zokuダチ。セッション23
エピ 88・89・90・91
協力攻撃を考えよう
「よお!」
……早朝、シグが又ジャミルの部屋にやって来る。
「今度は何だ……?」
「此処ってさ、ほーんとおもしれー奴らいっぱいいるんだなあ!
オレん処もそうだったけどさ!なーんか、ワクワクモンてやつだよな!」
(……もう感化されてやがる……)
「だから、何の用だよ……」
「あんた達の処は協力攻撃ってないのか?」
「まーたすぐ、わけの分かんねえ事いう……、元の世界にいた頃は
確かに俺ら毎日バトルしてたけど、武器の熟練度から技覚えて習得
すんだよ……」
「ふーん、あんたの方も全然分かんねえけど、協力攻撃ってのはさ、
相性の合う奴らとかと出来るんだよ、2人から4人まででさ、
組んで出せるんだ」
「……ふーん、成程な……、ま、其処にはそこん家のバトルの
ルールがあるわな」
「此処にいる皆のも考えようぜっ!面白いぞっ!!」
「あのなあ……」
シグが余りにも纏わりついてうるさいので、飽きるまで仕方なく
付き合ってやる事に。
「此処の皆の特徴とか、性格とか大体書き出してみてくれよ!」
……アイシャ、〔ジャジャ馬〕アルベルト、〔腹黒〕ダウド、〔ヘタレ〕
バーバラ、〔妖怪オババ〕ホーク、〔おっさん〕グレイ、〔陰険〕
クローディア、〔ドス黒〕シフ、〔メスゴリラ〕谷口、〔ハニカミ屋〕
丸井、〔瞬間湯沸かし器〕イガラシ、〔短気〕近藤、〔アホ〕
みらい、〔天然〕リコ、〔頑張り屋〕、ことは、〔純粋、でも時々ボケ〕
こむぎ、〔脳天パー〕いろは、〔お元気娘〕ユキ〔女王様〕
まゆ、〔恥ずかしがり屋〕悟、〔知性派〕ジタン、〔スケベ〕
ダガー、〔清楚〕ラグナ、〔すっ転び屋〕ユリアン、〔浮気性〕
エレン、〔男女〕トーマス、〔お坊〕サラ、〔引っ込み思案〕
少年、〔根暗〕ひろし、〔足クサ〕しんのすけ、〔困った糞ガキ〕
ボーちゃん、〔?〕みさえ、〔ケツデカ〕ひまわり、〔面食い幼児〕
ゆうな、〔バナナ女〕、マモル、〔のめし〕美奈子、〔アホとおバカ〕
スネーク、〔晴れ時々変態〕
「大体、住人のイメージの感じは大まかに書いてこんな処だよ……」
「うわ、最初からすっげー適当!しかもわけわかんねーなあのもいるし、
あ、アンタが入ってねえだろ!」
「俺はいいんだっ!」
「ぶうー!ま、大体書かなくても分かるけどな、えーと、後は……、
オレが見てきた大体の皆のイメージと合わせて……、っと、」
シグは紙に書き書き、実に楽しそうである。
「できたっ!どうだ!?」
トリプルバカリーダー攻撃 ジャミル、ジタン、ユリアン
「……ほお~?んじゃあ、此処にオメーも書き足してやるっ!」
「あっ!何すんだよっ!」
カルテットバカリーダー攻撃 ジャミル、ジタン、ユリアン、シグ
「むううーっ!んじゃ、どんどん行こうぜ、ウチのメンバーもいれてな」
「おう」
……段々と、ジャミルもいつもの調子で悪ふざけに乗ってくる。
凶悪怖女攻撃 マリカ エレン シフ バーバラ
発展途上国攻撃 アイシャ まゆ こむぎ みらい リコ サラ
知性派攻撃 トーマス 悟
ドS女王様攻撃 ユキ バーバラ クローディア ダガー 谷口
「……谷口って言う奴、男じゃねえの?」
「どんどん行こうぜ、どんどんっ!」
「はあ、まあいいけどさ……」
年増攻撃 バーバラ みさえ シフ
ヘタレ攻撃 リウ ダウド 悟
苦労してそう攻撃 マモル アルベルト まゆ リコ
加齢臭攻撃 ひろし ホーク スネーク ラグナ
面食い攻撃 美奈子 みさえ ひまわり
「……定番だなあ、もっとこう、こった奴はねえもんか……」
ボールペンで自分の頭を突っつき突っつきジャミルが唸った。
「これで、こう……、っと、んと、こうかな……」
二人の悪ふざけは毒を放出し、更にエスカレートして行く。
スケベ攻撃 ジタン ユリアン スネーク しんのすけ
ケツクサ兄妹攻撃 しんのすけ ひまわり
スカシ陰険攻撃 ジェイル グレイ イガラシ 少年 ユキ
噴火攻撃 丸井 シフ イガラシ マリカ エレン
内面腹黒攻撃 アルベルト トーマス イガラシ クローディア 谷口
ユキ ダウド?
好奇心大生攻撃 アイシャ、みらい こむぎ いろは ことは ゆうな
ボケ・つっこみ攻撃 こむぎ いろは
天然攻撃 ボーちゃん ゆうな ことは ラグナ こむぎ
「……なんかこの、イガラシって奴もネタにされてるなあ……、
何だかなあ、それに協力攻撃は4人までだぞ……、しかも、内面腹黒
攻撃が一番メンバー多くないか?」
「いいんだよ、人数なんか関係なしなし!次行ってみよう!」
何か頭がパーでんねん攻撃 シグ 近藤 ゆうな ラグナ 美奈子 こむぎ
「そう来るかよっ、ふ~ん……、くそっ!」
おちんちん小さい攻撃 ……ジャミル
「……てめえ、何書いてんだっ!……って、その前に何で知ってんだよ!!」
「マリカが言ってたんだよ!……見たくもない物見たって……、
……んで、アンタも自覚してんのか?」
「……くっそ!こうしてやるっ!」
脳みそ足らない攻撃 シグ 近藤
「あっ!それ、大体さっきのと同じじゃん!ズルだぞ、駄目だろっ!!
