zokuダチ。セッション27
エピ 103・104・105・106
アイシャ張り切る!管理人編後編
あれから更に日数が過ぎて……。今日はアイシャは今、エントランス、
共用玄関前を念入りにお掃除中。いつ、又新しいお客様が来ても心地よく
お迎え出来る様にと。だが、この間の嫌な客にはどうしても来て欲しく
なかった……。帰る前に覚えてろと脅しを掛けて来た故、不安で溜まらず。
しかも今日に限って、バーバラ、ホーク、グレイとクローディア、シフと
連れ出されたアルベルト、主に加齢臭大人連中は揃って外出中である……。
強いお姉様のエレンもお約束で今日はいない。ガラハドも部屋に籠もって
迷走……、瞑想中だそう。
「そろそろ……、ジャミルのアレも終わる頃なんだけど……、ハア、
考えても仕方ないよね、まあ、こんな処かしら、お掃除終わり!
お部屋に戻って……」
「……ごめんよーっ!邪魔するよーーっ!」
考えると、どうしても来てしまうのである……。部屋に戻ろうとした
アイシャは身構えるが一瞬動けなくなってしまう……。その間に
玄関のドアを蹴飛ばし、誰かが乱入してくる。想像通りのこの間の
嫌な客だった……。だが、アイシャは冷静になり、勇気を振り絞った。
「又……、何ですか?」
「テメー、この間は良くもやりやがったな!何ですかじゃねえだろうが!
慰謝料の請求だよ!早く金払えっ!」
「そうよっ!よくもダーリンをいじめてくれたわね!許さないよっ!」
チンピラ男はアイシャに向かって一枚の紙をほおり投げた。明らかに
自分で作ったと思われる、ニセの慰謝料の請求書……。金額、約100万。
「こんなお金、払えないわよう!」
アイシャは糞客に抗議……。だが、それを見て、勝ち誇ったかの様に
糞役はニヤニヤ笑っている。
「っだからよう、交換条件で許してやるよ、そうさな、俺らを
家賃半額で此処に住まわせろ、家賃は一ヶ月500円にしろ」
「お部屋もとびっきりのこの糞マンションで最高のVIPルームでね、
いい条件でしょ!」
糞客は無茶苦茶を言ってくる……。幾らお客様を大事にしなくてはとは
言え、もうこんなのは客では無い。絶対に住んで欲しくない。何とか
追い払わなくてはと、アイシャは怒りに震えた。と、其所へタイミング良く、
ダウドが通り掛かってしまう……。
「ど、どうしたのさ、ジャミル……、何やって……」
「ダウドっ、この人達酷いのっ!無茶苦茶を言ってくるのよっ!
もう警察に連絡するしかないわっ!お願い、直ぐにお巡りさんを!」
「え、ええーー!?」
ダウドは客の方を見た……。顔を見た途端、理解……。そして、
何でこんな時に此処に来てしまったんだろうと。自分の運の無さを
只管嘆いていた……。
「分かった、何とかするよお、ちょっと待っ……、あ、あーーっ!」
「テメーは引っ込んでろっ!!寝てなっ!」
糞客の男性の方は警察へ連絡しようとしたダウドを口封じに
蹴り飛ばし、倒して気絶させてしまう。
「ダウドっ!大丈夫っ!?も、もう、何から何までっ!
絶対許さないわっ!怒ったわよっ!」
「うるせーこのカマ野郎!怒ってどうするんだっての!丁度いいや、
この間の仕返しだ、コイツ、シメたろか、仕置きしてやる!この
カマバカ糞野郎!」
「そうだよ、役に立たねえ珍子もぎ取ってやんなよ!」
「……ううっ!」
糞客二人はアイシャへとじりじり迫って来る……。アイシャは
ぎゅっと目を瞑り、心の中で只管ジャミルに謝る。自分の所為で
ジャミルが悪く言われ、オカマだとそう思われてしまう……、
そう思い、涙が出そうになった。
「……バカ糞野郎はテメーでしょーがああっ!」
「うおーーーっ!?」
「ジャ……、アイシャ!」
部屋にいた筈のアイシャなジャミ公、暴言を垂れる糞客の男に
華麗な飛び蹴りを一発お見舞いした。どうやら、此処数日間の
痛みの山場を漸く乗り越えたらしく、復活したらしい。
「おテ、テメー、何なんだっ!……今度は暴力女かっ!客に向かってっ!」
「うるせーこの野郎!テメーらなんか客じゃねえっ!只の嫌がらせの
ウンコ野郎だっ!……食らいなっ!……よくもアイシャをっ!」
ジャミルは再び男の方を遠慮無しに殴ってぶっ飛ばした。男は伸びて
気絶してしまった……。
「きゃーっ!ダーリンっ!」
「ハン!一つだけ教えといてあげるわよ!此処の管理人はね、
踏まれても蹴られてもタダじゃ倒れないのよ!今は少し調子が
悪いだけ!アンタももっといつか倍にして蹴り返されるわよ!」
「……素敵……」
「は、はあ?」
ブス女、ジャミル(アイシャ)の顔をまじまじと見つめる。
「私、あんたみたいな、お転婆な子、嫌いじゃないわ、素敵ねえ~!
