に向かって歩きました。

オリーブの丘

オリーブの丘

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-12

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