zokuダチ。セッション12
エピ 45・46・47・48
女子が不在だとこうなる
週末……、土日を挟み、マンションの女性陣は全員、年増から
若手まで……、お泊り女子交流会で出払っているのでマンションに
残っているのは、野郎だけであったがみさえはしんのすけとひまわりを
きちんと連れて外泊している。
「静かだな……、嘘みてえだなあ……」
「本当だねえ……」
ジャミルとダウドは、部屋でズルズルと安いカップラーメンを啜る。
「やっほー!元気かい!?」
ユリアンが部屋に入って来た、2人はジト目になり、突然部屋に現れた
ユリアンを見つめる。
「何だよ、生気がないなあ!もっとしゃんとしろって!」
「……お前はいいよ、いっつもニヤニヤ、エヘラエヘラ、しまりのねえ
顔してさ、頭の中まで雑草生えてんじゃね?」
「失礼なっ!俺だって悩みぐらいあるさ!」
「へえ~、知らなかったなあ……、そりゃ悪かった……」
「……モニカ様、今頃どうしてるかな……、とかさ……、ああ、
モニカ様……、モニカ様……」
……急にユリアンが何か考えてニヤニヤし、鼻の下を伸ばし始めたのを見て、
ああ、こりゃ駄目だ……、とジャミルは思ったのであった。
「あ、処でさ、ラジオ体操の……、呪いの怖い話って知ってるか?」
急にユリアンが話を逸らす様にころっと話題を変えた。
「……知らないよお、初耳だねえ……」
「第2のゴリラ体操だけを……只管延々と繰り返す……」
「……あー!もういいよ!出てけ、この能天気緑バカ!!」
「ちょ、ちょっと待って!ホラっ!!」
ユリアンは持っていた子袋から、缶ビールを取り出した。
「おおっ!気が利くじゃん!」
「普段はこんな真昼間から見つかったら、即エレンに殴られるからさ~、
玉にはいいだろ?男同士でさ!」
「いいよ、いいよ!俺もアイシャにギャーギャー怒られてるとこだわ!」
さっきまでブスくれていたジャミルもころっと態度を変えた……。
「はあ、いいなあ、オイラ一応、未成年設定だからさあ、……ロマ1本編でも
年齢不詳なんだよね……、オイラってなんなんだろう……」
缶ビールを羨ましそうに、じっとダウドが見つめる……。
「言わずもがな、只のヘタレだろ!」
「そう、……んじゃアイシャが戻ってきたら伝えとくね……、
真昼間からジャミルが宴会してたって……」
「タンマっ!!ダウド君、ヘタレじゃないよ!うん、イケメンだよ、
イケメン!!」
「今更弁解しても遅いよお!……でも、オイラにも、ジュース!んっ!!
それで秘密にしておいてあげる!!」
ダウドはジャミルに手を差し出して、小銭くれの合図を送った。
「分ったよ……、まあ、ジュースぐらいで済むのなら安いモンだ……」
「んっ!?何だい?」
「なっ、何でもねえよ!それより早く買いに行って来いよ!」
ダウドはジュースを買いに外に出て行くが、……代わりにホークがのそのそ、
鼻をヒクヒク……、ジャミルの部屋へとやって来た……。
「何だ?酒の匂いがしたから来てみれば、どれ、俺も混ぜろ!」
「んだよ、糞親父!オメーなんか呼んで……、あ、あ、あああ……!!」
ホークはジャミルの缶に手を付け、ぐびぐび飲み始めた。
「……っかーっ!うめぇ!あー!昼間っから飲む酒は最高だなあ!!」
「糞親父ーーっ!!俺のビール返せーーっ!!」
「ま、まあ、ジャミル、俺のを半分やるから……、な?」
今にも暴れ出しそうなジャミルを見かね、ユリアンが自分の分のビールを
コップに注いだ。
「悪いな、緑バカ、アンタ何も考えてなさそうで、いい奴だな……」
「その草食動物みたいな言い方やめろよ……、まあ、別にいいけどさ……」
そして、2人はビールを等々、口に付けた。
「あーっ、美味いな!」
「ああ、……けどやっぱ、半分じゃ酔いが回ってこねえ、畜生……」
ジャミルは半目になり、酔っぱらいだした親父を見た。
「……ふぇふぇー!zzzz!!きゅう~……」
「緑バカ?何だよ、もう酔ってんのかよ!」
「……ふぇふぇふぇふぇ……」
ユリアンはそのままだらしなく、床に突っ伏し寝てしまった。
「弱いなあー、俺なんか、半分じゃ全然酔えねえぞ!!どういう
神経してんだよ!!」
「……どういうも何も……、そう言う神経だよ……、っひひひ……、
げふ……」
「……」
ホークも酔っぱらったまま、倒れてそのままである。ジャミルの部屋には
現在、2人の酒乱が居るのであった。
「……つまんねー!お前らばっかりいい気分になりやがって!