……ゴラ、それに比べて、こっちのカマの管理人!アンタはこの子を
見習ってもうちょっと逞しくなんなさいっ!ハア、もうこんなヘタレ
男、要らないわ……、ねえねえ、あなた、お姉さんと一緒に来なさいよ!」
「……え、遠慮しとく……」
「あらあ~?ますます可愛いじゃないの、いいでしょ、一緒に
行きましょうよ、お姉さんと……、愛の旅立ちよ……」
「……ギャアアァァァーーっ!!」
「ちょっとやめてようー!バカーっ!私に触らないでーっ!」
アイシャ、ジャミルに触ろうとするブス女をポカポカ殴り、
その場は大騒ぎになった。やがて、目を覚した糞客の男は
慌ててマンションを飛び出し、逃走……。ブス女も漸く
帰って行った。新しい恋を探すと言い……。もう、この糞客は
2度と此処に来る事はないであろう……。
「アイシャ、大丈夫か?……怪我はねえか?」
「うん、大丈夫……、来てくれて有り難う、ジャミル……、あのね……」
「ん?」
「……やっぱりジャミルって凄いなあ……、って……」
アイシャはジャミルの方をちらっと見る。……顔を赤くして。
「普段、例えどんな人達が来ても、めげずに真っ向から
管理人として対応しちゃうんだもん……、やっぱり、管理人の
お仕事は本当のジャミルじゃなきゃ無理よ……」
「……嫌、俺だって不安な時はあるさ、けど、サポートしてくれる
ダチがいるからよ、頑張れんのさ……、コホン、……アイシャ、
こんな俺だけど……、これからも宜しくしてくれるかい?」
「!?えっ、ええっ!……あ、当たり前でしょ、そんな事……、
今更何言ってるのよう……」
「そ、そうか……、ありがと……、な……」
「……ん」
ジャミルとアイシャはお互いの顔を見ず、両者共顔を真っ赤にする……。
「あの、2人とも……、なーんかオイラの事、忘れてませんかああーっ!?」
「きゃ!?」
「おおうっ!?わりィ、すっかり忘れてた……」
糞男に蹴り倒され気絶し、暫く出番の無かったヘタレ。突然意識を回復し、
2人の世界が始まりそうだったのを阻止した。
「きゅぴーっ!ジャミルー!アイシャー!遅れちゃってごめんねー!!」
「チビっ!」
「チビちゃん!」
そして、暫く音信不通であったチビが久しぶりにマンションに
姿を見せたのであった。
冒険編1 波乱、最初からトラブル
「えーっと、大体支度は出来た……、と」
「ジャミル、明日の出発の準備出来たの?」
アイシャがとてとてと、元の自分の部屋に入って来た。
「おう、今終わった処だ」
「そうなの、ちょっと見せて、って、何これ!お菓子ばっかり
じゃないっ!……ちゃっかりビールまで……、呆れた、ちょっと
減らしてよっ!それに肝心の下着とか、着替えが全然ないじゃ
ないのっ!!もうっ、これだから私がついてないと!」
「あ、ああ……、俺のじゃがピー、バター醤油味……、あああ……」
アイシャはジャミルが詰めたリュックの中を引っ掻き回し、
本当に必要な物を確認し、再度整理し始めた。
「お菓子はこれだけっ、ビスケットだけよっ!後は、着替えに
下着、洗面道具、おしゃれの身嗜みセット、それから……、汗止めと
虫よけのスプレー2缶と、山だから虫も沢山いるだろうし……」
「むすう~……」
基本、お菓子だけあればいいジャミルはちょっと不貞腐れた。
「お寺行っても住職さんの前でもきちんと女の子らしくしててね!」
「はあ~い、分ったでございますうー!」
ジャミルはスカートの裾をひょいっと摘んでおどけてみせる。
「もう……」
「けどさ、じいさんには俺らの事情を聞いて貰わねえとだぞ、ちゃんと
話す必要があんだろ」
「そうね、そうだったわね、結局は住職さんにも秘密を
知って貰う事になるのね……」
「あ、アイシャ、俺も自分の部屋に取りに行きたいモンがあるんだ、
ちょっと行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
「それから、上は……、と、これ着ていいか?」
「半袖のセーラーブラウスね、ジャミルが着たいのならいいわよ、
貸してあげる」
「ああ、んじゃ!」
ジャミルは自分の元部屋まで走って行く。
「はあ~、懐かしき我が俺の部屋だ、マジで懐かしいなあ~、
それにしても……」
いつもより自分の部屋が異常に綺麗なのは、やはりアイシャが今は
住んでいるからである。
「さてと、俺のタンスは……」
タンスの中もきちんと衣類が畳んで整理されており、ジャミルは
少し困り顔。
「えーっと、よしっ、これだっ!」
折角アイシャが綺麗に整理してくれたタンスの中をジャミルは
引っ掻き回して散らかし、ある物を見つける。
「はあ、ジャミル、何を取りにいったのかしら、あら?」
廊下をバタバタ慌しく走る音が聞こえた。ジャミルであった。
「ジャミルったら……、もうー!シフに見つかったら怒られるのは
私の身体なんだから……」
「待たせたな、見ろこれっ!」
漸くジャミルが戻って来る。その恰好は元の世界で着用していた様な
青いスパッツを履いている。
「冒険だかんな!動きやすい恰好じゃねえと!」
「それは分るんだけど、それだけじゃ何か変だわ、これ、
スパッツの上に履いて……」
アイシャがジャミルにミニスカートを差し出す。
「えー!?」
「……履くのっ!!」
「ちぇっ、どうだよ……」
仕方なしに、支度を整えた格好をアイシャに披露した。
