zokuダチ。セッション26

やっちまった内容ギリギリ回。新規住人、幻水1から、
マクドール坊ちゃんとグレミオ。これからの更新は週末問わず、
体調が大丈夫な日に不定期で療養しながらゆっくり投稿していきます。

エピ 99・100・101・102

俺がアイシャでアイシャが俺で……4

「はうあーっ!げーっぷ、もう食えねえ……」

帰るなりジャミルは又足をおっぴろげ、アイシャの部屋のベッドで
大の字になる。

「そういや、アイシャの奴相当酔ってたみたいだけど、大丈夫かな……」

様子を見に行きたいが、時間も遅い為、もしも又誰かに見つかったらと
思うと何となく気が引けてしまうのであった。

「アイシャいる?オイラだよお」

「ダウっ!?こ、こんな遅くに、コホン……、な、なーに?」

「ちょっとさあ、話したい事があるんだよお、入っていいかな?」

「駄目っ!もう遅いんだからっ!明日でいいでしょっ!」

「……そう、さっきね、パーミアンでレジ前に売ってたお土産の
チョコ買ったんだけど、おすそ分けしようと思って持ってきたんだ
よお、じゃあ、又後でね……、残念だね」

「わ、分ったわ、少しだけよ……」

駄目駄目馬鹿ジャミル、あっさりチョコで釣られる。ダウドは
これよがしと反応を感じ取り、ニヤリと笑うのであった。

「お邪魔しまーす!」

ダウドはちょこちょことアイシャの部屋……、に入ってくる。

「いい部屋だねえ、ジャミルの部屋と違ってね……」

ダウドの言葉に少し、ジャミルの顔に血管が浮いた。

「……ダウド、チョコまだなの?早く頂戴よ……」

イライラし始め段々と、又ジャミルの地が出て来てしまっている……。

「うん、そんなに慌てないでよお、それにしても、今日は随分と
アイシャ意地汚いねえ、あんなにがつがつご馳走食べてたのに……」

「うるさいってのよっ!もう遅いんだからっ!乙女の部屋に
いつまでも野郎が居座るんじゃないってのよっ!……チョコ
置いたらさっさと戻ってよ!」

「ねえ、ジャミル……」

「何だっ!?あ……」

「……やっぱりねえ……」

ジャミル、等々ダウドに乗せられ返事を返してしまう。が、
すぐに開き直り、腕組みをし、ベッドの上にドスンと座り
あぐらを掻いた。

「何がやっぱりねえだっ!追っかけ音次郎じゃねえんだよ!お前、
いつから気づいてた?」

「うん、昼間は流石にびっくりしたさ、あんな気持ち悪いジャミル……、
見た事なかったよお……、うきうきルンルンで掃除するなんてさあ、
おえ……」

「……ル、ルンルンで掃除だと?ア、アイシャの野郎~……、
人の身体でええ~……」

自分でも想像してみてジャミルは気分が悪くなる……。

「……で、完全に分ったのは何時からだ?」

「はあ、んじゃあやっぱり、今ジャミルの部屋で倒れてるのは
アイシャなんだね、成程……、今日、中華料理で食事してた時だよお、
だってあんなの見たらさあ、誰だって不自然だと思うでしょ……?」

「……むう~」

「オイラは長年ジャミルの親友やってるからさ、何とか分ったけど、
ホークは酔っぱらってるし、バーバラとシフは階段落ちの後遺症としか
思ってないみたいだし、はあ、呑気だねえ、グレイはどうでもいい様な
感じだし、クローディアはのほほんだし……、アルはワタワタしちゃうし……」

