『カタストロフィ』

破滅へと突き進み生き急ぐ今でさえ
君だけが唯ひとつの輝ける星


『カタストロフィ』


この先は地獄へ続く道
解っていてもひたすら前へ
誰かの悲鳴にも耳を貸さず
両手は既に血塗れ振り返るな

売春宿が立ち並ぶ裏路地で
座り込んでこちらを見つめる君
汚いものなど知らぬような
あどけない瞳が一層憐れ

一晩の宿の道連れに抱き寄せれば
移動サーカスで見た象に似た
長いまつ毛で縁取られた目
夢見るように伏せて無言の了解

鞭打たれる象のように
金で買われる君の細い身体
あの夏の日に父を憎んだ継母の
白い腕に映える血の赤

いつでも逃亡の人生だ
全て洗い流し何も無かった振りで
日常を取り戻した彼女の代わりに
ひたすら前だけを向いて走った

いつかは捕まる運命だと
諦めようとしながらも希望を
君を強く抱き締めて掻き集める
ガラクタだと知りながら

何も知らない君が話す
死んだ母や殴る父の思い出
まるで良い思い出のように
夢見る瞳が柔らかく笑む

夜が明けぬうちに売春宿の主人を
君の為に殺してしまおうか
今更罪を重ねても何も変わらない
また逃亡の日々を続けるだけ

死ぬ時は誰を想うだろうか
君みたいな人を何人も見てきた
自分の手を汚さずに
綺麗に笑う女たちはいつも無罪



「いっそ君を手にかけて継母の白いワンピースを想おうか」

『カタストロフィ』

『カタストロフィ』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-07-16

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