zokuダチ。セッション11
エピ 41・42・43・44
男の喜び
今日はジタンがジャミルの部屋に訪れているが。ジタンは何時になく、
真剣な顔でジャミルと向き合っている。
「お前さあ……、心配じゃないか……?」
「何がだよ」
「何がって……、谷口達の事さ」
「ああ、野球バカ共か……、で、何がなんだよ」
「ハア……、お前は本当に何も分かってないんだなあ、
男として……」
「?」
「……あいつら全然、女の子に関心が無いんだ!この
マンションには、より取り見取り、あんなに沢山のガールズ達、
お姉さまがいるってのに……」
ジタンが何だか急に熱くなりだしたのを見て、ジャミルが呆れる。
「……それかよ、心配事って、くだらね、ほっときゃいいだろ!」
「くだらねえとは何だ!くだらねえとは!……女の子を見て
アソコが立つ!男として当り前の事だろうが!!」
ジタンは更に興奮し、身を乗り出し、ちゃぶ台をばしばし叩いた。
「……いや、それぐらいあいつらにもあると思うが……、
とにかく今は野球以外は頭にないんだろ、時期がくりゃ
好きな子だって普通に出来るさ、だから自然体に任せれば?」
「いいや、オレは許せないね、男として!このまま野球に埋もれて
淋しい青春時代を過ごして欲しくないよ、あいつらにも性の喜びを
伝えなければ!じゃ!」
喋るだけ喋り、熱くなるとジタンはジャミルの部屋を後にした。
「……どうして変なとこでお節介焼くんだか……、たく……」
そして、ジタンは時間を見計らい、谷口達が帰宅する時間帯に合わせ、
部屋の前で待つ。4人とも帰りは遅く、21時を過ぎる事も多い。
「やっ!」
「ああ、……こんばんは……、どうも……」
一番最初に高校生の谷口が帰って来た。
(まずは週刊誌で、度胸を付けさせねば……)
「これ、プレゼントさ!はい!」
「はあ……」
やがて、再びジャミルの部屋にジタンが顔を出す。
「どうだったい?成果は……」
「駄目だった、……週刊誌を渡そうとしたら、あの、いつも谷口に
纏わりついてるちっこいおむすびみたいなのが妨害したんだ、何だよ、
あのチビ……、しかもオレ、年上扱いされてねえんだけど……」
「手強いぞ、あいつは……、護衛みたいだからな、簡単なのからに
すれば?まずは歯掛けからにすればいいじゃん、その後で、
おむすび野郎、谷口と行けよ、一番難しいのが……、猿かな……」
「……猿かあ、LVが高そうで、でも、あいつ意外と
あっさりしそうで面白くねえんだよなあ……」
「男の喜びを教えんだろっ、早く行けよ!」
と、ジャミルに背中を押され、再びジタンが部屋の外に出て行った。
「ほほーい、ほほーい!」
「たいー!」
しんのすけとひまわりが踊っている。
「よ!元気か?チビ共!」
「尻尾のおにいさーん、オラ元気だゾ!」
「そうか、良かった、良かった!」
「たいやい!にへえ~……」
「おいおいおい……」
ひまわりはジタンの尻尾を掴んでニヤニヤしている。
「……赤ん坊に好意をよせられてもなあ、困るなあ……、
フクザツ……」
「ジタン、何してるの?あら、しんのすけ君とひまわりちゃんね」
「ダガーのおねいさーん、……おむね、おっきいですなあ……」
「……たいやいっ!(けえっぺ!)」
(やっぱりこの子、誰かをどうも思い出すわと思ったら……、
そうだったのね……)
「ん、何だい?ダガー、そんなにオレの顔をじっと見られちゃ、
恥ずかしいぜ……」
ダガーがジタンとしんのすけを交互に見比べた。
「こんばんは!みんなで集まってお話?」
「おー!アイシャ!」
「こんばんは、アイシャ」
「アイシャのおねいさあ~ん、ん~、おむねはちっこいけど、
……いいにおいですなあ~…」
「やいー!(相変わらずのこのペチャパイめ!)」
「もうっ!しんちゃんたら!めっ、よ!」
アイシャは不貞腐れた顔をするが本気では怒っていない。やはり
しんのすけがまだ小さいからなのか。冗談でもこれがジャミルだったら
凄い事になるんだろうナアと、ジタンは思う。そう言う意味では
優遇されるしんのすけが何となく羨ましかったり。
「じゃあ、私、お部屋に戻るね、しんちゃん達も戻ろうか?
私、お部屋まで二人を送るわ、行こうか、ジタンもダガーも又明日!」
「ほほーい!」
「やいー!」
「又なー!」
「お休みなさい……」
「はあー、行っちまった……、って、そんな場合じゃないっ!