「うんっ、中々いいわよっ、可愛いっ!」
「自分で言うな……、はあ、んじゃ、これで本当に大体支度は
整った、と……」
「じゃあ、私ももうジャミルの部屋に行くね」
「ああ、又明日な……」
「おやすみなさい、あの……」
「……ん?」
アイシャはジャミルに何か言い掛けたが、すぐにそのまま部屋を
去ってしまった。
「変な奴だなあ……」
そして、廊下に出たアイシャは……。
「あのね、ジャミル……、私、本当はね……、……じゃ、
ないの……、だって……」
誰にも聞こえない様に小さく独り言を呟きながら、顔を赤くし、
アイシャはジャミルの部屋に戻る。
……そして、次の日、4人組にいろはとこむぎを加えた一行は、
モンブラン山、山頂付近の騒々寺へと出発し、山頂付近行きの
バスに乗り込む。残りのロマ1組には又、寺に暫く修業に泊まりに
行くと告げてある。管理人の仕事の方も、暫くの間はホークに
しっかり押し付けて。
「本格的な山登りって初めてだねえ、よしっ、こむぎっ、私達も
頑張ろうね!」
「がんばるわん!いろはといっしょ!みんなといっしょ!」
「……そうだね、このマンションとも暫くお別れだね……」
「やだ、アルったら、もう戻って来れない訳じゃないわよ!うふふ!」
「……ど、どうも……、頭じゃ分かってるんだけど、ジャミルの顔で
やっぱりアイシャモードはきついなあ~……」
アルベルトは自分のカバンからハンカチを取り出すと汗を拭いた。
「分んないよお……、オイラ達、山で遭難して数年後に白骨死体で
発見されるかも……」
段々と、不安になってくると炸裂する、ダウドのいじけと悲観モード、
悪い想像が始まった。
「たく、どうしようもねえなあ、チビも付いて来てくれんだから
大丈夫だっつーの!」
「……どうだかねえ……」
「じゃ~ん!見て下さいっ!自作のおにぎりは今回は
控えなさい……、と、ユキちゃんに注意されちゃったん
ですけど、その代り、まゆちゃんとユキちゃんが一緒に
特製のお弁当を作ってくれましたよっ!皆でどうぞ食べて
下さいって!」
「こむぎもこむぎもーっ!おやつのクッキーいっぱい
持ってきたんだよー!」
「嫌、犬用のは……、イラネ……、おおっ!?」
気分を変える様に、いろは達が自分達のリュックサックと
ナップサックを荷物棚から降ろし、ジャミル達に披露する。
「おーすげえっ!中身はなんだろ、待ってました!腹へったあ~……」
「ジャミルはいつもお腹空いてるじゃないのよう、『……グウ~』
……あ、あれれ?」
「あはは!アイシャのお腹も鳴ったよお!」
「違うわよっ!これはっ、その……」
「屁か?変わった音だな……」
「……違うったらっ!もうっ、ジャミルのバカっ!!」
「?」
「……何か……、異様に軽い様な気が……、おかしいなあ……」
「わたしのサックも何だか軽いよう……」
雰囲気が和気あいあいとしてきた中で、いろはとこむぎは
顔を見合わせ、自身のリュックとサックをそれぞれ持ちあげてみて、
妙に変な違和感を感じた。二人は急いで縛ってあるリュックと
サックの紐を解くと、中から出てきたのは……。
「ほほ~い!おまたー!」
「アンっ!」
「……ボ……」
「たいやいっ!」
いろはのリュックの中からは、何故かしんのすけとその相棒、犬の
シロが……。謎である。こむぎのナックサップの中からは、ボーちゃん、
ひまわりが顔を出し、出現したのである……。
「しんちゃんっ!?シロちゃんっ、ボーちゃん、ひまちゃんまで……、
ど、どうしてええーーっ!?何がどうなってるのーーっ!?」
「びっくりナップサックだわんーーっ!?」
「……何ですとおおおーーっ!?」
6人は一旦、緊急事態の為、運転手さんに頼み、バスを止めて
貰うのであった。まゆとユキ、悟になら正直に話しても問題は
ないし、心強い理解者と味方になってくれたではあろうが、今回は
ジャミルとアイシャ、2人の気持ちを尊重し、いろはとこむぎは、
他のメンバーには話してはいなかった。ジャミル達と一緒にお寺に
着いて行きたいと言う理由でマンションを出てきたのである。
「うーん、お弁当さん、中々のお味でしたなあ……」
「……ボー、おなか、いっ、ぱい……」
「……にへえ~……」
どうやらしんのすけとボーちゃん、2人でリュックの中のお弁当を残さず
全て平らげてしまったらしい……。
「あーっ!こむぎ……、わ、わたしのクッキーまでっ!ひどいっ!
ひどおおーーいっ!……わおおおーーんっ!楽しみにしてたんだよーっ!」
「……ク、クゥゥ~ン……」
「オメーか……、言うまでも無く……」
ジャミ公はシロの方をジト目で見る。シロもバツが悪そうに、ジャミ公から
目を反らすのだった……」。
「こむぎも落ち着いて、クッキーは又後で買ってあげるから、……私が
とにかく野原さんの処に連絡して来ます!」
「……しゅ~ん……、わかった……」
いろは、スマホを片手に野原家に連絡を入れる為、急いでバスを飛び出す。
落ち込んでいるこむぎを慰めようと、アイシャはいろはの代わりにこむぎの
頭をナデナデしてあげるのだった。
「たいやいっ、やいっ!」
ひまわりは自分で用意したんだぞとばかりに、紙おむつと哺乳瓶、
ミルクのセットを自分で勝手に突っ込んだこむぎのサックから取り出し、
ドヤ顔。
「ちゃっかりしてらあ、でも駄目だ、お前らは連れてけねーの!