ダウドは呆れた様な表情でジャミルを見るが……。

「仕方ねえじゃんか、まさかこんな事になるとか、誰が思うんだよ……、
とにかく何とかして身体を元に戻さねえと……」

「そうだね、このままじゃアイシャが可哀想だし、何よりこんな変な
ジャミルいつまでも見てるのも嫌だしね、こっちまでおかしくなっちゃい
そうだよ……」

「……悪かったなあ……、処で……、アイシャは今どんな
様子なんだ……?」

「酔っぱらって寝ちゃったままだよ、時々譫言でね、ジャミルのバカって
言ってるよお……」

傍からもしも何も事情を知らない者がみたら、自分で自分の事を
バカと言っている訳で、それは非常に変な光景である。

「はあ、とにかく明日からマジで何とかしねえと、このままじゃ
どうしようもねえ……」

「そうだね、オイラにも出来る事が有れば協力するから、じゃあ、
オイラ部屋に戻るよ、この事は誰にも言わないから、安心して……」

「……ああ、もしも今夜、アイシャに何かあったらすぐに知らせてくれ……」

「分った、それじゃ……」

ダウドは部屋に戻って行った。

「……あっ!チョ、チョコ……!……ダウドの野郎っ!!」

そして、2人のやり取りを部屋の外でこっそりと盗聴し、
逃げ出した者が約2名。

「どうしよう……、お話聞こえちゃった~……」

「やっぱり……、あれはアイシャじゃなくて、中がジャミルだったんだねっ!」

心配なのか……、野次馬なのか、こっそり様子をまた窺いに来ていた
いろはとこむぎであった。


翌朝……

ジャミルはアイシャの部屋のキッチンでささっと軽く朝食を作る。
ベーコンオムレツとトーストである。

「まあ、こんな処か、簡単なモンなら作れるからな……」

「ジャミル、お早う……」

早朝、早速アイシャが部屋に訪れた。

「おう、もう起きたのか?二日酔い大丈夫か……?」

「うん、何とか、それより美味しそうねえ……」

アイシャはテーブルの上の朝食を見て目を輝かせる。

「食うか?食欲あるなら二日酔いは、まあ、平気そうだな」

「うんっ!!」

2人はテーブルに着いて朝食を食べ始めた。

「おいしーい!卵ふわふわー!」

「……ハア、聞くけど、お前いつも朝飯とかどうしてたん?」

「ん?自分で作ってるわよ、目玉焼きとか……」

「ほお~……」

「でもね、何故かいつも真っ黒クロのクーロクロ……、焦げ焦げに
なっちゃうの……」

「……」

「大概は、バーバラ達と一緒にパーティルームでご馳走になるかしら、
あはは……」

「ふう~、ま、いいや、食えよ、冷めちまうぞ……」

「うんっ!いただきまーすっ!」

自分で、自分が朝御飯を食べているのを見るのもおかしな光景であるが、
やっぱりアイシャが元気だと思うとジャミルは安心するのである。

「んでな、アイシャ……」

「ふぁひ?」

トーストを銜えながらアイシャがきょとんとした表情をする。

「……バレちまった、ダウドに……」

「うっ、……け、けほっ!けほっ!」

「おいおい、大丈夫か?牛乳飲めよ、ホラっ!」

驚いてトーストを詰まらせてしまったアイシャに急いで牛乳を
注ぎ、差し出す。アイシャは慌てて牛乳を一気飲みし、トーストを
喉に押し込んだ。

「……ふう~……」

「落ち着いたか……?」

「……じゃ、ないわよっ!どうするのよっ!!」

「いや、……誰にも言わねえって約束したし、お前の事も
心配してたよ、……何より俺のこの状態をいつまでも
眺めてるのが耐えられねえんだと……」

「そう、ダウドが……」

それを聞き、アイシャもちょっと安心した様子。

「ごめんなさい……、あの、お話聞いちゃって……」

「……わん……」

「……はううううっ!?」

「いろはっ!……こむぎっ!お前らっ!!」

声に振り向くと、部屋の入口にこむいろコンビが立っていた。
最初にこむぎが部屋の中に入ると、いろはが静かにドアを閉める。

「大丈夫ですよ!お2人の事、誰にも言いませんから!」

