『火照る』

当然のような顔をして
忍び込もうとする不埒な手


『火照る』


ぺしりと叩き落として
抗議でもすればよかった?
だけど余りにも自然にその指は
真っ白なアタシのシャツを捲った

素肌を擽るように辿って
ほくろで星座でも作っているの?
体温の低い貴方は夏でも
涼しい顔をしてるから羨ましい

いつからかは忘れた
腕の中に閉じ込められると
もう死んでもいいような
手酷い幸福感に溺れてしまう

もしかすると貴方も
溺れているのかも知れない
ポーカーフェイスでしれっと
愛してしまっているのかも

脱がされる頃にはもう
そんなことどうでもよくなって
今日はどんな風に貴方を
驚かせようかって考えに夢中

教えたはずのないことに
敏感な貴方はきっと眉を顰めて
その発端を探ることに必死になる
それってとても愛を感じるの

居ない誰かを探って読んで
曖昧に誤魔化すアタシを
より強く抱き締めてくれる
試し行為の茶番と知りながら

エアコンの効いた部屋
窓の外は炎天下の真夏日
嫉妬と情欲に塗れながら
白い脚を腰に絡める真昼間



「それで燃え上がるなら安いもの」

『火照る』

『火照る』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-08-04

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