こう君のお買い物かご
おさいふとの話し合いがおわったので、駄菓子屋へはいると、りこちゃんと、はなちゃんと、ゆう君と、こう君がいて、真剣にお菓子をえらんでいた。
つゆちゃん、と笑うりこちゃんのひだりてのかご。すっぱそうなのが多くて、つばがでる。すっぱいのは、にがて。はなちゃんとチョコレートをえらぶ。あまいのがいいの。
いつかたべられるようになる、だいじょうぶだよ、って、いわれる。いつかじゃだめなのに。
いまがいい。いますぐがいいけど、あまいのがすき。
かわらないままで、かわりたい。
こう君がこれもおいしいんだともってきたお菓子にも、あのむずかしい、酢、の漢字が書いてあって、うれしそうなりこちゃん。
りこちゃんがうれしそうなのは、あたらしいお菓子とのめぐりあいのためだけかな。なんて、わたし、やなやつ。
つゆちゃんわけっこしようよ、こう君の声。うれしくってうれしくって、でも、泣きそう。
なりたいものになるのって、むずかしい。わたしまだ、すっぱいのはにがてで、はやくすきになりたいきもちと、たべたくないきもちのどっちもだいじで、目がまわっちゃう。
すっぱいのがにがてなのは、ひみつ。こう君はそんなことできらったりしない、でも、ひみつなの。
ごめんね、はやくかえらなくちゃ、チョコとマシュマロを買って、ばいばい。そっかじゃあわたしとわけっこしようと言うりこちゃんの、つゆちゃんばいばいというこう君のお買い物かご。
そっくりおなじは絶対にいや、わたしはわたしのこともだいじ、でも、でもそれでも。
おかしいな、いますごく、りこちゃんに、なりたい。
こう君のお買い物かご