zokuダチ。セッション10
今回の新規住人は、メタルギアソリッドから、スネーク、
わんぷりから、猫屋敷ユキ&まゆ、兎山悟&大福、が
参戦します。
エピ 37・38・39・40
此方スネーク、変人屋敷侵入成功!前編
今度の事件はその日。島の郵便配達員であるドラゴンのチビが
ジャミル宛に巨大な段ボールを届けにエントランスに来た処から
騒動は始まる。
「ぴー!おとどけのお荷物でーす!はんこきゅぴー!」
「何だ何だ……、こりゃまた随分とまあ、でかい荷物だなあ……」
「早くはんこぴー!」
「分ってるよ、よいしょ、……これでいいか?」
「ありがとうきゅぴー!」
「それにしても、……誰だ?……何だ?これ、差出人が
書いてねえけど……」
ジャミルは届いた巨大な段ボールの宛名を確認するが、何処にも
相手の明記がないのである。
「そういうの駄目きゅぴ!ジャミル、ちゃんと差出人の人に
注意しておいてよお!」
「へえへえ、……って、誰から来たんか分かんねえのに
注意出来る訳ねえだろ!」
「きゅっぴぴー!」
チビは尻尾をふりふり、マンションから逃走した。
「たく、あの性悪あざとすドラゴンめ……、それにしても……」
「大きな荷物だねえ、ねえ、一体何入ってんの?」
「うわ!」
ダウド、ぬっと現れる。……どうやら、段ボールの中身に
期待を持っているらしい。
「凄いねえ、ねえ、中気になる!早く中開けてよお!」
「……うるさいっ!此処じゃ絶対開けねえ!ふ、ふんっ!」
ジャミルは意地でも段ボールを自部屋に持っていき、開封しようとするが。
……段ボールが重すぎで持ち上がらず。
「……畜生!こんなモン、チビの奴どうやって運んで来たんだよっ!
おかしいだろっ!!」
「あらら~、オイラ知らない、んじゃ、頑張ってねえ~!」
「ダ、ダウドてめっ!おいコラ!……薄情ものおーー!」
「ふ~んだ、中身見せてくんないんだもん、しーらない!」
いじけダウド、スタコラ自分の部屋に戻る。……エントランスに
残されたジャミル、持ちあがらない段ボールと格闘す……。
「うう~、誰か手伝ってくんねえかな……」
時折部屋から出てくる住人達を横目で見つつ、そう思うが、誰も手伝って
くれない様なので、ジャミルはもうええわいと思いつつ、仕方なしに
段ボールを蹴りながら部屋まで運んでいこうと決めた。自分の部屋は
1階にあるので、まだそれだけが救いであった。
「んじゃ、蹴ってみるか、……この距離から自分の部屋まで届くかね……、
よっ!……ド、ドライブシュート……」
「駄目よっ、ジャミルっ!大事な荷物にそんな事したら……駄目っ!」
「……あ、あら~?」
荷物を蹴ろうとしたジャミル、急に出て来たアイシャに止められ、
足を盛大に滑らせ宙を蹴る。
「オメーなあ……、いきなり出てくんなっての!」
「私も手伝うからっ!ほら、二人で荷物をお部屋に運びましょ?」
アイシャは優しいので、ジャミルにそう言ってくれるのは嬉しいの
だが、ジャミルでも重いのにアイシャではとても持ち上がりそうに
ないだろう。しかし、無理しなくていいと言った処で彼女が引く筈も
ないのも分かっていた。絶対に、「大丈夫だもん!」……と、無茶を
言うからである。またまたどうしたもんかとジャミルが困り始めた時……。
「んが~……」
「……?」
段ボールの中から、微かに鼾の様な音が……、聴こえる。
「ジャミル、……この中から……」
「ああ……」
二人は顔を見合わせる。そして頷く。今、この場で段ボールを
開封してしまおうと意見が一致した。
「はあ、さっきダウドがいた時から、やっぱり最初から
からこうすりゃよかったあ、ぶつぶつ……」
言いながら、段ボールに貼られたガムテープをべりべりと
剥がしていく。アイシャも、どきどきしながら見守る中、
……箱の中から出て来たのは……。
「……此方スネーク、……変人屋敷に遂に潜入成功!」
「うわ!」
