おうちの鬱子ちゃん

おうちの鬱子ちゃん

 まったくもって不快である。この不快さを改めて言葉にするのも腹立たしいし、眉間の奥の頭蓋のどたま、そうそれ。それがもう、使い物にならなくてクソ。うまく舌が回らない。音声に乗せれない。誰にも知られない自分。いない。
 小さな筋肉を動かすごとに、血潮の通り抜ける音が聞こえてくる。窓の外の音は何も聞こえない。代わりに耳鳴りが遠くでする。明るいのに、重たくて、指でなぞってダイイングメッセージを書くこともできない。骸だから、そうだから。
 生とか死とか疲れました。このままいけば餓死するし。問題は、あと何日食べなければ死ぬのかを、事前に調べてなかったことだ。多分今で二日。目を開けるのも、画面を見るのもめんどくさい。
 床に沈んでる。フローリングはもう冷たくない。一緒になって、沈んでる気がする。
 今更。自ら死にに行く気力もないよ、指も足さえ動かないのに。みんなすごいな、勇気ある。
 あかる。やだな。寝たままでじんわりうずくまる。幼虫、でも、羽化しない。
 鐘が鳴る。遠くで、近くで、ずっと。
 水に沈んでいく。土に埋まっていく。
 重力が強い。どこも動かない。
 いま、いまなのか?
 それがいい、いまだよ。
 寝て、起きた。ああ、生きてる。
 まったくもって不快である。

おうちの鬱子ちゃん

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-07-28

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