此処でバイバイだっ!……勝手な事ばっかしやがってからに!」
「えーっ!?」
「ボオ!?」
「たいやいやーっ!」
「……アンっ!アンっ!」
足をおっぴろげ、つい蟹股スタイルになり、ジャミルが腕を組んで
仁王立ちする。ひまわりはジャミ公の足にしがみつき、抗議でビシビシ
お手で足首を叩く。今のジャミルはアイシャの姿なので、ひまに叩かれて
いるのは事実上アイシャである……。いつも大人しいシロも今日は
ジャミ公に吠えて抗議。
「アイシャのおねいさん、何だか、いつもと感じが違うゾ、ジャミルの
お兄さんみた~い……」
しんのすけは試しにジャミルの胸にパイタッチしてみる。
「……あふゃああっ!あんっ!こ、こらっ、やめえいっ……!!」
「しんちゃん、お願い止めてっ!その身体はっ……!!」
涙目になってアイシャがしんのすけを止めに入る……。
〔げんこつ〕
「いい加減にせんかい!このセクハラマセガキっ!」
「おおお~!いやぁ~ん、感じちゃうゾ……、あはああ~ん……」
しんのすけ、ジャミルにげんこつを貰うが、全く懲りていない。
「あーうー……」
其処へ、スマホ片手にいろはがバスの方へ戻って来る……。
「いろはちゃん、どうだった?野原さんの処とは連絡取れた!?」
「あの、迎えに来て貰えるんだよね……?じゃないと、僕らも困るよ……」
ダウドとアルベルトがいろはに恐る恐る尋ねると、彼女は絶望的な表情を……。
「駄目でした、夏休みの最初だからついでに……、みさえさんが……、
しんのすけとシロとひまわりとボーちゃんも是非一緒に、いい経験に
なるからと……、子供達を宜しくお願いしまーっす!……との、事です……」
「「……ええええええーーっ!?」」
アルベルト、アイシャ、ダウド、一斉に声を揃えた……。
「……あんのケツデカオババーーっ!!」
「おお?どこにお泊まりするのー?」
「ボー、くい、すぎ……、た……」
「たいやっ!」
「でも、こうなっちゃった以上、どうしようもないし……、私達も
しんちゃん達のお世話を一生懸命しますから……、ね、こむぎ?」
「うん!しずみかかったおふねだわん!」
「こむぎ、それを言うなら……、乗りかかった船でしょ……」
「あれあれ?そーともいう?」
「……おいおいおい、あのなあ~……、……犬娘……、ちゃんと
勉強してんのか?はあ、とほほ~……」
初日からお約束のトラブルに見舞われてしまった6人の運命は……。
しかし、このままでは、こむぎの言う通り、本当に船が沈んでしまいそうな
予感がし、ジャミ公は不安を抱くのだった……。
冒険編2 寺での一時
……このままではどうにもならないので、ジャミル達は、糞ガキ集団を
引き連れ寺に行くことにし、其処で今後どうするか考えようという事になった。
騒々寺
「いらっしゃ~い、待ってたきゅぴ!」
皆より一足先に早く来ていたチビがみんなをお出迎え。
「よう、チビ!ご苦労さん!」
「お?」
「たやいっ!」
「ボ」
「アンっ!」
「……ぴい?」
チビはジャミル達の後ろにいたしんのすけ兄妹、シロとボーちゃんを見、
不思議そうな顔し首を傾げた。お兄さんらしく、ひまわりはしんのすけが
抱っこしている。
「おお、ジャミルさん達、いらっしゃい、その節はお世話になりましたのう……」
遅れてチビの後ろから住職が出て来る。チビから状況は聞いている為、
住職はジャミルとアイシャの身体の事も分かっている様であった。
「爺さん、久しぶり、つっても、まだそんなには立ってねえか……」
「こんにちはーっ!お世話になりまーすっ!えと、バーベキューの時、
お会いしましたよね、改めまして、私、犬飼いろはですっ!」
「わたしはこむぎだよーっ!よろしくねーっ!」
いろは、こむぎも住職にご挨拶。住職もニコニコ笑顔を返した。
「おお、今日は又違うお友達なんですのう、お話はチビ殿から
お伺いしております、お疲れでしょう、ささ、此方へ……」
住職はジャミル達を茶の間へと通し、皆に氷たっぷりの冷たい
麦茶を振舞った。いろはとこむぎも麦茶を早速頂く。
「はあ~、やっぱり冷たい麦茶は美味しいねえ~!」
「でも、ちょっとにがいねえ……」
「あはは、こむぎはまだあんまりお茶に慣れてないからね……」
「……う~ん、オラもプスライトの方が良かったゾ……」
「……おーい、静かにしてろよ……」
早速、しんのすけの我儘が発動。ジャミルは慌ててしんのすけの頭を
ゲンコで小突く。
「いやああ~ん……」
「おお、これは気が付きませんでのう、こんな小さい子が来ると
分かっていればジュースの一つでも用意したんじゃが、気が利かんで
すまんですのう……」
「いや、元は勝手に付いて来たこいつらがわりィんで……、
爺さん、あんまり気を遣わねえでくれな……」
「しんちゃん、麦茶も美味しいよお!」
「うん、暑い時は、さっぱりした飲み物の方がいいんだよ、
甘過ぎるのだと逆に喉が乾いてしまう場合もあるからね」
「わたしも麦茶は初めてのんだけど、いろはのいうとおり、さっぱりして
おいしいよ!元気がでるよ!」
「おお~?」
ダウドとアルベルトが美味しそうに麦茶に口を付けるのを見、
こむぎにも勧められ、しんのすけも漸く麦茶を飲み始めた。
「……これは又、おつな味ですなあ~……」
「調子のいい奴だ、ったく……」
そう言いながら、ジャミルも麦茶を貰って飲んだ。
「本当、冷たくて美味しい……」
アイシャも麦茶を一口。飲んで喉を潤した。
「……はな、から、むぎちゃ……、でた」