「きゃあ!?」
……中に入っていたのは、バンダナを頭に巻き、身軽な兵士
スタイルの格好の変な男。マシンガンやら、小型ミサイルやら、
危険武器に囲まれて幸せそうに眠っていた。恐らく先程
聞こえたのはこいつの鼾……、だろうが、寝ていた筈の男は、
段ボールの蓋が開いたと同時に勢いよく段ボール箱から
飛び出して来た。
「な、ななななな!また変なのかよ!いい加減にしろっ!」
しかし、危険物男はジャミルの叫びを無視、……アイシャに近寄る。
「ちょっと何よっ!来ないでよっ!」
「アイシャ!早く逃げろっ!」
「……嬢ちゃん、どうだい?俺とお茶でも?」
「は……」
アイシャは目が点になる。この変人男はどう見ても見るからに、
ホークと歳が近い様な感じである。しかし、平気でまだ10代の
彼女をナンパしてきたのである。同じ歳の若いジタンに散々
アプローチされた事は何度もある物の……、おっさんに直に
ナンパされたのはアイシャも初めてで、どうしたらいいのか
分からず戸惑う……。アイシャは困ってジャミルの方を見るが……、
情けない事にジャミルは固まって石になっていた……。
「ちょっとジャミルっ!しっかりしてよっ!バカーーっ!
……きゃ!?」
「う~ん、このぐらいの歳にしちゃ、ちょっと発育が悪いなあ、
もっとこう、ボインボインでないとなあ、ちょっと魔法の
マッサージで施してやろうか、……どら」
むにゅっ……
「きゃ、きゃ……」
変態男、アイシャの胸にボインタッチ……。
「……いーーーーーーーやあああああああああーーーーーーー!!
此方スネーク、変人屋敷侵入成功!後編
アイシャの絶叫を聞き付け、お姉さま達が駆けつける。
……情けない事に野郎の出番は全くなく、素早く現れたバーバラ、シフ、
エレンにより、変態男はぎったんぎったんに叩きのめされた。
こういう時、真っ先に率先してでしゃばるジタンも今日はダガーの
付き添いでデパートに出掛けている為、不在。
「はあ、一体何事かと思えば……、ふざけんじゃないよ、アンタっ!」
「……全く、ふてぶてしい野郎だね!……おい、ジャミル、お前は
いつまで固まってんだっ!」
「あいてっ!」
ジャミ公、シフに竹刀で叩かれ、漸く硬直状態から立ち直り我に返る……。
「アイシャ、……もう大丈夫よ……」
「……ふええ、……クローディア……」
クローディア、脅えてしまっているアイシャを優しく抱擁し、
慰めた。
「……2度と起き上がって来れない様に、この際、徹底的に
痛めつけてやろうかしらっ!?」
エレンが指をぼきぼき鳴らした。しかし、変態男は直後……。
「そうはいかない、……俺も今日から暫くこの変人屋敷に
滞在させて貰う男……、スネークだ!」
「……何っ!?」
「何だとっ!!」
「……ちょ、ちょっと!」
「まあ……」
変態男……、スネークと言うらしい……、は、くるりとお姉さま方の
見ている前で一回転し、床に着地。
「まあ、そう言う訳でね、俺も今日から此処の客なのさ、一つ宜しく、
……麗しきお嬢様方……、その強気な姿勢、……いいねえ、気に入ったぜ……」
……スネーク、今度はいきなり跪いたかと思えば、素早くお姉さま方の
手の甲にキスをする。……シフは激怒し、再び竹刀を振り上げるが……。
「では、本日のもう一つのミッション開始!俺のアジトを
ゲットせよ!何処だっ!どうだ、これなら誰にも見えないだろう……」
スネークはシフに叩かれる前に素早く逃走する。そして今度は頭から
すっぽりと先程の段ボールを被るとそのまま走って何処かへ消えた。
「……本当になんなんだい、あれは……、おいジャミル!管理人っ!
あれも一応、此処の新人みたいだからね、アンタが責任もって
しっかり見張れよ!冗談じゃないよっ!」
「げ、げえっ!また俺かよっ!」
「当たり前でしょっ!たくっ、あんなのがウロチョロ
徘徊してたらおちおち風呂にも入ってらんないわよっ!