「だれにもいわないよっ!うんうん、ないしょないしょ!」

……だが、こむぎはアホで、非常に口が軽い犬娘である……。ジャミ公は
今は自分の姿のアイシャの顔を伺いながらどうにも不安な気持ちに……。

「私達も力になりたいんです、何か少しでもお役に立てる事があれば!」

「……ホ、ホントか?」

「わんっ!」

「二人とも、本当にありがとうーっ!!いろはちゃん、こむぎちゃん!」

「あ、あははです……」

「でも、何だかおかしいねえ~」

アイシャは目を輝かせ、感激し、いろはとこむぎ、2人の手を握る。
しかし、姿はジャミルなので、どうにも調子が狂うらしい。

「何か分ったらすぐおしらせに来るからね!」

「大丈夫ですよ!お2人とも絶対元に戻ります!元気出して下さい!」

いろはとこむぎは2人を励まし、部屋を後にする。しかし、協力者が
増えたのは良かったものの、この先一体どうなるのか……、本当に元に
戻れるのか、ジャミルもアイシャも不安を拭えず……。

俺がアイシャでアイシャが俺で……5

「おい……」

「何よう」

「お前、何時まで此処にいるんだよ、他の奴がもしも見たら変に思われる
じゃんか、一旦俺の部屋戻れよ……」

「別にいいでしょ、本当は私の部屋なんだもん!それに目を離したら
ジャミルが変な事するんじゃないかと思うと心配なのよ……」

「はあ~、信頼ないんだなあ、俺って……」

と、言いながらも、ジャミルはついうっかり鼻の穴に指を持って
いきそうに……。

「……そういう事するからっ!心配なんだったらっ……!!」

もうアイシャは自分の身体でも構わずムキになり、馬乗りになって
飛び掛かりジャミルを叩いた。第三者がうっかり見たらちょっと
危ない光景に……。

「いててて!やめろっつんだよっ!この凶暴ジャジャ馬っ!!」

「ぴい~?ジャミルとアイシャ、何してるの……?」

「チビ……」

「チビちゃん!」

第三者ならぬ、第三ドラゴンの登場である。

「くんくん、くん……」

チビはふよふよと、2人の側に近づき、匂いを嗅いだ。

「???……ねえ、何でアイシャの中にジャミルが入ってるの?
こらっ、悪戯は駄目だよっ!出て行きなさいっ!!」

チビはそう言いながら、ジャミルの頭部を爪でべチべチ叩く。

「いててててっ!何だよオメーもっ!!この腹ポッコリブー
メタボドラゴンめっ!!」

「ぎゅっぴいいーっ!チビはお腹がちょっと丸いだけっ、
メタボじゃないのっ!」

ちなみに、チビは興奮したり、怒ったりすると、口調がきゅっぴから、
ぎゅっぴになるのである。

「チビちゃん、凄いわ……、チビちゃんは私達の事、分ってくれるのね……」

「ぴ?アイシャ!こっちが、ホントのアイシャ!ジャミルになってても
チビには分るよ!」

「チビちゃんっ!大好きよっ!!」

「ぴい~っ!チビもアイシャ大好きっ!!」

アイシャとチビはハグするが、それは自分の姿なので、見ていて困惑する
ジャミルである……。

「お~い、チビ~、勘弁してくれや……」

「ぴ、チビ、ジャミルも大好きだけど、何でこんな事になってるの?
ねえ、ジャミル、アイシャに何したの……?」

チビは不思議そうに、今度はジャミルの膝の上に乗ると
首を傾げて再び匂いを嗅ぎ始めた。

「あのね、チビちゃん、話すと長くなるんだけど……」

アイシャはチビにも分かってしまった以上、事情を話し始めた。


「ぴい、そうなの……、じゃあジャミルが悪いんだねっ!
反省するきゅぴ!」

「おいコラ!チビっ、やめろバカっ!」

チビはジャミルの顔の側まで近づき、お仕置きにおならを
しようとするが……。

「チビちゃんっ!お願い、やめてっ、それは私の身体なのよ……」

「そうだったぴい、中はジャミルでも、見た目はアイシャだもんね、
ごめんね、元気出してね……」

チビはアイシャの顔をペロペロ舐めた。

「ううん、分かってくれて有難うね、チビちゃん……」

(さっき、お構いなしで飛び掛かって来たのは何処のどいつだ……)