「ボーちゃんたら、もう……、ほらほら……」
アイシャはボーちゃんの鼻から噴出した麦茶をタオルで丁寧に
拭いてやる。今日は異様に面倒見の良いジャミルの姿を見、
しんのすけは冷や汗を流す。しんのすけはこの時点では2人の
入れ替わりを知らないので無理もないのだが。
「……怖いゾ」
「それで、爺さん、チビから聞いてると思うんだけど……」
「おお、大事なお話でしたな、儂の知識がお役に立てれば
なのですが、喜んでお話致します……」
「本当に助かるよ、と、チビ、話が終わるまでの間、こいつらと
遊んでやってくれな」
「きゃああ~い!」
「分ったきゅぴ!」
チビにしんのすけ達とひまわりの子守りを頼み、いよいよ話は本題へと。
「チビ、チンチンカイカイ!」
「ぴいい~?」
「たいっ、たいっ!」
この兄妹とのやり取りは、どうにもチビも困惑するらしい。
「アンっ!(こうやるんだよ!)」
「……きゅぴ……」
シロが先輩として、チンチンカイカイの手本をチビに見せているが……。
(チビちゃん、大丈夫かしら……)
ちらちら見ているアイシャも不安でハラハラする……。
「ふむ、心と体の入れ替わりとは……、映画やテレビの中だけかと
思いましたが……、本当に起こるんですのう……」
「うん、マジでびっくりした……」
「たくっ、いっつも騒動起こすんだからっ!巻き込まれるのは
オイラ達なんだよっ!?反省しなよねっ、返事っ!」
「悪かったと思ってますよ……」
(……ダウドの野郎……、調子に乗って強く出やがってからに、
ちゃんと元に戻ったら後で覚えてろよ……)
「うん、普段の行いだよね、本当に……」
「……ダウド、アル、皆、私達の所為で本当にごめんなさい……、
皆を巻き込んでしまって……、私、どうしたらいいのか……、ぐす……」
「!!」
「ええっ!?」
急にアイシャが正座し、土下座をし始めた為、2人は慌てる。
「いや、アイシャは悪くないんだよお!悪いのはジャミルっ!」
「おい……」
「アイシャさん、絶対大丈夫ですよ、元気出して下さいっ!」
「そうだよっ!きっとすぐに元にもどれるわんだふるー!な日がくるよっ!」
いろはとこむぎもアイシャを励ます、そんな光景をお子ちゃま達が
見ていて……。
「……向こうは何だか深刻なリアルおままごと……ですか?」
「しゅら、ば……」
「たいやー!」
「アン!」
「きゅっぴ……」
揉めている、お兄さん、お姉さん組を見て、溜息をついた。
「皆さん、どうか落ち着きなされ、これは儂が大昔に調べた知識なんですが、
この島には、まだまだ解明されていない多くの謎が残っておるそうで、
その一つが此処、モンブラン山に眠るとも言われておるのです……」
「……」
住職の話に、6人はごくっと唾を飲み込む。
「まだ我々が知らない未知の世界、このモンブラン山の更に先に……、
別世界の果てに繋がる不思議な大穴があると言われております……」
「そんな場所が……、マジで……?」
「其処に……、幻のお花が咲いているのかしら……」
「幻のお花?ですか!?私も今まで沢山不思議を貰ったけど、まだまだ
不思議な世界は広がるんですね!」
「まだまだ、わんだふるー!なセカイがいっぱいあるんだねえ!」
「はい、そう、古い書物で拝見した事がありますじゃ、あくまでも
伝説なので……、その場所に行った……、と言う方もまだ実際お会いした
事もないですし……」
皆に又、麦茶のお代わりをコップに注いで回りながら住職が口を開く。
「はあ、それじゃ……、やっぱり、夢物語に近いお話って事だよねえ……」
溜息をつき、足をおっぴろげてダウドが唸った。
「ぴい、ひまわりちゃん、寝ちゃったきゅぴ……」
「ん?」
チビに突っつかれ、ジャミルが後ろを振り返ると、確かにひまわりが
爆睡していた。
「……たい……、すぴ……」
「奥に儂の昼寝部屋があります、ご利用為さると良い……」
「じゃあ、私達が暫くの間、ひまちゃんのお世話もしまーす、
又あとで、お話聞かせて下さいねっ、しんちゃん達も行こうーっ!」
「ほーい……」
「ボー」
ひまわりに釣られたのかしんのすけも眠そうな返事を返す。いろは達が
お子ちゃま達を部屋に連れて行き、漸くその場は落ち着き静かになる。
「とにかく、行くか行かないかはジャミルとアイシャ、
2人の判断に任せるよ、僕らは友達として、最後までサポートさせて
貰うだけだから……」
「アル……、でも……」
少し俯いてアイシャが不安そうな表情をする。
「はあ、それでも折角此処まで来たんだから、一応行ってみる
価値はあるよね、ボソッ、……オイラ、本当は怖いから
嫌なんだけど……」
最後の方は小さく呟いて、ダウドもジャミルの方を目線で追ってみて
ちらちらちら……。
「とにかく、実の処、本当にそんな場所があるのかは儂には
お答え出来ませぬが、あなた方はまだお若い、お若いうちでないと、
チャレンジ出来ない事もあるでしょう……」
「爺さん……」
「ほっほ!では、儂がお話出来るのはこんな処ですかのう、折角
こんな元気な皆さんが来てくれたんですじゃ、今日は腕に寄りを掛けて、
夕ご飯をご馳走致しますよ!」
「ぴいー!ご馳走!チビもお手伝いー!」
「あっ、住職さん、私も……」
アイシャが立ち上がるが住職は首を振る。
「いやいや、皆さんはお客様なんですぞ、どうぞ今日はごゆっくり
お寛ぎなされ」
「アイシャ、大丈夫だよお!おしょーさんのお手伝いはチビがするからね!