ジタンより癖が悪いじゃないのっ!」
「ジャミル、お願いだからしっかりしてね……、アイシャが
泣き止まないわ……」
「ひっく、ひっく……」
シフ、エレン、クローディアはジャミルの方をじっと見ており、
バーバラはこめかみを押えた……。
「でもね、あの人、悪い人じゃないと思うわ……、少し変わってる
だけよ、……常識が無くてびっくりしちゃったけど……、そんなに
嫌な感じもしなかったし……」
「アイシャ……」
アイシャがクローディアの胸から顔を放した。確かに、この
マンションには決してワルではないが、何処か変っている住人
……、も、多い。
「おーいっ!バーバラー!大丈夫かあーーっ!」
「……シ、シシシシシ!シフーーっ!!」
今更遅れて、ホーク、アルベルト……、が、漸くエントランスに到着す。
「遅いんだよっ!……あんたはっ!」
「……あひょおひょおおおーーーーーっ!?」
ホーク、バーバラに怒りの股間蹴りを喰らったのであった。
「ホントにっ!情けない野郎共だよっ、ボウヤっ、アンタもだよっ!
どうせ本ばっか読んでたんだろう!また修行の量を倍にしてやるからな!
覚悟しろ!!」
「……シ、シフううう~、酷いよううう……」
「でも、来てくれるだけマシよ、ユリアンなんか乙女の危機に
姿も見せやしないわよ……、ったくっ!」
「グレイも今日はいないのね……、でも、彼も色々と忙しいから、
仕方がないのよね……」
実はこの時、緑バカは気分転換で偶々外出中、グレイも市役所に用があり、
其方に出向いていた際の出来事であった。
「はっ!……ア、アイシャ!本当にわりィ!俺が側についていながら
恐い思いさせちまって本当、ごめんっ!」
漸く我に返り、正気を取り戻したジャミル、アイシャに只管ぺこぺこ
頭を下げた……。
「ううん、私、ちゃんとあのスネークさんにお話するわ、此処に
住むのなら、迷惑行為は止めてねって、……無理、かも……」
「無理……、だな……」
ジャミルとアイシャは揃って溜息をつき、声を合わせた……。
此処にいるロマ1住人も含め注意したぐらいであっさり大人しく
従う様な住人は此処には殆どいないからである。真面目なのは
中学生の一部のお嬢さん達と言う事実。情けない話ではあるが。
「それをどうにかするのが、ジャミ公、管理人のアンタの役目だろっ!
……あたしらも困るんだよっ!」
切れたシフ、竹刀で床をバシッと叩き、ジャミルを脅す……。……とにも
かくにも、2階には特に若い、可愛い女の子達が集まっているので
変態へ何としても注意して来いと、管理人のジャミ公はお姉さま方に
釘を刺されたのである。
「あうう~、いつもいつも何で俺が……、くっ、畜生……、お、俺マジで
家出してやるぞ……」
「バカ、何いってるのよ!……そう言えば、まだスネークさんに
お部屋、案内してないわよ……、ね?」
「はう!?そ、そう言えばそうだったっ!やべえっ!」
ジャミ公、アイシャの一言でまた我に返る。スネークは段ボールを
被ったまま、マンション内の何処かに姿を消したのを思い出した。
……一大事である。お姉さま方は皆、各自の部屋へと帰って行った。
後の事はジャミ公に任せ。
「仕方ねえ、……探しに行くか、アイシャ、もういいから、お前も部屋に……」
「いや!私も行くわよ!ちゃんと言うべき事は言わなくちゃなんだからっ!」
やっぱり……、と、ジャミルは思う。彼女が言う事を聞いて素直に
部屋に戻る筈がなかった。こうなったら彼女を抱えて、無理矢理部屋に