「何っ、ジャミルっ!?」

「何でもないでえーす!」

「でも、こんなのチビも嫌きゅぴ……、メダパニ掛けられた
みたい……、おかしくなりそうきゅぴ……、2人とも早く元に
戻って……、ぴい……」

「チビちゃん、ごめんね……、私もどうしたらいいのか……」

「きゅぴ……」

チビまで落ち込んでしまい、アイシャはそっとチビを抱き上げた。

「あのね、もしかしたら……」

「うん?」

チビはそっと振り返りアイシャの顔を見上げた。

「おしょーさんなら、何か分るかもしれないきゅぴ……」

「おしょーさん……、て、この間、ジャミル達が精進修行に
駆り出されたお寺の?」

「ぴい!」

「あの天然じいさんか?俺らが戻れる方法知ってるってのかよ、
んなバカな……」

「あのね、この島にはまだまだ誰も知らない色んな謎があるんだよお!
おしょーさんはそういうのも興味があって、色んな事知ってたり、
ご本を読んで調べたり研究してるんだよお!」

チビは興奮して喋りながら、ジャミルの側まで飛んでいく。

「だから、それと俺らが元に戻る方法と何の関係が……」

「チビ達が住んでるモンブラン山の、更にその先に、まだ誰も
行った事のない、未知の別世界の場所があるんだって、其処には、
2人で一緒に蜜を飲むと、蜜を飲んだ者同士の心が入れ替わっちゃう
不思議な幻のお花が咲いてるんだって……」

