現代短歌
人情、愛情、季節の移ろいなどを、5・7・5・7・7の文字の綴りで詠んでおります
こわれ傘 さしつ濡れつつ背を丸め 齢50の声無し涙
肩車せがむ娘を肩に乗せ 夕暮れ道に見る父子草
「ただいま!」のあなたの声に振り向けば ホタルが椅子に 今日は命日
年老いて減るは年金 増えゆくは 薬とグチと血糖値なり
流れ星 願う間もなく消えさった せわしなき世は 宇宙も同じなり
分かるけど冷めた手料理温める妻の心は冷めたままなの
別れても別れてもただ募るのは 人を愛せぬ幼き心
あの頃はアルミに過ぎぬ一円が ひもじき今は一円に泣く
中秋の月を眺むる旅の空 美酒に酔ひし 今宵の我は
冬しぐれ 傘差し掛けた夕暮れの 見知らぬ女は今いずこなり
叱られて 夕焼け道に泣く童 遠く聞こゆは母の呼ぶ声
恋人よ 君をしとねに濡らす朝 水さかずきに我花と散る
一人酒 呑んで呑まれてまた呑んで 今宵も眠る 男みれん酒
一人酒 呑んで呑まれてまた呑んで 今宵も眠る 女(おんな)なみだ酒
場末町 夢咲く園の盛り場で 忍び泣く蝶のなみだ恋
叶うなら あなたを連れて永久に 燃えて悲しき 「ああ、他人の妻」
北国へ一人残して幾年か まぶたに浮かぶ 忘れじの君よ
結ばれぬ運命と知った恋心 今宵も酔わす おもいで酒が
無知ゆえに解けぬ恋を引きちぎり 後ろ姿に すがる濡れ花
狂おしく咲き乱れたる未練花 帰るあなたは 永遠のおもかげに
夏祭り 「もう最後か・・・」の一言に お面をつけて振り返る乙女
一輪の花簪に心揺れ 濡らす袂で舞う左褄
「僕が悪い・・・」 君の言葉に甘えたい でも、私の愛 それは「つぐない・・・」
あだ花は雨に咲く花 愛おしく咲いてみたとて むせび泣く花
ほつれ毛が ふと心沁む君の午後 眠るうなじへ我指添わす
燃えた夜の小指に残る恋の傷 そっと忍んで 唇触れる
泣かないと あの日誓った この浜辺 そっと綴った心「会いたい・・・」
幸せを右手でつかみ 幸せを左手乗せて 分けてあげよう
離れても 感じるあなた 別れても 忘れられないあなたが 生きがい・・・
天高く 腹の虫の音 くうくうと 色気に優る食い気の乙女
現代短歌