俺も酔いてー!」
自分だけが酔えないのに腹を立て、ジャミルが膨れてみる。
「ジャミル、ユリアンは来てるか?」
トーマスがひょっこり、部屋に顔を出した。
「あ、来てるけど、倒れてそのままだよ」
「やっぱりか、全く、急に消えたと思ったら……、おい、ユリアン、
起きろっ!」
「……ん、ひいひい~……」
「おい、……眼鏡の……、トーマス坊ちゃん、……んたも、どうでい?
……俺のがまだ少し余ってんぞお……」
「いや、……遠慮しておくが……」
「折角だし、付き合いでアンタも飲んでけば?」
ジャミルは遠慮する糞真面目なトーマスに無理矢理ホークの飲み残しの
ビールを飲め飲め、勧める。
「仕方ない、少しだけなら……」
「そう来なくっちゃ!今日は無礼講なんだからさ!遠慮いらねーって!
本当はアンタも飲みたいんだろ?遠慮すなすな!」
ジャミルのあまりのしつこさに根負けしたトーマスは、仕方なしに
ビールを口に付けた。
そして……。
「……」
……カッ!!
「お……?」
急にトーマスの眼鏡が光って、カットインになり、目から
怪光線ビームを発射した。
「ああっ!お、俺の部屋の窓ガラス……、割れたーっ!!これ
どうすんだよっ!!」
「……だまらよ、トムにのませひゃ……」
「癖が悪いんなら最初から言えよ!この緑バカーーっ!!」
……その間にも、トーマスのビームは止まらず、部屋の彼方此方にビームを
発射しまくる。
「……やめれーーっ!!俺の部屋破壊する気かーーっ!!この
メガネバカーーっ!!」
今度は、トーマスにメガネバカ暴言である……。
「……駄目らよ、酔いがさめるまで……、♪あ、よいよい」
「お、……げ、ええええ……、ろ……」
「あっ……!!この糞親父っ!!俺の部屋に……、あああーーっ!!
チクショー、よくもやってくれたなあーーっ!!」
……遂に切れたジャミルが、ホークの足を引っ掴んでサソリ固めを仕掛ける。
「いでででで!ロ、ロープ、ロープっ!!た、助けろーっ、
ゲラハーーっ!!」
「……ねえよっ、んなモンっ!!フンっ!!トカゲも来ねーっつの!!」
「おっ?プロレスの試合かい!?俺に取材させて……、
あ、あーーっ!!」
ネタを探し回っていた野次馬ラグナが部屋に入ろうとし……、
特に意味もなく、足が縺れて早速転倒した。
「……きゅう~、誰か、起してくれ……、あ、足が縺れた……」
「……はあ」
一方のダウドは、エントランスの共用玄関先でオロオロ、あっちに
行ったりこっちに行ったり、只管往復を繰り返していた……。
「ダウド、何してるんだい?」
「アル、あのさ、自分の部屋に戻ろうと思うんだけど……、
ジャミルの部屋で何か破壊的な酒乱騒ぎが起きてるみたいで、
うるさくて……、オイラの部屋隣だし……」
「そう……、今日明日は、バーバラもシフもエレンもいないからね、
大変だね……」
……こんな時、……馬鹿な男共をシメてくれる、強ーいお姉さま達の
有難みがしみじみと分るのである……。
「アルは何処か出掛けるの?、オイラ、さっきジュースを買いに行って、
戻ってきたら、……ああだよお……」
「僕はこれから、図書館にね……」
「オ、オイラも行く、一緒にお供に行くよお!!」
「珍しいね、まあいいけど……」
今回、ジャミルは酔っぱらっていないものの……、それにしても
癖の悪い酔っ払いは、いやーねえ……、である……。
台風に備えよう・1
今年、最初の台風が発生し、この島にも直撃しようとしており、
ジャミルと一緒にテレビのニュースを見ていたダウドは不安になり、
脅え始めた。
「や、やばくない……?かなり大型みたいだよお、どうしよう……、
まだ5月終盤なのに……、やっぱ最近、異常気象だよねえ……」
「焦ったってしょうがねえって、こればっかりは……、自然災害だけは
どうにもなんね……」
「で、でも……、いざという時の為に色々準備しておかないとさあ、
……オイラ部屋に戻るね!」
「やれやれ、神経質な奴だなあ、たく……」
そう言いながらジャミルは呑気に床に寝転がる。
「けど、備えあれば嬉しいなあ!って言うからな、……俺も懐中電灯ぐらい
常備しておくかなあ……」
「ジャミルっ、それはアタシが言おうと思ってたんだから!
