こう君のお買い物かご

 おさいふとの話し合いがおわったので、駄菓子屋へはいると、りこちゃんと、はなちゃんと、ゆう君と、こう君がいて、真剣にお菓子をえらんでいた。
 つゆちゃん、と笑うりこちゃんのひだりてのかご。すっぱそうなのが多くて、つばがでる。すっぱいのは、にがて。はなちゃんとチョコレートをえらぶ。あまいのがいいの。
 いつかたべられるようになる、だいじょうぶだよ、って、いわれる。いつかじゃだめなのに。
 いまがいい。いますぐがいいけど、あまいのがすき。
 かわらないままで、かわりたい。
 こう君がこれもおいしいんだともってきたお菓子にも、あのむずかしい、酢、の漢字が書いてあって、うれしそうなりこちゃん。
 りこちゃんがうれしそうなのは、あたらしいお菓子とのめぐりあいのためだけかな。なんて、わたし、やなやつ。
 つゆちゃんわけっこしようよ、こう君の声。うれしくってうれしくって、でも、泣きそう。
 なりたいものになるのって、むずかしい。わたしまだ、すっぱいのはにがてで、はやくすきになりたいきもちと、たべたくないきもちのどっちもだいじで、目がまわっちゃう。
 すっぱいのがにがてなのは、ひみつ。こう君はそんなことできらったりしない、でも、ひみつなの。
 ごめんね、はやくかえらなくちゃ、チョコとマシュマロを買って、ばいばい。そっかじゃあわたしとわけっこしようと言うりこちゃんの、つゆちゃんばいばいというこう君のお買い物かご。
 そっくりおなじは絶対にいや、わたしはわたしのこともだいじ、でも、でもそれでも。
 おかしいな、いますごく、りこちゃんに、なりたい。

こう君のお買い物かご

こう君のお買い物かご

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-07-20

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