押し込んでくれようか……、と、思っていた直後。
「待たせたな……、俺に何か用か?」
「スネークさん……」
「あ!……て、てめっ、この野郎!!」
消えたスネーク、再びエントランスに姿を現す。……全身を段ボールで
隠して覆ったまま。段ボールに開けてある僅かな穴の間から、こちらを
見ている模様。
「お前達は、先程の事を怒っているのか?……嬢ちゃんも、俺に胸を
触られたのを切れている様だが……、そんな事、地球上の何億と言う、
気の遠くなるような長い年月の歴史から比べれば、少しの風が
通り過ぎて行った様な小さな事だぞ……」
「……こ、こいつ……」
「あのう~……」
二人は訳が分からなくなって来た。この、スネークと言う男は、
先程の変態モードとは打って変わり、突如糞真面目な説教モードと化す。
「よう、お前、この変態屋敷のボス……、なんだろう?気を大きく
持つ事も大事だ、生きていればいろんな事があるさ、……ヒトの一生
なんて、すうっと流れて行く屁と同じさ……、あっという間に時間は
どんどん過ぎて行くぞ……、アンタ、ずっと観察させて貰っていたが、
随分短気だな、怒っている暇があるならもっと楽しい事に気を回した方が
いい、……なあ?人生楽しまないと、ソンするぞ、あんたも、もし何か
辛い事があったらその時は、頭から段ボールを被るか、
直に中に入ってみな!」
「……あうう~!」
「ちょっとジャミルっ!しっかりしてったらあ!」
ジャミル、遂に目を回し始める……。スネークに注意する処か、逆に
自分が完全に諭されてしまっていた。
「嬢ちゃんも……、だ、女は胸の大きさじゃねえ、……優しいハート、
心だ、心……」
「!!ちょ、別に気にしてませんたらっ!もう~!」
アイシャも顔を真っ赤にし、スネークに声を上げた。彼女ももう、
完全にスネークに注意するのを忘れ始めていた。
「ははは、それでいい、それでいい……、んじゃあ、俺も暫く
此処に滞在させて貰うとするか……、んで、俺のアジトは何処だい?
独りで潜入するから付き添いは平気だ」
「潜入て……、えーと、2階に新しく入ったお兄さんも……、
いるから、一緒の階だと思います……、ジャミル……、
もう、しょうがないわね、はい、お部屋の鍵です、無くさないでね」
アイシャは目を回しているジャミルから鍵を取るとスネークに渡す。
スネークは満足そうに部屋の鍵をポンポン宙に投げてキャッチする。
「サンキュー、では、本日のミッション完了だ!管理人、嬢ちゃん、又な!」
「はい……、お気を付けて……」
アイシャは去っていくスネークを呆然と見送る。一体何が何だか
分からず終いであったが、やはり、アイシャが感じた通り、悪い人間では
無かった事に、一安心する。
それから、数日後。
「ジャミルー!いるんでしょっ!オイラの部屋の海老煎よくも勝手に
黙って食べてった……、って、何してんのさあ!」
「……お前も入るか?案外入ってみると癖になるぞ……」
巨大な段ボールからジャミルがぬっと顔を出した。
「バカ言ってないで早く其処から出なよお!代わりの海老煎、
ちゃんと買ってよねっ!」
「あのな、お前の煎餅、俺がちょろっと食った事なんて地球上の
長い長い年月の歴史から比べりゃだな、屁の様なモン……」
「そんな事どうでもいいんだよおーー!早く海老煎っ!!」
やはりダウドには教養は通じない様である。ジャミルはしぶしぶ
段ボールから出ると食ってしまった海老煎を買いに出掛けて行くのであった。
いちごメロンパン探し!
