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内容を一部、修正しました(2024年8月26日現在)。


大事な物だった。
そうだよね?
普通に歩いたり
ふざけて転んだり、
何をするにも
君のことを支えて、
楽しんでた。一緒に。
回る世界を、景色を。
その真っ白に吐く息と
きらきらな汗が
あの人の手を取って、
心を惑わせて、
綺麗な星を動かした。
大袈裟?
そんなんじゃないよ。



二つとない。
そういう出会いと、別れ。



例えばさ、
君が使った紐の色。
あれ、
褒める人、多いんだ。
足元をよく見る競技だし
センスにも敏感。
聞いたことない?
じゃあ、
聴こえたことは?
休んでる時の音楽とか
話し声とか。
ね?
思い出せるでしょ?
単調な毎日だって
冗談みたいに、
皆んなよく口遊むけど。



楽しかったよね。
私もそう。
痛くなるぐらい走って
悲しさを忘れて、
踊った。君と二人。
傷も付けて
傷付きもしたけど、
失くせない。
色んな事、あったから。
生憎の
灰色のお天気も。
お腹いっぱい笑えたから。
だからね、
取りに戻ろう?



君の履く、物のために。



架空の季節はもう
春の巡りを終えたし、
二人の顔も
もう、戻る事がない。
それでも
暇そうなアスファルトの上に
影を一つずつ、
いっぱいに広げて
大真面目な頭で、
迷いながら。
言葉にできない、
そんな想いを
言葉にしない、そんな選択を
大切にしたい。



大切に、しようよ。

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-08-25

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