男の喜びを……、はっ……!?」
「男の喜び……?」
「ダガーがいたんだった……」
「ねえ、……男の喜びって何なの?教えてよ、ジタン!」
「うわ、ダガー……、顔近い、顔近いって、……あああ!
そんなに、顔近づけたら……、あああっ!」
ジタンは必死で自分の膨らみ掛けた股間を押えた……。
と、其処に野球バカ4人組が通りかかる。
「あ、先程はどうも……」
谷口がジタンに挨拶した。
「いや、……オレとあんた、歳同じじゃん、何でそんなに
敬語使うんだ?」
「何ででしょうね、僕も不思議です……」
「はあ……」
「おい!この尻尾野郎!谷口さんに纏わりついて何考えてんだよ!?」
丸井は血管を浮かせ、ジタンを見た。
「……そしてお前は……、オレより歳が下だろう……?」
「何でかな?アンタもおれっちより年上に見えねえからだっ!」
「あ、そう……」
「丸井、失礼だろう……」
「谷口さーん、すいませーん、どうも俺って正直で……」
「……あのな……」
「ほら、近藤、びしっとしろよ、びしっと!」
「……んな事言うたかて、イガラシはーん、……せっかく帰って
来たばっかやのに……」
「あの、これから何処へ行くの……?こんな夜遅く……」
ダガーが訪ねると、谷口は平然とした顔で答えるのであった。
「これから少し、公園で夜間練習です」
「まあ、……頑張るわね……、偉いわ……」
「おいおいおい、……明日の朝も早朝練習するんだろ?お前ら本当に
大丈夫……」
そう言い掛けたジタンは……、4人組の股間が異様に膨れ上がって
いるのを見てしまった……。
「……」
「な、何か……?」
「い、いや何でもない、それよりあんまり無理すんなよ!気を付けてな!」
「はあ、どうも……」
……谷口達は不思議そうな顔をしながら、ジタンの顔を見、外へと
出掛けて行った。
「……心配する事なかったなあ、やっぱり奴らも男だったんだな、
……うんうん……」
「何言ってるのよ、皆男の子なのに当り前じゃないの……」
「はあ、やっぱりまだまだダガーもお子ちゃまだなあ、そのうち、
……オホン、もっとオレが色々教えてやんなくちゃな、うんっ!」
「何よ、変なジタン!」
「さーてと、オレはジャミルに報告に行かないとな、奴らは
普通だったってな!」
「???」
……わざわざ報告に行く程の事でもない……。
そして、すでに就寝していたジャミルは……、ジタンによって、
再び眠りから叩き起こされたのであった。しかし、ほぼ半分は
夢の中にいたが。
「ほんっと、良かったよー、奴らもさ、男だったって確信出来た、
オレさあ、奴らが野球の事しか頭にないもんだとばっかり思って
たからさー、……聞いてる?ジャミルー、……もしもーし!」
「あふぁーん、……駄目ら、アイシャ~、う、うへへえ……」
「お、夢みてんだな……?よーし、オレが男の証を確認してやろう、
……お、おおお、……意外とでかくなるなあ、アンタの此処さ……、
極めて正常だな!」
「……せえっつんらあ……」
ピッパー君、入居する?
その日の早朝、酔っぱらったホークの親父がマンション内に
変なロボットを持ちこんで来てしまい、マンションでは又
ちょっとした騒ぎになっていた。
「……バカだねえー、どうするんだいっ、これっ!」
バーバラが呆れてホークの方を見るが、ホークはすっとぼけた
表情をした。
「何か気が付いたら、持ち込んで来ちまったみたいでよ……」
「んな理由があるかよ、……これ、携帯電話ショップにいる奴だろ、
おっさん、責任持ってちゃんと返してこいよ……」
「よし、じゃあ、ジャミル、その役目はマンション責任担当者の
お前に任せよう!」
「……何でいつもそうなるんだよっ!この、糞親父っ!!」
ジャミルはホークの首を羽交い締めに掛かる。
「あたたた!……あたたたた!だ、だけど……、チビ共には評判いいみたいだぞ……」
「……僕はピッパーです、どうぞ宜しく、ちなみに、臭いおならのでる
特殊機能つきです……」
「たいー?」
「ロボットさーん、オラとじゃんけんしましょー!」
お子様のしんのすけとひまわりは変なロボットに夢中であった。
「んな事言ったって、店のモン盗んで来たら駄目だろうが!