「わあ、いちごメロンパンかあ、おいしそうだねえ!」
「わんっ!」
「それでね、甘くって、サクサクでふんわりで……、ほんっとーに
美味しいんだよっ!!」
「いちごメロンパン、こむぎもたべたい、たべたいよ~っ!ねえ、いろはーっ!」
「でも、こむぎは人間の時ならいいけど、犬の時はパンは絶対に
食べちゃ駄目だよ!」
「わかってるようー!」
廊下で何やら、いろはとはーちゃんが立ち話をしており、それをいろはの
横にいる、ヒトバージョンのこむぎがハッスルしながら聞いている。
「食い物の話だな……、また……」
「あ、ジャミルさん、こんにちは、今、はーちゃんから、とっても美味しい
いちごメロンパンのお話を聞いてたんですよ!」
「わん!あまくてふんわりで、さくさくですっごくおいしいんだって!」
「……メロンパンなのに苺スか……?ヘッ、それはもう、メロンパンじゃ
ないでしょうに……」
「は~?んー、わかんない……」
又、イガラシが通りすがりに一言、嫌味を言い、通り過ぎて行った。
「……マジで可愛げねえな、あの猿は……」
「うう~、こむぎ、お話きいてたらいちごメロンパンますます
食べたくなったよう!」
「……けど、販売時期もあるんじゃね、もうすぐ5月も終盤だぞ……?」
「でも、探してみればもしかしたら……、こむぎ、スーパーに行ってみる?」
「いくワンいくワン!いろはとお出掛け!うれしーわん!」
「はいはい、ふふ……」
「ま、頑張ってくれよ、んじゃ俺はこれで……」
と、ジャミ公が部屋に戻ろうとした時、チビが現れる。
「ぴきゅ!いちごメロンパン、チビも食べたいーっ!!」
「チビ、お前、いつ来たんだよ……」
「さっききゅぴ!びいーっ!!」
チビはジャミルの鼻の穴に又も指を……。
「あてててっ!だからっ、その癖よせっつんだよっ!!」
「まあ、可愛い!このドラゴンさん、ジャミルさんのお友達ですか?
こんにちは!」
「こんにちはー、わたしはこむぎだよー!はじめまして!」
いろはとこむぎがチビをなでなですると、チビが不思議そうな顔をした。
「ぴいー?新しいこんにちはのマンションのおねーさんですか?」
「ああ、お前らは会うの初めてだったっけ、て、ゆうか、前の
シリーズから引き継いで、玉に出番があるんだ、一応此処では、
この島の郵便局員らしい……」
ジャミルもチビの喉をちょいちょいくすぐるとチビも喉を嬉しそうに
ギュルギュル鳴らす。
「はーちゃん、何してるの!中間テストも近いんだから!」
リコが2階からはーちゃんを呼びにやって来た。その後からみらいも来る。
「大丈夫だよ、リコ!はーちゃんは私と違って、余裕なんだから……」
「そうじゃないでしょ、みらい、テストが終わるまでは、私達、
3人で遊びに行ったりするのは控えようって言ったじゃないの!」
「ぷー!私、いちごメロンパンのお話してただけだもーん!
分りましたよー!じゃあ、皆またねー!もしいちごメロンパン
食べたら後でお話聞かせてねー!」
はーちゃんは残念そうに部屋に戻って行った。
「……いちごメロンパン……、たべたいわん……」
「いちごメロンパン、食べたいきゅぴ……」
こむぎはジャミルの顔を見て、目をうるうるする。どうもジャミルは
色々と引っ張り出される運命にあるらしい……。チビもいちごメロンパンを
食べたがっている為、部屋に逃げる事が出来なくなってしまった模様。
「う、……わ、分ったよ、仕方ねえ、俺も行くよ、その代り、
店に無ければ諦めろよ?分ったか?」
「きゅっぴ!」
「わーい!みんなでいこうー!いちごメロンパンたんけんたい、
しゅっぱつだわん!いっちにい、いっちにい、れっつごー
わんだふるーー!」
「……おい……、メロンパン探検隊って……、何だそりゃ……」
脳内お花畑のこむぎに困惑するジャミル。頼むから俺も加えないで
下さい……と、思うのであるが……。
「も、もう~、こむぎってば、……ジャミルさん、忙しいのに
本当にすみません、いつも私達の為に有り難うございます!」
「は、はあ……、いや……、別にいいって、こいつも食いたがってるし、
は、は……」
「きゅぴーきゅー!」
ジャミルに丁寧にお礼を言ういろは。此処まで気を遣われると、流石に何も
言えなくなってしまった……。
「大丈夫だよお、この人いつも暇なんだから……」
「急に出てくんじゃねー!バカダウドーーっ!」
いきなり出て来て暴言を垂れて行くダウドをドタドタジャミルが
追掛けて行った……。して、ジャミル、チビ+こむいろコンビは近所の
スーパーへ足を運ぶ。
「やっぱ、時期的に無理だと思うんだけどなあ~、チビさあ……」
「探してみないと分からないよお!」
「さがすわん、さがすわん!……わんっ!くんくん、こっちかな?
……あっちからおにくのにおいがするわん!あっちからはおさかなー!
