音
パチパチと燃える音がする。オレンジ色の炎が綺麗だ。
火を見ながら、彼女はとてもどうでもいいことを思った。
(オレンジって一番温度が低いんだっけ?オレンジ?赤、?わかんないけど。)
一人でするには大きくしすぎた木組みは美しく揺らめく赤に染まっている。炎はそれなりに立ち上っていて、安易にキャンプファイヤーをしようと考えた数刻前の自分を殴ってやりたい。とりあえず、川のそばだから山火事にはならないだろうけど、そもそも殆どキャンプなんてしたことない彼女にとっては楽しむよりヒヤヒヤする気持ちの方が勝っている。
何より、一人でしても何も楽しくない。此処に友達やら家族やら、まぁ恋人がいたら、楽しい一時だったのだろう。
(友達も家族も呼べなかったしなぁ、)
恋人とは喧嘩したばかりだ。喧嘩した理由は些細なことだった。もう覚えていない。
覚えていないけれど、カッとなって、そこから記憶はない。漸く落ち着いて、こんなところで一人で何をやっているか分からない状況に陥っている。
いや、何をやっているか分からないは語弊がある。
彼女は、自分がしていることを正しく理解していた。理解した上で、分からないと思うことにしていた。そうじゃなければ、気が狂っていると思われる。
一人でするには大きな木組みは、人ひとり入りそうであった。押し込めばギリギリ行けるだろう。それくらいの広さと大きさがあった。
例えば、些細な理由で喧嘩して、殺してしまった恋人を納めるくらいの広さが。
(日本の年間の行方不明者って、七万くらい?意外と多いな。じゃぁ、行けるのかな。)
彼女は分かっている。すぐに警察に捕まることも、犯罪者になることも。
正直、どうでもよかった。あまり自身に興味のない彼女にとって、自分の評価は然程影響がない。だから、どうでもいい。
でも、それでも。
焼ける音がする。崩れていく音がした。
(ごめんね。こんな風にしか愛してあげられなくて。)
溢れた涙を彼女は知らない。言葉は音にならないまま消えていく。
(ああ、私は、どうして、)
後悔は意味がない。泣く理由もない。
これで、彼は誰のモノにもならない。自分が殺したのだから。
笑っていて、泣いていた。
木が割れる音と同時に、壊れた音がした。
音
物凄く久しぶりですね。そして、また狂ってるような作品を書きましたね。次は、もっと恋愛してるような作品を書きます。