ことわざ大先生の美奈子ちゃんをなめないでよっ!」
「……み、美奈っ!ホ、ホントにいつもいつも、ごめんねえ~、はは!」
また突然部屋に顔を出した美奈子をアルテミスが慌てて引っ張って行った。
「……なんだありゃ、まあいいけどさ……、けど、ことわざ大先生って何だ?」
買い出しに行こうと、部屋の外に出、エントランス付近に向かうと、
いつものおばさん連中がアタフタ、大騒ぎであった。
「……誰がおばさんだっ!?ああっ!?」
シフがずかずかと、ジャミルに詰め寄って来る。
「俺、何も言ってねーし!」
「……たくっ、アル、これも運んどいてくれるかい!」
「了解!」
アルベルトは、どうやらシフの部屋への荷物運びを手伝わされている
様子だった。
「それにしても、すげえ荷物だな……、それ……」
「今夜、直にくるらしいからね、アルと一緒に買い物に行って来て、
必要な物を買い込んだのを手伝って貰って運んでるのさ!」
「はあ、相変わらず真面目だな、用意がいいです事……」
「ジャミルはもう、準備したのかい?」
「いや、今から買い出しに……」
「……そう、頑張ってね、シフ、大体これで全部運んだけど……」
「御苦労さんだったね、これはあんたの分の備えの一式だよ!」
「有難う!」
シフはそう言って、段ボールをアルベルトに手渡した。
「ああ、いいなあ、なあ、俺も……」
「……あんたは自分で買い出しに行って来なっ!!」
「ケチっ!!」
「手伝わないんだから当り前だろう!甘えんじゃないよっ、ホラ、
さっさと行きな!」
「へいへーい!……お?」
「あんた達っ!これから台風が来るんだよっ!こんな時に練習とか
いい加減におしったら!!」
「いいえ、……僕らは例え雨風が来ても、日々のトレーニングは
欠かすわけには……」
「ワイは嫌でんねん……」
「近藤っ!てめえ、谷口さんの決めた事に逆らおうっつーのかっ!?」
「丸井さんっ、……およしなさいよ!」
こっちの厚化粧おばさんは……、台風が来るにも係らず、これから
練習に出ようとする、野球バカ4人組を止めようと大騒ぎであった。
(……違う意味でバカだなあ、こいつら……)
「ジャミルっ!アンタさっき何か言わなかったかいっ!?」
バーバラが目くじらを立て、ジャミルに近寄って来る。
「……だから!俺じゃねーってば!!」
「全く!アンタもこいつらを止めなよっ、これから練習に出るって
聞かないんだから!!ホントに頑固なボウヤ達だねっ!!」
普段の口調はきつい処もあるが、やはり姉御肌のバーバラは心配性で
母親属性もある為、面倒見が良いのであった。
「……今日だけはホントに止めとけよ、怪我でもしたらそれこそ
大変だろうが……、一応俺らも止めてんだから責任もてねーぞ……」
リーダー格の谷口は暫く唸っていたが、やがて諦めてジャミルに
返事を返した。
「分りました、今日は止めます……、みんな、これから台風に備えて俺達も
準備をしよう……」
「はあ~っ!助かったわあ~っ!!」
「……なんだとっ!?……近藤おおおーーっ!!」
「丸井さんっ!!だから、およしなさいったら!!」
「……」
やがて、野球バカ4人組も、各自の部屋へゾロゾロ戻って行った……。
「はあ、世話が焼けるよ……」