返してこいっつーの!」
元・シーフが何を言うか……。
「ん?今何か聞こえた様な、気の所為か……」
「……う~、アンっ、アンっ!!」
「お?こら、シロー!マンションの中に入って来ちゃ駄目だゾー!」
「アンっ!アンっ!!」
興奮して、鎖が外れたのか、外の犬小屋にいるシロが中に
入ってきてしまい、しんのすけが再び外に連れ出すが、シロは
脅えてキャンキャン吠え続けた。
「とにかくこれ、見た目がアレなんだよな……、外見もう少し
可愛くすりゃいいっつーのに……」
「何ですか?僕の悪口ですか?悪口合戦なら負けませんよ、僕、
意外と毒舌なので……」
「おおうっ!?俺の言った事に反応したっ!!」
変なロボットは、独特のギョロ目でジャミルを睨んだ。
「そら、会話ぐらい当り前にするだろうさ……、技術はどんどん
進化してんだからさ……」
バーバラがポンと、ロボットを軽く叩いた。
「おばさん、化粧臭いですよ、それからもう少し、アイシャドウと
ファンデーションは薄めにしたらどうですか?」
「……あんだとっ!?誰がおばさんだっ!!ロボットにまで
言われる筋合いわねえーわーっ!!」
「落ち着け、バーバラ、これは店の物だからな、壊すなよ、壊すなよ……」
「おめーが酔っぱらって持ってきたんだろーーがっ!!」
「……あひょおおおーっ!?」
ホーク、バーバラに殴られ、寄り目になってその場に倒れた。
「プ、ロボットにまで言われ……、んーっ!」
「……黙ってろっつんだよ、ジャミ公、このままだと
ロボットを破壊しかねえぞ……」
倒れたホークは反射的に起き上がり、慌ててジャミルの口を
素早く塞ぐ。
「だから早く返して来いっつーの、糞親父!!」
「……おじさんもさっきからちょっと臭いですよ、そろそろ
加齢臭が始まる年齢と倦怠期なんでしょうか……」
「あんだとおーっ!?この糞ロボットがあーっ!!」
「だからっ……!!早く返して来いっつーんだよっ!あーっ、
もうー!何で俺はいつもこんな目に遭うんだよお~……」
ホークを必死で取り押さえながらジャミルがぼやいた。
「ねえねえ、ちょっと、何よそれ……」
「携帯電話屋さんによくいるロボットかしら、どうしてこんな所に
いるのかしらね、お姉ちゃん……」
「あたしが知るワケないじゃない!もしかして、わざわざ買ったの?
こんなもん……」
其処にエレンとサラのカーソン姉妹がやって来る。最初のうちは
穏やかで別に何事も無かったのだが。
「お、おお、嬢ちゃん達か……、ははは……」
「いんや、買ったんじゃねえの、この糞親父がだな、酔った勢いで……、
むぐむぐ……」
「……だから、黙ってろっつんだよ、おめーは!一日だけな、限定でな、
借りたんだよ!」
「そうなの、じゃあ大切に扱わないとね……」
サラがピッパーを優しく撫でる。しかし、対照的に姉のエレンは。
「はあ、それにしても、ぶっさー!な顔ね、もう少し真面に
造形しなさいってカンジ!」
「お、お姉ちゃん……、そんな言い方……」
「……あなた、胸が大きければいいってもんじゃないですよ?
その内、胸が膨らみ過ぎで風船みたいに破裂しちゃうんじゃないですか?
胸さんが可哀想ですよ……、何だか泣けてきます、僕は涙もろいので……」
「……なんですって……?このブサロボットおおおーーっ!」
エレンはピッパーにジャイアントスイングを噛ましそうになるが、
側にいたサラが必死でエレンを止めようとした。
「お姉ちゃん、止めてっ!お願いだから落ち着いてっ!ねえ、ジャミルも
お姉ちゃんを止めて!このままじゃ、ロボットさんが壊されちゃうわ!」
「あああ!やっぱりこうなるか~、どうか店に帰るまで無事に
済みます様に……、ガクガクブルブル……、桑原桑原ああーーっ!」
壊されちゃう……の、サラの言葉にジャミルは怯えてその場にしゃがみ込む。
ちなみに、ロボットの原価は約1000万である。ホークはとっくに逃走し、
バーバラも嫌気がさして部屋に戻った様であった。
「ジャミル、ロボットの頭に傷が出来てる!……ど、どうしよう……、
さっきお姉ちゃんが怒って強くロボットの頭を掴んだ時に出来た
傷かしら……」
「あたし知らないわよっ!サラ、へ、部屋に戻るわよっ!」
「え、えええー!……お姉ちゃんたら!……ジャミル、
ごめんなさい!」
エレンはサラの手を引っ掴んで逃走す。しかし、エレンの顔には
冷や汗が滲んでいた……。
「……こらああ~っ!!責任取れよーーっ!あーもうーーっ!!」
「……ご~めんくだしゃ~ああ~あ~い……、ぐ~ふふふ!」
「あ?……ふ、ひっ!!」
玄関先に立っていたのは、どうやら、携帯電話屋の女子店員の様であったが、
濃いモミアゲ顔と顎がキュウリの様に異様に長く、足はゴボウの様に細すぎ、
そして、異様な笑い方をする。
「ふう~ん、な~るほどお~……、フンフンフン、お~お、おおお!
