『長雨』
余りに長い夜には
君の顔も見えはしない
『長雨』
ポツリと零したその言葉を
忘れたくなくて噛み締める
愛されていたね
確かにあの時は
これは過去の話じゃない
だけど今の話でもない
煌めくような恋は
いつか間の抜けた日常に負けた
深く誰かを想うということは
どんな嵐にも負けないことだと
信じていられたアタシはもう
既に君の前には居ない
同じベッドに寝ていても
その距離はどんどん遠くなり
ぴったりとくっついて眠った日は
遠い遠いおとぎ話みたい
惰性を甘受して生きていくわ
君よりはずっとずる賢いから
ルーティンを変えたくない頑固さに
安堵して縋って目を閉じる
もし旅立つ日が来たならば
その時は嘘でも寂しいと言ってね
アタシはすっかり騙された顔で
ごめんねって泣いてみせるから
「みんなその時が来れば大女優よ」
『長雨』