スーパーっておいしいにおいがいっぱいだねぇ♡」
「……こむぎっ!またっ!そうじゃないでしょっ!って、此処で
コーフンして犬に戻っちゃめっ!」
「わう~ん♡」
「はあ~……」
……ドラゴン、変な犬っころ娘が普通に徘徊していても、誰も
つっこまない世界、前回の世界よりも本当に自由で平和な優しい
世界である……。
「……ぴ……」
「チビ、どうした?まさか……」
「うんち……」
「……うわあああーーっ!!」
今日はアイシャがいない為、ジャミル自らチビを抱えて、ダッシュで
トイレに駆け込むのであった……。
「……あらら、ジャミルさんも……、大変なんだねえ……、でもでも、
可愛いパートナーだもんね♪」
「わんっ♪」
そして、パン売り場でいちごメロンパンを捜し歩くが……。
「やっぱりないぞ、普通のメロンパンならあるけどな……」
「ぴい~……」
「いろは、いろはー!こむぎね、これがいい!ミルククッキー!」
「……こむぎ、今日はいちごメロンパン探しに来たんでしょうが……」
「たべたいたべたい!こむぎは今、クッキーがたべたいのーっ!
たべたいわん、たべたいわん、クッキーたべたいわん!……かってかって
ええーー!いろはああーー!」
こむぎは床に寝っ転がり、幼児退行我侭炸裂で駄々を捏ねて暴れ出す……。
どうも、いちごメロンパンはいらなくなってしまった模様。
「あ……すみません、ジャミルさん、こむぎがアポ全開状態モード……、
に、なってしまいました……、ですので、私達はクッキーを買って
帰りますね……」
「はあ、別にいいよ、こむぎがそれでいいんなら……、うん、じゃあな……」
「はい、今日はお付き合いして下さって本当に有り難うございました!
ほらっ、レジ行くよ、こむぎっ!」
「♪わんっ!ジャミル、チビ、またあそぼうねえー!」
いろはとこむぎはジャミル達に挨拶するとレジへと行ってしまう。
探しても見つからない物よりも、自分が今、一番食べたい物の方が
最優先になってしまうらしい、単純思考の素直なこむぎだった。
「はあ、だけど中々見つかんねえモンなんだなあ~……」
「ぴー、ジャミル、チビ達も帰ろ、チビ大丈夫だよお、探してくれて
ありがとうきゅぴ!」
「いいのか?本当にさ……、じゃあ何か代わりのモン買ってやるけど……」
「じゃあ、あれが食べたい!」
「……んー、あれって……」
チビが指差したのは、試食の新商品のチーズ入りフィッシュ
ソーセージであった。
「一つ、食べたい、貰ってー!」
「……欲がねえなあ、ホントにオメーは……」
「ぴ!」
売り場のおばちゃんからソーセージを一つ貰い、チビに渡すと
チビは美味しそうにソーセージを食べたのであった。
「ジャミルさーん、チビちゃーん、いちごメロンパンありましたよーっ!」
「わんわん~!」
先程レジに行った筈のいろはが見つけてくれたパンを持ってわざわざ
ジャミル達の所に戻って来てくれた。どうやら在庫品を探し当てて
くれたらしい。
「一個だけありましたので、はい、どうぞ!チビちゃん!」
「わ、悪いなあ、何か……、こむぎも食べたかったんじゃ……」
「だいじょうぶ、こむぎはクッキーいっぱいたべてるから!」
「はい、大丈夫ですよ、ご心配なさらず!よかったね、チビちゃん!」
「いろは、こむぎ、ありがとね、きゅぴ!」
チビは嬉しそうに彼女達にスリスリ。いろはとこむぎの心遣いに
ジャミルは有難くいちごメロンパンを買わせて貰う事にしたのだが、
パッケをよく見てみると。
「……こりゃシールがメインのキャラクターパンだなあ、味は偽物だ……、
……チビ、どうする?」
「んー、それでも食べてみたいきゅぴ!」
「そうか、なら……」
「ぴ?」
「それ……」
隣に、小さな男の子がいて、こちらをじっと見ていた。どうやら
キャラクターパンが欲しかったらしい。
「あっ、ごめんなさい、チビはいいよお、はいっ!」
チビはパンを男の子に差し出す。
「……ドラゴンさん、いいの?」
「きゅぴー!」
「ありがとうっ!ママー!これ買ってー!」
男の子は喜んでパンを母親の処まで持って行った。
「偉かったなあ、チビ!」
「きゅぴー!」
ジャミルがチビの頭を撫でると、チビも嬉しそうにスリスリする。
「んじゃ、俺らも帰るかね、よいしょ!」
「ぴい、ジャミル、またスーパー一緒に行こうね!」