心配しなくていいよお、ゆっくり休んでてね!」
チビはアイシャの顔をペロッと舐めると、住職の後について行った。
「チビちゃん、住職さん、有難う……」
「ジャミルも、まだ時間はあるから、どうするのか今夜ゆっくり考えて……」
ジャミルの方を見ながらアルベルトも微笑んだ。
「アル……、ああ……」
そして、夕ご飯、住職とチビが用意してくれた食事がちゃぶ台に並んだ。
本日のお献立は、高野豆腐の煮つけ、焼き魚、漬物、味噌汁、ほかほかの
白米ご飯。
「ほっほ、皆さんが来てくれましたからのう、今日は腕に寄りを掛けて
奮発致しました!ささ、どうぞ召し上がれ!ご遠慮なさらず、ご飯のおかわりも
沢山ありますぞ!」
ちなみに、焼き魚はジャミル達への特別なスペシャルおかずらしい。
「うわ、美味そうだなあ……」
「ほんと、お腹すいちゃったよお~!」
「ご飯の時間ですね!私もはらペコってお腹すいちゃいましたー!
美味しそう!さ、こむぎもシロちゃんも、一緒にいただきまーすっ!」
「いただきますわんっ!」
「アンっ!」
こむぎは既にわんこモードに戻り、夕ご飯はシロと一緒にドッグフードを
頂いている。彼女が不思議体質だと言う事は、住職にも話しており、爺さんも
天然なので気にせずあっさり承諾。
「……ボー、はな、たれた、いろは、ちゃん、……ふい、て……」
「はあ~い、チーンだよ、ボーちゃん!」
「ちーん……」
素朴ではあったが、住職とチビが心を込めて作ってくれたほかほかの
夕食にジャミル達は思わずお腹を鳴らし、食事に舌鼓。ひまわりは
いろは達にミルクを飲ませて貰い、既にぐっすり中である。
「……ちょっと~、おじいさん~、これでご馳走って、いつもどんなの
食べてんの?オラ、今日はから揚げとハンバーグが食べたかった……」
相変わらずのしんのすけの我儘が炸裂し、ジャミルは一発ブン殴って
やろうかと思い、席を立とうとするが、首を振り、アイシャがそれを
阻止した……。
「ふむ、おチビさんにはちと物足りない御飯かも知れませんがのう、
全部食べれば栄養満点、元気モリモリにしてくれる凄い御飯なんですぞ!」
「本当に?全部食べたら、アクション仮面みたいに強くなれる……?」
「ほほ、勿論ですとも!」
「……じゃあ、オラも食べる……」
漸く、しんのすけも食事をしだし、ジャミル達はほっと一安心。
「おお~、美味しいゾ……!」
「ほほ、それは良かった!」
(たく、んとに、調子のいいジャガイモめ、けど、俺らこれから
マジでどうしたらいいんだ……、もしもその場所が本当に存在したと
して……、帰って来れる保証があるとは限らねえし……)
……不安の中……、寺での夜は更けてゆく……。
冒険編3 これからのこと
「ほっほ、皆さん、お風呂が沸きましたぞ、汗を流しなされ!」
「住職さん、何から何まで、本当にお世話になります……」
礼儀正しくアルベルトが代表で住職に頭を下げる。
「……それがですの、風呂は外にあるんですじゃ……」
「えっ……」
住職に案内され、ジャミル達は外に出てみると……。
「何だこれ……」
何と、其処にあったのは、巨大な釜のお風呂であった。
「これって、五右衛門風呂……、って、云うのかなあ……」
「ご、ゴエモンっ!?ゴエモンさんのおかまのおふろっ!?」
「……」
……どうリアクションしたらいいのか分らず、ダウドがポリポリ
頬を掻き、再び人間少女モードになっているこむぎも大興奮。
……一方のジャミ公は、おかま……、の言葉に異様な反応を示した。
「これですので、梅雨が続くとお風呂にも入れない事が
多いんじゃが……、最近は猛暑続きですからのう、特に
心配もすることなく、風呂にも毎日入れております」
「じゃあ、汗掻いてるし、折角だから私は入らせて貰おっかな」
「!」
ポツリと呟くアイシャに、ジャミ公はうっかり股を押さえる仕草を
するが、今の彼女は自分の身体なんである事を直ぐに思い出す……。
「じゃあ、皆でお風呂に入ろう!こむぎ、しんちゃん、ひまちゃん、
ボーちゃん、よーし、皆で一緒にわんだふるバスタイム開始―っ!」
「わんだふるーっ!」
「ほーい!」
「ボオ!」
アイシャとこむいろ、お子ちゃま集団は入る様である。しんのすけ達は
まだ子供なので、いろは達と一緒にお風呂に入れる権利はある。
……何処かの尻尾が見たら、地団駄を踏んでさぞかし悔しがるであろう。
「……じゃあ、お前ら先に入れよ、俺ら男は後でいいから、って、
俺は今アイシャの姿だけどな……」
「いいのよ、ジャミル、何かもう慣れちゃったから、ふふ!」