此処をこう変えろっ!それから追加でこうだっ!」
脳みそ足らない攻撃 ジャミル 近藤
おなら臭そう攻撃 ジャミル 近藤 しんのすけ
……お約束であるが、段々ケンカ腰の低レベル状態へと発展していく。
「ねえ、何書いてんの?」
「……うわあああーーっ!!」
2人の背後から……、ダウドが現れ、ぬっと顔を出した。
「きゅ、急に出てくんなっつーのっ!」
「別に出るも出ないもオイラの勝手……、何これ……」
「……見るなあーーっ!!」
ダウドは書いてある紙を見て、ジャミルの方を見てニヤッとほくそ笑んだ。
「お知らせかな?マンションの皆への……、オイラ伝言してきてあげようか?」
「わ、分った!ほれっ、小銭っ!!」
ジャミルはダウドに口止めのジュース代を渡す。
「ううーん、今日は、何だかおやつも食べたい気分なんだよねえ…」
「……分ったっ!追加分!!持ってけっ!!」
「ありがとうーっ!じゃあねーっ!」
ダウドは小銭を握りしめ、喜んで部屋を出て行った……。
「あいつ……、やっぱり最近どんどん黒くなってきたな……、くそっ……!!
……どっかの闇組織にでも入りやがったかな……」
財布の中身を見ながら、ジャミルが不貞腐れた。
「あんたの親友だろ?何かすっげー逞しいなあ、ヘタレって聞いたけど、
本当にヘタレなのか?」
「ヘタレはヘタレだよ、……最近やけにずる賢くなって来たんだよ……」
「どうでもいいや!んじゃ、オレ、リウと遊び行ってくるーっ!!」
「……」
シグは戻って行ったが、時計を見ると午後の13時を過ぎており、
改めて書いた紙を見ると、実に下らない事で半日時間を使っていた
事態が分かりジャミルは我に返るのであった。
「はあ、お昼も食うの忘れたわ、カップラーメンが確か……」
「ジャミル、……ご協力こうげき、モフルンを忘れてるモフ……」
「……のわあああーーっ!!」
とてとてと、モフルンが部屋に入ってくる。
「皆でご協力するこうげきモフ、ゲラ=ハとブラウとシルベン、それに
大福、アルテミスのお名前も書いてないモフ、仲間はずれはいやモフ、
もーふもふ、もふ……」
モフルンは追加でさっきの紙にかきかき書き始めた。
「できたモフっ!これでいいモフーっ!!」
もふもふこうげき モフルン ブラウ シルベン ゲラ=ハ 大福
アルテミス
「……ゲラ=ハはどう見ても毛がねえだろ……、まあいいや、じゃあ俺、
飯食うからさ……」
「モフ!」
「……あのさ、これの事、絶対にみらい達に言うなよ?」
「なんでモフ?」
「企業秘密なんだよ、又悪い奴がこのマンションに攻めて来た
時の為だ、黒子が俺達の為に協力技を伝授してくれたんだ……、
まだ皆には黙ってる様に黒子に言われてんだよ、すぐ悪い奴らに
バレたら困るからな、……今は誰にも秘密だ」
「分ったモフ!」
モフルンは満足したのか部屋を出て行くが、純粋なモフルンを適当な嘘で
誤魔化すジャミル……。
「……早く忘れてくれ、頼むから……」
魔法ガールズinルーム
「はーっ!や~っと楽しい夏休み開始だねーっ!!」
「皆で海とか行こうねっ!うーん、ワクワクもんだぁーっ!!」
「その前に……、夏休みの宿題をきちんと最初に済ませておかないと、
最後に泣く事になるのよ……?」
「うう~っ、リコってば、厳しいよ~、折角忘れてたのに~……」
「でも~、またもしかしたらマンションに悪い敵が来るかも
しれないモフ……、あっ!」
「何……?モフルン、その、悪い敵って……」
「モ、モフ~……」
みらい達3人は一斉にモフルンの方に注目する。
「……ジャミルさあーんっ!!」
「げっ……!!」
魔法ガールズ達が大慌てで、ジャミルの部屋に駆け込んで来る。
「モフルンから聞きましたっ!近々、又悪い敵がマンションに攻めこんで
来るんですよねっ!?」
「……」
ジャミルがモフルンの方を見ると、モフルンはポリポリノミを掻いていた。
「モフルン、ぬいぐるみだけど、何だか今年はカイカイモフ!」
「来たるべき時に備えて、私達全員の力を併せて戦う協力攻撃なる物を
黒子さんから伝授されたんだとかっ!?」
「はーっ、水くさいよ~、何で黙ってるのっ?私もちゃんと戦うんだからーっ!!」
(困った、すげー困った……)
大元はジャミルが悪いのだが、魔法ガールズ達は本気にしてしまい、
騒ぎはどんどん大きくなり、引っ込みがつかなくなってしまう。
「ああ、大丈夫だよ、大丈夫、さっき黒子から連絡があって、わりィ奴らは
都合で来られなくなったと……、あは、あは、あはは……」
ジャミルは顔を引き攣らせ、何とか誤魔化そうとするが誤魔化し切れず。
「なーんか、おかしいですよねえ~、ジャミルさん、何か隠してませんか?」
みらいがずけずけとジャミルに近寄って来た。
「だから、何もねえって……」
「おーい、ジャミルーっ!さっきの続きやろーぜーっ!リウも連れて来たぜ、
一緒に協力攻撃考えるってさ!」