「それって……」

ジャミルとアイシャは顔を見合わせる。

「チビ、少しだけおしょーさんにお話聞いただけだから、本当の事は
分らないよお」

「……ジャミル……」

「う~ん……」


そして、その夜、事情を知っているダウド、いろは、こむぎ、
そして、アルベルトが今はアイシャの部屋に集まっている。チビは
一旦モンブラン山に帰省した。

「おい、結局、アルに喋ったんか……?」

「だってさあ、やっぱりアルにも知ってもらった方がいいよお!」

「そうね、その方が安心だわ、私達、仲間なんだもの!」

「うん、そうなんだけど……」

アルベルトはジャミルの姿でニコニコ笑っているアイシャを見、
やっぱり何となく、変な気分になった…。

「ごめんなさい……、図書館で色々……、本とか、調べたんですけど、
やっぱり……、入れ替わった心を元に戻す方法がある本は見つかり
ませんでした……」

「困ったわん……、こむぎ、ご本よんでたら、ねむっちゃったの……」

「いいのよ、いろはちゃん、こむぎちゃん、私達の為にこんなに
頑張ってくれて凄く嬉しい!謝るのは私達の方だわ、本当にごめんね、
迷惑掛けて……」

アイシャは落ち込みそうになるいろはを励まし、逆に謝る。優しいその姿に
こむぎも安心するが。

「……アイシャ……、で、でも……、今はジャミルだから……、
や、やっぱりなんかおかしいよう!きゃはははは!」

「……こむぎっ!……めっ!」

「いいよいいよ、別に……、で、やっぱチビ頼みか、……チビの言ってた
話なんだけど……」

「幻のお花の蜜の事ね、とにかく、住職さんに会ってお話を聞けないかしら?」

「……て、事は……、オイラ達もモンブラン山に行くんだね、
まあ仕方ないね、協力するよお……」

「うん、何かまた前作に戻ったみたいな感じだね……」

「私達もお供しまーす!秘密を知ってる者同士、お互い助け合いましょう!」

「!?」

他のメンバーが一斉にいろはの方を見るが……。

「いきたいいきたーい!こむぎもみんなといろはとモンブラン山
いきたいわん!おさんぽ!おさんぽ!わんだふるー!」

「けどさあ、お前らまだ学校あんだろ?いいのかよ……」

「このお話だと、突発的に私達もいきなり夏休み入りましたし!」

「とっぱつてき!で、このおはなし、いいかげんだから、ダイジョーブ!
で、いろは、……とっぱつってな~に?」

「こむぎ、いいから……、では、私達は、夕ご飯を食べに戻りますね……」

「おう、何か色々と……、ありがとな……」

「まったねえ~!」

いろはとこむぎは夕食を食べに自部屋に戻って行った。

「そうか、もうガキんちょ共は夏休みかよ……、つーことは、
このマンションも……、暫くの間、平日もやかましくなると……、
こりゃ大変だ……」

「そうよ!一刻も早く元に戻らないとっ!いつまでもこのままじゃ、
海にもプールにも、花火大会もお祭りも楽しめないわっ!今年の夏が
終わっちゃうわあーーっ!!」

「お~い、又俺の格好で……、そうゆう事するか……?」

「……ア、アイシャ、……落ち着いて……、プププ……」

アルベルトはアイシャを落ち着かせようとするが、ジャミルの姿で
拳を口元に当てて、ブリブリポーズのいやあーん!をしているので、
只管笑いを堪えていた……。

「……プウーっ!」

「笑うなっ!……このっ、バカダウド!!」

「あいたっ!」

「……ちょっと、ジャミルっ!私の姿でそんな事しないでよっ!」

「オメーに言われたくねえよっ……!!」

「はあ、とにかく、2人とも落ち着いて、とにかく、騒々寺に
足を運ぶという事で……、話は纏まったね?」

「ああ、天然ボケじいさんの方の連絡にはチビにコンタクトを取って貰おう」

「決まりねっ、何がなんでもぜーったい、元に戻るんだからっ!!」

「ふう、何だか又大変な事になりそうだよお……」

……次回の長編から、ジャミルとアイシャは何と、この状態のまま、
いきなりな冒険編が始まります、どうぞ宜しく。でも、その前に、
……ジャミルなアイシャが管理人になり、張り切って暴走する
お話が入ります。

アイシャ張り切る!……男と女の事情編

身体が入れ替わり、2人がおかしくなって2日過ぎた。しかし、心強い?
味方も出来、どうにか元に戻る手掛かりが見つかるかもしれないとの事で、
2人の心には少し希望が燈り始めた。が……。

「ジャミル……、いる?」

「いるよ、ハア、何処にも行かねえっての……」

「タバコとか吸ってないよね?……私の身体で……」

「ああ、平気だよ……」

アイシャの姿のままでは、ヤニを吸えない為、ジャミルはモロ
禁煙状態である。タバコを吸えないので、少しストレスが
たまり始めていた。

「……ああーんっ!ジャミルううーっ!何なのコレ!どうにか
してようーーっ!」

「何がだよ……」

ジャミルはベソをかいている自分の姿のアイシャを見て、何となく
嫌な予感がしたが……。

「どうして男の子の此処って尖って立つのようーっ!……もうっ、
信じらんな……」

「うわ!こらバカっ!」

ジャミルは慌ててぱっと自分で自分の口を塞いだ……。

「……立派な男の生理現象なんだよ……、どうにもなんねえのよ……」

中身はアイシャでも、起きる事はきちんと起きてしまうのである。

「はあ、何か……、だる……」

「ジャミル?」

喚いていたジャミルが急に静かになった。そして蹲りしゃがみ込んでしまった。
アイシャは慌ててジャミルに駆け寄り表情を覗う。

「……大変っ!凄い熱っ!」

「身体がオメーになってるからな……、少し神経質になってんのかもな……、
疲れも溜まってんのかもしんねえ……、何か腹も痛てえ……」

「すぐに横になってっ!身体冷やさなくちゃ!アイスノン、確か
冷蔵庫にあった筈だわ!」

「流石……、自分の部屋だけあって詳しいな……、こんなに頭
ズキズキすんの初めてだわ……、うう、腹痛と吐き気もしてきた、
たく、何なんだよ、上から下から……」

実は……、ジャミルも……、身体がアイシャになった為に、これこれ、
こうであった。突然の頭痛、発熱、腹痛、全てその所為であった。
腹の痛みはどんどん激しくなり、脂汗も出てくる。まるで誰かが
腹の中で太鼓を敲いているような、そんな奇妙な何とも言えない
感覚が襲ってくる。