バーバラも頭を抱えながら部屋に消え、エントランスにはジャミル一人が
残された……。
「……って、他人の事よりもっ!俺も買い出しにすぐ行かねーと!」
と、外に出ようとした処に……。
「ジャミルさーんっ!」
「はーっ、大変ーっ!!」
「雨漏りなんですよーっ!!」
魔法ガールズ達が、慌ててジャミルの処まで走って来る。
「……雨漏り、って、もう降って来たのかよ……」
箇所を見に行くと、其処はエレンとみらいが以前に穴を開けた
場所であった……。
「俺もすっかり忘れてたけど……、てか、マジでこれどうすんだ……」
「あはは、どうしよう……」
犯人その2、の、朝日奈みらいが困った様に笑う……。ちなみに、
犯人その1は、その頃、自室で他人事の様にサンドバッグを叩いていた。
「雨がマンションにいっぱいたまったらプールになるモフ!」
「はー!楽しそうだねえ!ビニールボート用意しておこうか!」
……モフルンとはーちゃんの天然呑気コンビにジャミルは頭を抱えた。
「おい、ジャミル、これから屋根に上って板を張り付けるぞ!手伝え!」
「い、今か……?」
何故か、カッパスーツを着用し、ゲラ=ハと、ユリアン、トーマス、
グレイ……、を、従えたホークが立っていたのであった。
「手伝える野郎連中は全員手伝うんだ、オメーも手伝うんだよ!」
「……貴様がとっとと、屋根の修理を修理屋に依頼しないからだ……、
マンションの担当責任者だろう……」
グレイが横目でちらちら、ジャミルを見ている。ちなみに、まだ未成年枠、
20歳前の、ジタン、アルベルト、少年、兎山悟、野球小僧4人、の、
お子様連中は手伝わなくていいらしい。しかし、ジャミルはホークの
格好で腹筋崩壊で、グレイの嫌味も耳に入らなかった。真面目な顔で
カッパスーツを着、平然としているので……、それが余計にジャミルの
笑いのツボを刺激し、笑いを誘うのである。
「……けど、俺だってこれから買い出しに行ってこなきゃなんねーし……」
ホークから目を背け、何とか笑いを堪えつつ、ジャミルが口を尖らせた。
「それも又、事前に用意しておかない貴様が悪いんだろうが……、
フン、夏休み終了直前で宿題を溜めて泣き喚く小学生以下だ……」
「……何だとっ!?この、伸びすぎた縮れラーメン頭めっ!!」
「2人とも、言い合いしてる場合じゃないだろう、それより早くやる事を
してしまわないと……」
ユリアンがジャミルに声を掛け、心配そうに穴の開いた箇所を見上げた。
(……んだよ、大元はと言えば……、アンタの連れがオメーを
ブン投げてだな……、オメーが穴を開けたんだろうが、完全に
共同犯罪だろうがよ……)
「何だい、ジャミル?」
「何でもねーよ!」
「……俺も、こう見えて色々と用事があるんだ、やるのなら、
出来れば早くして貰いたいんだが……」
トーマスもちらちらとジャミルの方を目線で追う……。
「……分ったよっ!あー、もうっ!!」
「大丈夫だよっ、ジャミルっ!ジャミルの分の必要な常備は、私の方でも
沢山買って余ってるから、おすそ分けしてあげるねっ!だから、ジャミルも
安心して屋根の修理の方に回ってね!」
何時、部屋から出て来たのか、いつの間にかアイシャがジャミルの側にいた。
「……アイシャ……、うっ……、アイシャああああ~っ!!
