黒のわたしの一映像
1
わたしが後ろめたい蜘蛛のような黒装束に躰を蔽わせるのは、
わたしの清浄な領域を信じるが故それひた隠しにしたいから(不在)
わたしが奥行すら呑んだ漆黒のonyxを首環の飾りにしたのは、
わたしの信条をわが感情からひき離しそれへ宿したいから(不在)
わたしがみずからを黒鳥に譬え自己憐憫の地下を泳がせるのは、
わたしへの躰を硝子盤へ突き飛ばし注視したいから(実在は痛みで証明)
わたしがわたしに似合わぬ青を筆名に付け黒を纏うのは、
わたしが透明という無名・匿名へわたしを剥がしてもみたいから(無)
2
わたしの我の鳴き声なぞ黒々と凝って吐きだされれればよい
けむたい天鵞絨の詩のアンニュイとして
ゴミ溜めのかぐわしい悪臭の美しさの一刹那に棄てられればよい
わたし──わたしなんかいらない
3
(嘗てわたしに愛されたパンクスのひらきなおった自己嘲笑であっても最早微笑ましい気持で眺めるのがわたしです、わたしはわたしとして生きるというunknouwn soldierの敗北した凱歌であってもわたしわたしの裡に断固として拒み是認しない、容れない。わたし、手頸なんていらない、わたしには掌という獲得のための身体に違和ばかりをおぼえる、わたしは唯路上に横臥す犬のような翳でありたかった、の に──
わたしは黎明のまっさらな死の神殿へ
わが手頸の淡きを披瀝したいの
それはわたしが
かの御方に褒めていただきたいから
夢 夢、亦夢──わたしが一条の音楽のような夢という滴の夢の亦夢であったらどんなによかっただろう、わたしはかの御方の名すら知らない、だってかれの本性は無であり不在、ニヒリズムなんていうくろぐろと湿度籠る名でかの御方を呼ぶことをわたしは許さない、是認しない、名前を付けないで──ぼくの名前を誰か呼んで、返事しないから)
4
わたしに恋したかのひとは、わたしの眸を
onyxのように美しいと云ってくださいました
わたしにはそれが呪われた地獄の一欠片でした
わたしはそれをはや誇りはしない、愛しはしない
*
うら若き希の幻滅のようなどぎつい儚さで──
睡るような黒の映像が赫々とまっしろなめざめを晒すか(断念)
黒のわたしの一映像