「アイシャ、あんまり無理しないでくれよ……」
「何で?本当よ、それよりお寺に戻って戻って、お風呂入るから!」
「んじゃあな……」
「着替えの準備をしようね、みんな、行くよっ、あ、アイシャさん、
お先にどうぞっ!」
「うん、いろはちゃん、ありがとう……」
「ねえ、いろはちゃん、オラずっと気になってたんだけど、何で
ジャミルのお兄さんなのに……、アイシャのおねいさんなの……?」
「そ、それは、ちゃんとしんちゃんにも後で段々説明するからね!」
「……分かんないゾ……」
アイシャも寺に戻って下着を取りに行き、珍しいお風呂に早速
入らせて貰った。
「……はあ、気持ちいい……、それにしても、本当にいつ見ても
小さいわね、ジャミルのここ……、はっ、や、やだっ!何言ってるのっ、
私っ!きゃあーーっ!」
アイシャは顔を赤くし、慌ててお湯しぶきをあげて風呂に潜る。
「……ぷはあっ、……はあ、もし、もしも……、このまま私達、
戻れなかったら、それでも……、その時は、私……、ジャミルとして
……」
空に浮かんだ星を見ながら、アイシャは物思いにふけるのだった。
「……それにしても、蚊に刺されちゃったじゃない……」
「はあー、さっぱりしたねっ、いいお湯だった~!」
「ホントホント、お外のおふろってはじめてだねえ~!」
「本当だねっ、こういうのも楽しいねえ!今度はまゆちゃん達も
誘って一緒に来ようね!」
「♪わんっ!でも、ユキはお風呂きらいだわん!ぷぷっ!」
いろは達も風呂に入り終わり、後、風呂に入るのはジャミル達、
残った男連中だけとなる。
「いろはちゃんも、こむぎちゃんも……、お胸、……小さくて柔らかくて
かわいかったゾ、ぬへええ~……」
「もうーっ!しんちゃんのえっちっ!これから大きくなるんだからーっ!」
「そうだよーっ!こむぎのおむねだっていつかぷりんぷりんに
なるんだもん!」
「……あのなあ~……」
「ボ……」
ボーちゃんも鼻血を垂らす。……ジャミ公は、セクハラマセ糞ガキ、
相変わらずどうしようもねえなと溜息をつく。
(……ジャミルの、あそこも……)
「……ん?」
「な、何でもないわ……」
「ジャミル、先に入ってきなよ、アイシャの身体なんだから、清潔に
してあげないとねえ……」
「ダウド、ありがとう……」
「いいんだよお!」
「よし、んじゃあお先に!」
ジャミルは肩にタオルを担ぎ、洗面器を持つと、いつものクセで
蟹股歩きでのしのし外に出ていった。
「お、おっさん……?」
「……もうっ!ジャミルのバカっ!」
……そして、五右衛門風呂に浸かりながらジャミルも考える。
「しかし、コイツも相変わらず小せえ胸だなあ……、っと、今は
んな事言ってる場合じゃねえ、この身体はアイシャのモンだ、……やっぱ
ちゃんと本人に返してやりてえよなあ、他にも問題は山積みだ……、それに、
あの悪ガキ共、どうするか……、危険な場所に連れて行けねえよ、ふう……」
そして、住職が提供してくれた部屋に、4人組、いろは&わんここむぎ
+子供、チビ、シロで就寝する事に。雰囲気はちょっとした修学旅行
状態である。
「チビ、お前、仕事の方は大丈夫なんか?」
「ぴい、代わりのドラゴンさんにお仕事代わって貰ったから
大丈夫きゅぴ!でも、その分チビのお休みも少し削られちゃう
かもだけどね」
「私達の所為で、チビちゃんにまで迷惑を……」
「いいきゅぴ!チビはこうやって皆と一緒に居られる方が
ずっと嬉しいんだよお!」
「有難う、チビちゃん……」
アイシャがチビを抱き寄せ、そっとハグする。
「きゅっぴ!」
「考えたんだけど、駄目で元々、俺はこのまま行く、お前の身体も
何とかして元に戻してやりてえしさ……」
布団に寝転がりながら、上向きスタイルでジャミルが口を開いた。
「ジャミル……」
「そう、そう決めたんだね、それならば僕らは付いていくだけだよ、
ね、皆……」
ダウド、いろは達も静かに頷く。しんのすけ達はとっくに爆睡していた。
「ま、もしも駄目でも、又、他の方法を探せばいいんだもんねえ、
オイラはどうにかなる……、と、思うよお」
「ですねっ、明日からまた皆で一緒に頑張りましょう!」
「わんわんーっ!」
布団に寝ころんだまま、いろはは側でくっついているわんここむぎと
両手をハイタッチし合い、皆にエールを送った。
「みんな本当に有難う、私、皆に迷惑掛けない様にがんばるから……、
だから……、宜しくお願いします、ふええ……」
「……アイシャさんは謝らなくていいんですよっ!ほらほらほらーっ!