……ぐえーーっ!!」
「良かったな、ジャミル、これで安心だな、さあ屋根の修理に行くか!」
……感激してアイシャに抱き着こうとしたジャミルの首ねっこをホークが
無理矢理引っ掴み、外へと駆り出し、後に残りの男連中も続いた……。
「放せーーっ!!この三十路加齢臭カッパ親父めーーっ!!ちくしょーーっ!!」
「行ってらっしゃい、ジャミルも皆も……、気を付けてね……」
アイシャが心配そうにジャミルに手を振る……。
「……ね、ねえ、私達も何か手伝わないと……、そうだわ、
クローディアさん達にも声を掛けて、皆でおにぎりでも
作りましょうか!?」
「リコっ、それいいっ!行こう、行こう!」
「はー!みんなでお料理っ!!あったかいお味噌汁も作ろうっ!!」
「モフー!!」
「私もっ!頑張るわよっ!!」
魔法ガールズ達とアイシャは、自分達も出来る事をしようと、
マンション内の女子に声を掛けまくる。
……処で、ピエロとガーネルがいないのには誰も気が付かないのであった……。
台風に備えよう・2
女性陣 その頃。
マンション内の女性陣は、皆、パーティルームに集まり、強風の中、
外で作業する男性陣の為に、おにぎりをせっせと握っていた。
とは、言っても……、中には不器用な者も多く……。
「出来た……」
「……ちょっと、シフっ!なんだい、そのデカさは!!
アンタ、砲丸球握ってんじゃないんだよっ!?」
「悪いね、あたしは元々、料理なんかするガラじゃないんで……、
まあ、故郷にいた時は獲物をガンガン狩って、そのまま丸焼きにして
食ってたりもしたけどな……」
姉御肌、バーバラが注意するが、シフは開き直る。
「こんな物かしらね……」
「わあ、クローディアさん、上手っ!さすがっ!」
綺麗な形の整ったおにぎりを見て、みらいがパチパチ拍手した。
「そうね、……中身は……、ロシアンルーレットおにぎりよ、
何が入っているのか分からない、食べてからのお楽しみよ……」
「そうなんですかーっ!ワクワクもんですねーっ!」
「ふふ……」
一瞬……、クローディアが邪悪な笑みを浮かべたのを、天然みらいは
見ていないのであった……。
「じゃ~ん!みてみてーっ!いろは特製SPおにぎりでーす!今日は
いつもより頑張りましたーーっ!まゆちゃん、ユキちゃん、どうっ!?」
「こむぎもこむぎもーっ!こむぎのおにぎりはね、クッキーが
はいってるんだよっ!」
「あはは、いつもすごい……ね、いろはちゃん……」
「ハア、見なかった事にするわ……」
……汗汗まゆ、おにぎりから目を背けるユキ……。いろはとアシさんの
こむぎが作成したおにぎり……。天然いろははアイシャに負けない
破壊料理の達人らしく、今回のおにぎりは、真っ黒な色のお米に、所々、
赤い物体が混ざっている……。その反面、猫チームのユキが作った
おにぎりは、お米つやつや、付け合わせにネコさんウインナー、
厚焼き卵焼き、スパイシー唐揚げ、雅に素晴らしい出来である。
「…へえ~、猫嬢ちゃん、アンタ中々やるじゃないの!」
「ふふ、伊達にまゆの為に頑張ってるんじゃないんだから……、
これぐらい簡単よ……、まゆが喜んでくれるなら……、はい、まゆ、
これはあなた専用のよ……」
「!?ちょ、ちょちょちょ!ユキっ!……もぐっ!!……ん、おいしい……」
「そう、良かった……」
「やれやれ、また始まったね……、お熱いですこと……」
ユキを感心して見ていたバーバラ。直後、呆れて向こうに行ってしまう。
まゆの顔のキャラおむすび弁当を作っておいたユキが、まゆに食べさせ、
百合百合モードに入ってしまい、こうなるともう誰も彼女達の世界には
入る事は許されず……。
「♪モフ、モフ、モッフー!」
「♪はーっ!!おにぎり握るのってたのしーい!」
こっちの、はーちゃん&モフルンの天然コンビであるが……、
モフルンがおにぎりを握っても、誰も突っ込まないのであった。
ちなみに、毛だらけである……。
「ふう、お塩の加減も量も計算通りねっ、完璧っ、パーフェクトだわっ!」
自分で握った塩おにぎりの味見をし、満足感に浸るリコ。
「おいしそーっ!私にも味見させてーっ!」
「ちょっと、みらいっ!アナタもお行儀が悪い……!あ、あ、ああ……」
「えへへ、おいしーい!」
「……みらいったら、もう~……」
「あらら~、失敗……、でも、問題は中身よ、中身!……うんっ!」
そして、アイシャの方も、おにぎりをせっせと握っている様だったが、
ぐちゃぐちゃにひっ潰れ、形をしていない、そして、もう一人……。
※前作ではおにぎりぐらい握れたアイシャですが、この話では
料理の腕がより破壊急になっております。
「……お姉ちゃん、お願いだから……、ちゃんと握ってよ、それ、
ぺちゃんこじゃないの……」
「サラ、うるさいわねっ、問題は形じゃないのよ、中身よ、中身っ!