「……あ、阿呆っ……!!」
「続きって……?」
「……ジャミルさーん、ちゃーんと説明して下さいねえーっ!?」
「はーっ!」
リコとはーちゃん、その場に仁王立ち。
「お?お?お?何だ、何だ?」
「なーんか、やばそっ、オレ、部屋にもどろっ!」
リウはとっとと逃げて行った。
「ジャミルさんっ!……覚悟して下さいっ!!」
「……なーんでぇぇぇ~!こうなるんだぁぁぁ……!!」
そして、悪ふざけが記入してある紙を魔法ガールズ達に見つかった
ジャミル達は、バーバラ、シフ、エレン、そして……。新しく加わった
マリカの凶悪女王様達にお仕置きを喰らい成敗されたとさ。
サービス回1
8月の住人確保も最低人数、後9人、本当に客が来るのかジャミルは
不安になってみる。4人組は外に出て、以前に自分達が作成した
住人へのマンションの勧誘ポスターを貼った場所へ観に行っていた。
「……焦っても仕方ないよ、ポスターも貼ってみたし、やれる事は僕らも
やらせて貰ったんだから、後は結果を待つしかないよ……」
「そうよ、アルの言う通りよ、マモル君とゆうなちゃんも
来てくれたんだし、大丈夫だよ……、新しいお客さん、今後も
どんどん来るわよ……」
「うん、お客さん来なくても、怒られるのはオイラ達じゃなくて
どうせジャミルなんだし……、あいたっ!」
「……うるせーっつんだよ!バカダウドっ!」
「二人共、ケンカしてないで、マンションに戻ろうよ……、僕、
今日は又シフと稽古があるから忙しいんだよ……」
「悪ィな……」
「……いったあ~……」
「……もうー……、本当にしょうがないんだから、ジャミルもダウドも……」
と、不安を抱えながら4人はマンションへと戻る。住人確保の話で
始まった冒頭だが、今日はこれとは全然関係ない話の方向に進んでいく。
「なあなあ、この前、入居した新しい子達、中々可愛い子だよなっ!」
例の如く、女の子が入ると、恒例のジタンさんチェックが入る。
赤ん坊ながらイケメンには目が無いひまわりとミーハー女子中学生
美奈子、女の子大好き、スケベなジタンと、どうしようもないのであった。
「……幾ら可愛いばっかでもな……」
「何だよ!お前、相変わらずしけてんなあ~、煎餅みてえ!」
「……悪かったな、どうせ俺は湿気煎餅みてえな男だよ……」
「ねえねえ、まもく~ん、東京ばななっておいしいよねえ~っ!」
「うん……」
「噂をすればっ!……レディーっ!!」
声を聞き付け、物凄い勢いでジタンがジャミルの部屋を
飛び出して行ったはいいが。
「……ジタンっ!何してるのっ!!」
そして、例の如く、此方も何処からともなく飛び出してくるダガーに
間も無く成敗される。
「しかし、あのお嬢も相変わらずスゲエなあ、何処で話聞いてんだか……」
それから数時間後、ダウドがジャミルを呼びに部屋に訪れる。
「ジャミル、いこうよお~、支度出来た?」
「は?何処へだよ……」
「何言ってんの、銭湯だよお、今日は夜から断水になるから、
自部屋のお風呂沸かせないんだよ、市役所からの連絡聞いてた?」
「いや、今初めて聞いた……、はあ、めんどくせえ、風呂なんか
一日ぐらいいいよ……」
「駄目だよっ!夏場は一日でも風呂逃すと汗臭くなるよお!ほら早くっ!
特に今は夜も熱帯夜で身体もムシムシしてんだからね!」
「……分ったよ、意外とうるせえな、お前……」
「オイラは清潔派なのっ!」
昔から長年の幼馴染だが、ダウドもまだ玉に良く分らん面がある……と、
ジャミルは思う。
……そして、銭湯までの道のりを歩いて行く二人を空から見つめる
変なのが一匹。また小悪魔であった。
「けけ、今日は風呂屋かりゅ?これは面白そうりゅね……」
「はあ~、歩くだけでもう……、めんどくせ……、ん?」
項垂れながら歩いていたジャミルが急に立ち止まる。
「どうかした?ジャミ……、いっ!?」
後ろを振り返ってジャミルを見たダウドの目玉が飛び出……、
古典的表現になった。
「俺、変だ……、明らかに変だよな……、やけに胸がでかくなってる
気ィするし……、何か変だ……、ぜってーへんだ……、それに何か声の
トーンも高いし、異様に色気が出て来た……」
「……へ、変なのは、い、いつもの事だけど……、ジャ、ジャミル……、
女の子になってる……、髪も伸びてるよ……、女装した時みたいに……」
ダウドが丁度持参していた手鏡をさっとジャミルに見せた。
「……あ、あああー!ま、マジで……、俺、女になって……る?
女装じゃなくて……マジで……?」
「けーっけっけっけ!……りゅー!」
「りゅ……?」
「りゅ……?」
2人がアホ面をし、声のした上空を見上げると……。
「リトル様、参上りゅー!」
「……リトルっ!ま~たテメーの仕業かーーっ!!てめえ、何時から
こっちでもレギュラー扱いになったんだよっ!!最近出過ぎだろうが!!」
「おやおや、女の子がそんな口の訊き方しちゃ駄目ですよ、りゅ!