や~っぱ此処にいたのねえ~、ロボットちゃ~ああ~ん!」
「……ああああーっ!!もう駄目だーーっ、い、一千万円……、
少しの傷でも賠償金額って……、一体どれぐらいになるんだようーーっ!」
「あのねー!、昨夜、店を閉める前にな~ぜか、ふら~りと店に
入って来たお宅のマンションの方がさあ……、ウチのロボットを
持ってっちまった様なんだけどねえ~っ!」
「あのさ、アンタら、見てる暇があるなら、頼むから止めてくれる……?」
ジャミルはやや涙目になって店員に訴えた……。
「……けどさあ、それ、と~んでもない欠陥品っつー事が分った
ワケよ、どっちみち、廃棄処分予定だったから、持ってってくれて、
感謝してるっつーワケ!廃棄処分でもカネがかかるかんねえ~っ!」
「……なにいいーーっ!?」
「おお、そうか、それは良かった!!」
逃げ隠れていたホークが再び、のそのそと部屋から出て来た。
「ま、一応、癒し系には使えるかもしんねーからサア、
お宅の方で是非、可愛がってやって頂戴よ!んじゃあねえ~!
……ぐふふふふっ!」
時折スカートから垣間見える、スネ毛だらけの足をちらつかせながら
店員は帰って行った。
「はああ~……」
「おう、良かったな、ジャミル、マンションのマスコットも増えたし、
良かった良かった!」
「……じゃねえっつーんだよ!この加齢臭糞親父ーーっ!!」
ジャミルは怒りを込めてホークの股間を思い切り
蹴りあげたのであった。
……かくして、このマンションには、変なポンコツロボットも
癒し系として、入居したのである。ピッパー君は、1階廊下の
中央にていつでもマンションの皆をギョロ目で温かく見守っている。
アホ、プールで絶叫する
5月後半の時期、この島は異常気象、クソ暑いうんこ猛暑日続きで
市民プールなどの施設も一足早く開いているのであった。
「こう暑いと……、何もやる気が起きないなあ~……」
「……いつもと同じでしょ……」
「何だ、ダウド?」
「何でもないよーっ!」
「……あの、こんにちはーっ!」
「あ?はい……?」
ジャミルの部屋に、みさえがやって来る。今日は別にひまわりも
来ていないのだが。
「先日は、ウチの息子達が遊んで貰ってしまったそうで、本当に
ご迷惑お掛けしてしまって本当、すみませーんっ、でも助かりますーっ、
あははーっ!」
「いや……」
「あのこれ……、ご迷惑お掛けしてしまったお詫びになるか
分からないんですけど……、昨日、商店街でお買いものして
当たったんですよー!市民プールの割引団体券!良かったら、
お使い下さーいっ!」
「ハア、どうも……」
「あの、それでですね、ご迷惑じゃなければ、日曜日辺りにでも、
ウチの息子達もご一緒に連れてって貰って遊んで頂ければ私も
手が空きますし、休めますから……、ありがたいかなあーっと、
あ、いや、……決してご無理じゃないですよーっ、あはは、あはは、
では……」
「……」
みさえはそれだけベラベラ喋るととっとと逃げて行った。
「結局、……そう言う事かい、ふーん……」
「いいじゃない、行ってくれば?オイラは行かないけどね……」
「はあ、……おまけがいたんじゃ落ち着いて泳ぐ気にもならんわ……」
「あはっ、プール行くのっ?行こうよーっ!!」
「お前なああ……」
この頃、神出鬼没並みに、気が付いたらアイシャも突然急に部屋に
出現する様になっていた。
「その話!オレものったーっ!」
水場といえば、綺麗な水着のお姉さん……、とくれば、この男、
ジタンが出てくるのも当り前であった。
「俺は行かねえよ、面倒くせえし、第一、ガキ共のお守なんか
冗談じゃねえよ……」
ジャミルはそう言って寝転がって横を向き、アイシャから顔を背けた。
「ぶうーっ、けちーっ!……ちょっとは動きなさいよ……」
「んじゃ、アイシャ、オレと行こう!?」
ジタンがアイシャの手を握り、尻尾をパタパタ振るのであった。
「え?う、うん……」
「……ま、待て、やっぱ俺も行くわ……、うん……」
急にジャミルが慌てて起き上がり、二人を見た。
「えーっ、やっぱ、アンタも行くのかよ、しょうがねえーなあー……」
「……元々俺が貰った券だぞっ!!文句言うなっ!!」
「ぷっぷのぷー!」
「あ、どうせ割引団体券なら、みらいちゃん達も誘おうか!