ね、アイシャ!と、其所のリボンのアンタもっ!」
「そうよそうよ、外見じゃないってのよっ!味が良ければ
全てヨシってね!」
「……美奈あ~、とほほ~、情けな……、君の場合、味も全く
保証出来ないから……」
「う、うん……、そうだねえ、あはは……」
エレンはアイシャに同意を求め、開き直る美奈子と肩を落とす
アルテミスを見てアイシャも苦笑い。
「本当にもう……、お姉ちゃんたら……」
「バーバラ、そっちのお嬢さんも、ちょいと見てやった方が
いいんじゃないかい……?」
シフに言われ、バーバラがダガーの方を見ると、……麺棒で
お米を伸していた……。
「中々、コツが要りますね……、よいしょ……」
「ちょいと、……クッキー焼くんじゃないんだよ、アンタ……」
「はあ?そうなんですか……?てっきり、型を抜いて、オーブンで
焼くのかと思いましたので……」
「なになにっ!?クッキーやくのっ!?こむぎもたべたいーーっ!!」
「はい、まゆ、あーん……」
「ユ、ユキ……、そんなに食べられないよう……」
「……たく、どいつもこいつも……」
疲れてきたらしいバーバラが頭を抱えた。
「ははっ、差し入れだよー!ハンバーガー持ってきたよ!」
「チキンも、あります……」
……何処へ行っていたのか分らない二人組、ピエロとガーネルが
パーティルームに入って来た。
「うわ、気が利くじゃないのさあ~!みんな、休憩、休憩!」
バーバラが声を掛け、皆に休憩する様に言った。
「さあ、どうぞ、チキンです、召し上がれ……」
「あっ、ドナルドのハンバーガーの方が先だよっ!!」
「……ちょ、ちょいと……」
「私のチキンの方を食べて頂く方が先なのですっ!!」
「うるせー!ドナルドのハンバーガーの方が先だって
言ってるんだよっ!!」
ファーストフード店の変態マスコット2体は、又取っ組み合いの
喧嘩を始めた。
「……どっちだっていいよ、あいつらが揉めてる間に食っちまうかね、
両方とも……」
バーバラが遠慮せず、差し入れに食いついたのを見て、他の女子達も
手を付け始めた。
「……」
「おや?あんたら、何してんだい、んなとこでさ、アルまで……」
廊下で、居残り組のお子様連中がずっと突っ立っており、
ドアの隙間から状況を覗っていた、この場には何となく似合わない、
野球小僧達の姿もあった。
「シフ、あのさ……、僕達にも何か手伝える事はないかなと、思って……、
来てみたんだけど……」
「そうかい、偉いよ、坊やも、あんた達も!……バーバラーっ!、
お子ちゃま達が助っ人に来てくれたよーっ!」
シフが呼ぶと、バーバラがすっ飛んで来た。
「じゃあ、あたしらがこれ食べてる間に、おにぎり握っといて
くれるかい?握るぐらい出来るだろ?頼むねー!」
「レディと……、お姉さま達の匂いがする、あああ……」
中に入ったジタンが、鼻をヒクヒクさせた……。
「ジタン、ちゃんと手伝ってね……」
「わ、分かってるって、ダガー!へへ……」
「……犬飼さんのおにぎり、……おにぎり……、おにぎりの匂い……、
臭い……」
「……」
「あっ、悟くーん!大福ちゃーん!いらっしゃ~い!