もっとお淑やかにしなさいりゅ!けーっけっけっ!」
小悪魔はジャミルを放置し、そのまま何処かに飛んで行ってしまった。
「ダウド、……風呂なんか行ってる場合じゃねえ、俺は糞小悪魔を
追い掛ける!」
「でも、リトルの魔法だから……、時間がくればその内切れるよお……」
やがて後ろからがやがやと賑やかな声がする。バーバラとシフを先頭に
風呂セットを持ったマンションの女子集団が歩いて来た。……わんぷり組、
まほプリ組、美奈子、エレン、サラ、クローディア、ダガー、アイシャ、
ゆうな、マンションの恐怖の女子集団が、主婦のみさえと娘のひまわりを
除き、集結しようとしていた……。
「あの賑やかな声……、ジャミル、女の子達が来たみたいだよお……」
「……いっ!?ま、ますますやばいっ!やばすぎるって!」
「あっ、ダウドー!ダウドもお風呂入りに行くのー!?」
(……アイシャめっ!こっちくんなっ!頼むからっ……!!)
アイシャが真っ先に二人に気づき、走って来た。ジャミルは慌てて
持っていたタオルで顔を隠す。
「うん、オイラも今から入りに行く処なんだよ……」
「そうなんだ!あれ?ジャミルはいないの?あの、あなたは……?」
アイシャはタオルを顔に巻いたジャミルをじろじろ見る。気づいては
いない様子であったが。
「ジャミルはね、さっきまでいたんだけど、お腹壊したみたいで
どっか行っちゃった!あ、後から来ると思うから……、オイラ先に
行ってる事にしたんだよ」
「そうなんだ!全くもう、食べてばっかりいるからお腹壊しちゃうのよ!
しょうがないんだからっ!」
「……うるせーな、このっ……!」
「……あ、あああっ!こ、この人ね、さっき知り合ったばっかりなんだよ、
うんっ、ジャミィさんて言うんだよ!」
「……ぶっ!」
「そうなの、名前もジャミルと一字違いだね、あ、お風呂一緒に
行くんでしょ?良かったら……、私達とご一緒しませんか……?」
「え、え、え、……あのその、あのっ!!」
すでに風呂道具も持参している為、まさか違うとは言えず、パニくる
ジャミルを見、ダウドが横を向いて堪らず吹き出した。
(……の、野郎~……、ヘタレめ、後で覚えてろよっ……!)
「アイシャー、何してるんだい?」
「バーバラー、今行くー、あ、あのねー!」
「うわうわうわっ……!!」
アイシャに手を引かれ、ジャミルは女子軍団の処へ連れて行かれてしまう。
その様子をハンカチで顔を拭きながらダウドが見送り、手を振る。
「ごめんよお、ジャミルう……、オイラ親友として何もしてやれないけど、
何とか乗り切ってね、じゃあ、オイラ先にお風呂行きます……」
薄情なダウドはさっさと自分だけ先に銭湯に逃げて行くのであった。
……結局、ジャミルは女湯に連れ込まれてしまい……、危機に陥っている……。
(これ、途中で魔法が切れるとか、オチじゃねえよな……、ああ~、どうか
無事で生きて帰れます様に!……乗り切れますようにっ!)
只管ガクブル状態である。見渡す限り何処もかしこも胸、胸、胸で……、
普通の男性なら喜ぶ状況であるが、ジャミルはそれ処ではない。
取りあえず、並ぶおっぱいから逃げようと目線を反らし湯船に直行。
だが、自然のまま、ありのままの姿の女子さん達が集まるお風呂には
観ておると、色んなお方がいらっしゃる。
「わあ、ユキちゃんの被ってるシャワーキャップお洒落で可愛いね!
ネコ耳さんの形?まゆちゃんとお揃いなんだー、いつも仲良しでいいねー!」
「ふふ♪何だか照れちゃうね!これならユキもお風呂が楽しく
なるかなあって、石鹸もね、ホラ……」
「こっちもネコちゃんの形なんだね!香りも凄くいい匂いする!
これは、ほんのり甘いミルクの香りかな?」
「……仕方無いのよ、まゆが勧めるから……、仕方なしよ、
……本当よ……」
お風呂猫グッズをアイシャに披露するまゆ。して、相方とお揃いで
嬉しい癖に、何処までも仕方無いからで通す、顔が赤いツンデレ
ユキちゃんである。
「おふろっ!おふろっ!みんなでおふろっ!♪ぽっかぽかのおしり
ふりふりっ!」
「こむぎっ、お風呂場を走っちゃめっ!だよっ!……こらっ!こむぎっ!」
「あはは、こむぎちゃん達も賑やか……、な、なんか、こむぎちゃん、
懐かしいねえ~……」
「……あはは~……、こむぎちゃん、そうだね、今夜も元気だね……、
ね、ユキ……」
「観てて恥ずかしいわ……、いつもいつも……」
「シフ、あんた等々、腹筋割れちゃったねー!あははっ!
それだもん、嫁の貰い手ないってばさあー!」
「うるさいよっ、バーバラっ!胸がでかけりゃいいってモンじゃないよっ!」
言い合いをしながら身体を洗う、バーバラとシフの2人。
(……オババコンビは……、別に視界には入らないと……)
「へくしっ、おや、少し冷えちゃったかねえ、又お風呂入ろっ!」
(齢だからだろ……)
「さっきから、な~んか、この辺で不愉快な感じがするねえ~、
何なのかね……」
「……しかし、うう、きづい、のぼせる……」
「……あの、ジャミィさん、あなたも身体を洗ってきたらどうかしら……?