きっと喜ぶわよ、私、みんなに声掛けてくるね!」
声掛けにアイシャが部屋を出て行こうとした。
「おお、いいね、いいねえー!ハッ、ハッ、ハッ……」
「勿論、ダガーにもねっ!言って来てあげる!」
「……ハッ、ハッ……、ハ……、ハハハ……」
「何だよ、アンタの彼女だろ?何で、んな嫌そうな顔するんだ?」
「彼女なんかじゃねえよ、……オレにはつり合いが
取れなすぎるんだよ……、ダガーは雲の上の人なんだ……」
急にジタンが俯いて、淋しそうな表情をする。
「ふーん?で、ダガーがいると、他の女をナンパしづらい
からか?オメーは結局、彼女が好きなのか?どっちだ?
はっきりしろ、このスケベ野郎!」
「……た、例えだな、……ダガーがオレの……、コレになって
くれたしてもっ、オレは世界中のレディとお友達になるんだよーーっ!!
オレの願望と野望だーーっ!!」
「やっぱり、ただのスケベじゃねえか……」
そして、日曜日……。
魔法ガールズ、美奈子、アイシャ、ダガー、ジタン、ジャミル+野原家の
ガキんちょ……、は、揃って市民プールへとぞろぞろ出掛ける。
魔法ガールズ組は、TV本編時の海水浴時に着用していたそれぞれの水着、
アイシャはペチャパイさんでもOKなフリルワンピースタイプ、ダガーは
ホルタータイプ系である。……美奈子は……、野郎悩殺用なのか、
上はセクシービキニで、下にはパレオを巻いている。
「……しっかし、相変わらず、お前も胸ねえなあ……」
〔げんこつ〕
「……いっつ~……」
「ふんだ!ジャミルのバカっ、スケベっ!!」
このマンションの先住人の女子もどんどん強くなっていく……
「あははーっ!プールだあーっ!ワクワクもんだぁーっ!」
「はーっ!早く泳ぎたいねーっ!」
「泳ぐモフーっ!」
「二人とも、そんなにプールサイド走ったら危ないわよーっ!!」
相変わらず、心配性のリコがみらいとはーちゃん、二人に
大声で注意する。
「よっしゃあー!いい男、ここらで一発ゲットよーっ!」
「……美奈ーーっ!」
このコンビも相変わらず。レーダーを張り、イケメンを狙う美奈子……、
と、苦労ネコ、お目付け役のアルテミス。
「……プール、の、中に……、石……、が、ある……」
「ちょい待ちっ!……んなモンねえからっ!頼むから大人しく
しててくれっての!」
「……ボ」
ジャミルはプールに頭から突っ込みそうになったボーちゃんを
思わず必死で掴んだ。
「お~?」
「たいやい?」
「はあ、私、泳げないのよねえ~、情けないけど……」
「……一応、泳げるけど、私もそんなに泳ぎ得意じゃないし……」
「わ、私も……、です……」
悲嘆に暮れるリコにアイシャがぼそっと呟き、ダガーも恐る恐る、
手を上げた。
カナヅチ下手糞系組 リコ アイシャ ダガー
優等生+多分普通組 美奈子 ことは みらい
護衛? 野郎 ジャミル ジタン
ガキ しんのすけ ひまわり ボーちゃん
「……で、俺はどうすりゃいいんだい?駄目組の方、コーチして
やろうか?」
「水泳教室じゃないんだから、いいわよっ!自由にしてて、今日は
遊びに来てるんだから!それに、ジャミルはすぐ怒るしスパルタ
なんだもんっ!」
横を向いてアイシャが膨れる。
「……しごかなきゃ上達しねえだろうがっ!!」
「じゃ、じゃあ……、その役目はオレが……!」
と、ジタンが片手を上げ、名乗り出た処に、ダガーがしんのすけと
ボーちゃんを突き出した。
「おお?」
「……ボ……」
「私達がひまわりちゃんの方を預かるから、ジャミルとジタンは
この子達をお願いね……」
女の子達はジャミル達にうるさい荷物を預け、さっさと
プールの方に移動した。
「……いいんだよ、オレにはこれがあるから……、よしっ!双眼鏡で
水着のお姉さん観察だっ!」
「ほほーい!尻尾のお兄さん、中々やりますなあ~、オラにも
貸してくれる?」
「おっ、一緒に見るか?しんのすけ!」
「ブ・ラジャー!」
「……ボ」
「……に、似た者同士、バカ兄弟……???」
そして、此方も。
「ああ~ん、中々いい男って引っ掛からないモンなのねえ~、
こうなったらいっその事わざと溺れてカッコイイ監視員さんに
助けて貰って……、ああ、素敵な出会い……」
と、言い、美奈子はちらっと監視台の方をちら見。……本日の
監視員の方はムキムキマッチョで汗臭そうな身体中胸毛だらけの
赤いビキニパンツのおっさん。