「ジャミル……、もしかして……、あの……」

と、アイシャが漸くジャミルに起きている現状に気づき始めた、その時。

「あの……、2人とも……、また入居希望のお客さんなんだけど、
どうしよう……」

其処に困った顔のダウドが入って来る。

「……オイラは元々こういう顔だよお……」

(……もう~、こんな時に……)

「今は私がジャミルになってるから、代わりに私が最初に管理人として
お客様のご挨拶に立ち会わなくちゃだわ、ダウド、ジャミルね、今少し
具合悪いみたいなのよ、疲れちゃったみたい……」

「ええーっ!そ、そうなの……、ガサツなジャミルが、珍しい……」

「……」

ダウドはジャミルをちらちら見るが。本当に具合が悪そうでダウドに
反論する様子もなし。

「だから、ね?暫く私のサポートして欲しいの!お願い!」

「わ、分ったよお……」

「悪いんだけど、もう少しお客様を待たせて貰えるかしら?
ちょっとジャミルの様子を見てから直に行くわ!」

「うん、なるべく早く……」

アイシャはどうにかダウドを部屋から追い出すのに成功。そして大きく
息を吐き、……ジャミルに体調不良の原因と説明を始めた。


「……なあーにーいいいい……!?」


「し、しーっ!大きな声出しちゃ駄目っ!!」

アイシャ、今度は自分で自分の口を塞ぐ……。アイシャから説明を聞いた
ジャミルは目を白黒させ、ひっくり返りそうになる……。

「これが……、女の……、なんだな……、何となく話には聞いてたけど、
こんなに辛いもんだとは……、あう……」

「だからね、絶対慌てちゃ駄目なのっ!……数日立てば山を
越えられるから……、そうしたら徐々に痛みも引けて来る筈よ……、
少しの辛抱なのっ!」

「んな事言ったってだなあ、俺は初めてなんだよ……、どうすりゃいいんだ……」

アイシャは更に、タンスの奥から大事な一式を出すとジャミルに渡し、
丁寧に説明をする。

「ああ、ますます頭痛くなってきた……、もう駄目だあ、死ぬ……」

「何言ってんのよ!女の子には当り前の事なんだからね!さ、準備終わったから
ベッドに横になるのよ、身体休めて!」

「でも、お前……、大丈夫なんか?」

「何よう!私が信用出来ないの!?」

「いや、そうじゃなくてだな……」

ジャミルが心配しているのは、此処に訪れる客の事である。この間の
危ない押し売りと言い、客で無い客が来た場合、アイシャ一人に任せるのは
ジャミルとして非常に不安なワケで。

「はあ、このままじゃジャミルついて来ちゃうわね、……よおーしっ!」

「な、おま、……何……、こらーーっ!!」

「ごめんね、ジャミル、暫くそうしててね、ゆっくり休んでて……」

アイシャは更にタンスからロープを引っ張り出すと、ベッドごと
ジャミルを縛り付け固定した。

「……オメーも物騒なモン隠してんじゃねーっつーの!」

「万が一、泥棒さんが入った時の安全対処策よ!……ジャミルも元は
シーフだもんね、……でも、こうやって自分で自分が縛られてるのを見ると、
何だか情けないわあ……」

ジャミルは大声を上げ、アイシャに怒鳴ろうとするが、再び
襲い掛かって来た腹の激痛がそれを遮る……。

「ふえ……、後でデコピ……、覚えて……、にゃふ……」

「……寝ちゃった、良かった、これで当分は静かになるわね!うふふ!
じゃあ、行って来まーす!ちゃんと大人しく寝ててね、ジャミルっ!」

正確に言うと、眠ったのではなく、余りにも腹が痛くて気絶したのである。
アイシャは自部屋に鍵を掛けると解放廊下に出て、新客とダウドの待つ
エントランスへ。

「さあ、頑張るわよっ!管理人アイシャのお仕事っ!今度はどんな
お客さんに会えるのかしら!またお友達になってくれる様な歳の近い
女の子がいいなあ……」

……ジャミルの心配が全く分かっていない天然アイシャである。しかも、
彼女は今、ジャミルの姿になっているのを忘れそうになっていた……。
そして迎えた客は……。

「アイ……、ジャミル、やっと来たよお、はああ……」

「どうも、こんにちは……」

「初めましてっ、……お世話になりますっ!」

来てくれた今度のお客様。……頭に緑のバンダナを巻き、赤い
中華服を着た、小柄な感じのショートヘアの少年と、どうやら、
保護者なのか、付き添いらしい、左頬に十字キズの有る、異様に
落ち着きの無い、金髪の青年。