浸かりっ放しは良くないわ……、のぼせてしまうわ……」
「!!!」
クローディアの……、タオルで隠さない巨乳と、……ぴぃぃ~……、
が、ジャミルにゆっくりと近づいて来て迫ってくる……。
「む、昔……、子供番組で……、おっぱいがいっぱい……つー歌が
あったけど……、……う、うわああああーーっ!!キャー許して
えええーーっ!!」
もはや、自分でも何を口走っているのか分らず、大慌てで湯船から飛び出し、
洗面場所に直行する……。
「面白い方ね、何だかジャミルみたいな人だわ……」
いや、……本人なんだよ……
(……ゼーハー、ゼーハー、落ち着け、俺……、生きて何としても
此処から出ねえと……、オチが来てブン殴られてたまるかよ……)
「よっこいしょ、はあ~、姉ちゃん、アンタ元気がいいねえ!でも、
お転婆も程々にしときないさね!がははは!嫁の貰い手なくなるよ!」
「あうう~、ほっていてくれっての、……ううう~……」
「……くっしょん!」
嫁の貰い手……、に、反応したのか、風呂の中のシフも
くしゃみをした様子である。
ジャミルの隣に座っているおばさんは、風呂椅子二つ分使う程、
おしりが巨大であった。……そんな事はさておき、果たしてジャミルは
無事に生きて此処から出られるであろうか。
本番は次回です……。
サービス回2
……ジャミルは、鏡で今の自分の姿を見つめ、煩悩と戦っていた……。
(このまま、何気なく、この状況を楽しむか……、女湯に平気で
入れるなんぞ恐らく一生ねえだろうな……、でも、逃げるのなら……、
今だよな……)
と、ちょっこし、にやけてみてスケベ顔になる。
「はーい!みんなー!遅れちゃったけど、宜しくーっ!お姉さんも
仲間にいれてねーっ!」
みさえがおまけつきで姿を現す。しんのすけ、ひまわり、ボーちゃん。
しんのすけはまだ5歳なので当然、こっちにも入れるのは余裕である。
(プ、……もう一人のオババ登場……、お姉さんだと、よう言うわ、プ……)
「……誰か今何かいいました!?」
ジャミルは慌て、知らんぷりし身体を洗い始める。
「はーっ!ジャミィさん、お背中流してあげまーすっ!」
「お近づきの印でーっす!ワクワクっ!」
「モッフ!」
「うわあ、……意外と胸が大きいんですね、あなたも……」
魔法ガールズ達がジャミルの側に寄って来て、なんやかんややり始めた。
「……いいっつーの!自分でや……」
「……」
「いいよ、自分でやるから……」
「はー!遠慮しないでーっ!」
「そうですよーっ!」
「やっちゃいましょ、はーちゃん、みらいっ!モフルンっ!」
「ごしごし、モフ」
「……やめーっ!其処は……、あっ……、ああああっ!あはあっ!?」
「何か、面白くないの、私にもやらせて……、何だか分からないけど……」
「あー!アタシも入るーーっ!はいはーいっ!」
アイシャまで湯船から上がりジャミルの側に来る。何故か
魔法ガールズ達に異様に嫉妬観を感じている様でもあった。
そして、野次馬美奈子までもが乱入し、ジャミルは一大事に……。
「皆でやっちゃおーっ!ワクワクもんだぁーっ!」
「……何がかーっ!ええ加減にせえよーっ!おまいらーっ!!」
みらいの号令でリコとはーちゃんとモフルン、アイシャと美奈子が
一斉にジャミルの元あそこを擦りに掛かった……。
「ふふ、何だか分かんないけどさ、いいねえ、若いってのはさ……」
「おや、バーバラ、あんたももう自分を齢だって認めたのか?」
「違うよ!精神的に何も考えてない呑気な子供でいいねえって
事だよっ、たくっ!」
「……そうかい……」
「はあ~、疲れますねえー、小さい子がいると大変なんですよねー、
よいしょっと……」
「きもちいいですなあ~……」
「ボオオ~……」
ひまわりを抱いたみさえがバーバラとシフの側に来た。湯船で泳いで
遊んでいるしんのすけとボーちゃん。お子ちゃまなので誰も注意しない。
「……ぱい~……」
「こ、こら!まだあたしは乳なんか出ないよっ!」
ひまわりがバーバラの巨乳に目を付ける。
「こらっ、ひまっ!そのお姉さん達はまだお乳でないのよっ、駄目でしょ、
もうーっ!お嫁さん行く前なんだからっ!おほほ、どうもすみませーんっ!」
「たいっ!」
「……何か、すげえバカにされた気分だわ……」
「同じくな……」
「はあ~、漸く風呂に戻ったか、冗談じゃねえよ……、うう~、
元に戻ったら一体どうなってんだか……、俺の大事な息子……」
擦られ腫れあがった股を押えながら、蟻の様なガールズ達の逞しさ、
恐ろしさを感じたのである。
「お……」
「うわあああっ!?」
今度はしんのすけがジャミルの側に来た。
「おねいさーん、……オラたちどこかでお会いした事ありません
でしたか~ん?きれいなおねいさあ~ん……」
「別にねえから、あっち行けよ、しっ……」
「いや~ん!そんな事ないですゾ~!!」
「……ああああっ!?あっ、……はあっ、いやっ!!」
しんのすけがジャミルの胸にスリスリしようとする……。
「……やだっ!もーいやだっ!俺、嫁……、じゃなくて!又婿さん
行けなくなっちまうーっ!!」
〔げんこつ〕
「……しんちゃ~ん、ふざけてないでちゃんとお風呂入るのよっ!