「そうだな!」
ジャミルはチビを肩車するとスーパーを後にする。いちごメロンパンは
口にする事が出来なかったものの、チビにとって最高で幸せな楽しい一日に
なった様であった。
にゃんだふるなトモダチ
それから満を満たして、マンションにまたまた新住人がやって来る。
今度の住人は3人。美少女2人と、眼鏡の美少年……、と、少年の連れの
ふっくらしたモチモチロップイヤーラビットである。いつも通り新居さんを
出迎えたジャミルとアイシャは……。
「俺はジャミル、一応此処のマンションの管理人だよ、宜しくな……」
「初めまして!私、アイシャ!宜しくねっ!来てくれて有り難う!」
「あ、あの……、はじめまして……、私は猫屋敷まゆです……、
どうぞ宜しくお願いします……、こわくない、こわくない……、
こわくないったらこわくない!」
「私は猫屋敷ユキ、……まゆを守る為よ……、仕方が無いわ、
まゆと一緒に此処に住んであげる……、まゆの為なんだから……」
「初めまして!兎山悟です、皆のサポートで僕も今日から一緒に
住む事になりました。こっちは僕の相棒の大福です、ホラ、大福も
管理人さん達にご挨拶だよ……」
今回の住人達、猫屋敷まゆ。焦げ茶色の髪色に、左サイドテール、
シュシュで纏めている美少女。だが、どうにも人見知り、怖がりな様で、
さっきから、念仏の様に、こわくない、こわくない……、を、繰り返し、
只管目を瞑り彼女の隣にいる、ユキの服の袖をぎゅっと掴んでいる……。
猫屋敷ユキ。金髪ブロンドに青瞳の此方も相当な美少女の様であるが、
ブロンドを掻き上げ、さっきから異様にまゆ、まゆ連発で、彼女以外目に
入っておらず、おまけに強気でタカビーらしかった。そして、最後は
インテリで知的そうなアホ毛眼鏡美少年の兎山悟。お連れの大福チャンも
ちっちゃい片手を上げ、ジャミル達によっ、……とご挨拶。
「わあ~、また可愛いお友達ねえ、宜しくね、大福ちゃん♡」
「……」
もふもふ大好きアイシャは悟から大福をお借りするとスリスリ
ご挨拶。表情は変わらないが、大福も何となく嬉しそうである。
「はは、良かったな、大福、お姉さんに抱っこして貰って」
「……♪」
「……ねえ、早くお部屋に案内してくれるかしら?私もまゆも此処に
来るまで疲れちゃってるんだから……」
ユキはブロンドを再び掻き上げ、ジャミルに催促……。ジャミルの
頭部にモジャモジャマークが浮かぶ……。それを見たまゆ、慌て始める。
「駄目だよっ、ユキってばっ!……あの、あのっ、管理人さん、
ごめんなさいっ!」
「あれえ?まゆちゃん、ユキちゃん、悟君!大福ちゃん!」
「わあ、みんなもきたんだぁ!わふうう~~ん!」
「い、いろはちゃん、こむぎちゃん!」
「あら……?」
「犬飼さん……、こむぎちゃん……、あ、あはは……」
其所に、いろはとこむぎが登場。新しく訪れた住人達に駆け寄り、
ご挨拶。どうやら、みんな仲良しの友達らしい。
「そうか、皆知り合いでダチなんだな、なら、話は早いな、あんたら
女の子4人は同室の方がいいだろ、なら、いろは達と一緒に……」
そうジャミルが気を遣うが、其所にユキが割り込んでくる……。
「……嫌よ、私とまゆは2人だけで静かな生活を送るんだから……、
うるさいこむぎと同室なんてそれこそ毎日嫌よ、……ね、まゆ……」
「!?なんで、なんでぇぇーーっ!?こむぎ、うるさくないもん!」
「……それがうるさいって言ってるの……」
「え?……あ、あの、あの……、え~と、え~と……」
百合百合レズビアン全開ユキ……。慌てるまゆ。どうにもこうにもやはり
まゆしか見えていないのか……。アイシャは手を両頬に当て、そんな2人の
やり取りを顔を赤らめてぼけっと眺めていた。ジャミ公の頭に又もじゃもじゃ
マークが沸いた……。
「しゃ~ねえなあ、じゃあ、パートナー2人ずつの部屋って事でいいんだな?」
「さっきからそう言ってるのよ……」
「あの、僕は……」
「そりゃ、アンタは別の個室だよ、決まってんだろ、小せえ相方もいる
みたいだけどな……」
「!あはっ、そ、そうですよねっ!あはははっ!……はあ~……」
「……」
「な、何だよ、大福、その顔は……、べ、別に……、羨ましいとか
思ったりなんかしてないぞ、本当だぞ……、犬飼さんと……、はっ!
