『花麒麟』

吉原の昼とは
こんな物悲しいものでしょうか


『花麒麟』


蝉の声に今年も
あの人は来なかったと思い返す
当たり前の逢い引きなど
有り得なかったのだと

着物の裾を割って
差し入れた左手は
あんなにも上手に
三味線を鳴らすのね

愛しているかもしれない
けれど愛していないかも
よく解らないのです

あの人を待っているのか
貴方の腕で満足なのか
希薄な感情では
もう判別などできない

緩やかに毒に蝕まれた
この胸には
貴方が咲かせた紅い花



「もっと咲かせておくんなんし」

『花麒麟』

『花麒麟』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-08-18

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