どうもすみませ~んっ!」
漸くみさえが、しんのすけを捕獲に来たがもうジャミ公は既に
目に涙が浮かんでいた。
「大丈夫ですか?あの、何処かお怪我でもしましたか……?」
「……オウっ!?」
「おのぼせしちゃったのかなあ~!?」
落ち込んでいるジャミ公……、ジャミ子の側に、今度はいろはと
こむぎが様子を観に、心配してやって来る……。
「お顔の色が良くないみたい、調子が悪い時の長湯は止めた方が
いいかも……」
「はわわわー!タイヘンだようっー!」
「い、いや、……平気……」
あまり良く育っていない、只今成長中のいろはとこむぎのおっぱいが
ジャミルの目の前でぷらんぷらん揺れていた。
「……ああ、ううううっ!」
ジャミルは目を瞑ると慌てて猛ダッシュで再び湯船に飛び込んだ。
「あらら、ホントに大丈夫かなあ?」
「でも、おもしろいおねえさんっ!なんかジャミルみたいっ!」
……だから、本人なんだってばよ……。
「本当に大丈夫なのかなあ……」
「はあはあはあ……、はあ、人の気も知らねえで……、あ……」
……ぽこっ。
「……誰……?」
うっかりやってしまったジャミルのおならに反応し、湯船に入っていた
ユキがジト目で彼を睨んだ。
「……くさくない、くさくない……」
やばくなって来たジャミル、湯船を抜け出し、まーた洗い場へと
スタコラ逃げた。あっち行ったりこっち逃げたり、本当に今日は
落ち着かない時間である。
「……本当に落ち着かない方だわ、まるでジタンみたい……」
湯船でほんのり温まりながらジャミルを静かに見つめているダガー。
「温泉たまご、じゃなくて、温泉バナナー!あははー!」
「はあ、……それにしても、ほんっと、銭湯って面白くないわよね!
泳いだら怒られるしさあ!」
「皆の迷惑になるもの、仕方ないでしょ、もう、……お姉ちゃんは
本当に子供なんだから……」
「お二人も温泉バナナ如何ですかあ~?美味しいですようー!」
「いや、あの……、遠慮しとくわ……、あはは……」
「……ど、どうすればいいのかしら……」
ゆうなに温泉バナナを勧められ、困惑するエレンとサラのカーソン姉妹。
……ジャミルは唯只管、女子達の好き勝手な会話を耳にしながら
おっぱい地獄に耐えつつ、やり取りを黙って観察していた……。
「あの、……ジャミィさん?いつまで身体洗ってるんですか?
風邪ひきますよ……」
アイシャが再び湯船から出、とてとてジャミルの側に近寄って来た。
「別に平気……?……!!」
無防備のモロのノーマルの……ペチャパイアイシャが……。……女に
なっていながらもジャミルは起動しそうになるあそこを必死で抑える。
やべえやべえやべえ!……すんげーやべええええーー!
「うふ、私、実はお風呂って苦手だったんですよっ!……冷たい
お水の方が好きで、でもね、最近やーっと熱いお湯に慣れたのっ!
それでね、それでねっ!」
「……わ、分ったから、頼むから……、先、風呂入っててくれよ……、
いや、入ってて下さい……、入ってて頂戴……」
口ではそう言いながら、目線はちらちらアイシャの方へと……。
「……」
「うわああああーっ!!」
「さっきから、どうして叫んでるの?ふふっ、やっぱりジャミィさんて
面白いねー!落ち着きない処とか、本当にジャミルみたいっ!!」
……いや、だからもう、本人なんだって……。
「あううううー!もう勘弁しておくんなさいましーーっ!!」
慌てて湯船にダイビングし、お湯の中で胸の山の中を掻い潜りながら
風呂入口付近の処で漸く顔を出す。
「……はあっ、はあっ、……ふ、ふぃぃ~、もう嫌だ……、
勘弁してくれえーーっ!!お、お、お、おっぱいは嫌だあああーーっ!!」
そして猛ダッシュで脱衣所まで走り、衣服を引っ掴んで
そのまま外へと逃走する。
「あれえ?もう出ちゃうんだ~、ほんっと、せっかちな人ねえ~、
もうジャミルそっくりっ!」
「忙しいのかしらね、ご用があるのよ、……さあ、アイシャ、
私達ももう少しお湯に入りましょう……、身体が冷えてしまうわ……」
「うん……、もっとお話ししたかったのに……」
クローディアに言われ、アイシャも仕方なしに湯船に戻る。
……んで、脱衣所……。
「何だい、今のお姉さん、服着ないで外に飛び出していったけんど……」
「ありゃりゃ……」
「全く、最近の若い子はなーに考えてんだか、全くわかりゃしないよっ!」
「だねえ、あたしらには分からん時代になったのかねえ~」
「風邪ひかないといいけどね……」
状況を見ていたモブおばちゃん集団が只管会話をしていたのであった。
そして、うっかり全裸のまま外に跳び出してしまったジャミルは……。
「……あう……」
丁度タイミングよく、魔法が切れ、殆ど変質者状態でそのまま
外に立ち尽くしたのである。
それから、数日後……、ジャミルの部屋にアイシャが訪れており、
銭湯での出来事をジャミルに話して聞かせる。本人その場に
いたんですけど……。
「それでねっ、すっごくおもしろかったのっ!おっちょこちょいな
お姉さんでね、ジャミルみたいだったよ、名前もジャミィさんて
言うんだよっ!」
「……そうかい、良かったな……」
「何でジャミルが膨れてるの?変なジャミルね……」
「……どうせ俺は変ですよっ!!」
「また会いたいなあ~、ジャミィさん……、会えないかな……」
「……ああーっ!……俺は会いたくねえっつーのっ!!」
「だから、どうしてジャミルが怒るのよっ!!」
女になっても少なからずアイシャに好意を持たれていたと言う事実を
ジャミ公はニブチンの為、気づかないのであった。
真夏の体験学習編 1
「あーぢーいー!!あぢぃぃぃー!!何でこんなに暑いんだよー!!」
この島では猛暑が続く中、ジャミルは吠えながら相変わらず部屋で
ゴロゴロしていた。……毎日、この状態の親友を看かねたのか、今度は
ダウドが動いてバイトに行った様であった。
「ちなみに、図書館のカウンター受付のバイトだよ、棚の本の整理とかは
大変だけど、オイラ、ジャミルみたいに、鳥肌が立つほど本は嫌いじゃ
ないからね、別に好きでもないけどさ、何より、涼しい場所でお仕事
出来るのが嬉しいよね、オイラ司書の資格もないのに、取りあえず様子見で
採用してくれて嬉し……」
「うるせー!!違う場所から台詞飛ばしてくんなっ!あーもう、
ひっこめひっこめ!!」
「引っ込みますよっ!じゃあねっ!」
辺りは急に静かになった。
「アイツ、俺に謎のテレパシー飛ばしてくる様になっちまった、なんなん?