「……やめたやめた、やっぱ、アタシはアタシだけのヒトを
追い掛けるのよっ、待っててねえ~、グレイさ~ん、……まだ
見ぬ美奈子の王子様ああーー!」
「……美奈……、だ、誰も待ってないから……、とほほ~……」
「……げっぷ……」
残されたジャミルは、チェアに座って売店で買ったジュースを
飲みまくり、泳ぎにも行かず、只管昼寝……。ジュースの飲み過ぎで
胃と腹はタポンタポン。……ついでにたこ焼きをやけ食い、お腹の
中へと押し込んだ。
「へへーい!そこのおねいさーん、オラと一緒にミルク飲みに
行きませんかーっ!?あ、ねえねえねえ、かーのじょっ、
あそんでええーん!」
「あはは、やだっ、見てっ、可愛いー!」
水着のお姉さん達が笑いながらしんのすけに手を振る。
「お前、すげえなあ、幼稚園児の癖に、よし、オレもっ!」
……急にジタンが気合を入れ出した。
「ねえん、おねいさあーん!オラの尻尾見てーっ!可愛いでしょっ!
……実は、前にも尻尾が……」
……みしっ……
「……何してるの、ジタン……、全く、はあ……、猫の手ラケット
持って来ておいて良かったわ、やっぱりあなたから目を離すと駄目ね、
じゃあ、しんちゃんとボーちゃんも私達と一緒に、ね?」
「ほほーい!」
「……ボー」
「……とほほ、面目ねえ……」
ダガーがジタンを引っ張り、プールの方に連れて行った。
……結局、ジャミルは一人になり、只管だらしなく寛いでいた。
其処にアイシャがとてとてやって来る。
「起きなさいよっ!もうっ!だらしないなあ~、ほらっ、立って!
……口の回り中、青のりが付いてるわよ……、何食べたの……」
「……今は、立たない、俺のは元気がない……、ほっとけ……」
「……ちょ、それじゃないわよっ!ジャミルのバカっ!!
……少しぐらいなら……、しごいてもいいから、泳ぎ、教えてよ……、
上手くなりたいのよ」
顔を赤くして、アイシャがジャミルの手を取った。
「え?ええっ、マ、マジっ!?」
「うん……」
ダラダラしていたジャミルが急に起き上がった。どうやらこの展開を
待っていたらしい。
「だから、早く行こうよ……」
「よしっ、行くべっ!」
……やっと、ジャミルの青春が動き出した処に……。
ポツ……
「あれ?雨だ……」
「降って来ちゃったね……」
「……ウソ……、だろ……」
……ジャミルが呆然とする中、プールで遊んでいた女の子達も
慌てて引き返して来た。楽しいプールも本日はお開きである。
「ジャミルが、あそこで蹲ってるケド、……ぷっ、やだ、お腹でも
壊したワケ???」
美奈子が指差す方向を全員が一斉に見た。
「……」
「ちょ、ちょっと、いじけちゃってるの、あはは、皆、
気にしないで、……ホラっ、ジャミルっ、立って!
着替えて帰るよっ!みっともないでしょっ!!」
「……ちーきーしょおおおー……、何で室内プールじゃ
ねえんだよっ!俺の青春返せっ!雨のアホンダラーーっ!!」
「……う~ん、やれやれ、ですなあ~……」
「たいやー!」
……遂に雨にまで妨害を喰らう男ジャミル、果たして、彼に真の
青春は来るのか。
ジャミルの長い一日、変人さんラッシュ
「……ごーんにーぢわあー……」
「ジャミル、又誰か来てるよ、今度は青い狸と眼鏡の人が来たよ!」
いつもの一声、今日はダウドがジャミルを呼びに来た。
「俺、今、手が離せないんで……」
「何がだよお!きのこの山もりもり食べてるだけじゃないかあ!」
ダウドは怒りながら、自分も一個、横からきのこの山を
ひょいっと摘んだ。
「……あ、俺のっ……!!」
「いいから早く行きなよお!お客さん待たせちゃ駄目だよ!」
ダウドは調子に乗り、また一つ、……また一つと、きのこの山を
どんどん口に入れ始める。
「おい、それ俺のだかんな、……残しとけよ、ぜーったい、残しとけよ!」
「ん、分かってるよお、行ってらっさい」
きのこの山を心配しながら玄関に行くと、確かに青い狸と、
同じく顔が青ざめた変なメガネ君が待っていた。
「ごんにぢわ、ぼぐどらいもんでず、じんじょうひんの
ゼールズにぎまじだ」
「……ぼく達は、株式会社、ノビータの者です、お願いです、
買って下さい……、買ってくれないと生活が……」
(押し売りかよ……)
「わりいけど、ウチは要らねえから帰ってくれる?」
「なんででずが?ぎみはいらなぐても、ごごはまんじょんでじょ?