沢山作ったから悟君達もいっぱい食べてねーーっ!」
悟と大福に笑顔を振りまき、特製おにぎりを見せるいろはに……。
破壊ダークマターおにぎりと、いろはの笑顔を交互に見ながら、目を
回し始める相方に大福は静かに目を瞑るのだった。
「……うわあ……、うまそうやなあ~……」
美味しそうに、ハンバーガーを食べながら、賑やかに休憩する
女子達の姿を見て、近藤が涎を垂らしそうになる……。
「近藤、……丸井さんが睨んでいるぞ……」
イガラシが慌ててゲンコで近藤の背中を叩くと、近藤は我に
帰った様であった。
「わ、分かってますがな……」
……そして、きゃあきゃあ華やか?な、女子のクッキングタイムとは裏腹に、
屋根の上では……。
台風に備えよう・3
男性陣 その頃。
「うわー、結構、穴が大きいなあ、防げるのか、これ……、
本当に凄い穴だなあ……」
ユリアンが再び、下へと繋がる大きな穴を覗き込んだ。
(……だから、オメーとエレンが最初に穴開けたんだろうが、それにしても……)
「あくまでも、仮止めだ、今日は雨風が凌げりゃいいさ、けど、
これから夏が来るし、台風の数も半端じゃねえからな、ちゃんと
修理屋に直して貰わねーとな……」
「……」
ジャミルはどうしても、カッパスーツのホークに目が行くらしい。
後は皆、レインコート着用なのだが……。
「おい、ジャミ公、ぼーっとしてねえで、釘取ってくれや!」
(うわ、頼むからこっちみんな、吹く……、ププ……)
「はいよ、分かってるよーっ!」
……こつん!
「……れ?」
ジャミルの頭の上に硬くて冷たい物が降って来た。
「うひょうーっ!ヒョウだあーっ!!」
「……今一瞬……、寒気がしたな……、まあ、すぐに止むだろう……」
板を押えていたグレイは血管を浮かせ……、屋根の上を慌ててわきゃわきゃ
すっ飛び回るジャミルを見る。グレイの言う通り、雹は数分で止んだ。
「ジャミルさん、静かにしてないと、滑って穴に落ちますよ……、ぎゃ……」
「お、ゲラ=ハ、お前、珍しく喋ったな!」
「……貴様もそれぐらい、大人しくしていて貰いたい物だな……、
アホめ、見習え」
「……なんだとう!?こんの、エロ爺!!」
「だから、喧嘩してる場合じゃないって……」
どうしてもウマが合わず、ぶつかりまくるジャミルとグレイにユリアンは
呆れ気味……。アルベルトともしょっちゅう衝突する事が多いジャミルだが、
グレイの場合は自ら構って面白がり、引き金を引く事が殆どの為、騒動の数は
倍以上かと思われる……。
「……ホーク、板の長さはちゃんと図って調節して切った方がいい、
適当では駄目だぞ……」
「おお、流石、トーマス坊ちゃんだな!おい、ジャミ公!巻尺だ、巻尺!」
「分ってるよっ!たく、……人をモジャ公みたいに呼びやがって!」
……時間が立つにつれ、風の強さと雨の量はどんどん増していく。
「こらあ、急がねえとな、風が大分強くなってきやがったな……」
視界もどんどん悪くなり、只管板を打ち付けるホークも苦戦気味であった……。
「お?お?お?お……」
体重の軽いジャミルが強風で屋根の先までおっとばされ、屋根の上から
落ちそうになる……。
「……うわわわわっ!!」
「ジャミルっ、危ないっ!!」
ユリアンが落ちそうになったジャミルの手を掴んで引っ張り、事なきを得た。
「はあ、間一髪……」
「助かった~、ユリアン、サンキュー……」
「……一度落ちて頭でも打った方が頭も良くなったんじゃないか……?」
「んだとお……!?こんの、クソグレイ……!!他人事だと思ってからに……!!」
「……いい加減にしろ!おめーら!!」
と、流石にホークもブチ切れ掛けた処で……。
「……キャプテン、雨が止んだみたいです……、ぎゃ……」
