ハイリ ハイリホ(27)(28)

一―十四 パパ・二―十四 僕

一―十四 パパ

 竜介の悲鳴だ。
「大丈夫か、竜介」と、心配の言葉をかけるものの、巨大化した俺からは米粒程度にしか見えない。高みの見物じゃないけれど、単に声を掛けるだけ。愛情はいっぱいだが、具体的行動には欠けている。雲の高さまで身長が伸びてしまったからには、体を折り曲げて助けてやるわけにもいかない。この身長じゃあ、ひょっとお辞儀でもしたら、航空機にぶつかるかも知れない。謝って、誤りを犯してしまう。誤りが、次の誤りを生み、そしてまた、その誤りが俺を死に至らしめる。誤りの連鎖地獄。
 それに、竜介がすぐ側にいるにもかかわらず、精神的には、ものすごく離れてしまった気がする。側にいるのにこの空虚な気持ちは何なんだろう。空気が薄いのか。意識が薄れてきた。目指す宇宙は近い。

二―十四 僕

 パパは今どんな気持ちなのだろう。僕のことを心配してくれているのだろうか。それとも、自分だけ遠いどこかに旅立ってしまったのだろうか。でも、パパが選んだ道ならば、僕は喜んで応援するよ。パパと僕は親子だけど、いつまでも一緒にいるわけにはいかない。僕がパパから離れるのか、パパが僕から離れるのか、どちらか分らないけど、そんなことはどちらでもいい。
 どうせ、別れるのなら、お互い笑いあって手を振りたいものだ。心配なんか決してさせたくない。パパ、これまでありがとう。そして、これからもよろしく。
「大丈夫だよ、パパ」

ハイリ ハイリホ(27)(28)

ハイリ ハイリホ(27)(28)

パパと僕の言葉を交わさない会話の物語。一―十四 パパ・二―十四 僕

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-21

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