はあ、もういいや、又寝よう、しかし、今日は窓開けてても風が来ねえなあ」
「おーいっ!ジャミ公っ!!」
「っ、この俺の呼び方はっ……!ホークっ!!」
ホークにでなくても最近はあちらこちらでジャミ公ジャミ公言われているが。
もう少しで何とか寝られそうになったジャミルは再び眠りを妨げられ、
噴気し、慌てて飛び起き警戒した。
「何だ?何だ?ダウドから聞いたぞ、毎日部屋でゴロゴロしてるんだってな、
情けねー!ダウドでさえ今日からバイト行き始めたんだろ、しっかりしろよ!!」
「いてっ!」
ホークはジャミルの背中をバシッと叩いた。
「何だよ、おっさんとバーバラだってフリーじゃんか……」
「はあ?俺は夜間でちゃんと道路工事のバイトやって稼いでらあ!
真面に働かねーと大事な船が取り戻せねえからな、ちなみに、
水系だがバーバラも夜、ちゃんと店に出てるぞ、あいつも
元の世界じゃ踊り子だかんな」
「どうりでな、分ったよ、もうお婆だからな、じゃあ!」
「こら待て!話はまだ終わってねえぞ!んっ!」
「んだよ……」
ホークはジャミルに一枚の紙切れを見せた。
「何これ、夏の体験座禅学習、場所はモンブラン山、
山頂近く、騒々寺、丸一日の修行体験で、あなたの
弛んだ精神を鍛え、煩悩、雑念、全て追い出しましょう……」
ジャミルはもう一度、ホークの顔を覗うと、ホークは嫌らしい顔で
ニヤニヤ笑っていた。
「さいならっ!!」
「待てっ!この、ジャミ公めっ!!」
窓から逃走しようとしたジャミルをホークがしっかり捕まえた。
「もう、申し込みはしてやったからな、精々、鍛えられて来い……」
「何っ!?俺に内緒で勝手に申し込むなーーっ!!糞親父っ!
ギャーーース!!」
ジャミルはホークに拉致られそのままエントランスに連れて行かれる。
エントランス付近に行くと、他に申込者で捕まったのであろう、
煩悩、欲望……、雑念……、モロ問題ありありな皆さんが
並ばされていた。
NO,1バカ ユリアン ……ぐす、モニカ様、恋しいよ、会いたいよ……、
……でも、エレンも諦めたくない……、ブツブツ……
NO,2バカ ジタン なんてこった、山奥になんか閉じ込められたら、
可愛いレディ達の顔が見れなくなっちまうじゃねえか……
NO,3バカ シグ なあ、お寺って何か美味いモン
食わせてくれんの???
「……そういう心の中に有る欲を制御出来る様に修行に
行くんでしょっ!アンタはっ!!」
「いてっ!!」
シグ、マリカに一発ポカリ。
「まあ、たった一日じゃ、無理だろうけどね……」
「ちなみに、俺(ジェイル)とリウ……、は、いいんだそうだ、リウは
知能仕事系なら結構何でも熟せるからな、まあ、俺の場合は……、
顔の良さでセーフという処か……」
(こいつこそ派遣しろってんだよ、性格に問題アリアリじゃねえか…)
NO,4バカ ……ジャミル
そして、今日は学校でいないが、丸井と近藤のゴールデンコンビも
登録されている様であった。
ちなみに、補佐……、アルベルト……
「シフ……、聞いていい?何で僕も?何か問題ある……?」
「こいつらが逃げ出さない様にだよ、アンタもトロイからね、
一緒に叩かれてついでに精神修行しといで!」
「シフ、酷いよ……」
「あの、……私も……、一緒に行っていい?」
「アイシャ!」
不貞腐れていたジャミルの顔にぱっと光が戻った。おお、
可愛い女の子が一人でも付いて来てくれるとなればっ!と、
思ったのか、ジタンも尻尾を振る。
「お寺でお台所借りて、皆が修行してる間にお昼ご飯とか
作ってサポートしてあげたいの」
……それだけはやめてくれ……、とジャミルは思うのであった。
「いいんだよ、アンタは女の子だからね、今回派遣されるのは
ダラダラダラ、弛んでてどうしようもない男共ばっかりだからね、
気にしなくていいんだよ」
「でも……」
シフがアイシャの頭を撫でるが、アイシャはどうしても
心配そうな顔をする。
「分ったわ、じゃあ、前の日に、モフルンと一緒に、又
皆の為におにぎり握って用意して行きのバスの中ででも
食べて貰うわね、それでいい?」
「ああ、それなら大丈夫さね」
……止めろよ、ゴリラめ……、てか、何でわざわざクマ子も
借出すのかとジャミルは思う……。
「ああんっ……!?」
「何でもないです……」
そう言う訳で、ジャミルは日曜日にお仲間と一緒に、寺に派遣される
事になったのである。
そして、日曜日……
それぞれのお仲間に見送られながら、修業集団は山奥行きのバスが
到着するのを……、あまり待っていない様であった。
「何で、オレっちがよ、こんな奴と……、ブツブツ……」