「……ぼぼぼぼぼ!ぼっちゃんをどうか暫くの間、宜しくお願い致しますっ!」

「グレミオ、いいから……、静かにしててくれ……、恥ずかしい……」

「いいえっ!ぼっちゃんがこれからお世話になるんですからっ!き、きちんと
このグレミオ、ご挨拶はしっかりとさせて頂きますっ!」

異様にどもる金髪はオーバーにジャミル……、アイシャに頭を下げ、
それを少年が慌てて阻止……。ぼっちゃんと言うからには、身分の
高い客なのだろうか。しかし、何故そんなお偉いご身分がこんな
マンションに来るのかと、それは全くの謎であった……。

(わあ、この人達、お金持ちなのかしら……、でもっ、どんな人達だって、
此処に来てくれる以上、同じマンションのお客さん、仲間になるのよ、
頑張るんだから!……ジャミルになりきらないとっ!)

ジャミルなアイシャ、次回もハッスル&……暴走。

アイシャ張り切る!管理人編 前編

「えとえと、まずは落ち着いて……、きゃー!ダウドっ!この場合
どうしたらいいのかしらっ!」

「アイ……、何して……、ジャミル!落ち着きなよお!いつも通り、
部屋まで案内してあげればいいんだよお!……今日はオイラが部屋まで
お客さんをエスコートするから……」

アイシャ、錯乱し、ジャミルの声のままでそのままきゃーきゃー喋り、
普段の自分の素がすっかり出てしまっていた。

「……そ、そうだったわっ!えとえと……」
(え、えーっと……、ジャミルになりきらなくちゃ、こういう
時ははと……、ジャミルの口調なら……)

「……お、俺が管理人のジャミルだよ、宜しくな!お前らの部屋は
3階だよ、ダウド、部屋まで案内してやってくれ」

(よっし!ちゃんと言えたわ!やれば出来るじゃない、アイシャっ!)

アイシャは心で小さくガッツポーズを取る。

「……有り難う、それじゃ、暫くの間、宜しくお願いするよ、
グレミオ、行こう……」

「はいっ!このグレミオ、此処でも全力で盾になりぼっちゃんを
お守り致しますっ!……例えヤリが飛んでこようと!」

「だから、飛んで来ないよ……、もういいってば……、ハア……」

興奮し、両手を振り回し、鼻の穴を広げている、少年の付き添い、
グレミオに少年は頭を抱えている。二人とも、誠実そうな客ではあるが、
護衛人は何処かオーバー過ぎて壊れている感じである。取りあえずは、
無事に部屋まで送れそうな感じではあったが、少年が通り過ぎる際に
何故かアイシャの方をじっと見ている。

「……」

「な、何かし……、何だよ……」

「大変なんだね、君も、色々と……、頑張って……、負けちゃ
駄目だよ……」

「!?」

「それじゃ、また……」

少年は静かに、ジャミル、……アイシャに微笑みかけ、手を振ると、
ダウドの案内により、ボッチャンボッチャンやかましい護衛人と共に
姿を消す。……アイシャは疲れてその場にしゃがみ込んだのであった。

「ハア、私も一旦ジャミルの処に戻ろうかしら……、心配だし」

腰を上げ、元の自分の部屋に戻ろうと。取りあえず、今日はこれで
何とか終わると思っていた直後……。

「ごめんくさーい、客だよー!客ー!」

「……あ、はい?」

其所に、再び客が現れる。しかも、予期せぬ、変な男女の客二人組である。
……先程の客人とは違い、男は変な顔のリーゼント頭にチンピラ風の格好、
連れは如何にも性格最悪そうの鼻毛伸ばしたブス女である。