笑って下さい、スマイルわんだふるーっ!」
「アイシャ、そうだよ、げんきげんきでわんだふるで行こうーっ!」
又ジャミルの顔でめそめそ泣き出したアイシャをいろはが
優しく慰め、こむぎも顔をペロペロ。……鼻水垂らしてこむぎに
顔舐めて貰ってる自分で自分の情けない姿を毎度見る羽目になり、
勘弁してくれ状態のジャミ公。
「んじゃ、そういう事で、話は纏まったね、オイラも覚悟したから……、
大丈夫だよお、逃げたりもしないから、それじゃお休み……」
「おい、待てよ、まだ話は終わってねえぞ……」
「……いたっ!」
眠ろうとしたダウドの頭をポカリとジャミルが叩いた。
「なんだよお!」
「こいつらの事だけどな……」
ジャミルが眠っている小悪魔兄妹の方を顎でしゃくった。
「あ……」
「そ、そっか、しんちゃん達の事……」
「はっきり言って、危険な旅になるかもしんねーし、これ以上は
無理だ、だから……」
ジャミルが出した決断とは……。それは後にし、話はこれより先に
夜中の出来事に移る。
「……」
「いろは、ねむれないの?」
いろはの側で眠っているこむぎは彼女に問う。毛布に顔を埋め、いろはは、
うん……と、小さく返事。
「ごめんね、こむぎ、起こしちゃったね……、何だかね、私達、
本当にこの先、誰も知らない未知の世界に行くんだなあって……」
「こわいの……?」
「色々考えてたら、つい……、駄目だね、ジャミルさんとアイシャさんの
力になりたくて……、此処まで来たのに……、しっかりしなくちゃ……」
「だいじょうぶ、いつでもどこでも、こむぎはいつもいろはといっしょ、
ずっといろはといっしょにいるよっ!」
「……そうだね、有り難う、こむぎ……、こむぎと一緒なら
何処へだって一緒に行けるね!恐くない、恐くない!だねっ!」
「わんっ、いろは、なんかまゆみたいわんっ!」
「あははっ、そうだねえ~!じゃあ、今度こそ……、寝ようね、
こむぎ、お休み……」
「おやすみ、いろは……」
いろははこむぎを側にぎゅっと抱き寄せ、二人は再び安心した様に眠る。
だが、その後、6人はひまわりの夜泣き……、しんのすけの何回もの
おしっこで一晩中困らされ……。
「……びええええっ、びえええっ!」
「ひまちゃん、よしよし、ねんねだよ、いい子いい子~……」
「すうすう……、だめわん……、ねむくてねむくて……」
「ごめんね、二人とも、ひまちゃんは私があやすから、もう眠って……、
身体、大事にしないと……」
「アイシャ、ありがとうーっ!……ぐう~……」
「……すみません……、ふぁぁ~……」
「……オラ、今度はおうんち……」
「またかい?分ったよ、もう……」
ダウドがしんのすけをトイレに連れて行く為起こされる。
ちなみにトイレに連れて行くのはアルベルトと交代制であった。
「ぴい、チビもうんちでる、動いたらもりもり出そう、困ったよお~……」
「……お前もかよ、たく~、ほら、チビ来いよ……」
「きゅぴ~……、ジャミル、ごめんぴい……」
「いいよ、その代り、ちゃんと全部出して来いよ……」
チビの排泄はジャミルが抱いて外へと連れて行った。……もう
てんやわんやで大騒ぎである。
「ボオ~……zzzz」
一晩中起きず、しっかり寝ていたのはボーちゃんだけ。そしてついに
一行は出発の日、旅立ちの朝を迎える……。
「どうしてっ、何で此処でバイバイなのっ!」
「……ボオオ!」
「どうしても……、だ、これ以上、お前らは連れて行けない、
それだけだっ!」
「酷いっ!……みんな、オラ達を捨てるのっ!?」
「やいやいやいっ!!」
「アンっ!アンっ!」
「……あのなあ、不倫ドラマみたいな事言ってんじゃねえよ……」
しんのすけとボーちゃんとひまわりとシロ、アイシャの姿の
ジャミルに必死で抗議する。
「あのね、皆で考えたんだけど、しんちゃん達をこれから先に
連れて行くのは、ちょっと危険なんだよ、だからね、ご迷惑
掛けちゃうけど……、住職さんにしんちゃん達の事はお願いして
あるんだ、大丈夫、絶対にすぐに戻って来るから……」
アルベルトが優しく言葉を掛ける物の、しんのすけ達はいう事を
聞かず、断固抗議を続ける。住職はそんな子供達のやり取りを
温かい眼差しで見守るのであった。
「いやだっ!オラ、絶対皆についてくもん!それに、何で
アイシャおねいさん、ジャミルお兄さんみたいにお口が乱暴に
なってるのっ!おかしいでしょっ!!」
「う……」
しんのすけにおかしいと言われ、ジャミルとアイシャは
顔を見合わせて苦笑する。……仕方なしに、ジャミル達は
自分達に起こった事情を……、どうにか子供達に説明するが。
「お……、おお~?」
しんのすけは説明を受け、最初は不思議そうな顔をしていたが。
「つまり、オラ、良く分かんないけど、今はジャミルお兄さんが
アイシャおねいさんで、アイシャおねいさんがジャミルお兄さん……、
て、事なの……?」
「……なんと、なく、……わか、る……」
「あのね、わたしたちは、これからいれかわっちゃった2人の
からだと心を戻すほうほうを探して今からモンブラン山の奥へ、
ぼうけんするんだよ、でも、これから先はどんなきけんな所か
分からないんだ、……だから、これ以上はいっしょにいくのは
あぶないんだよ……」
再び少女モードに戻ったこむぎはそう言いながら、しゃがみ込んで
子供達の頭を順番に優しく撫でる。
「オラもついてくっ!……オラ、絶対に辛くてもわがまま言わないっ!
チョコビも食べたくても我慢するっ!……無理かも~……」
「……おいおいおい……」
言う事を聞かないお子ちゃま集団に困り果てる6人……。果たして。
zokuダチ。セッション27