「それはワイのセリフやがな……」
「……何だとっ!?近藤ーーっ!!」
「丸井、よさないかっ!精神修行なんて凄いじゃないか、一皮むけて
成長した丸井を見られるのを楽しみにしてるからな……」
丸井の肩に手をおいて、谷口が丸井を激励する。
「……谷口さあん、オレ、頑張りますっ!!」
「……プ……、無理、絶対無理、プププ……」
その様子を見ていたイガラシは、どうリアクションしていいのか
分らず、下を向いて、必死で笑いを堪えていた……。
「はああ……」
「そんな顔するなよ、ユリアン、一日だけの体験なんだ、
そんな、座禅て言ったって本格的じゃないさ……」
「トム……、そんな事言ったって……、何で俺が……」
「男でしょ、しゃきっとしなさいよ!」
「頑張ってね、ユリアン、無茶しないでね……」
「大変だね……、僕には関係のない事だけど……」
「はあ、……有難う、エレン、サラ……、……君もな……」
ユリアンは友と少年に見送られ、フラフラ、到着したバスに
一番に乗った。
「何だか分かんねーけど、とにかく行きゃいいんだろ、
行って来るな!」
「いや、それじゃ駄目だよ、シグ、だって、これから丸一日……、
座らされて……」
「しっ、リウっ!分かんない方があいつの為にもいいのよ、
此処は黙ってなきゃ、理解したら絶対逃げ出すから……、
寺まで行っちゃえばもう逃げ出せないからね……」
「そ、そうか……、けど、マリカ……、相変わらずきっついなあ~……」
「シグ……、耳を貸せ……」
「何だよ、ジェイル」
「修行するぞ、……修行するぞ、……修行するぞ……、だ……」
「はあ?」
「オレ、ジェイルとも長年の付き合いだけど、やっぱ未だにまだ
理解出来ないとこあるよ……」
「リウ……、それは私もだから……、深く考えたら頭がおかしくなるわよ……」
「だねえ……」
「ジタン、頑張ってね、応援してるわ……」
「おおっ、ダガーっ!!例え一日とはいえ、これから君の顔を
見れないなんて……、辛すぎるぜっ!!」
「もう、オーバーなんだから……、ジタンは……」
「でも、……もしかしたら寺に……、他に、かわい子ちゃん(死語)が、
修業に来るかも知れない……、そうしたら、雅に運命の出会いが……」
「ジーターン……、頑張って……、煩悩を追っ払って来るのよ……、
うふふ……」
「……おおお、やっぱ効くなあ……、ダガーの猫の手ラケットは……」
「……」
「ほらっ!いつまでもそんな顔してんじゃないよ、アンタはっ!!
全く、子供みたいな……、まあ、何時まで立ってもガキンチョ
なんだけどね……」
「うるせー、厚化粧the・オバーバラオババ!玉には化粧落としてみろ!」
「……その毒舌も……、ついでに修行して治して貰えると
いいけどね、……ね~え!」
「いふぇふぇ!やふぇふぉっふぇいっふぇんふぁほ!!」
「じゃあ、こいつらのお守は頼んだからな、アル!」
「……分かってるよ、シフ……、はあ……」
「おう、頑張ってこいや、ジャミ公!」
「……ん、べえーーっ!!」
ジャミルはホークに舌を出すとそっぽを向いた。
「ありゃりゃ……、こりゃまた……」
「……ホーク、相当ジャミルに恨まれてるよお、……それにしても
本当に子供みたいだよお、ジャミルは……、ごめんね、ホーク……」
「いいって事よ、ジャミ公はアレでなくちゃな、面白くねえな、がははっ!」
「……だな、あの馬鹿がどれだけバシバシ叩かれ、扱かれて
帰ってくるか、見ものだな、ふっ……」
グレイは髪をかき上げると、いつも通り不敵な笑みでジャミルを見た。
「ジャミル、頑張ってね、大変だとは思うのだけど、一日なんか
あっという間よ、すぐに過ぎてしまうわ……」
「……クローディア……、へへ、ありがとな……」
「ジャミルっ!これっ、はいっ!」
「モフーーっ!!」
「来た……」
「何よ、その顔っ!しゃきっとしなさいよ!ほらっ、約束通り
モフルンとおにぎり作ったからね、皆で食べて修行頑張るのよ!!
愛情込めたおにぎりよ!」
「……」
アイシャが見送りに来てくれた事は素直に嬉しいが、どうしても、
おにぎりだけは素直に喜べず……。
「モフルンも頑張ったモフーっ!あいじょうをいーっぱい
こめていつもよりたくさん、たくさん、にぎにぎしたモフ!」
……念のために、思い切って箱を開け、中身を確認すると……、
やはり、形をしていないぐちゃぐちゃの破壊おにぎりと
毛だらけのおにぎりが現れたのであった。
「……寺に行く前から人を殺すなあーーっ!!」
さてさて、 寺に向かった7人の皆さまはどうなります事やら……。
zokuダチ。セッション23