『古い友人』
モノクロの葬列
幼いアタシの影の薄さ
『古い友人』
誰にも構われず過ごしてた
皆忙しそうで手一杯で
食事すら与えられずに
部屋の隅でお経を聞いた
雨が降り出したと誰かが言って
広い玄関で座り込んでた
雨の匂いは好きだから
鼻に集中して外をぼうっと見てた
黒くて大きな傘が余り揺れないのが
不思議で目で追っていれば
その人は傘を畳んで引き戸を潜る
アタシの方へ真っ直ぐに
今日は知らない人ばかり
その中でも貴方は一等不思議
皆同じ黒い服だけど
貴方だけ何だか違う気がして
おいでと言われれば素直に
膝の上にちょこんと座り
頭でも撫でられれば
今日に相応しい微笑で応える
だけど貴方の膝の上は
何だか落ち着かない
落ち着かないのに
ずっと座っていたいなんて
大人たちの問いかけに
故人との間柄を説明しても
それが真実かなんて
誰にも分からないじゃない
だからアタシは待つの
貴方はきっとまた此処へ
やって来るはずだから
その時はまた頭を撫でて
白と黒と忘れられたアタシ
コントラストの強さが
悲しみを覆い隠した日
貴方だけモノクロじゃなかった
「まだ知らない感情に翻弄される」
『古い友人』