な、何を言ってるんだっ、僕はっ!!」
「……」
顔は元々あんまり変わらないのだが、大福は恐らく、相方の悟に
お前ももっと頑張れよと言いたかったのだろうか……。その後、
アイシャがまゆ&ユキ、悟&大福を2階の部屋に案内する。ジャミ公も
やれやれ状態で自室へと戻って行く。
「じゃあねえ、ユキちゃん、まゆちゃん、悟君、大福ちゃん、又後で
いっぱいお話しよーね!」
「ばいばーい!こむぎ達のおへやにも遊びにきてね!このマンションでは
みんなこれからずっといっしょだね!いつでもすぐにあえるね!うれしいわん!」
「うん、うん!ま、またね……」
「……仕方無いわねえ……」
「犬飼さん……、また後でね……、こむぎちゃんも……」
「……」
それぞれの部屋も落ち着き、やがて本日も夜になった頃、又ジャミ公の
部屋を訪れる者。……本日入居した、猫屋敷まゆ、ユキのコンビ……。
「そうか、……で、ユキも本体はネコ……、だっちゅー事か……」
「そうよ、私はまゆのパートナー、大切なまゆを絶対に守るのよ……、
何時だって、何処だって……」
「あのっ、あのっ!いきなりごめんなさいっ!……いろはちゃんから聞いて、
こむぎちゃんの事も、管理人さんにはもう打ち明けてあるって、なので……、
私も……」
まゆは真っ白な毛並みの、青いリボンの首輪を付けたネコを抱いている。
このネコが昼間まゆと一緒に居た少女、ユキの本体らしい。彼女は大切な
パートナーのまゆをいつも守りたい、一緒にずっと居たいと強く願った処、
人間の少女、猫屋敷ユキに変身出来る様になったらしい。
「まあ、いいよ、基本的に此処の連中は、俺もそうだけど、余り細かい事は
気にしないからさ、だからあんたらも堂々としてていいよ、此処に来たら皆
ダチさ、な?」
「……管理人さん、あ、有り難うございます!……ユキ、良かったね……」
「あなた、一見バカっぽく見えて、脳天気で何も考えてなさそうな感じが
したけど、……結構いい人間なのね……」
「大きなお世話じゃ!……つー事で、いいかい?ま、明日から又快適に
自由に暮らしてくれ……」
「はいっ!ではっ、管理人さん、また明日!ユキ、お部屋行こう!あっ、
お風呂も入らなくちゃね!ユキ専用の新しい猫用シャンプーとリンス、
買って来たんだよ!」
「……ふぃぎゃ~お!……フウ~ッ!!シャーー!!」
「ちょ、ユキ……、引っ掻かないでっ!……イタタタタっ!痛いよっ!!」
まゆはユキを抱いたまま、ジャミルに頭を下げて部屋を出て行く。
まゆが風呂と言った途端、ユキがしかめっ面で変な顔して切れたので、
恐らく風呂が苦手なんだろうと。
「まあ、猫だからな……、に、しても……、俺、猫にまで脳天気
言われちまった……、……ほっとけっつーのっ!!」
こうして、わんぷり組も勢揃いし、彼女達も果たしてこのマンションで
どんな生活を送ります事やら……。
zokuダチ。セッション10