「……お?本当だな、風も段々と弱まってきたな……」
「峠は越したか……、大した事が無くて良かったよ……」
「本当だな……」
トーマスとユリアンも、すっかり暗くなってしまった夜空を見上げた。
「あはははっ!天気予報なんかアテになんねーっつの!」
「こ、こらっ、ジャミルっ!駄目だぞ、そんな恐ろしい事を言っては……、
……き、気象予報士の……、〇田さんが飛んでくるぞ……」
ユリアンは真顔でジャミルに詰め寄る……。
「おいおいおい……」
「さーて、丁度、板も打ち付け終わったし、よし、そろそろ降りるかーっ!!」
ホークも肩を押えてコキコキ鳴らした。と、お疲れ男性陣が
作業を無事終えようとした処に……。
「あーーーれええーーっ!!」
「……!?」
……何者かが、屋根を突き破り、今度は屋根の違う箇所に大穴を
開けた様であった……。
「……あてててて」
尻を押え、屋根の上に飛んで来た呻く巨大な物体……、近藤であった……。
「また、大穴が……」
男性陣はあっけにとられ、再び屋根に開いた巨大な穴を見つめた。
「……すみませーんっ!そちらに近藤君が飛んでいかなかったでしょうかー!」
穴の下から声がした、……谷口であった……。
「いるけど……」
力なく、ジャミルが返事を返す……。
「本当に、申し訳ありません、俺の監視不足で……、又、丸井が
やらかしまして……、も、申し訳ありませんでしたっ……!!」
「……すいません、谷口さん、つい、カッとなって……」
「謝って済む問題じゃないぞっ、丸井っ……!!本当にもう……!!」
穴の下を覗くと……、ペコペコ頭を下げ、只管謝罪する、谷口と
イガラシの姿があった……。
「あてて、……丸井はんのキックの破壊力は半端ではないんやで、アタ……」
「……あはは、気象予報士は飛んで来なかったけどな……、あは、あは、
あははは!!」
「……おい、ジャミル……」
「あは……?」
ヤケクソ気味に只管笑い飛ばすジャミルの処にホークが……。
翌日……、昨夜の嵐は何処へやら……、空はからっとした
青空が広がっていた。
「……しっかり板押さえろよっ!!近藤っ!又、ケツ蹴飛ばすぞっ!!」
「あわわ、そんな、殺生な~、もう、堪忍してーな……」
「……てめーら責任もって真面目に屋根直せよっ!!……未成年
労働保護で監視してる俺の身にもなってみろっつーんだよっ!!」
これは、あくまでも、青少年職場体験学習の一環……、という事で、
ホークがジャミルを丸井と近藤の担当教員役を押し付けたのであった。
「なーんかさ、あんた見てると……、やっぱどうにも年上に思えねーんだよな、
おれっち……、あんた本当に成人してんのか?」
丸井が横目で時折、ジャミルの方を見る……。
「うるせー!とっとと直せっ!!この三角おにぎり頭っ!!」
「……ジャミル、また吠えてる、屋根の上で……、はあ、御近所中に
聞こえるよお……」
ダウドが心配そうに屋根の上で吠えている友人の姿を見上げた。
「うふっ、お仕事終わったら、ジャミルにお疲れ様のおにぎり食べさせて
あげちゃおーっと!頑張ってねーっ!!ジャミルっ!!」
「モフルンのラブいっぱいのにぎにぎおにぎりも食べて欲しいモフーっ!!」
……見た目最悪のぐちゃぐちゃおにぎりを持ち、エールを送る
アイシャと……、毛だらけのおにぎりを持って、モフルンも
ジャミルにエールを送った……。
「私達のも食べて貰おうね、こむぎ!」
「わんわん!ジャミルに元気つけてもらわなくちゃね!」
「……うわ……」
上では、生意気な喋るおにぎりと……、下では破壊おにぎりが、
それぞれジャミルに待ち構えていたのであった。
zokuダチ。セッション12