ほかのがだがほじいひどがいるがもじれないでじょ!!」
……狸は濁声で延々と商品のセールスを始めるのであった。
「一応、何取り扱ってるか、それだけでも見てやらあ、高かったら
買わねえけどな」
と、口では言うが、結局は買う気など心にもないジャミ公。
「でわ、ごれ、ガタログでず、ごらんになっで……、うふふ~」
「ふーん、……新商品、地球破壊爆弾……、て、おい……」
「ぐふふうー」
「……ぐふふうー、じゃねえっつんだよ!帰れコラ!!」
ジャミルは慌てて狸と眼鏡を蹴って追い返した。
「……たく!」
ブリブリ怒りながら自部屋へ戻ると、哀れ、きのこの山はもうダウドが
食べ尽くした後であった。
「だって、手が止まらなくなっちゃったんだよお~!……珍○の
山ならあるけど……」
「……いらねーよっ!後で責任もってプレミアム買って来いっ!!」
「あうううー!」
ジャミル、不貞腐れて部屋で昼寝を始める。そして、漸く心地よい
眠りにつき始めた頃。
「ジャミルっ、お客さんよ、何かね、縞々のちゃんちゃんこ
着てる子でね、喋る目玉さんも一緒なのよ!」
……結局、又アイシャに起こされるのである。
「うう~……、何でいつも本当に俺なんだよ、全く全く全く、
……まあーったくううううー!!」
寝起きで更にジャミルの機嫌の悪さが悪化する。
「父さん、間違いないです、此処にいる筈です、妖気が漂っています!」
「ウム、間違いないのじゃな、ギ太郎!」
……エントランスには又、訳の分からない連中が現れ、ジャミルの
機嫌メーターのレベルが不機嫌LVマックスの赤になりそうであった。
「ハッ!あ、妖しい妖気がどんどんどん……、あああ!父さん、
見て下さい、僕の髪の毛がこんなに逆立ってます、……と、
あそこもこんなに立ってます……!!」
「おい……!何だよ、オメーら!別に此処に入居する訳じゃ
ねえんだろ、だったら……」
「すみません、勝手に入ってしまった事はお詫びします、
……ですが、此処にどうやら凶悪な妖怪が入り込んでいる様
なんです……!!」
「妖怪だと……?」
「うむ、わしら親子は悪い妖怪を退治して回っておるのじゃよ……」
ボイスチェンジで声を変形させた様な声で、目玉が淡々と喋った。
「……はっ、父さん、来ました、妖怪ですっ!!」
「遂に現れおったか!!」
「で、出たのかっ!?」
ジャミルが慌てて後ろを振り向くと、其処にいたのは……。
「……何さ、あんた達、何騒いでんだい……?」
バーバラであった……。
「出たなっ、妖怪厚化粧婆!!……僕等が来たからにはお前の
好きにはさせないぞっ……!!」
「……あーんだとおぅぅぅ……?」
妖怪厚化粧婆は変な親子を追い掛け、そのまま外へ走って行った。
「はあ、ありゃ負けるな、強いぞおー、妖怪厚化粧婆は……、
俺知らね……」
ジャミルは事が済んだようにやれやれと部屋に戻って行った。
PM:19時……
「zzzz」
「ジャミルったら、又寝てるの?そんなに寝たら、これから
寝られなくなるよっ!」
「起こさないでくれ、アイシャ、俺は今日、何故か倍眠い日なんだよ……」
「何言ってんのよ!ご飯も食べないでっ!寝太郎になっちゃうでしょ、
ほら、しゃきっとしなさいよっ!」
アイシャに背中を叩かれ、ジャミルは漸く観念した。
「ねえ、眠気覚ましに公園行こうか?夜風で目も覚めるよ!」
「いいのか?……こんな日は狼さんが出るんだぞー!」
「……シルベンの事?クローディアの部屋にいるわよ?」
「けっ、オメーって、ほんっと、お子ちゃま!!……まあいいや……」
ジャミルは舌うちをするとアイシャよりも先に歩き出す。
「……変なジャミル、変なのはいつもなんだけど……」
「おう、おめえか?賊組の邪美瑠ってんのはよ……」
「……はあ~?」
本日ン回目、エントランスに行くと、又変なのが待ち構えていた。
「おりゃあ、天茶中の山崎銀次郎っつーモンだあ、……俺の子分の
コオロギと勝が、おめえにボコボコにされたって聞いてよ、
……仇討ちに始末付けさせて貰いに来たんじゃあ……」
「わあ、あなた、変わった格好してるのねえー!」
……大昔の学帽に学ランスタイル、そして、腹巻である……。
「け、女連れかよ、どうせパイパイでも飲んどるんじゃろうが……、
それにお前、チビじゃの……」
「な、何いっ!?何だテメー!!いきなりっ!!それに、おめえの
子分なんか顔も見た事ねえっつんだよ!……変な言いがかりつけんなっ!!