「……ポスター観てわざわざ来てやったんだよ、……汚えマンションだな!
さっさと部屋まで案内しろや!」

「……あのう……、きゃっ!?」

「ふんっ!」

ブス女の方はアイシャに向け、乱暴に持っていた鞄をぶん投げる。
その重さに耐えきれず、アイシャは思わず尻餅をついてしまう。

「……いたたた……」

「何だあんた!男の癖に!だらしがないねえ!大事な荷物なんだよ!
ちゃんと受け取れ!この糞バカ!」

「……バカって……、ひ、酷いっ!何よおっ!」

……ブス女の余りの態度にアイシャはカチンと来、プッツン切れた。
素のままの自分で……。

「……おもしれえな、コイツ……、兄ちゃんカマかよ、それともゲイかい?
あーっはっはっはあ!」

「ホントホント、ばっかみてえ!」

糞客二人は顔を真っ赤にし、震えているアイシャの姿を見て大爆笑。
そして、遂にアイシャはプッツン行動に出てしまう……。

「違うもんっ!オカマじゃないのようーーっ!バカああーーっ!!」

「うごおおーーっ!!」

アイシャ、拳で男の顔面を殴り飛ばし、壁へと叩き付けた……。
ブス女は慌てて不細工男に駆け寄り、ヤジを飛ばす……。

「!ご、ごめんなさい!つ、つい……」

「ダーリンっ、大丈夫っ!?何て事すんのよ、この糞野郎!マンションも
ウンコだけど、管理人もオカマで最悪じゃねえか!……こんな危ねえ処
住めるかっ!帰りましょ、ダーリンっ!」

「……いちちち、お、覚えてろ!このまま只で住むと思うなっ!」

悪質客二人はアイシャに暴言を吐き、さっさと退場。……住む事は
なかったが、残されたアイシャはその場に尻餅を付いたまま、
暫く呆然と……。其所に、客人を部屋まで送って戻って来た
ダウドが……。

「アイシャ、何か騒がしかったみたいだけど、どうし……」

「ダウド、どうしよう……、私、私……」


……

「ジャミル、ごめんなさい……」

「オメーな、だからあれ程……、あいちち……」

アイシャの部屋には、事情を知っているメンバー、ダウド、アルベルト、
いろは、こむぎの姿が。皆、心配してまた来てくれたのである。

「……アイシャさんは悪くないですっ!アイシャさんいっぱいいっぱい
頑張ってますよっ!だから……、落ち込まないで……」

「いろはちゃん、有難う……、でも私、ドジだから……」

「まあ、元はと言えば……、こんな事になったのも俺の責任だしな……、
わりィのは俺かも知んねえ、ごめんな、アイシャ……」

「ジャミル……」

ジャミルはベッドにねっ転がったまま、皆から顔を背ける様に横を向いた……。

「……俺かも……、じゃなくて、完全に君なんだよ、ジャミル……」

「そうだよっ!……ジャミルはちゃんとはんせーしなさいっ!めっ!」

「……こ、こら、アルっ!オメー、スリッパ持ち出すなっての!
……犬娘っ!オメーに言われたかないっ!」

「わん?」

「アル、やめてよーっ!だからそれは私の身体なのようーーっ!」

「はっ、そ、そうだった、……心はジャミルでも身体はアイシャ
なんだった……、分かっていても何か口調だけ聞くと、ついカッと
なって異様に反応してしまうよ……」

アルベルトは汗を拭き拭き、スリッパを引っ込めた。

「もうこうなったら……、一刻も早くモンブラン山へ逃走で暫く
雲隠れするしかねえ……、けど、あれからチビも来ねえし、情報が
御無沙汰なんだよなあ……」

「はあ~……」

部屋にいた全員が溜息をつく。……ジャミルとアイシャ、2人は元に
戻れないまま、日数だけが無駄に過ぎてゆく。そして、ジャミルのアレも
まだどうにかならない状態で、数日が過ぎた……。

zokuダチ。セッション26

zokuダチ。セッション26

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-09-05

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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