……オメーだって背が低いじゃねえか!!」
「あの、多分、人違いだと思うわ……」
アイシャも声を掛けるが、キレてる銀次郎、言う事を聞かず、
着ていた学ランをばっと放り投げた。
「……うるせーこの野郎!!メスは黙ってろ!男、山崎銀次郎、
売られた喧嘩は返したらああああーーっ!!」
「いらねーモンをてめーが売ってきたんじゃねーかっ!!
……あああーッ、こうなったら……、やってらあーーっ!!」
「タイマン勝負じゃいーーーっ!!」
……急に暑苦しい劇画バトルが始まりそうになるが……。
「だめえええーーーっ!!こんなとこで、喧嘩しちゃ駄目なのーっ!!
きゃーーっ!!」
アイシャが間に割って入り、銀次郎に拳パンチする……。
「……おああああーーっ!!ごべっ……」
「マンションの皆の迷惑なのーっ、やめてえええーーっ!!」
覚醒暴走モードアイシャ、勢いが止まらず、更に銀次郎に
飛び蹴りを噛ます……。
「ぐ、ぐふっ……、ぐえっ……」
「おい、大丈夫か?……首の骨……、折れたんじゃね……?」
「……ふぇぇ、怖かったよう……、あれ?あなた、どうして
倒れてるの!?大丈夫!?」
また暴れた時の記憶がないらしく、アイシャが銀次郎を
慌てて助け起こした。
「お前、……絶対わざとやってんだろ……?」
「ふぇぇ……?」
「……おめえ、強えんだな、メスの癖に……、ふっは、ふっはははは!
この俺が負けるたあな、……世の中まだまだ広いんじゃあ……」
と、何かを悟った様に、銀次郎、その場に寝転がる。
「親分ーー!!」
「……勝、コオロギ……」
どうやら、子分らしき二人組が親分を迎えに来た様である。
「おい、お前ら、もう一度聞いておくが、お前らをボコった奴は
本当にこいつなんけ……?」
「いや、人違いでした、すんません、親分……」
「申し訳ねえ……」
「……あんだと……?」
「それがその……、賊組じゃなくて……、毒組の間違いでした!!」
「…勘違いしやして、ほんっとーに申し訳ありませんでしたっ!!」
子分二人、その場に正座し、ぺこぺこ頭を下げる。
「はあ、結局、そういう事になるか……、てか、俺は元々、組の
モンじゃねーぞっ!!……何が賊組だっつーの!!」
「すいませんっ!!」
「すいませんっ!!」
「もう、いいでしょ、ジャミル、これで収まったんだから……」
「……収まってねーっつーの!腹立つなあ!!」
「こいつらはそそっかしいんじゃ、まあ、今回は許してやってくれや、
俺からも注意しておくけ……」
「……勘違いで殴り込んで来たのはオメーだろーがっ!!」
「……だからっ、ジャミルっ、駄目だよっ!!」
「ふ、おもしれえ奴じゃの、……今度は本気でタイマン勝負して
みたいもんじゃの、……行くぞ、勝、コオロギ……」
銀次郎は学ランを羽織ると、子分を連れて再び何処かへ姿を消した。
「ふ、ふははは、は、……あ、汗臭え奴……、……昭和の香りが
プンプンするわ……」
……ジャミルは疲れてその場に腰掛け、一息ついた。
「良かったね、ジャミル!又変なお友達が増えたじゃない!
んー、此処には入居しなかったけど、又勝負したいって言ってたね!」
「……勘弁してくれやあ~……」
ニコニコと真顔で言う天然アイシャに、ジャミルはますます疲れが
倍になるのであった。
zokuダチ。セッション11